
8月8日。
ながでん延徳駅で信州中野丸長さんのつけ麺を堪能し、小布施に向かいました。
須坂市と中野市の中間に位置する小布施町は、北斎館を筆頭に各種の博物館が多数存在します。「カルチャー・タウン」と言うに相応しく、こじんまりとした街には統一感ある意匠の建造物が並び、観光地として機能しています。
今日の目的地はこちらです。
穀平味噌醸造所の南側に伸びる袋小路の突き当り。
屋根の高い味噌蔵を思わせる建物。
ここはジャズ喫茶「Bud」さんです。
車を停めてドアを閉めると、中からピアノの音が聞こえました。
入口右に、丸テーブルが置かれています。
上には、懐かしい黒電話が!
昔、日本橋は霊岸島の祖母宅にあったのがこのタイプ!
ダイヤルを廻すと、内臓されたバネが押し戻す機構。その感触が楽しく、バアちゃんから「壊れるから止めなさい!」と叱られるまで続けたものです。
玄関の引き戸です。
店主の高齢化、デジタル音楽の主流化など様々なことが重なり、全国的にジャズ喫茶は減少の傾向です。おそらく、一棟丸ごとジャズ喫茶として営業中のお店は、全国的にも珍しいと思います。
蚊取り線香の缶の下、コンクリートの土台にはこんなサインが!
この書体、お洒落です。
引き戸を開けると、60台半ばと思われるご主人が迎えて下さいました。
蔵に特有の高い天井と、張り巡らせた梁、白い漆喰の壁が、独特の雰囲気を醸し出します。
「すみません、写真を撮ってもよろしいでしょうか?」
ご主人、笑顔で
「どうぞ、ご遠慮なく」
この写真は、玄関から左側を臨んだもの。
お店のメイン・スペース。
最深部には、ピアノやスピーカーが見えます。
こちらは玄関から右を臨んだもの。
短いカウンター席になっています。
その上には2階部分がありますが、バックヤードだそうです。
5灯のライトが吊り下がります。
書棚には、ジャズ関連の書籍が詰まっています。
自由に読むことが出来ます。
さて、こちらのオーディオはどんなものかと見ると…!
ドギモを抜かれてしまいました。
何と、ウェスタン・エレクトリック社製ではないですか!
ウエスタン・エレクトリック社の主要事業は、通信会社AT&T社用の電話機の製造でした。その一方、映画館用のサウンド・システムを提供していました。当時、プリアンプは真空管を使用した低出力のものが主流。それを如何に臨場感溢れるサウンドに拡張し、映画館に満たすかが設計思想でした。換言すれば、同社のパワーアンプやトランス、ネットワークといった機材が存在するということは、真空管時代の機材でオーディオ・システムを構築しているということです。
蓄音機です。
蓋の内側にニッパー君のイラストがありました。
…すげー…。
プレイヤー2台。
それぞれ横には、真空管アンプが寄り添います。
左スピーカーの手前には、グラウンドピアノがあります。
後でご主人から、たまにライブを企画しているとお聞きしました。
なお、スピーカー単体の写真を撮り忘れましたが、少し写っています。おそらくアルテックA7だと思います。
何気なく壁の上を見てビックリ!
ブルーノートの5000番台がズラリと並んでいます。
これは有名な「バードランドの夜」。
12インチのLPではvol.1、vol.2の2枚。
これらのオリジナルは10インチの5000番台で、3枚で発売されたものでした。
ボクは初めて目にしました。
こちらは主に、夭折の天才トランペッター、クリフォード・ブラウンの10インチ作品。暫く呆然と見つめてしまいました。
店内を一巡して、漸くカウンターに座りました。
コーヒーを飲みながら、ご主人と少しお話ししました。
さすがウェスタン・エレクトリックでシステムを構築されている方。デジタルの時代となり、音楽も「鑑賞」ではなく「消費」の時代になってしまったと嘆かれていました。ボクはレコード会社に20年勤めてリストラされた経験を語り、文化としての音楽が終焉近いこと、他のカルチャーでも、NHKか民放かを問わず、テレビがすっかり駄目になったとお話ししました。お互いに感じていることが極めて近く、暫く文化論を語り合いました。
大変楽しいひと時を過ごすのと同時に、勉強させて戴きました。
また伺います。
Jazz & Coffee Bud
長野県上高井郡小布施町伊勢町735-1
026-251-4033
11:30-17:30
月・火・水休
Posted at 2020/08/15 08:10:44 | |
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ジャズ | 音楽/映画/テレビ