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2019年09月29日 イイね!

小布施散策(長野県上高井郡小布施町)

小布施散策(長野県上高井郡小布施町) 残暑厳しき折、皆様お元気でお過ごしでしょうか。
 間もなく10月ですが、ボクが住む埼玉県西南部は今日も大変蒸し暑いです。本日はロードスター奥多摩ミーティングですが、老母から買い物に連れて行ってくれとのリクエストがあり、参加を諦めました(今年に入り月末の日曜日は偶然こんな状態が続き、年が明けてから一度も参加しておりません)。

 前回、小布施の「ながでん電車のひろば」をご紹介させて戴きましたが、この時に散策した小布施の街を、今日はご紹介します。



 長野電鉄の小布施駅です。
 「電車のひろば」を見学後、街の中心部に向かいます。



 小布施駅前から市街へ向かう通りです。
 画面の左後方が駅になります。

 時刻は午前9時頃。
 既に大変蒸し暑く、じっとしていても頭皮から汗が滲み出るほど。



 長野県を基盤とする地方銀行、八十二銀行の小布施駅前支店です。
 信州の奥座敷に位置する小布施町は、町を挙げて「統一感のある景観」を保っています。銀行の支店とは思えない、大変に凝った意匠です。

 全くの余談ですが、こちらの支店を認め真っ先に思い出したのが、アラン・ドロン主演の映画「リスボン特急」。海辺の人っ子一人いない銀行の支店に強盗が入るシーンから始まります。フランスの海辺に信州の美しき街、真逆のロケーションにもかかわらず、ピンと思い出されました。
 
 余談の余談ですが、「リスボン特急」には、2つの「違和感」があります。
 
 ①「永遠の不良」アラン・ドロンが、珍しくも「刑事役」を演じている
 ②終始一貫、青いフィルターを掛けた16ミリ撮影

 これら2つの「違和感」を見る者が何となく意識した頃、先ほど申し上げた「海辺の人っ子一人いない銀行の支店に強盗が入る」事態が発生、三者のアンビバレンツに惹き込まれて行きます(コレイジョウハ、『シー(笑)!』)



 駅前通りに面したおうちの前にありました。
 脱穀機でしょうか?



 こちらも、一般のおうちの前。
 「臼」に板で蓋をしたものでしょうか?
 このままリビングルームに置けば、チョット粋なテーブルになりそう…。

 

 中心部に戻りました。
 お味噌屋さん、早い時間でしたが、既に鮮やかな暖簾が出ていました。
 頭を丸められた若い社員の方が、玄関先を箒で掃除されていました。

  お仕事中でしたが、勇気を出してお声掛けしてみました。
  
 「…ボク、58歳ですが、初めての小布施です。感動しております」
  
 彼、手を休めてニッコリ!

 「住民として、大変有り難いお言葉です。どうぞゆっくり、お楽しみ下さい」



 お味噌屋さんの横の路地に入ります。
 おや、右側に何か見えます。



 「COFFEE & JAZZ BUD」。

 おー!
 これはまさしく、「ジャズ喫茶」のはず!



 モダンジャズ、とりわけ「ビ・バップ」から「ハード・バップ」と呼ばれる音楽を愛する者は、「Bud」の3文字を見た途端、間違いなくファミリーネームたる「Powel」を想起します。高校生の時、バドのブルーノート盤を購入、同じ曲ばかり何度も収録されているのに憤りを感じましたが、後年、その素晴らしさと歴史的価値を知り、大変感動しました。
 名ピアニスト、バド・パウエルの名を冠したお店、さぞかし素晴らしいオーディオ機材とレコード・コレクションが存在するはず。ですが、開店はまだ一時間以上も先。次回と決め、後ろ髪を引かれながら後にしました…。



 こちらは、何と「ラーメン屋さん」。



 こちらは「新聞屋さん」。
 街を挙げて景観を統一していることが、よく理解出来ます。



 こちらは、髙井鴻山記念館の入り口です。

 北斎館の記事で触れましたが、髙井鴻山は小布施の出生で、学問と芸術に秀でた人物だったそうです。八十を過ぎたを北斎を小布施に何度も呼び寄せ、晩年の肉筆画の秀作を「プロデュース」したと言って差し支えなき人物です。
 そんな鴻山は「妖怪画」を得意とし、こちらに沢山展示されています。
 
 デモ…、

 拝見しましたが、凡人のボクには、全くわかりませんでした(笑)。



 ながでんバスの、関西行き深夜バスの停留所がありました。
 ボクは、観光で京都を訪れたことがありません(仕事の日帰りバッカリ…)。
 そんな京都にお住まいの方々が、こちら小布施を訪れていらっしゃるようで、大変嬉しくなりました。

  素晴らしき哉、信州!





