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2017年01月09日

スズキ スイフト(HYBRID RS) 試乗

 この日は、ホンダのお店に続いてスズキのお店に行き、新しいハイブリッド車群に乗ってみました。エネチャージを新たにハイブリッドと名乗り、ソリオにはAGSシステムとの組み合わせのフルハイブリッドを登場させています。現実に目を向けますと、ワゴンRは長期的に失速気味、スペーシアも思ったより受け入れられず、徐々に他社に市場を奪われつつある焦りもあるのでしょう。その中でスイフトは、キープコンセプトながら顔立ちは一新、シャシーも一新と、そこそこ力が入っています。

スイフトの歴史
 初代モデルは、当時の軽乗用車である「Kei」を膨らませたようなボデーでした。標準シリーズとスポーツ仕様の二本立てで、標準シリーズは1300ccエンジンを、スポーツ仕様は1600ccエンジンを搭載し、それぞれ「安い登録車」と、「クラシカルな「ホットハッチ」」を実現しました。スポーツ仕様は、ラリー競技でもある「ジュニアWRC」で好成績を収めるなどし、「良くわかっている近頃珍しい競技志向」の人に受け入れられました。その一方、標準仕様は安さ一本で販売し、2代目モデル販売後にも「SE-Z」という、70万円台で販売するモデルのみを残したほどです。

 2代目は、スポーツ仕様を前面に押し出して登場しました。ボデーはオリジナルとなり、小型車の品質感を超えた車に仕上げていました。ちょうど、現在のデミオのような雰囲気で受け入れられました。スポーツ仕様は引き続き1600ccエンジンを搭載し、「シビックタイプRを買わなくても、安い価格で十分に楽しめるスポーティーハッチバック」として市場を拡大しました。

モデル途中では、標準仕様のエンジンを1300ccから新エンジンの1200ccに換装しました。新モデルにも搭載されているk12エンジンです。CVTが組み合わされ、メーカーがこのモデルに力を入れていることが十分に伝わってきました。

 3代目は2代目の正常進化版で、より品質感を高めるモデルチェンジを行いました。初期型モデルでは、重厚感あふれる乗り心地とピアノブラックの内装が特徴的で、2000cc級の小型車にも匹敵するほどでした。マイナーチェンジの時には、筒内噴射エンジンほどコストがかからず筒内噴射方式に近い効果を得られる、「デュアルジェット(インジェクター)」システムに変更され、メーカーの力の入れようが伝わったものです。

私は2代目の1200ccエンジン版には乗っていないのですが、3代目1200cc標準モデルはアンダーパワーでした。高速道路でも余裕はなく、重厚さと引き換えに軽快さを失っていたようです。個人的には、もう少しお金を出して排気量が大きな他社のモデルを選んだほうが良い、と感じました。乗り心地も後期型は良くなく、「メーカーはメディアに掲載される前期型に力を入れ、掲載されない後期型でコストダウンをするのか?」と思った程です。ステアリングの操作感覚もよく泣く、メーカーのおごりを感じたほどです。また、スタイルの上でもヘッドライトが大きすぎ、少々バランスを欠くサイドビューになっていました。

エンジン



 K12C型1200ccDOHCデュアルインジェクター方式のエンジンが、継続して搭載されています。インジェクターを2本にすることで、吸気ポート2本に対して真っ直ぐに燃料を噴射出来るようになります。そのため、吸気ポート壁に付着する燃料を抑制するとともに、吸気工程で燃料を噴射、シリンダー内で燃料が気化して吸気を冷却する筒内噴射エンジンに近い効果が得られます。また、マイルドハイブリッド化により、主に低中速域で発電機がエンジンを軽くアシストするようになっています。

後述する車体の軽量化やハイブリッド化の効果も相まって、軽快に走る車になりました。旧型では、「遅いもののエンジン音で走る気にさせる」と評価しました。いわゆる「雰囲気スポーティー」です。この車では余裕が出来て、排気量を200cc程増したような走行感覚になっています。特にエンジン音の静かさと振動の少なさが特徴的で、回転バランスが良いエンジンになっていると感じました。



