![所沢大勝軒(埼玉県所沢市)vol.1 所沢大勝軒(埼玉県所沢市)vol.1](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/042/869/924/42869924/p1m.jpg?ct=cc38ab84711b)
先月まで毎週土曜日、左耳難聴の治療で長野県須坂市の鍼灸院に通いましたが、かなり聴力が回復しました。先月の検査結果から、月に1回の通院となりました。
という訳で、土曜日は有効に過ごすことが可能になりました。
昨日は所沢に所用があり、午前中に済ませました。
丁度お昼時。久し振りに「所沢大勝軒」に伺いたくなりました。
今の会社に転職するまでは足しげく通ったものですが、この8年間は数えるほどになっていました。
こちらは11時の開店。
伺ったのは昼食のピークを過ぎた12時45分でしたが、ご覧のようにまだ行列があります。最後尾に並ぶと、丁度厨房の外。麺茹でと出汁の芳香に、一段とお腹か空きます。
40年前。
大学生だったボクは酒をたしなむようになり、呑んだ後にラーメンを食べることが多く、そのおいしさに憑りつかれました。当時から評判だったのが「東池袋大勝軒」。かの有名な山岸一雄さんのお店で、サンシャイン至近の、ちょっとひなびたロケーションにありました。
初めて伺った時のこと。
学校のラーメン好きの友人から「あそこ、早く行かないと2時間待つこともあるヨ!」と聞かされていたので10時に着くように行きました。すると既に大行列が!当時は携帯電話などなく、皆さん新聞や雑誌、本を読みながら黙って待っていました。11時に開店、徐々に列が前に進みました。狭苦しいお店にやっと入れたのは12時半。「もりそば」を頼みましたが、甘さと辛さ、酸味に按分されたスープに、少し柔らか目に茹でられたモッチリ麺がおいしく、一度で嵌ってしまいました。
以降、大学が飯田橋でしたので、週に一度は定期券で東池袋で途中下車したものです。そのうちに、訪れる度に先頭から5番目以内に、いつも同じ中年のサラリーマン風の男性が並んでいることに気づきました。あの人、どんな仕事なのだろうか、会社をクビにならないのかなぁ、などと、余計なことまで考えてしまいました。
就職して地方の営業所に配属された時、最も残念だったのは山岸さんの「もりそば」を食べるチャンスがなくなったことでした。
そんな「名店」でしたが、山岸さんは2015年にご逝去されました。
東池袋で修業されたお弟子さんは大変多く、日本全国に「暖簾分け」のお店が存在します。
ですが…。
屋号を引き継いではいても、まるで山岸さんの味とは異なるお店が多いのは、残念かつ悲しい現実です。ボクも「あの味」を求めてあちこちで食べましたが、スープに麺を潜らせ一口啜っただけで出たお店もありました。
加えて跡目争いとも言える「お家騒動」。現東池袋大勝軒の店主が主導する「大勝軒のれん会」の方針に反発したお弟子さんが、「大勝軒味と心を守る会」を立ち上げて脱退し、下世話な話題となりました。
ボクが現在勤めているのは、食品業界とされるものの会社の一つです。
あくまでボクのマインドに過ぎませんが、「食」とはエンターティメントの一つ。お客様に喜んで戴けることこそが第一義。それを忘れて跡目争いが続いている現状を、山岸さんは草葉の陰で溜息をつかれているように思います。
閑話休題。
列が進み、自販機の前に到着しました。
大勝軒の最大の特徴は量の多さ!小食のボクには「並」ですら困難なボリュームです。もり(小)680円、ゆで玉子50円、ねぎ80円の食券を購入しました。
ちなみに、チャーシュー関連のメニューは売り切れになっていました。これらを食べるには、早くに行く必要がありそうです。
