この記事をお読みになる方は、日付にお気を付けください。この記事は、2006年7月(多分。暑い時期であることは確かですが、2006年かどうか不明)に試乗した、MR-Sの6速SMTについて2011年12月に思い出しながら書いています。
MR-Sの歴史
昭和59年に登場したトヨタ MR2は、アメリカでのセクレタリーカー需要を満たすべく、軽便なスポーティーカーでした。日本では、4A-GELUエンジンを搭載していたこともあって、スポーツカーの一種として進化をしていくことになりました。
昭和61年には、スーパーチャージャーを追加、1989年のフルモデルチェンジでは2000cc級に移行するとともにターボ化、当時最強クラスの225馬力を発揮しました。いわゆるI型はサスペンションが柔らかく、LSDもなく、ちぐはぐな車でした。
ジャーナリスト向け試乗会でも難題科学らしゅしたそうで、「危険な車」と評されました。中谷明彦氏も、「ポルシェのレースカーでも汗をかくことはないが、この車は手に汗握る車」と評価していました。が、何かの自動車関連番組で設計者は「若者のデートカーなので乗り心地は良くないとならない」と言っていました。早い話が、前年に登場してプレリュードからデートカーの座を奪ったシルビア対抗だったわけですね。
この二代目MR2は早々に変更を受けます。サスペンションロワアーム延長とショックアブソーバー強化、その後もサスペンションをしっかりさせる小変更が続き、最終的には本格的なスポーツカーになっていきました。
ところが、時代は2輪駆動のスポーツカーはなくなり、4輪駆動のハイパワー車が幅を利かせるようになってきました。こうなるとMR2もかなわず、進路変更を余儀なくされます。
そこで初代の精神を復活させ、さらにマツダ ロードスターの市場にも食い込む「MR-S」を登場させました。しかし時代はスポーツカーの時代からミニバン、コンパクトカーへ移行している時期であり、成績を残せずに終わってしまいました。
エンジン
1ZZ-FEハイチューニング版エンジンです。基本エンジンが125馬力であったのに対し、140馬力を発揮しています。当時の1800ccエンジンとしては出力が出ている方で、軽量スポーツカーとして十分な出力です。
今回の排ガス規制初期のエンジンということもあり、まだ対策途上のレイアウトです。吹け上がりもそれほど活発なものではなく、実用エンジンの域でした。この「使いこなせるパワー感」というのが良いですね。本格的な方は「2ZZ-GE」に乗せ換えているようですが、メーカーが出す入門用としてはこれでよいと思いました。
トランスミッション
SMTというのは、「自動クラッチ、自動シフト」システムです。電動ポンプで油圧を作ります。この油圧をクラッチアクチュエーター(触手です)に掛け、クラッチの断続を行います。クラッチ機構は、普通のMT車と同様です。そしてシフトレバーのセレクト操作、シフト操作とも、別のアクチュエーターで作動させています。人の手足の動作を、油圧アクチュエーターで行っていることになります。
シフト時は、レバーかステアリングスイッチを操作します。すると、電子スロットルが閉じ制御をされ、クラッチが切られます。回転数が合うと、シフト操作が行われます。シフトが入るとクラッチが接続されるとともに、スロットルが開かれます。
文字で書くと素早いシフトのように感じられますが、実際にはあまりMT操作に慣れない人が操作しているかのような印象です。
自動システムといえど「上手に扱う方法」がありまして、シフトスイッチ操作時に一瞬アクセルペダルを全閉にすると電子スロットルの操作が省略され、シフトに要する時間が短くなります。
こんにちのような「デュアルクラッチシステム」や「従来のトルコンATを改良し、シフトを素早くしたシステム」が登場した今となっては、再登板はないでしょう。
サスペンション
軽量スポーティーカーとしては常識的な、乗用車的乗り心地でした。スポーツカーではなく、軽い気分で乗れるスポーティーカーというのがこの車の位置づけであるため、これが適切だと思います。
ステアリング
ミッドシップ由来の「神経質なハンドリング」は、街乗りでは当然全く感じられません。当たり前ですね。それどころか、やや後ろが重いような、コーナーリング時に前輪に荷重が乗らないように進入した時のような印象があります。舵の効きは、意図的に悪くされているかもしれません。
しかし、神経質なところがないので、扱いやすいステアリングだともいえます。
ブレーキ
覚えていませんが、なんとなくスポンジーな操作感であったように記憶しています。
ボデー
屋根を閉めるときには、サンバイザーも下げておく必要がある、というのは設計ミスですかね???試乗車も、サンバイザーを噛みこませた跡があり、生地が傷んでいました。
ボデー剛性は良くなく、NBロードスター程度でした。目地段差を乗り越えると、フロントウインドーがちょっと迫ってくるかのような印象を抱きました。曲げ剛性が低いようです。オープンカーだから仕方がないか、と思いましたが、
NCロードスターが登場するに至り、記念モデルが出ようとも旧い車であるように感じました。
まとめ
コンセプトはなかなかですがスポーツカー市場の衰退に伴って、売れたとは言えませんでした。つい5-10年前の出来事です。このことからすると、トヨタ86も、多分販売の絶対数は少なくなるでしょう。スポーティーカーは、設定することに意義があるのかもしれませんね。
そしてこのMRSですが、ボデー剛性が弱いことは気になるものの、運転を練習する車としては良い選択だと思います。もちろん、NBロードスターも同様です。そう考えると、トヨタ86は、練習用としてはちょっとパワーがありすぎかもしれません。
この車は、割高ながら中古車として良く出回っていることもあり、運転を練習する車としてはおススメです。なお、SMTは故障が多いうえに修理金額が高くなるため、全く勧めません。
Posted at 2011/12/11 22:09:02 | |
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