
昨日22日の日曜日。
三連休の中日。一昨日訪れた篠ノ井線の廃線の記事を書き終えてから、少しだけレコードの整理をしました。すると、LPの間からポロンと、一枚のドーナッツ盤が零れるように出て来ました。
ボクは、ドーナッツ盤を殆ど所有しておりませんが、大学入学後、生まれて初めて蒲田駅で下車。東口にあった有名な中古レコード店で購入しました。
1972年(昭和47年)4月のリリース。
小学6年生の10月16日。
亡き親父の転勤で上野駅から特急「ひばり」に乗り、東北地方の某駅で片道切符を駅員さんに渡しました。以後、結果的に高校を出るまで無為な日々を過ごすこととなり、この年は我が人生最初の大きなターニング・ポイントとなりました。
当時、TBSのテレビ番組「ヤング720」(1966.10.3~1971.4.3)に「フォークグループ勝ちぬき歌合戦」とのコーナーがあり、所謂素人が出演、バトル形式で毎週勝者を決めるものだったようです。
1971年秋。
当時、青山学院高等部に在籍していた女子高生のユニット「もとまろ」が出演します。海野圭子さん、山田真珠美さん、織間千佳子さんの三人。詳しい経緯は不明ですが、番組のスタッフが彼女たちの存在に気づき、出演を要請したとの説が有力なようです。
「もとまろ」はあれよあれよと勝ち抜き、4週目が終わります。
ところがこの時、大変なことが起きていました。
何と、彼女たちのオリジナルは4曲しかなく、全て歌ってしまったのでした。まさか次週も4曲中のいずれかを歌う訳には行きません。
この時、フォークソングに詳しい山田さんが「サルビアの花」を歌おうと提案したのでした。
いつもいつも思ってたサルビアの花を
あなたの部屋の中に投げ入れたくて
そうして君のベッドにサルビアの紅い花敷きつめて
ぼくは君を死ぬまで抱きしめていようと
なのになのにどうして他の人のところへ
ぼくの愛の方がすてきなのに
泣きながら君のあとを追いかけて花吹雪舞う道を
教会の鐘の音はなんて嘘っぱちなのさ
扉を開けて出てきた君は偽りの花嫁
頬をこわばらせぼくをチラッと見た
泣きながら君のあとを追いかけて花吹雪舞う道を
転げながら転げながら走り続けたのさ
伝説のロックバンド、ジャックスのリーダーだった早川義夫さんが作曲、作詞は彼の高校同級生、相沢靖子さんで、彼のソロアルバムに入れた曲でした。
上の歌詞をお読み戴くと、振られた「情けない男」がストーカーまがいの行為に走る内容とお分かり戴けると思います。一方、早川さんは「男女の営み」をシンボライズしたものと語ったと伝えられています。
ほぼ同じ頃。
ヤマハが主催しプロへの登竜門となった「ポプコン」の前身、「第3回作曲コンクール」に「サルビアの花」がエントリーされ、オフコースが歌い入賞を果たします。そんな背景も手伝ってか、もとまろがTBSで歌ったバージョンが、ニッポン放送の「コッキーポップ」でオン・エアされました。すると毎週、大量のリクエストが寄せられる事態となりました。
1972年。
この曲はスタジオでレコーディングされ、彼女たちが青山学院大学と短期大学に入学した4月に発売されました。和製ポップスとしては大変な売れ方だったとか。また、彼女たちのレコードでこの曲は広く知られるところとなり、その後多くのカバーが生まれました。
なのになのにどうして…。
彼女たちはプロになる気持ちはさらさらなく、このシングル一枚だけが「もとまろ」の作品となったのでした。
以下、某サイトからの引用です。
もともとプロになる気のなかった「もとまろ」のメンバーたち。その後マスコミに顔を出さないまま大学や短大に進学し、「もとまろ」は解散した。
ただ、彼女たちには心配事が残りました。曲を勝手に使われた早川さんが怒っている、とうわさで聞いていたのです。「お会いしておわびしなければ」。そんな気持ちを引きずったまま、30年が過ぎました。
結婚して松本姓となった海野圭子さんは現在(当時)、長野県にある玉村豊男さんのワイナリー「ヴィラデスト」で働いています。
東京・渋谷のライブハウスで2003年12月、松本さんはようやく、早川さんがピアノを弾きながら歌う「サルビアの花」を聞く機会を得ました。「頭をガーンと殴られたような衝撃を受けました。女子高生がうたうような曲ではなかった」
演奏後に配られたアンケートで素性を明かし、おわびを書きました。ほどなく早川さんから手紙が届きました。曲を世の中に広めてくれて、むしろ感謝していました、という旨でした。
閑話休題。
ボクがこの曲の存在を知ったのは、高校入学直後でした。
当時、民放のFMは東京、愛知、大阪、福岡にしかなく、当時ボクが暮らしていた県にはFMはNHKだけ。そんな時代でしたが、毎週土曜日の15時から18時は、各地方局が独自に編成した番組を放送していました。その中に聴取者からのリクエストで選曲・放送するコーナーがあり、初めて聴いたのでした。
アルペジオで始まるスローな女声コーラス。
情けない男が主人公の歌詞を、何処かエキゾチック、繊細なガラス細工のような三人の女声が歌う…。そのギャップが魅力に思えました。
…今だから言えますが、実はボク、浪人が終わった時「情けない男」になりました。
辛い高校時代でしたが、それでも男女5、6人ほどでグループ交際していたことがありました。その中のある女性に恋心を抱きました。独りの男として何も言い出せぬまま浪人が決定、晴れて大学生になった暁には、真正面から告白しようと決め、必死に勉強しました。
合格直後。
彼女に電話をし、会って告白しました。既に女子大2年生。
…一転、それまでの笑顔が消え、暫く間を置いてから、俯いたまま珠を転がすような声で、こう言いました。
「●●クン(=ボク)のことは好きだし、とってもいい人と思うわ。でも、ごめんなさい。…私、…将来を誓った方がいるの…」
…やっと合格したばかりなのに、暫く立ち直れませんでした。
この時、思いました。
『「サルビアの花」は、ボクのための曲に違いない…!』
と…。
(今となっては大爆笑!)
そんな想いを胸に秘め、蒲田の中古レコード店の大量の在庫を必死に漁り、やっと発掘したのがこれです。
キャニオンの製品なのに、何故か東芝の袋に入っていました(笑)。
…還暦オヤジの「淡い青春の想い出」のレコードです。
老若男女を問わず、
「しょーがねーヤツだなー…!」
と、笑って戴ければ幸いです!
お後が宜しいようで…(笑)。