店内は厨房を囲む逆L字型のカウンターと、背後の壁を向いて座るカウンターだけ。テーブルや座敷席はありません。お客さんは揃って、黙々と食べています。
こんな張り紙が。
これには訳があります。
こちらのお店、開店当初は背後のカウンター席はなく、テーブル席でした。ところが赤ちゃんや幼い子供さんを連れた「ママ友」がテーブル席を占拠し、ママさんたちの分だけをオーダーし、子供に分けて食べさせる行為が頻発していたのです。おまけに彼女たち、一般のお客さんが長蛇の列で待っているのに、そんなことには全く無頓着。毎日のように現れてはペチャクチャと長話を繰り広げたのでした。これでは、お店はたまったものではありません。ある日久し振りに訪れると、テーブルが撤去されてカウンターとなり、この張り紙が掲示されていました。
「お待ちどうさまでした!」
品がよく丁寧な物腰の女性が持って来てくれました。
もり(小)、ネギとゆで玉子のトッピング、計810円です。
スープです。
「甘・辛・酸」の三拍子は、山岸さん流を正確に受け継ぐ、あの伝統の味です。一口含んだだけで、あの若かりし頃に夢中になった、狭く一方通行だった東池袋のお店が蘇りました。厨房に立つのは痩身の30代とおぼしきご主人ですが、恰幅が良くお客さんに優しかった山岸さんの笑顔が重なります。
ボクはこちらでは、必ずトッピングにねぎをお願いします。甘・辛・酸のスープに、シャキシャキとしたねぎの辛味がピッタリで、絶対に欠かせません。
麺は小でお願いしました。
それでもこの量。一般的なお店の並とほぼ同じです。
茹で加減はいつも「かため」でお願いしています。
テーブルの味変グッズ。
ボクはねぎの辛味とスープの相性が好みなので、使いません。
デフォルトでゆで玉子が半分入ります。
スープに沈めておくと適度に吸い、美味しく戴けます。これが好みで、ゆで玉子も毎回入れて戴きます。ちなみに味付け玉子100円もあります。
チャーシューは2枚。
厚みのあるものが2枚、おそらくもも肉と思います。ミッチリとした食感で、スープの味にこれまたピッタリです。
他に具はナルトとメンマが入ります。
という訳で完食しました。
スープも全部飲みたかったのですが、「高血圧気味」との健康診断結果が頭を過り、後ろ髪を引かれながら止めました。
こちらのご主人は、独立当初から「大勝軒のれん会」に加盟しておらず、当然と言えば当然ですが、お家騒動で反旗を翻した「大勝軒味と心を守る会」にも所属していません。きっと、「そんなことはどうでもいい、山岸さんの味を受け継ぎ、お客さんに喜んでもらうことが俺の仕事」と、最初から思っていらっしゃる気がします。ボクが知る限り、テレビや雑誌に出たことはありません。
ごちそうさまでした。
土曜日が使えるようになりましたので、近々また伺います。
所沢大勝軒
埼玉県所沢市緑町4-5-4
04-2926-9707
11時~15時30分(麺がなくなったら終了) 第1・3月曜日、日曜日休
【ボクのおすすめ度】(※味のランキングや評価ではありません)
★★★★★ + ★★★
★1つ追加は、正統な山岸さんの味を受け継いでいる点です。
山岸さんの東池袋大勝軒はお弟子さんが多く、店により味のバラツキが顕著で、残念なお店が珍しくありません。全てのお弟子さんのお店を食べた訳ではありませんが、ボクが食べたお店の中では、間違いなくピカイチです。
★2つ目の追加は、ご主人の仕事に対する姿勢。
「お家騒動」などどこ吹く風、「お客様あってこそのお店」との方針。
どんなに忙しくても、食べ終えたお客様が席を立つと「ありがとうございました」と仰ります。
★3つ目の追加は、個人的な好みですが、「甘・辛・酸」のスープとねぎの辛味の相性。これにボクは病みつきです。
往年の山岸さんの東池袋をご存じではない方にも、是非味わって戴きたいお店です。