
先週日曜日、少しだけアナログレコートの整理をしましたら、こんなものが出て来ました。
山下達郎さんの2枚組ライブ盤「It's a poppin' time」。
ボクの長年の愛聴盤です。
丁度40年前。
浪人時代に暮らしていたのは、東横線学芸大学駅至近のボロアパート。当時から東横線沿線はハイソな街が多く存在しましたが、学芸大学駅は東口、西口から庶民的な商店街が延びていました。
2月下旬でした。
合格発表で受験番号を確認しましたが、大学周辺の公衆電話は長蛇の列。飯田橋駅まで歩いても同様でした。仕方なく学芸大学まで戻り、駅の公衆電話で親に合格を伝えました。
電話を切ると、「やっと浪人が終わった…」との実感が去来。自分へのご褒美を買おうと思い立ちました。
向かったのは西口を出て少し進んだ左側にあった、小さなレコード屋さん。「音楽堂」という屋号で、入口から正面のカウンターまで、幅1メートル、奥行き5メートルほどの通路を挟んだ両側に所謂「えさ箱」が置かれ、更に上は天井までレコード棚になっていました。おそらく、先代からの老舗ですが、当時は若い三兄弟が交代で店に立っていました。
ボクが探し出したのがこれでした。
高校三年生の時の発売。どうしても欲しかったのですが受験が目前、晴れて入学したら買おうと決めていました。
正面のカウンターに90分のカセットテープと一緒に持って行き、お金を払う時に、こうお願いしました。
「今日で浪人生活が終わったので、自分へのご褒美として買います。ですが、アパートにステレオはなくラジカセだけ。済みませんが、お金を払ったら置いて行くので、時間がある時にこのカセットテープに落として戴けませんか」
この時はご長男でした。
「それはおめでたい!」と、快諾して下さいました。
閑話休題。
このアルバムで、ボクが聴く曲は限定されています。
A面
2曲目 「雨の女王」
3曲目 「ピンク・シャドウ」
4曲目 「時よ」
B面
4曲目 「Candy」
D面
1曲目 「Solid Slider」
2曲目 「Circus Town」
ほぼ、上記です。
これらの曲では、女声3人のバックグラウンド・ヴォーカルがフューチャーされています。吉田美奈子さん、伊集加代子さん、尾形道子さん。3人の声が見事にハモり、まるで一つの楽器の如き存在感を放ちます。達郎さんの透き通った声の背後で3人の声が轟くと、大変にソウルフルな印象を放ちます。
吉田美奈子さんは、説明不用のポップス・シンガー。デビュー・アルバムで大滝詠一さん作曲の「夢で逢えたら」を歌いヒット。でも薦められたシングルカット拒み、アルバム・アーティストを目指したという逸話が残っています。当時の達郎さんのエンジニア・吉田保さんの実妹でもあり、自身による曲を幾つも提供、またスタジオでのレコーディングにも参加しています。上記でも「時よ」は作詞&作曲、「ピンク・シャドウ」を除く全てで作詞を担当しています。
残りの伊集加代子さん、尾形道子さんですが、このお二人を知る方は、かなりの音楽マニアのはず。いずれも男女2人ずつの混声コーラス・グループ「フォー・シンガーズ」のメンバー。解散後には女声3人によるコーラス・グループ「シンガーズ・スリー」として活躍しました。
中でも、特筆に値するのは伊集加代子さん。当時3オクターブの発声域を誇る歌唱力で、スタジオミュージシャンとして一説には2000曲以上に参加されたとか。また、アニメソング、CMソングでも「有名な作品」を歌っています。
例えば、
青い 青い空に バン ボ ボボン
弾むボールが 夢を描く
明日の太陽 バン ボ ボボン
サーブ レシーブ トス
ジャンプ スパイク アタック
6つのハートが
ひとつに 燃える
ボクの齢に近い方は、上の歌詞を読めば旋律が浮かぶかも…。
女の子向けバレーボール・スポ根アニメ「アタック ナンバーワン」のエンディング・テーマです。ただ、子供向けの平易なハ長調の曲を伊集さんが歌うと、学校の音楽の先生が「お手本」で歌っているみたいな印象でした。
それとは逆に、彼女のセクシー・ヴォイスの凄さを実感出来るのが、誰でも知っているこの曲。
ダバダーーバーダー ダバダー ダバダー
ダバーーダダーバー ダー ダバダー
ダバダー ダバダー ダー
そう、「ネスカフェ ゴールドブレンド」のCM曲!
この3人によるB.G.V.は、間違いなく当時最強でした。
グルーブ感に溢れ、一度聴いだけで、心を掴まれてしまいました。
上の曲はどれもスゴいのですが、ボクのお薦めは「ピンク・シャドウ」と
「Solid Slider」。
「ピンク・シャドウ」では
「ピ!ピンク、ピンク!ピンクシャードー、ピンクシャドウ!」
のリフが、何と20回も繰り返されます。4回目のリフで少し乱れるのが残念ですが、「モノスゴイ!」としか言いようのないグルーブ感、アーシー感!ここだけ聴くと、殆どソウルミュージックの世界、背中がゾクゾクします。
「Solid Slider」も同様。
こちらでは「ハァー ハァハーーー ハアアーーー」のリフが繰り返され、その合間に達郎さんのヴォーカルとシャウトが挟み込まれます。
やっと写真が出て来ました(笑)。
中面はコラージュ風の、大変に凝ったデザインです。
CDは、車内で聴くために買いました。
ボーナス・トラックが2曲、入っています。
ターンテーブルに載せ、新しいカートリッジと針で、久し振りに聴きました。
当たり前のことですが、優しいアナログの音が鳴りました。
同じ作品でも、CDとは全く異なります。
40年前の合格発表の日の喜びが、胸に満ちて来ました。
まさしく「アルバム」そのものと実感しました。
【今日の「オマケ」!】
今日もいろいろと「副産物」がありました。
遂に発見!
ムーディー・ブルースのジャスティン・ヘイワードとジョン・ロッジのデュオ作品「ブルー・ジェイズ」です。この作品については、別途ご紹介します。
いぶし銀の声を持つ偉大な男声ブルース・シンガー、ジミー・ラッシンのアルバムが3枚、纏まって出て来ました。声といい歌う曲といい見事なブルースですが、彼は長年、カウント・ベイシー楽団の専属歌手でした。ボクはレーザーディスクで彼が歌う姿を見て、一発でK.O.されてしまい、ソロ作品を買うようになりました。枯れた渋い男声が好みの方には、うってつけです。
何と!沢田研二や加橋かつみが人気を誇ったグループ・サウンズ、「ザ・タイガース」の解散コンサートのライブ盤が出て来ました。
久し振りに聴いてみましたが、既に加橋かつみは脱退後。「花の首飾り」は、ちょっと鼻に掛かったハイ・トーンの加橋ヴォイスではなく、ベタッとした沢田ヴォイス。買った時もそう思ったことを思い出しました。
加橋さんの「花の…」が入ったアルバムを買ったことはないはずなので、チャンスがあれば入手したいと思います。