
事情があり、ここ最近各自動車メーカーの「衝突被害軽減装置」、いわゆるアイサイトに代表される自動ブレーキ装置について調べております。その中でも、ここ最近続く老人が運転する自動車の暴走事故にも触れなければならず、色々調べておりました。
すると、2016年11月の二週目は、それこそ毎日のように老人が暴走し、あちこちで人が亡くなっていたのでした。車両を調べると、軽自動車、ハイブリッド自動車、そして15年以上前の少し古い4ドアセダンが老人側の車であるようです。軽自動車、ハイブリッド自動車は、「年金しか収入がないから、少しでも維持費が安い車に。」ということが読み取れますし、古い4ドアセダンは、「年金生活になると収入が減るから、退職金で少し良い車を購入し、大事にしよう。」という意気込みが読み取れます。
いくつかある事故の中でも、白いトヨタ プレミオが目立った、栃木県内の病院で発生した事故を覚えていますでしょうか?駐車場の精算機に手が届かず、誤ってアクセルペダルを踏んでしまい車が急発進、歩行帯にいた人をそのままはねて死なせてしまった事故です。「年寄りは運転するな」というのは簡単なことです。また、事故後の第一報では、その程度しか読み取れないものです。
最近、朝日新聞では交通事故を起こした人、交通事故の被害者の方のその後を追う企画記事が連載されていました。この事故も取り上げられ、加害者の男性やその周囲のことも掲載されていました。
男性は下半身がやや不自由で、公共交通機関での通院は難しく、車で通っていたそうです。この病院から約30km南下した地域に、一人で住んでいたそうです。奥様は既に亡くなられていているそうで、身の回りのことや車の維持も、しっかりされていたそうです。いわゆる、少し古いセダンにありがちな「維持管理放置」状態ではない模様です。50歳代前半のお子さんは都内に住んでいて、週末にはこの男性の家まで帰り、色々面倒を見ていたとのことです。ちなみに、男性が住んでいる市は通勤圏の外縁であり、都心への通勤は可能です。事故後男性は後悔の気持ちでいっぱいで、自殺も考えたとのことです。
この記事を見て、私の心の中には「小此木啓吾」、「モラトリアム」、「昭和60年代初め」という言葉が去来するのでした。
時に平成元年、私のクラスの現代文の先生は、事あるごとに当時の評論家(注.自動車評論家ではない、人文、社会系評論家で、多くが大学教授や作家)の言葉を紹介していました。
「え~、小此木啓吾さん、現代の知識人です。彼が言うには~」
という枕詞は、今でも思い出せます。
この小此木啓吾さんという方、精神科医であり、精神研究分野では第一人者だったようです。1930年生まれで、2003年に亡くなられています。この頃の若者に対していろいろな評論文を出しており、大学を留年し続けていつまでも働かない学生などをして、「モラトリアム」や「ピーターパン症候群」などの言葉で評価していました。
当時の少し前、昭和50年代半ば大学生をみると、まだまだやや裕福な家庭の子供、それも男性が中心でした。シーズンスポーツ系サークルがもてはやされ、アルコール類の一気飲みで亡くなる学生もいた頃です。既にアニメのブームは昭和50年代前半から起こっており、ガンプラを山のように購入する大学生もいました。アイドルに夢中になる人もいたようです。大学レジャーランド現象です。この写真は、昭和57年頃の若者の姿です。
なお、最近の新聞の社長交代記事を見ると、昭和50年代後半に会社に入った人が多く、まさにこの世代です。おそらく、小此木氏自身の戦争直後の経験と、そのときの学生の不甲斐なさを嘆きながら書いたのでしょう。まあ、昭和50年頃でも、「男性が趣味を持つのは幼稚な証拠」とされていましたので、当然といえば当然です。
小此木氏の論調は、それらの学生はもちろん、農家や漁師、自営業の家の子供が、年を取っても親と同居することをして、「日本の男性は一生親離れ、親は子離れをしない。欧米では18歳になったら家を出て…」などとするものでした。
実際に農業漁業直営業に携わった方なら、聞くだけで腹が立つ論調だと思います。私も、その先生が都内在住だったこともあり、「お金を払えば食べ物も自動で手に入るし、ゴミもゴミ置き場に置いておけば誰かが持っていくような考えだね。」と、訝しく思ったものです。
再び、暴走した方の家庭に視点を戻します。50歳代前半といえば、まさにこの「モラトリアム論」、「ピーターパンシンドローム論」真っ盛りのころに大学生だったことでしょう。実際にも、この論の後にアパートが空き地に乱立するようになりました。
小此木さんが言う通り、親と別居しました。親が年を取っても別居です。親が年をとっても足が不自由になっても、「子供の独立」が大切なのですから、同居しません。親が病院へ通っている時に事故を起こして人を死なせた?親子独立しているから関係ありません。
で、良いのでしょうかね?
この他にも、「まだ二十歳そこそこで結婚、対して大人になっていないのに子育て、いわゆる「DQN」が再生産、子どものままの大人も垂れ流し。」問題、1995年頃の「子供がお年寄りに、「汚い、臭い」などの罵声を浴びせる問題」、老人の孤独死や農林水産業の衰退、地方経済の衰退など、色々問題があります。これでもモラトリアム?ピーターパン?
小此木啓吾さんは、最初に書いたように精神科が専門であり、社会や経済、交通についてはただの素人です。精神分析学の第一人者であることは認めるのですが、今回起こったことぐらいは予想して欲しいものです。そんなことから、特定分野のプロだからといって、他の分野が関わらないことは皆無ですから、ある論の分野外の人も積極的に批判をしなければならない、と私は考えるのです。
Posted at 2017/03/12 19:58:33 | |
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