 









Posted at 2019/09/29 15:38:53 | コメント(0) | トラックバック(0) | お出掛け | 旅行/地域
2019年09月23日 イイね!

クラシノ家具店(埼玉県入間市東町)

クラシノ家具店(埼玉県入間市東町) 21日の土曜日。
 本当に久しぶりに、愛犬「ぶれいきー」の散歩に出ました。
 長い梅雨と猛暑が続き、なかなか「おさんぽ」に行けず、彼もストレスが溜まっていた様子。「行くか?」と問うと、ゲージの中で猛烈に暴れ始めました。
 今日は、ジョンソンタウンまで往復です。



 あれ、見慣れないお店が。テナントが入れ替わった様子です。
 どうやら、家具と雑貨のお店のよう。
 カリモク60の取扱店とあり、これは期待できます。



 玄関から中を臨みます。
 明るい光が溢れています。
 犬は「だっこ」で入店可、しかも撮影もオーケーです。

 「いらっしゃいませー」

 男声、女声。暖かく迎えて下さいました。



 大きな家具と小さな雑賀で溢れる店内は、まさしくワンダーランド!
 男のボクでも、女性が好みそうな食器類に見入ってしまいました。



 こちらのコーナーの家具は、ウィスキー用の樽をバラしたものを加工して製作されたものとか。道理で風格があります。



 この椅子がそうです。
 本革張り。座りましたが、ゆったりと抱擁される感じで、たちまち欲しくなりました。ちなみに、お値段は14万円デシタ!



 棚の上には、様々な色とサイズのツールボックスが。
 眼鏡ひとつが収納出来るミニ・サイズ、初めて見ました。



 旧車のペーパークラフトが!
 コスモスポーツを買おうかと思いましたが、現在『不用・不要物の処分』を少しずつ実施中、新たな因子の持ち込みを避ける観点から止めました。



 靴磨き「コロンブス」のコーナーが。
 家具だけではなく、さりげない「お洒落」を演出する小道具にもこだわった商品ラインナップは、ライフスタイルの提案でもあります。



 この棚に収められているガラス類は、残念ながら非売品とか。
 カラフルな色が、1960年代的で素敵でした。



 小ぶりで奥行の浅いデスク。
 ちょっとした書き物や手作業に良さそうです。
 右の照明、デザインが秀逸です。お値段は12000円台でした。



 玄関の外には「茶箱」が!
 昔は数が少なく貴重品で、なかなか手に入りませんでした。
 大・中・小と3つもサイズがあることを、初めて知りました。

 ジョンソンタウンには、雑貨屋さんは複数ありますが、家具を扱うお店は初めてだと思います。また、雑貨は『こういう家具がお好きな方ならば、こういう雑貨は如何ですか』的な提案型の品揃えで、ボクは個人的に頷きました。

 先に書きましたように、現在『不用・不要物の処分』を実地中です。
 週末しか使えず、かなりの時間が掛かると思います。
 でも、達成したら、残りの人生を過ごす空間をプロデュースすると決めております。この種のお店を訪れると、大変勉強になります。

 オマケ



 店を出てやっと地面におろされた、我が家の駄犬「ぶれいきー」。

 《オトーチャン、ハヤク、カエロウヨ…》

 はいはい、ごめんなさいネ!


クラシノ家具店

358-0002
埼玉県入間市東町1-4-11

04-2935-3872



Posted at 2019/09/23 15:31:52 | コメント(0) | トラックバック(0) | インテリア・骨董 | 日記
2019年09月23日 イイね!

ながでん電車の広場(長野県上高井郡小布施町)

ながでん電車の広場(長野県上高井郡小布施町) 北斎館を訪れた8月31日。
 こちら「ながでん電車の広場」に足を向けました。

 開館前の北斎館駐車場に車を停め、美しい小布施の街を散歩しました。
 こじんまりとした街ですが、統一感溢れる景観を保つ街並みが魅力です。交番、銀行、新聞屋さんに至る迄、大時代的でありながら洗練された意匠です。



 訪れたのは、長野電鉄の小布施駅です。
 ご覧の通り、高く張り出した玄関が特徴。木製の駅名看板がシックです。



 券売機です。

 え?

「車を置いて電車に乗るのか?」
 
 ですって?



