
昨日の18日。
須坂から旧太子駅を訪れ、帰路に立ち寄ったのがこちら「伊勢崎 丸長」さんです。「丸長のれん会」の加盟店の大半は東京、埼玉、神奈川、千葉にあります。例外は僅か、信州中野とつくば、名古屋の丸和さんグループ、そしてこちら伊勢崎です。
玄関です。
右奥に店内に入る自動ドアが。
消毒液で手を揉んでから入りました。
「いらっしゃいませー!」
一人、カウンターに案内されました。
結構な大箱。6、7人が座れるカウンターの他、複数の4人掛けのテーブル席、それにお座敷がありました。
時刻は13時20分。お昼のピークを過ぎていましたが、まだ賑わっていました。
メニューです。
何しろラインナップの量に圧倒されました。
所謂「丸長のれん会」の加盟店の大半はラーメン専業。こういう「中華料理店」としての位置づけのお店は殆どありません。
この背景には先代、宮入保さんの血の滲むような努力が存在します。
「丸長」のルーツは、敗戦後長野県出身の5人の蕎麦職人が、共同経営という形で荻窪に「丸長」ののれんを掲げたこと。ここから「丸信」、「栄楽」、「大勝軒」、「栄龍軒」などが独立します。
保さんは長野県は上条のご出身。阿佐ヶ谷の「栄楽」で修業に入り、ここで同郷の湯本嘉治さんと知り合います。二人は大変に「ウマが合った」そうで、栄楽から共に独立、「荏原丸長」を開店します。その後も移転なのか新たな出店なのかはわかりませんが、「宿河原丸長」を一緒に立ち上げます。その後、保さんは「淵野辺丸長」を立ち上げますが、このタイミングで湯本さんは引退を決断、故郷へ帰りました。
実は荏原から宿河原に移る準備期間の間、保さんは1年間、自由ヶ丘の「南国飯店」で修業、ラーメンに止まらぬ幅広い中華料理の会得に励まれたそうです。これは現二代目店主の博志さんがまだ幼かった時で、子供を抱えて考えた結論だったとか。
淵野辺のお店を畳んで伊勢崎へ移転したきっかけは、親戚がいらっしゃったからとか。保さんは当時54歳。東京や神奈川と違い、今もローカルな立地。終の棲家となるに違わぬ見知らぬ地へ片道切符で赴き、自宅兼店舗の大箱を構えました。
「清水の舞台」。
子供さんを抱え、不退転の決断だったに違いありません。
まさしく「人に歴史あり」の実例!
ボクは、例えば日経の「私の履歴書」のような、人物の人生を紹介する連載が好きですが、その大半は「有名人」。名もなき庶民の一人として、保さんの人生には、大変感動しました。
この時に役立ったのが、南国飯店での「中華修業」!
至近には、箱根駅伝で知られる「上武大学」のキャンパス。体育会の学生に南国飯店で培った腕を振る舞うと、果たして「大ウケ」!これで経営のベクトルが定まりました。ちなみに、「裏メニュー」として「上武丼」なるものがあるとか。物凄い大盛り、「シェア」、「ギブアップ前提」はだめとか…。
「怖いもの見たさ」で、チョットダケ、ミテミタイナァ…。
山岸さんも終生名を連ねた「丸長のれん会」の会員証が、誇らしげに存在しました。そう、こちらは「伊勢崎の中華屋さん」ですが、正真正銘の「丸長」!二代目の博志さん、保さんの生き方をきちんと受け継いでいらっしゃいます。
カウンター席でメニューを見ていました。
あまりにもラインナップが多く、「つけそば」が見つかりません。
やっと確認したのが「和風つけめん」。
こちらでは「つけそば」ではありません。
カウンターの中で中華鍋を振るっているいるご主人が、盛んにボクに目配せします。これは坂戸店の二代目と「ソックリ」!合ったタイミングで「和風つけめん、トッピングに茹で玉子と海苔」をお願いしました。二代目、マスクで目元しか見えませんでしたが、一瞬、緩みました。
「おまちどうさまでしたー!」
20代と思われる女性、ひょっとしたら二代目の娘さんかも知れませんが、丁寧に置いて下さいました。
お盆に一杯!
この季節のサービスなのか、スイカの一切れが嬉しい!
箸立てから抜くと、こんな「袋」が!
…まだ食べていないのに、口元が緩みました。
「いただきまーす!」
麺は中細、ウェーブはさほどなく、ストレートに近いもの。
所謂、普通の中華麺を茹で、流水で締めた食感でした。
個人的な感想ですが、「太目の素麺」的。
スープは一口含んで「ウマーーーっ!」
「甘さと塩が40対40、10が酸、残り10が辛」という印象。
デフォルトで一口飲みましたが、全ての味が大変に濃く、悪魔的な「おいしさ」でした。このスープに麺を浸して啜ると絡みが絶妙!!
丸長も東池袋大勝軒も、加盟店が全て同じ味てはなく、独自の裁量を委ねられている部分があります。こちらは「ホントウにおいしい!」
トッピングの茹で玉子を箸で割り、最後に食べました。
「ウマーーーーーっっ(笑)!」
おそらく250gほどと思いました。
難なく食べ終えました。
「丸長」さんは、荻窪本店、目白、坂戸、須坂で食べました。
ボクは「自分が食べておいしかったお店」だけをご紹介しておりますので、どちらも素晴らしい!その中でも、ボクの嗜好にピンポイントでした。
食べ終えて、手を動かしているご主人に、
「こちそうさまでしたー。こちらは初めてですが、ホント「丸長」の味でした!」
と言いました。30秒程度でしたが、「丸長噺」をし、マスク越に一緒に笑いました。
お会計の時。
カウンターにある物を認めました。
「ご主人、これ、分けて戴けませんか?」
「それ、売り物ではないんです…」
鍋を振るっていらっしゃったので、そのまま出て車に乗ろうとした時。
ご主人が勝手口から小走りで来られ、ボクに何かを握らせてくれました。
「お持ちになって下さい」
帰宅して、取り出しました。
…一見の客に、こんな大切なものを託して下さいました。
こちらは、お支払いしました。
お店で食べる際にも使いましたが、「丸長のれん会」の店舗限定で販売されている、つけ麺用のオリジナル七味です。丸長のルーツ、長野県長野市は善光寺前にある七味唐辛子の有名店、『八幡屋礒五郎』とのコラボ商品です。お値段は780円でした。
「お箸」!
とってもステキな光景!
ご主人、有難うございました。
ちょっと距離はありますが、必ず伺います!
伊勢崎 丸長
群馬県伊勢崎市福島738-2
0270-32-8174
11:00-14:30 / 17:00-22:00
水曜休