
この日は、会社の人3人と連れだって、ドライブに行きました。車は色々議論を重ねた結果、前回の時に借りるはずだった マツダ CX5 のディーゼルエンジン搭載車にしました。私は続けて同じメーカーの車に乗るのは気が引けたのですが、複数名で行く以上、私だけの意見では進められません。
CX5は、
ガソリン車と
ディーゼル車の試乗、そして
ガソリン車はロングドライブを実施しています。
エンジン
言わずと知れ、メディアなどでも大絶賛されているスカイアクティブディーゼルエンジンSH-VPTSエンジンです。燃料噴射方式はコモンレールで、1行程あたり最大9回の噴射を行うそうです。ターボチャージャーは、小型と大型とを備えた、シーケンシャルツインターボです。
このスカイアクティブディーゼルエンジンの技術上の特徴は、尿素水を噴射することなく、DPFと酸化触媒装置のみで長期ディーゼル規制をクリアしていること、圧縮比14:1でディーゼル機関を実現していることです。
発車をする時には、後述するトランスミッションの都合もあり、意外に鈍い「転がり出し」になります。ターボチャージャーエンジンゆえ、ターボチャージャーが十分に回り始めない期間ではないかと思われます。1500回転を超えると過吸が始まり、パワーが急上昇します。そして4000回転程度まで十分以上のパワーが発揮されます。4000回転以上の領域ではやや回転の上がりが鈍り、5000回転まで回転数を上げることが可能です。
この辺りのことは、試乗の際の印象のままです。
しかし、実際に何度も加速を繰り返すと、1500回転までの鈍さが痛痒に感じられます。絶対的なパワーは出ているのかもしれませんが、その後の1500回転以上でのパワーとの違いが大きいため、取り扱いを難しくしています。早く1500回転以上の領域に到達したいと思ってアクセルペダルを大きく踏めば踏むほど、1500回転での出力増大の「加速度変化」が大きすぎ、乗員の首がのけぞります。
1500回転以上での加速は力強く、ガソリン自然吸気の3000-3500ccエンジン程度の印象です。42.8kg・mの最大トルクは、おそらく出ているとは思うのですがピークのトルク値であるため、均すと額面ほどではないような印象です。もっとも、エンジンのトルクがそのまま車輪に伝わるだけではなく、最終減速比が影響することもその一因でしょう。
不思議なことに、加速をしていく際の1500回転未満領域と、一定速度で走っている時や負荷がかかってエンジンが踏ん張る時の印象は異なります。加速は上記の通りに鈍いと書きましたが、不可には強いようです。いわゆる「粘り」がある印象で、高いギヤのままゆるゆると回り続けます。スカイアクティブといえどディーゼルエンジンは回転部分の重量が大きいため、加速が遅くなるものと考えられます。一方で、スロットルバルブがないことからエンジンのポンピングロスが小さいこと、燃料を多く噴射すればエンジンは力を増すことから、粘りがあるのでしょう。
これは昔の噴射ポンプも同じで、「オールスピードガバナー」装置の効果でこの動作を自動的に実行していました。すなわち、同じアクセルペダル開度のまま負荷が増してエンジンの回転数が下がろうとすると、自動的に燃料噴射量が多くなり、エンジンが力を増します。「低速トルクが大きい」という状態が、実は自動的に燃料噴射量が増大し、ガソリンエンジンで言うところのスロットルバルブを大きく開いた状態になるわけです。当然、自動で燃料が増やされているため、運転士がアクセルペダルをより大きく踏んだとしても燃料の増量幅がもうないため、エンジンの力は思ったより増しません。
まとめると、アクセルペダル操作量とは無関係に、「神の見えざる手(=自動的な燃料増量)」が作用してエンジンが回っている様子が、特にこのエンジンでは強く感じられます。CX5のガソリンエンジンでは、当然ながらそのような印象はなく、エクストレイルのディーゼルエンジンATでもありませんでした。それに、ダイレクトにエンジンと車輪が連結される、
MTですらそんな印象はありませんでした。
