いろいろ評判が良いスズキスイフト、他人の評判を鵜呑みにしない私の主義に基づき、試乗してみました。なお、
旧型にも乗っていますが、雑誌などの高い評価とは裏腹に、決して高い評価は下せませんでした。さて、新型は改善されているでしょうか?
エンジン
K12B吸排気可変バルブタイミングエンジンです。旧型のマイナーチェンジ時にCVTとともに追加されたエンジンの改良版です。何の予備知識もなく乗りましたが、街中を普通に乗るような回転数ではややざらつく感じがするものの、スムーズです。ざらつき加減は、日産のHRエンジンに近い感じです。どちらのエンジンもオールアルミでしたっけ?旧いかもしれませんが、この点では鋳鉄ブロック(だと思う)トヨタNZや三菱4G19に軍配が上がります。どんなに有限要素解析により振動を軽減するためのリブを設けても、組織が振動を吸収する能力を持つ鋳鉄にはかなわないということでしょう。
話が脇にそれましたが、低回転域では現代として普通のエンジンと言えます。一方でスロットル前回の加速では、4000回転を越える辺りから獰猛なエンジン音が聞こえ、運転する気にさせられます。吹け上がりも、
デミオや
アコードのようにスムーズというかウニョーという安っぽい感じではなく、古典的な音がします。低回転域でざらつくものの、高回転でやる気にさせるという、なかなか珍しい感じのエンジンですよ。低回転域ではちょっとがっかりしましたが、このエンジン音で評価はむしろプラスになりました。これから試乗する方は、ぜひ中高回転域かつスロットル開度大領域を試してください。
エンジン出力はほどほどで、パワー不足も感じなければ余る感じがするほどでもありませんでした。ただし、同じ1200ccエンジンでも、
ゴルフのものよりは古典的ではありますが、特性はごくごく普通のこちらのエンジンのほうが使いやすいかもしれません。
スロットル制御は、どうやらゴルフ同様に「オートECOモード」としているようです。すなわち、アクセル操作が緩やかであればECOに、大きければパワーモードにというものです。一件理にかなっているこの方式ですが、ゆっくり走りたいときにはレスポンスが鈍くて運転しづらく、ちょっとでも俊敏に走りたいときにはスロットルを大きく踏み込まなければならないということで、普通のワイヤー式スロットルとはかなり異なる仕様モードを求められます。うーん、使いづらい!かといって、
モード切替スイッチつきでCVTのものは、アクセル制御とCVT制御が連動してしまうため、これもまた使いづらいというものです。
この車のスロットル制御は、再考を願います。街中でとろくて疲れます。
トランスミッション
日産でも使い始めた副変速機付きCVTなのですが、どういうわけか日産ものよりもはっきりと「シフトチェンジ」を感じます。発進時はもちろんローで発進し、すぐにロックアップ後またすぐにハイギヤへ切り替えている感じがします。スロットル制御と連動しているのか、車速が勝手に変わって不快という感じはしませんが、エンジン回転だけが勝手に上下し、なんとなく煩雑であり、車速やスロットル開度とエンジン回転数が連動しない感じがするので、あまり気持ちが良いものではありませんでした。
しかし、ローギヤ発進のおかげで、いわゆるクリープ+αの領域までの加速は良いです。というより、余計にスロットルを踏まなくて済む、というところですね。
基本的な制御は、スロットル制御同様に「オートECO」です。すなわち、車速が一定になるとすぐさま高いギヤへ移行しようとし、アクセルを踏むと変速比を落として加速をさせるというものです。変速レスポンスは今一つ遅く、アクセル全開にしてもそれらしい加速が始まるまでに結構な時間を要します。これでは首都高速などの、短い助走区間しかない高速道路では疲れるだろうなあ。日産のものと基本を同一にしながら、変速の感じは
トヨタ風というものでした。
ステアリング
この車は、
ゴルフ同様ステアリングインフォメーションがありません。すなわち、車輪の角度や路面の状態を、視覚で得なければならない車です。しかも、保舵要求力が非常に小さい(軽い)ため、コーナーリング中のステア角を一定に保つのが難しいです。これは力は使いませんが、運転するのに疲れてしまいます。
ステア操作に対する車の反応は穏やかで、安定感たっぷりです。ちょうど
デミオの正反対です。大きな車に乗っている感じとでもいいましょうかね。デミオが「車輪が車体に付いた感じがする」のに対し、この車は「地面に車輪が付いている」感じがします。接地性が良いのに操舵力が軽いのは、全くちぐはぐであると思います。
