
緊急事態宣言が延長され、空模様も梅雨のようで、何もできない状態が続いています。そんな中色々検索をしていましたら、テレビドラマ「高校教師」にたどり着きました。1993年に野島伸司脚本、真田広之と桜井幸子主演で制作され、森田童子の古い曲を主題歌に使用したこと、エキセントリックな野島伸司の世界観が話題になったものでした。
その後、2003年に藤木直人と上戸彩主演でリメイクされましたが、野島伸司の時代は終わったとばかりに、ほとんど話題になりませんでした。おかげで上戸彩は、「視聴率マイナス女王」の烙印を押されたままになりました。
今日、ここで書くのはこれらの二作品ではなく、1974年に東宝制作で、東京12チャンネルで放送され、名目上の主役を加山雄三に置いた作品です。現代では再放送も配信もなく、DVD化もされていない作品ですので、ファンの方がつづったあらすじを見た感想です。
主人公の高校教師、北山先生は、勤務していた会社が倒産し、都内の名門女子高校の教師に再就職しました。担任をすることになったクラスの中には、先生にはたやすく従わないものの正義感が強い5人組がいて、その5人組がクラスの中や学校の中、他校のスケ番だけでなく、時にはやくざともからむ話です。
制作会社の東宝は、社風としてお色気や暴力をしないことにしています。5人の女性のうち、特にリーダー役の「山内絵美子」さんという方は、東映お色気スケ番映画の末期に主演していました。そこに、太陽にほえろ!のスタッフ(監督、脚本他)を組み合わせたもののです。
作風は全く「太陽にほえろ!」そのものです。高校生とはいえ一種の「反社会的」なスケ番はやらないので、主役5人組は一種の「自警団」「民間警察」のような雰囲気となっており、誰に言われたりどこからかお金をもらうわけでもないのに、クラスや学校のために戦う物語となっています。
そこに、「妊娠した同級生をかばう」「親がつけた家庭教師のために一肌脱ぐ」といった高校生にありがちな?騒動を解決するだけでなく、「学校放火騒ぎ」「隣の学校のスケ番との争い」「高校生に覚せい剤を広めようとする暴力団」を絡ませる話まであります。
肝心な「高校教師」はどこに?
そして、「高校教師」たる北山先生がどこに行ったか、というと、5人組でも解決できない状況に手を貸したり、助言をしたりする、わき役に徹しています。題名と作風が違うようにも感じますが、まあ、そこは加山雄三氏の人件費削減もあったのかもしれません。
私の感想
あらすじを見ているだけで、1993年版や2003年版よりも魅力的に見えてしまいます。1970年代前半の作品であるため、まだ「登場人物の心の葛藤や悩み」を深くは描いてはおらず、シチュエーションドラマの色合いが強くなっています。しかし、登場人物同士で仲良くし、周囲の登場人物だけでなく視聴者までをも外野にしてしまった1993年版や2003年版とは異なる、視聴者を引き込むストーリーだったと思います。ぜひ、再放送や配信をしてくれないかなあ。
その後
この作品が放送された後、1970年代後半になってくると、ウーマンリブで現れた「強い女性」よりも、「明るくかわいらしい女性」が好まれるようになってきます。女子高校生を主人公にしたドラマなら、榊原郁恵主演「ナッキーはつむじ風」が、アイドルなら「キャンディーズ」、やや遅れて「松田聖子」など、あどけない雰囲気が好まれるようになってきました。その結果、女性の社会進出が遅れた可能性があります。
山内絵美子さんや同時期にデビューした、東映系の眼光鋭い女性たちは、1980年代前半には活動を終了しています。当時は働いて会社で出世する女性はわずかで、多くの人は結婚して家庭に入っていました。すなわち、20歳代後半になると「劇での役がなくなってくる」のです。多くの方が、引退していきました。
また、この種の眼光鋭さが「おばさんっぽい」とひとくくりにされてしまいました。シャープな顔立ちの女性の復活は、1985年の中山美穂や浅野温子からはじまり、1990年代後半になってようやく認められたように思います。
ブログ一覧 |
過去のテレビ番組 | 音楽/映画/テレビ
Posted at
2021/05/22 20:27:43