すなわち、アクセルペダル操作量に応じてエンジンの出力が増す印象に乏しく、リニアなドライブフィールが得られません。運転しづらい印象ばかりが目立ち、力があることはあるのですが、制御しづらい印象でした。
騒音と振動は、ガソリンエンジンと比較してかなり大きめです。音はガラスを透過してくるのではなく、床下から聞こえてくる印象です。振動もフロアパネルから伝わってきます。ディーゼルエンジン車にしては静かですが、ガソリンエンジンと比較するとかなり大きいです。運転期間中、この騒音と振動はかなり気になってしまいました。最近のガソリンエンジンはかなり静かになっておりますので、差が激しいです。私のコロナは昔の車ですので今の車よりも騒音、振動は大きめですが、それ以上のものです。
振動は、内臓や脳、眼球を震わせる印象で、気になって気になって仕方がありませんでした。
アイドルストップは、アイドルストップ車がいろいろ発売される中では、むしろあまり積極的に止めない方になってしまいました。停車時になめらかに減速し、そのままのブレーキペダル踏み加減ではエンジンは止まらず、意識してペダルを深く踏まないとエンジンは止まりません。
再始動は0.4秒で行われます。ブレーキペダルから足を離し、アクセルペダルに踏み変える間に行われます。ガソリンエンジンは0.35秒で始動されますが、この0.05秒の差はかなり大きいです。0.05秒といえば、宇宙刑事ギャバンが蒸着するのに要する時間です。実車では、ガソリンエンジンのものでは「余裕を持って間に合う」、ディーゼルエンジンでは、「なんとか間に合う」印象です。
意地悪試験で急いで踏み変えを実施すると、エンジン始動前にアクセルペダルが踏み込まれ、加速が遅れて急発進することになります。実使用では、エンジンの始動とクリープ開始はさほど遅れず、何ら不都合はありません。
トランスミッション
こちらもガソリンエンジンと同様の、スカイアクティブATが採用されています。トルクコンバーターをほぼ流体クラッチとして使うのみに留め、発車後すぐにロックアップをして直結状態にしています。一般のATでは、発車時にトルクコンバーターが滑った上で内部で変速をする「トルク増大作用」が働きます。この作用は、言わば自動の無段階変速機として機能するため、「滑り」と感じさせるのです。これが「ダイレクトなドライブフィーリング」を削いでいます。ただし、ターボチャージャー付きエンジンでは、負荷の大小とは無関係にエンジンの回転数を上げることが可能であるため、素早く過給領域に到達させることができます。
エクストレイルは普通のATを採用しているため、この作用が働いて低回転域での鈍さがなくなっています。もっとも、
MTでも鈍さはあまり感じられませんでした。
変速は、ガソリンエンジン以上に高いギヤを保とうとしていて、アクセルペダルを踏み増したり、上り坂に差し掛かってエンジンの負荷が増大しても、なるべくシフトダウンをさせないようにしています。せっかくダイレクトドライブフィーリングが可能なATでありながら、エンジンの反応が鈍い領域を使わせてダイレクトなドライブフィーリングが感じられない、という自己矛盾を抱えてしまっています。
排気系にDPFを装着しているため、これは最近のディーゼルエンジン車に共通する特徴として、エンジンの回転数が1500回転以下に下がることを禁止しています。排気温度を下げないようにすることが目的ですが、空いた道を走っていると、もう一段シフトアップしたい気分になります。まあ、仕方がありませんね。
サスペンション
ガソリンエンジンと仕様が共通かどうかは不明ですが、こちらも印象が異なります。ガソリンエンジンではコーナーリング時にフロントが踏ん張る(突っ張る)印象と書きました。こちらはロールスピードは遅いままのであるもの、ロールはコーナーの頂点を超えてステアリング操作角度がその時の最大量に達してもまだ深まり、だらだらと続く印象になっています。