サスペンション
このサスペンションは絶妙な乗り心地です。柔らかくしなやかです。バウンド時に底付きするかと思えるようなところがありましたが、底付きせずにいなしました。歩道を越えるときの段差も、柔らかくいなします。他のメーカーで言うと、現行のキューブに近い感じがします。ストロークがそれほどあるような感じはしないのにこの乗り心地を実現したのは、やや柔らかいスプリングに、やや固めの、しかもよく動くショックアブソーバーを組んだことによるものではないかと推察します。
ちょっと心配なのは、
キューブ同様、サスペンションが柔らかいがゆえに「曲がり続けるような道
」では、コーナー中盤以降で結構ロールするのではないか、ということです。この車は結構屋根が高いので、重いものが頭のうえにあるわけですから、この点がかなり心配です。ご家族に車酔いをする人がいらっしゃる場合は、必ずステアリングを90度以上切り続けるようなコーナーでのロール具合を確かめましょう。
ブレーキ
最近の車では、ブレーキアシスト機能を備えつつ自然なブレーキフィーリングを持つものが増えていますが、この車に関して言えばまあ普通程度です。ゴルフのブレーキよりはかなり「まし」ですが、トヨタや日産の車、そして
プレマシーのものに比べると、ちょっと旧いかな?
ボデー
このボデーはすばらしいです。旧型スイフトではねじれ剛性が低く感じられ、
パレットでは「新車か?」と思ったものですが、
現行ワゴンRでは全くその気配が感じられなくなり、そしてこの車はミシリとも感じなければ、空間の形状が変わる感じも全くありません。塊感が強いなあ!ボデーが大きくなりながら車重を軽くしているそうなので、高張力鋼板を拡大採用したのかもしれません。
内装は高級感を増しました。特に目を引くのがエアコンパネルとメーターないインフォメーション部です。ここしばらくの車が「黒い液晶表示とバックライト」で見せていたのに対し、90年代の日産車のように電光掲示(?)で見せています。色も涼しげでうるささを感じません。ワゴンRスティグレーなどのテイストが生きています。どちらかというと男性を意識しているのかもしれませんが、女性はどう思うでしょう?聞いてみたいです。まあ、
パッソを選ぶような女の子女の子した子は全く興味を示さないでしょう。
ただし、どうもウエストラインが高いようで、特に前方視界が今一つのように感じました。ダッシュボードが高くそびえ、前方が見えにくくなっています。
まとめ
この車、目指しているのは「ゴルフ」です。初代から結構評判が高く、今回は前回以上に力が入ったモデルチェンジです。特にボデーとサスペンションのよさは特筆ものです。しかし、ステアリングの感触はひどいと思います。ステアリングホイールは曲がるためのハンドルではなく、路面と対話できる唯一の部分であり、ここが情報を伝えないと安心して車の速度を上げられません。同じ車速でも運転席だと安心するのに、その他の席だとなんとなく不安なのは、その情報がないからです。このステアリング仕様を決定したエンジニア、出て来い!と言いたくなるほどです。(ゴルフについても同様に思います。)
電動パワステでも、トヨタはもちろん日産やホンダなどはかなり油圧パワーステアリングに近い感じを出してきています。運転手が操作する部品なのですから、もう少しお金を掛けてください。
車全体のイメージとしては、普通のコンパクトカーから、旧型以上に若々しさが出てきて、「活発で元気な男の子、女の子の車」という感じがします。そうねえ、AAAの西島何とか君や、同じAAAの宇野実彩子という感じかな?でも、デミオよりはやや男性よりですかね?ノートからファミリー色をさらに取った感じとも言います。なかなか好ましい雰囲気の車だと思います。後にスイフトスポーツが出てくるので、そちらを待っている人も多いのでしょうが、妙に「走り」感あふれるスポーツよりも、外観が大人しめでスポーツと同様のエンジンを積んだ「スイフトSR(もしくはSL、GSL)」といった雰囲気を待っている人もいます。
結論として、買っても反対はしない車ですが、イメージほどは人車一体感は味わえない操作感なので、同時にデミオも試乗することをお勧めします。
Posted at 2010/09/28 01:42:38 | |
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