
昨日1月30日(土)。
休日でしたがストレート・ネックが酷く、9時半に渋谷で頸椎のMRIを撮影して貰いました。その足で、久し振りにこちら、「代々木上原大勝軒」さんへ伺いました。小田急線・千代田線の代々木上原駅の東口出口を右折、急坂の商店街を上がると左側にあります。
縦長の看板は殆どが空白で、下辺の僅かなスペースに屋号が記されています。居酒屋さんで二升半の大きな日本酒を置いてあるのを見かけることがありますが(「益々繁盛」から来る縁起担ぎ)、それと似たような理由があるのかも知れません。
玄関です。
「のぼり」が幾つも立ちます。ご時世から、テイクアウトの告知が目的です。
開店は11時。
ボクが訪れたのは11時15分頃で、ご覧のようにお客さんはカウンター端に一人だけでした。が、あれよあれよと入店が相次ぎ、2階にも通していました。
こちらのお店の特徴の一つが、従業員さんの服装。
東池袋系の大勝軒では「紺のシャツに白いタオル巻き」が「制服」ですが、こちらではご覧のように白いコック服。これは理由があります。
「丸長グループ」は敗戦後、青木三兄弟を筆頭に信州出身の5人が、共同で荻窪に「丸長」を出店したことが起源。そこから相次いで4人が独立、それぞれ「丸信」「大勝軒」「栄楽」「栄龍軒」の屋号を名乗りました。初期のこれらのお店に関わった人たちには、兄弟や親戚、親友が多かったそうです。
そんな中に、坂口正安さんと山岸一雄さんがいました。二人は親が姻戚関係で、山岸さんは坂口さんを「兄貴」と慕っていたとか。山岸さんが上京し旋盤工として働いていた時、坂口さんが誘い二人で「丸長」に修業に入り、その後「栄楽」で揃って腕を磨きました。
その後、坂口さんは中野で「大勝軒」を名乗り独立、山岸さんも行動を共にします。どういう経緯かは分りませんが、やがて坂口さんは代々木上原に出店、こちらが「大勝軒」の「本店」となります。この時、山岸さんは「大勝軒中野店」の店長になり、やがて「東池袋大勝軒」として独立します。つまり、こちらは丸長グループで「大勝軒」を名乗るお店の総本山、こちらが「親」だとすれば「子」は「中野」「狛江」「祖師谷」「西台」「栗木台」「山形」等。「中野」から独立した「東池袋」は「孫」に相当します。
出自を信州とし、兄弟や親戚、親友が多かったことから「丸長のれん会」は仲が良く、定期的に宴会や研修会、野球大会まで開いていたそうです。所謂「つけめん」とされるものは丸長で「まかない」とされていたものを中野時代に山岸さんが商品化したとされています。「丸長のれん会」加盟店のほぼ全店が、「つけそば」「もりそば」を提供していますが、山岸さんが請われてのれん会に伝授したように思えます。子供に恵まれなかった山岸さんは、同郷の「同業者」の会合に、嬉しそうに出掛けていたそうです。
ちなみに、「丸長グループ」のルーツは「丸長中華そは店」(荻窪)ですが、「丸長のれん会」の会長はこちら「代々木上原大勝軒」の現社長・坂口光男さん。東池袋系の「御家騒動」勃発時に、坂口さんが仲裁に乗り出したのは、そんな背景からでした。しかし正統を名乗る「二代目」は、師匠が長年所属したのれん会を、一方的に電子メールを送りつけて脱会してしまいました。この報せに「守る会」側のお店の幾つかが「師匠の「のれん会」に対する想いを引き継ぎたい」として加盟を申請、総会で許可されたという経緯がありました。
当時、ボクは一連の報道を、何処かやるせない想いで読んだり見たりしていました…。
少々ややこしいですが、時代の推移とともに暖簾分け開店が相次ぎ、丸長グループは細分化して行きました。また、高齢化による閉店が相次いでいます。
坂口会長は、創立60周年記念祝賀会で、次のように述べています。
『(略)時代が変遷して地縁、血縁の関係性が薄れるのも世の常。しかし人と人の出会いによってまた新たな縁の繋がりを広く構築できれば丸長の意思は続いていけるものと思っております。会員の皆様には血を分かち合った創立時からの歴史と伝統を誇りに、その精神を今に伝え研鑚と努力工夫をして頂きたく存じます。(略)』
…素直に、素晴らしい言葉と思いました。
そんな代々木上原大勝軒さんのメニューです。
こちらは「ラーメン店」というよりも「中華料理店」と呼ぶべき。麺類の他にも丼もの、定食、一品料理が楽しめます。
こちらは「つけそば」のメニュー。このカテゴリーだけでも、こんなに種類があります。しかも格安なセットもあります。
ボクは海苔玉子つけそばをお願いしました。
つけそばの「薀蓄」がありました。
読んでいて、頬が緩みました。
「お待ちどうさまでしたー」
コック服姿の男性が運んでくれました。
おー、オイシソー!
おそらく20年近くになります。
早速戴きます。
一杯、のりが載っています。
麺は「モッチリ」ではなく「ツルツル、シコシコ」のストレート!
弾力に富んだ食感は、丸長・東池袋系の中で最右翼!
中華系の麺と言うよりも、岩手県盛岡市が有名な「冷麺」を彷彿させるものでした。これは素直に「おいしい!」
スープです。
丸長系では色が薄く、特徴的なナルトの細切りは入りません。「甘・辛・酸」の割合は「30:30:40」で、少し酸味が強く感じました。
具はこの短冊状のチャーシュー、
メンマ、それに刻みネギと小さな海苔が一枚。
トッピングで入る玉子は、固茹でで薄く味付けされたもの。普通の固茹で玉子ではありませんが、このスープとのマッチングは良く、おいしく戴きました。
カウンター上の調味料類です。
こちらにも、長野・善光寺の老舗七味店「八幡屋礒五郎」の七味がありました。少し酸味が強く感じたので入れました。
にんにくチップ。
にんにくチップを漬け込んだラー油です。
他にはコショウ、酢、辛子がありました。
それに、こんな物が。
「天カス」です。
いずれも「中華料理店」としてのラインナップと思いました。
何だか熱燗を漬けるようなボトルですが、この中にスープ割りが入っています。アツアツで、湯気が出ていました。
レンゲにスープを移して味わいました。
カツオ出汁で、「やすべえ」よりも薄い味わい。とっても上品でした。
残ったスープを飲み、最後にレンゲで楽しみました。
体がポカポカになりました。
という訳で、残さず食べ終えました。
小食のボクですが、丁度良い量でした。
さすが、歴史と伝統のお店。
大変、おいしい一杯でした。
代々木上原大勝軒
東京都渋谷区上原1-17
03-3467-1479
11:00-20:00 水休
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ラーメン(丸長・東池袋系) | グルメ/料理
Posted at
2021/01/31 08:01:42