コーナーでのロール角も大きいようで、前席での印象は「柔らかいかな?」程度ですが、後席では乗員が左右に移動してしまうほどです。特にコーナーの内側にいる人は、外側の人にもたれかかってしまうほどです。ターンイン時は前輪のコーナー内側が押し縮められて後輪内側が持ち上げられ、脱出時は前輪外側と後輪内側とを結ぶ軸を中心に、ゼンリン内側が持ち上がり、後輪外側が押し下げられる印象です。
直線を走っている時も、ピッチングのような、また、バネ下でホイールがドタバタと振動するような揺れが続きます。気になってトンネル内でヘッドライトの光軸と車両の揺れの位相差を見てみたのですが、全くバラバラに振動しています。
なんとこの振動のために、乗員4人中、3人が乗り物酔いを起こしてしまいました。しかも、私ともう一人は運転中に酔ってしまうという非常事態が発生しました。前回は誰ひとり酔わなかったので、ディーゼルエンジン車の問題であると思います。
この振動の原因はサスペンションにもあるとは思いますが、どうも別の原因もありそうです。サスペンション自体は決して柔らかいものではなく、ふわふわしません。サスペンション系とは全く異なる振動があるようです。これは想像なのですが、車体の揺れに伴い、シャシーにゴムブッシュを介して連結されているサブフレーム、そしてサブフレームにやはりゴムブッシュを介して連結されているエンジン、トランスミッションがそれぞれの周期で振動することにより、車体が複雑な周期で上下揺れをしている印象でした。
そのため、運転をしていても路面の感覚がうまく使わってこず、空中浮揚をしている印象でした。運転を初めてすぐに感じられます。眼球が車体の揺れとは全く別に揺れるため、運転を始めてすぐにめまいから始まります。
酔った者は、生あくび、冷や汗、吐き気までの症状にとどまりましたが、乗り物酔いをしない物ばかりなので、乗り物酔いをする人は直ぐに参ってしまうことでしょう。
今回借りた車は、2WDの17インチタイヤ仕様です。同じ仕様のガソリンエンジン車と比較し、約90kg程重くなっています。この重量が前輪だけに載っていることでしょうから、操縦性や乗り心地には大きく影響すると考えられます。
カタログを見ると、19インチタイヤ仕様はディーゼルエンジン車のみに設定されています。これまでは漠然と、「ディーゼルエンジンの方を高級仕様としたいんだろう」と思っていたのですが、もしかしたらこの振動を軽減したり、コーナーでのだらだらとしたロール(タイヤのよれ?)を防いだりするためのものではないかと考えられます。
ブレーキ
基本的なブレーキはガソリンエンジンと同様のはずです。しかし、若干ペダルタッチがしっかり、ないしは重く感じられます。ディーゼルエンジンにはスロットルバルブがないため、ブレーキ用バキュームサーボの作動源を、専用バキュームポンプで作っています。従って、ガソリンエンジンとはバキュームの量が異なるかもしれませんから、この違いを感じたのでしょう。
ステアリング
サスペンションのところで述べたように、コーナーの頂点を過ぎてからの鈍い流れ出しがあることから、タイヤのヨレは大きいと感じられます。コーナー進入時のステアリングレスポンスも若干鈍く、
ガソリンエンジン車とはかなり印象が異なります。フロント荷重も大きいことから、アンダーステア傾向を強く感じるのでした。
それ以外の、遊びなどの量は適当です。レスポンスは上記の通り元々鋭くありませんが、緊張感なく運転することが可能です。
ボデー
ガソリンエンジン車と変わりません。前述の振動、コーナーでのロールは、軽量化した車体もその一因でしょう。ボデー骨格が軽いため、相対的にエンジンが重くなります。
CR-Zは、エンジンの重量はやや増、ボデー後部にバッテリーを積んだことから前後バランスが良くなるという利点がありましたが、この車はその反対、重量配分が悪化している印象でした。
重量配分は車の操縦性に対してサスペンション並みに重要で、地上高や全高がそれほど低いわけでもない
日産リーフは、路面に吸い付いたようなコーナーリングや乗り心地になっています。車重を軽減することは大切ですが、何もかも軽くしてしまうことは操縦性にも乗り心地にも悪影響を及ぼすのではないでしょうか?
