「刑事貴族」は、1990年に日本テレビ系列で放送が開始された、刑事もののテレビドラマです。金曜日夜8時の、「太陽にほえろ!」が放送されていた時間帯に放送されました。
太陽にほえろ!part2の終了以降、放送される番組は、長期にわたって続かなくなってしまっていました。大型刑事ドラマと銘打ったリアル路線の「ジャングル」が10ヶ月で終了、結局、太陽にほえろ!流の作品になった(最初の3話までね。)「NEWジャングル」、と続くも、視聴率は低下する一方となり、次作はついに東宝テレビ部の作品ではなくなってしまいました。
次作は、他の時間帯で人気を得ていた、「あぶない刑事」が、「もっとあぶない刑事」となりました。私は、やや悔しい思いをしつつも、初めて「あぶない刑事」シリーズを見ましたね~。
その次は、現在の「相棒」にも通じる作風の、水谷豊氏と三田村邦彦氏共演「ハローグッバイ」です。これで再び東宝の作品となり、その終了後、「ついに(?)本格刑事ドラマ復活」、と、舘ひろし氏を迎えて「刑事貴族」が始まりました。
私自身が西部警察シリーズが好きでないため、舘ひろし氏編はそれほど楽しんでは見ませんでした。それは今回の再放送でも同じ感想を持ちました。この作品への私の感想を要約すると、以下のになります。
・舘ひろし氏が引き立つシチュエーションが出来上がっている
・他の刑事や犯人は舘ひろし氏を引き立てるためにいる
・舘ひろし氏はマスタングで犯人との追いかけっこをする
という、洋画のアクション刑事ものにも似た作りに思えました。「セントラルアーツ」という、東映系の会社で監督をよく行う、長谷部安春氏の作品が多かったから、そう感じたのかもしれません。
それでも当時は「バブルの恋愛もの」主流の時代でしたので、ほかに見るドラマがなくなってしまった?私は、譲歩してこの作品を見ていました。こういう作品と思えば、それはそれで楽しめましたよ。
そして1990年の夏、舘ひろし氏が他の石原プロ作品に出演するとのことで、急遽降板することになってしまいました。そして後継は、「郷ひろみ」氏となりました。郷氏の刑事像など想像もつかず、「これは刑事貴族も終わりかな」、、と思っていました。
それはテレビ局側も同じ気持ちだったようで、舘氏降板後、郷氏編放送までの間、膨大な量のCM、そして番宣が流されていました。そのシーンは、
場所は射撃場、郷氏と布施博氏が向き合う。心臓の部分が撃たれた標的を指し、布施氏は
「これはどういうことですか?本西(犯人)を撃ち殺そうとしているんすか?そりゃまずいでしょう。」
それに対して郷氏は、
「撃たなきゃならない時もあるんだ」
というものです。
続き、足元に隠した拳銃で、向き合った本西の腕を撃つシーンが流れていました。
いやあ、射撃場のシーン、良いですねえ!太陽にほえろ!イズム全開のシーンです。その予告編に期待を膨らませて本編を見たのです。
その本編、上記の射撃場のシーンはもちろんあります。そして何より秀逸だったのは、全編を通じて郷氏の心理を描こうとしていたことです。追いかけっこに感じた舘氏編と比べて、作風の変化を感じました。
要約すると、次のようなものです。
「郷氏演じる風間刑事は、ニューヨークに研修に行っていた。そこでは、事件による同僚や仲間の死をいろいろ見てきた。ところが彼は、その期間中一度も犯人の心臓を狙わなかった。
そして日本国内でのこの事件、本西は心臓を狙わない風間刑事を嘲笑い、風間刑事の心臓を狙う。その直後、風間刑事は、本西の腕を撃つ。そしてこう言う。
「俺が心臓を狙うときは、刑事を辞める時だ!」
以上。
んん~!見事なまでの「太陽にほえろ!」イズムです。登場人物が、刑事の職務に対し使命感を感じながら遂行するのが、「太陽にほえろ!イズム」であるように感じます。その雰囲気が良く現れたこのセリフに、私はしびれてしまいました。
プロデューサーに梅浦洋一氏がいることに変わりはありませんが、脚本は古内一成氏、監督は木下亮氏、撮影は安本英氏、みな、太陽にほえろ!に参加されていた方ばかりです。
もちろん、上記セリフは「俺は決して心臓を撃たない」ということを、いかにもドラマらしい台詞回しにしたものです。
突然問題
上記のセリフを言った風間刑事(郷氏)の気持ちについて、下記の中から正しいものを選べ。
(ア)風間刑事は、決して心臓を撃たないことを決意している。
(イ)風間刑事は、刑事を辞めるまでには人を撃ってみたいと思っている。
(ウ)風間刑事は、心臓を撃てるほど射撃がうまくない。
(エ)風間刑事は、刑事を辞めたがっている。
(オ)このセリフだけではわからない。
もちろん、(ア)ですよね。ところが、私がこの作品を見た翌年に進学した学校では、(ア)以外のことだと思う人が少なからずいたのです。
当時、「こりゃあ、間違った学校に来てしまった。」と思ったものですが、就職後も、意外にそういう人が少なくありません。なるほど、試験科目に「現代文」があり、点差がつくわけです。
視聴者にそういう人が増えてきたとしたら、そりゃあ、ドラマが面白くなくなるわけです。
Posted at 2012/12/15 23:03:22 | |
トラックバック(0) |
過去のテレビ番組 | 音楽/映画/テレビ