ハイブリッド化による、エンジンの負担低減も効いていることでしょう。これまでの標準モデルで感じた、「もう少しパワーがあれば」という思いが、だいぶ感じられなくなりました。それでも余裕にあふれるほどでなく、走ることが楽になった、程度の変化です。

トランスミッション
 スズキお得意の、副変速機付きCVTを搭載しております。旧型モデルの前期型や、少し前に発売されたイグニスでは、モーターとエンジンとトランスミッションの制御に均整がなっておらず、アクセルペダルで車速や加速を制御しづらくなっていました。

この車では、ハイブリッドシステムの存在を感じさせないようになっている上、エンジンとモーターの力を「システム出力」として捉え、CVTで変速をしている印象です。

CVTの変速は、エコカー減税導入前の日産車のCVTに近い印象です。加速時でも低い変速比にしようとせず、加速中は変速比を固定、車速とエンジン出力が釣り合ってくると徐々に高い変速比に移行させる印象です。車速が低下してから再加速をする際にもいたずらに変速比を下げようとせず、ある程度一定の変速比を保持するようです。おそらくその際、モーターによるアシストも高められてエンジンの負担も低減されていることでしょう。

CVTの変速比が改善され、CVTとエコカー減税の嫌な印象が薄まり、運転しやすくなりました。このような変速比にするなら、いっそのことマツダのように有段ATにするか、後日書くAGSにしてしまったほうが良いでしょう。

ステアリング
 旧型初期の電動パワーステアリングは、モーターのアシストが遅れるのか、軸がねじれているのか、操舵に対してアシスト時期がバラバラになってしまっている印象でした。直接体に伝わる部分の印象が悪いと、人間疲れるどころか不快になるもので、全く腹立たしいパワーステアリングになっていました。後期型になると、ごく普通のパワーステアリングになり、まともになったものでした。

 この車のパワーステアリングも旧型後期と同様の、プレーンで素直なパワーステアリングになっています。どことなく「しっとり」とした操作感覚になり、上質な感じが出ています。ただし、相変わらず路面の様子はあまり伝えませんが、気持ちが良いステアリングに仕上がっています。

サスペンション



 若干縮み方向の動き出しが硬いような印象はありますが、総じて乗り心地は良いサスペンションです。旧型前期の、車重の重さを利用した重厚さはありませんが、旧型後期のようにタイヤが跳ねるような印象もありません。

ただし、車線変更を急に行うような、速い操舵に対してやや車体の動きが大きく感じられます。前述の動き出しの渋さをなくした上で、もう少し伸び側も縮み側も減衰力を高めたいところです。もしくは、もう少しスタビライザーを強化して挙動を安定させたいところです。

もっとも、車体を軽量化して登場したばかりの車ですから、徐々に調整されて改善されていくことでしょう。

ブレーキ
 ペダルタッチはまずまずで、特別良い印象がないものの悪い印象もありません。ハイブリッド化により、減速時に発電機が回生ブレーキモードに移行、減速力を発生させます。減速度はかなり高く、トルクコンバーター式4速ATの2速でのエンジンブレーキに近い印象です。そのため、市街地走行ではフットブレーキを使用する時間が短くなっています。

ノートのe-powerグレードでも感じたことですが、回生ブレーキの減速能力が高まると、摩擦ブレーキであるフットブレーキを使用する時間も機会も減少します。今や鉄道でも摩擦ブレーキは「駐車・非常ブレーキ」になっています。「使わないものはコストダウンする」の憂き目に合わないか、心配しています。

話が横道にそれましたが、フットブレーキの使用感覚は並であり、安価なコンパクトカーはこんなものか、というがっかりは皆無です。

ボデー



 今回のモデルのトピックスは、このボデーにあります。シャシーの構造部材の配置を変え、効率よくボデー剛性を向上させているために、ハイブリッドモデルでも900kgと軽量に仕上がっています。1割は軽量化されていることでしょう。構造部材だけではなく、高張力鋼板の使用面積も拡大されています。