それ以外の、内装などの印象はガソリンエンジンのままです。
まとめ
スカイアクティブ技術シリーズは、エンジン、トランスミッション、シャシー、それぞれであると言われています。ところが、それぞれの連携が良くないと感じられました。エンジンとATの関係であったり、エンジントランスミッションと車体との関係がそれです。
ガソリンエンジン車では、私自身がSUV車体を好まない程度の問題で済み、それ以外はダイレクトな操縦感覚を楽しむことができました。しかし、ディーゼルエンジン車では一気に問題が出てしまった印象です。各個の技術は優れているのに、まとまりが悪い、そんなところです。
アクセルペダル操作量と出力の増減は好みの問題かもしれません。私は出力自体は小さくとも、運転士の意志に忠実に車が反応すると「気持ち良い」と感じるため、絶対的な出力の大小を問いません。運転とは、そもそも馬術と同様、操縦感覚を味わう行為だと思います。
ディーゼルエンジンは、確かに独特な急加速を楽しめますが、おそらく飽きてしまうでしょう。仲間内で話題になるようなインパクトには欠けますが、リニアでダイレクトで操縦性も良くて乗り心地も良い、ガソリンエンジン仕様車をお勧めします。ディーゼルエンジン車は、まったく勧められません。
乗り物酔いを起こしてしまったため、かなり厳しい評価となりました。私は医学の専門家でもなく、車体設計の専門家でもありませんが、どうかこのブログを参考にして(?)、メーカーの方には改善をして欲しいものです。
私の感覚では、ブレーキング時のピッチングも大きくなっているため、フロントのサスペンションスプリングをより硬いものにすることで、この症状を和らげることができると思います。
今回の走行は、391kmを走行し、26.75リットルを消費しました。燃費は、14.62km/リットルとなります。
おまけ
ここのところ、勤務地が変わったために「既に試乗した車両についてもロングドライブを行う」ことが続いています。しかし、短時間ドライブと印象が違うことは全くありませんね。
追記
某所でリンクにして話題にしている人がいるようなので、少々追記をします。
私や同乗者が酔った時の運転士について
アクセルペダルの動きを見ることはできませんからねえ~。コーナーでのステアリング操作を見ると、割と「急」が付く運転に近いように感じました。しかし、ガソリンエンジン車の時には誰も酔わなかったので、これは車の違いではないか、と思います。
私やもう一人が運転中に酔ったことについて
もう一人の人の原因はわかりません。私が酔いを感じたとき、外の景色が車の揺れとは無関係に縦揺れを起こしてしまいましてね。目が回るかと思いました。ちょうど眼球だけ地震のP波が来ているような感じです。何かの揺れに共振しているのか、と思ってしまいました。
私のアクセルペダル操作について
いわゆる「ふわっとアクセル」は、充分身についています。しかも、所有している車はワイヤースロットルエンジン車ばかりですよ。
1500回転の境目について
定速走行中は1500回転以下にさせない、と書いていますよ。従って、発進時やゆるゆる運転時のことです。どうやったって、1500回転をまたぐでしょう。
もちろん、過給のかかりを予測してアクセルペダルを一時固定にしていれば、過給が始まってからの急加速は抑えられますよ。でも、それを発車の度にするのでは、疲れますよね。
あと、「この領域でも38kg・mのトルクが出ているはず」などと言っている方がいるようですが、あれはシャシーダイナモの車体を載せ、アクセルペダルを全開にしてダイナモ負荷とエンジントルクが釣り合った点を結んでいるものです。パーシャルスロットルで38kg・mも出ませんよ。
ついでに言うと、雑誌などの記事の「この車は○○回転から△△回転までフラットなトルクが」などとカタログのトルク値を出している人がいますが、これも全開の時のお話です。パーシャルスロットルでもアクセルペダル開度が同じならトルクはフラットである可能性は高いですが、最大トルクとパーシャルスロットルでのトルクを混同してはいけません。
トルクがフラットなので、アクセルペダルを踏みました時のトルクの出方が線形になり、運転しやすい、となるのです。すなわち急激にトルクが立ち上がる特性だと、アクセルペダルを固定していてもトルクが回転の上昇に従って勝手に増大するので、運転しづらくなるのです。
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アクセラを大阪で試乗
アクセラを埼玉で試乗
アクセラ前期型第一回目の試乗
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ヴァンガード試乗
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