先週10月2日の土曜日。
ひと月振りに難聴の治療で須坂市を往復しました。
その帰路、小諸市に立ち寄りました。目的は「うだつ」のある、旧小諸銀行の建物に入る骨董店。建築自体は大変素晴らしいもので、例の緑色のプレートも掲げられていました。ところが店内は陶磁器と着物が殆どで、極めて乱雑な陳列。旧い小皿、大皿につけられた値札は5ケタばかり…。陶磁器を蒐集する趣味がないボクには適正な価格なのか判断がつきませんでしたが、建築の秀逸さと店内の実態の乖離にすっかりシラけてしまい、直ぐに出てしまいました。
全くの「空振り」かと思いきや、初めて訪れた小諸市の街並みには旧い建築が多く遺されており、暫く市内で散歩を楽しみました。
そんな時でした。
突然、こんな素敵な建物の前に来ました。
左右非対称の意匠は、何処か洋風の趣。腰上の薄い黄土色のモルタルは、何となく中東を思わせるもの。おそらく寄棟と思われる屋根と玄関庇の上には、瓦が施されています。何とも不思議な「無国籍」風の佇まいですが、一目で引き寄せられてしまいました。
玄関扉は開け放たれ、何かの「幟」がはためいています。
重厚な木製扉に、面積の大きな曇り硝子が嵌め込まれています。
外柱との相性も良く、見事に調和しています。
扉の開放に、無骨にレキ岩が使われているのがお洒落。
「引く」の書体と赤い色。大時代的なデザインだなぁ…。
扉の裏にはこの表札が。
どうやら元歯科医院の様子。
左側に木の階段。
靴を脱いで揃えました。
右に、診察時間の案内が遺っていました。
数馬の分校を、直ぐに思い出しました。
たちまち、自分が知らない「嘗て」を想像するスイッチが入ります。
右に90度曲がって2階へ。
振り返ったところ。
左は、おそらく待合室。
畳敷きの和室ですが、木製の扉とガラス桟の配置と意匠に意表を突かれました。
擦り減った畳。
擦り減った長椅子。
擦り減った机…。
この、時間が紡いだ空間。
暫し美しさに圧倒され、呆然と佇んでしまいました。
机の上には、顕微鏡が。
角に、こんなキャプション…。
覗きましたが、老眼鏡を持っておらず、…見えませんデシタ!
次は「治療室」。
顔を歪めて患者が座り、全てを医師に委ねる椅子は撤去されていましたが、ここを通過した人々が立ち上がった時の笑顔が脳裏に浮かびました。…歯茎の癌で手術、退院時に笑みがこぼれた時のことを思い出しました。
「イタカッタ」もんなーーー………。
ここ「旧吉池歯科医院」で催されていたのは、『浅間国際フォトフェスティバル』。小諸市内の約10か所で、敢えて分散させ写真展を行っていたと、帰路に訪れた観光案内所で知りました。例えば、吉池歯科医院の至近、
「ほんまち町屋館」の切妻壁には、迫力に富む森山大道さんの作品が掲げられていました。11月21日まで行われているとのこと。
まさしく「瓢箪から駒」!
素直に「感動しました」!
旧吉池歯科医院
長野県小諸市大手2-3-4
※おそらく、常に公開されてはいないと思います。
御覧になる場合は、『浅間国際フォトフェスティバル』にご確認下さい。
Posted at 2021/10/09 16:19:06 | |
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旧き良き建築 | 日記