
8月20日、土曜日。
小海線八千穂駅前の「たかとんぼ」さんで舌鼓を打った後、周辺を散策しました。
「たかとんぼ」さんを出て閑静な高原の駅前通りを少し北に歩くと、こんな建物がありました。旧い白土の古民家。暖簾が出ているので、どうやらお店のよう…。
小さな窓が2つだけのシルエット。脳裏に中のイメージが、あれこれ湧きます。
玄関横に、屋号を記した表札。
『喜劇駅前食堂』とありますが…、
もうひとつ、こんな物も。
「食堂」を名乗っていますが、どうもここは、雑貨屋さんのよう。
ボクの勝手な想像ですが、この屋号は嘗て人気だった映画『喜劇駅前●▲』にヒントを得て命名したのでは、と思いました。
このシリーズ、ウィキによれば東宝の『駅前シリーズ』として1958年から1969年まで制作されました。第一作は「喜劇」を冠さず『駅前旅館』。第二作の『喜劇 駅前団地』からも文字通り『喜劇』を名乗ります。キャストは森繁久彌、伴順三郎、フランキー堺。…この三人の名を連呼すれば、大体ハチャメチャでお涙ありと、容易に想像がつきます。ボクは小学校低学年の頃、母型の祖母に連れられて、浅草の映画街でそのうちの一作を見たことを、うっすらと覚えております。ちなみに『駅前シリーズ』には『飯店』はありますが、『食堂』は、最もありそうなのに存在しません。
余談ですが、このシリーズの成功で、当時の邦画界は「喜劇モノ」に注力するようになりました。その第一人者が渥美清さん。「主役を張る顔ではない」とされ不遇に甘んじていた彼を抜擢したのが東映。東宝を模倣し、67年から『喜劇列車シリーズ』が3作作られました。『喜劇急行列車』、『喜劇団体列車』、『喜劇初詣列車』。いずれにも主演、車掌や駅員の役柄。これが大ヒットしたことで4作目が企画されましたが、佐久間良子さんが「ヤクザ映画」路線を重視する東映の方針に出演を拒否、空中分解に。その後、松竹から「列車シリーズはウチに向いている、渥美君を譲ってくれ」との申し入れがあり移籍。それが後日、連作映画としてギネスに認められた「男はつらいよ」シリーズに結実します。第一作は69年8月公開。まさしく『駅前シリーズ』から受け継いだ形となりました。
閑話休題。
暖簾を潜ります。
「いらっしゃいませー」
白髪が混ざった清楚な女性が迎えてくれました。
商品は女性向きが大半。着物やアクセサリー、陶器が中心。マダムによれば、リサイクル物と信州在住の作家による作品が中心とのこと。天井の低い古民家そのままの店舗に、商品ラインナップはうってつけでした。
陶器の猫。
手足を省いた丸いシルエット。
信州の冬の厳しさを彷彿させられました。
こんなディスプレイが…。
地元の小学校が廃校になり、戴いて来たそう…。
一体、どれ程の子供たちの声が沁み込んでいるのかなぁ…。
ここに存在し続けていることが、一人の人間として嬉しくなりました。
店の最深部に歩を進めると…。
ヤヤッ!こんな光景が八千穂で見られるとは!
売り物かとお訊きすると、ご主人のコレクションだとか。ご夫妻は嘗て東京で暮らしていたそうで、当時ご主人が常連だったジャズバーにあったもの。閉店が決まり、ご主人がマスターから譲られたそうです。なので販売は出来ないと言われました。
許可を戴き、少しだけ拝見すると…
左上段端からチェックを始め、僅か5枚目に…
ウヒャー!!
何と、ドラマーのチコ・ハミルトンのインパルス盤 "The Dealer" !ジャズとロックの融合サウンドで名高い銘盤! …これ以上見ると、喉から手が出そうな盤がワンサカ出て来るような気がして、此処までにしました。
あー、ホシかった…。
こんな物がありました。
左上のトルソー、生地がとってもオシャレ!
真鍮製の湯たんぽとは珍しい…。
何故かネパールのコーヒーを販売していました。
会社へのお土産に一つ買いました。
自分用にはこれ、犬の箸置き。
御代田在住の作家さんによるもの。
優し気な表情、交差させた手がかわいい…。
男のボクでも十分楽しめましたが、どちらかと言えば女性向きのラインナップ。奥様や彼女を連れて行ってあげると、きっと喜ばれると思います。
喜劇駅前食堂
長野県南佐久群佐久穂町穂積1422
090-8110-0316
11:00-17:00 金ー日、祝に営業 12月から4月中旬は冬季休業
Posted at 2022/08/28 16:09:08 | |
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