スズキは、旧型エスクードまで高張力鋼板を使用することには慎重でしたが、旧型アルトの途中で追加された「アルトエコ」から、急速に採用するようになりました。鉄板自体の剛性が高いために、構造部材を削減しても同程度の車体剛性が得られます。そのために、極端な軽量化が可能となりました。

 しかし、車体剛性も落としておらず、むしろハッチバックモデルとしては非常に高い剛性を持っています。トヨタのTNGAでも感じましたが、車体後部に大きな開口部(テールゲート)があることなど感じさせないほどです。アルトのターボやワークスグレードが開口部の溶接点を増やして車体剛性を高めていますが、この車体は「そうしているのではないか?」と思わせるほど、しっかりしたボデーになっています。

 外装は好みです。流行の上では遅れた「切れ長」ヘッドライトの印象がかなり抑えられ、サイドから見ても「小顔」になりました。ボデーそのもの形状はあまり変わっていませんが、小顔化によるプロポーションの改善により、安定感を感じるボデーになりました。一方で、若干没個性な顔立ちになり、パッソに近い印象も出てしまっています。流行の点では横長ヘッドライトに移行しており、「切れ長感を抑制」したくらいではまだまだです。



 内装も、このクラスの車としてはまあまあ、デミオと比較すると幾分見劣りする、旧型と比較すると、若干退化している内装になってしまいました。旧型から現行にかけて、ナビゲーションのモニター画面が大型化、内装材の面積が減っていることも関係します。



シートの出来は良く、ホールド性も良い方です。前席で心地よく座れる位置に調整すると、後席のフットスペースはやや狭くなります。また、リヤシートバックが若干立っているために、写真では4人が快適に座れそうな感じですが、「まあ座れる」程度になっています。3人以上でこの車の乗る機会が多い方は、実際に3人以上で座ってみることをおすすめします。

まとめ
 この車は、「デミオイーター(デミオを喰う存在)」です。マツダは「クラストップ」を実現しますが、4年以内に他メーカーに追いつかれて抜かれてしまう傾向にあります。2代目のスイフトは小型車の平均を著しく超えていましたが、旧型デミオがこれに取って代わり、再びスイフトが追いついてきました。若干デミオより総合力で劣っていると感じますが、スイフトの新しい軽量ボデーは魅力的です。走りの上でも、スイフトの軽快な感じは小型車らしく、若々しさを感じます。デミオは大人感覚を得ましたが、ちょっと老成してしまった印象です。このキャラクターの違いが、二つの車の分かれ道です。

この車の出来は良く、「これ一台で」と考えている方には十分勧められる車です。ただし、ハイブリッドモデルでないとおそらく余裕は少なくなるであろうこと、3気筒ターボエンジンは振動や出力特性の上で、この試乗記は半分くらいしか役に立たないであろうことから、RSのハイブリッドモデルだけのことと考えてください。また、既にソリオが搭載している、AGS+ハイブリッドモデルが出るようなら、そちらをお勧めします。この車は、少し待って買うことが正解です。

参照して欲しい試乗記

トヨタ
ヴィッツ(現行初期型)
ヴィッツ(現行中期型1NR-FKEエンジン搭載車)
アクア(現行初期型)
カローラアクシオ(2NR-FKEエンジン搭載車)
パッソ
シエンタ
スペイド

日産
マーチ(現行初期型)
マーチ(現行ニスモM/T)
ノート(現行前期型スーパーチャージャーモデル)
ノート(現行前期型ニスモM/T)
ノート(e-power)
キューブ(現行初期型短距離)
キューブ(現行初期型長距離)


ホンダ
フィット(1300cc車)
フィット(ハイブリッド短距離)
フィット(ハイブリッド長距離)
フィット(RS M/T)
フリード+ハイブリッド
グレイス(ハイブリッド)

マツダ
デミオ(ガソリン、ディーゼル比較試乗)
デミオ(ガソリン初期型)
デミオ(ディーゼル初期型)
CX-3
アクセラ(現行後期型1500cc)

スズキ
イグニス(ハイブリッド)
スイフト(旧型前期)
スイフト(旧型後期)
ソリオ

VW
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Posted at 2017/03/11 01:08:10

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