
昨日9月10日、土曜日。
神奈川県藤沢市を訪れました。湘南方面はバイクのツーリングでは度々訪れていますが、市内を歩いたのは、おそらく62年近く生きて来て初めて。
外観は、ごく普通の住宅。
チャイムを鳴らすとご主人が現れ、誘ってくれました。
ところが、ドアを開けると御覧のような世界が!
ウヒャー、スゴイ…!
ドン、と鎮座するのは「手キン」!
松本市の書店「栞日」さんの記事でもご紹介しましたが、手擦りの活版印刷機のこと。これを使って名刺を印刷する『一日体験』を申し込んだのでした。
ボク1960年、昭和35年生まれ。
母方の実家は、日本橋の外れの霊岸島、現在の新川一丁目で印刷業を営んでいました。ボクが物心ついた頃には、電動式の大きな印刷機が稼働していました。が、まだ工場の片隅にはこれがあり、老練の職人さんが近隣の食堂や飲み屋の屋号が入った小さな紙を印刷していました。納品されると、お店のご主人やおかみさん、ママさん達が裏面に糊を塗り、白箱の小さなマッチ箱に丁寧に貼り付け、お客さんに配っていました。今でこそ100円ライターが主流ですが、当時は存在すらありませんでした。長閑な、長閑な昭和の時代…。
職人さんが器用に扱う姿は何度も見ましたが、自分の手で操作した経験は、この歳になるまでゼロ。ちょっと思うところがあり、これを使って自分の手で印刷を体験したく、ネットで探していてこちらの工房の存在を知ったのでした。
まず、活字を一つ一つ拾って並べ『版』を作ります。
今回、ボクの下の名前の漢字活字の在庫がなく、全てローマ字にしました。見本帳を見てデザインとレイアウトを考えます。右の金属製の枠の内側に、組んだ『版』を収容します。
金属製の薄い箱に、活字を拾って並べて行きます。
活字は左右が反対の上、小文字の『i』と『j』のように判別が難しいものもあり、慎重に選びます。
老眼のため少し苦労しましたが、何とか出来上がりました。
こんな感じで作業をしました。
さて、組んだ『版』を枠に収め、余ったスペースは木片を並べてジャッキで圧をかけ、動かないようにします。
手キンの円盤に、印刷用のインクを塗り、ヘラで薄く延ばします。
左のレバーを数回上下させます。
ローラーが円盤上のインクを拾います。
『版』をセットします。
用紙の位置を決め、セットします。
レバーを下げるとローラーが『版』にインクを塗り、
更に下げるとローラーが上に逃げ、
最後は紙と『版』が密着します。
めでたく、刷り上がりました。
活版の『凸』が紙に『凹』を刻み、何ともオシャレな仕上がり!
夢中になり、作業に集中してしまいました。気が付けばあっと言う間に2時間が経っていました。ボクのように、手仕事が好きなタイプの方なら、間違いなく「嵌る」と思います。つくづく思いますが、ボクは進む道を誤りました(笑)。
リン版画工房さんは、その名の通り版画制作がメイン。ニードルなどの専用機械を幾つも備えています。土曜日の午後ということもあり、工房は5、6人の方が来て制作をしていました。中には工務店の作業服姿の方も。皆、黙々と作業に没頭、表情は真剣そのもの。…でも、ゼッタイに「楽しい!」はず!!他ならぬボクがそうだったから…。
終了後、ご主人と少しお話しをしました。
手キンは新宿の会社が今でも製造・販売をしているそうで、実機が布を被って工房に置かれていました。ただ値段はおよそ50万、印刷サイズはハガキ大までとのこと。なのでこちらでは、中古が入るとオーバーホールの上、欲しい方に分けているそう。ただ、いつ入るかは全く分からない、順番に声掛けしているので、気長に待つつもりがあるのなら、予約者リストに入れてあげます、と仰いました。勿論、その場で「お願いします!」と、即答しました。
あー、タノしかった…。
また行きたいナァ…。
リン版画工房
神奈川県藤沢市藤沢1057-2
0466-50-5044
Posted at 2022/09/11 15:52:39 | |
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