 買ったのはコレ、入場券です。



 改札口から構内に入ると、目的地が見えました。
 「ながでん電車の広場」です。



 島式ホームの左奥に、屋根付きで電車が保管されています。



 長野電鉄2000系です。
 自社オリジナルの特急用車両で、3両編成が4本製造されました。長野電鉄は、地方の中小私鉄の中で自社発注の車両が多いことで知られましたが、最近は特急用はJR東日本と小田急から、各駅停車用は東急から中古を購入しています。
 この2000系は4本製造されましたが、2本は比較的早い時期に廃車となりました。残る2つのうち、以前にご紹介した旧信濃川田駅に保存されていたマルーンに塗られた編成は、遂に解体されたと聞きました。ここに保存されているこの編成が、唯一の生き残りです。



 運転室です。
 真鍮製のマスコンハンドルが美しいです。 



 室内です。
 クロスシートが特急用であることを物語ります。
 一度、乗ってみたかったなぁ…。

 長野電鉄は、中小地方私鉄の一つ。
 関東や関西の大手私鉄と比べれば、企業の体力は遥かに劣ります。
 それでも、自社で活躍した記念すべき車両を、こうして屋根付きの環境で保管しています。この企業姿勢は、素直に頭が下がります。
 
 ちなみに、ボクの地元を走る西武鉄道は、歴史的に意義のある車両を横瀬の車庫に保管、年に一度公開していました。しかし十数年前、積雪で車庫が潰れてしまい、保管していた車両にも損傷が発生しました。以降、西武は屋根付きの保管場所を建てておらず、車両はブルーシートに巻かれたままです。いろいろと事情はあるとは思いますが、長野電鉄の姿勢を見習って欲しく思いました。



 昔の小布施駅の写真が飾られていました。
 木造の改札口横の植木鉢。
 冬は寒さの厳しい信州ですが、暖かみを感じる写真です。



 待合室から改札口を撮影したもの。
 沢山の「人生」が通り過ぎた場所…。



 大正12年3月26日、小布施駅開業。



 雨の日。
 通学の高校生でしょうか。



 旧い木造の改札と、傘を手にした若い女性。
 小椋 佳さんのレコードのジャケットを思わせる、大変メルヘンチック・ロマンティックな写真です。複製が販売されていたら、絶対購入します。



 現在の駅舎は、昭和60年10月の開業です。



 蒸し暑い日でしたが、信州の抜けるような碧空が、目に染みました。
 旧い琺瑯製の駅名標が、この街のこの駅に溶け込んでいました。

 ボクは、東京生まれの東北育ち。
 信州に暮らす方々を、心の底から羨ましく思います。






Posted at 2019/09/23 14:21:43 | コメント(0) | トラックバック(0) | お出掛け | 旅行/地域
2019年09月23日 イイね!

洗車&ホイール磨き その3

洗車&ホイール磨き その3 台風17号の影響で、全国的にこの3連休は冴えない天候のようです。
 ボクが住む埼玉県西南部は、朝のうち霧が掛かっていました。そんな中、6時に出発して奥多摩湖を往復して来ました。

 さて、昨日。
 洗車とホイール磨きを、せっせと行いました。



 車内を掃除するため、幌を開けました。
 6月末の車検時にキャンバス製に交換しましたが、7月の長梅雨と8月から今日までの猛暑のため、ほんの数回しか開けていません。おかげで、ウェザーストリップの形が固定したようです。





 約10年選手、リョービ製のバキュームです。
 吸引力が強く、小石くらいならバンバン吸い取ります。
 欠点は「音」!
 とにかくやかましいので、毎回ご近所に迷惑の掛からぬよう、短時間で済ませることにしています。





 手作業でマットを洗い、干しました。
 20年選手、かなりくたびれております。





 幌を閉じ、トップから洗いました。
 作業中のため、写真は殆どありません。



 さて、懸案事項の「ホイール磨き」です。
 最近、これを購入しました。
 研磨剤「ピカール」の缶入り半ネリ製品です。



 中身はご覧の通りの固形状です。
 ウェスに少し取り、ひたすら磨きます。
 液体のピカールの研磨力はさほどでもありませんが、この製品は強力!多目につけて磨くと、たままち下から地肌が露出します。クリアが残っている箇所にも有効です。



 赤い丸囲みの箇所をご覧下さい。
 右側の部分が磨いた箇所、左は劣化したクリアが残る部分です。
 この製品の最大の魅力はコスト・パフォーマンス。これだけの量が入っていて、1つ500円もしません。でも、仕上がり具合には荒っぽさが残ります。キレイに仕上げるには、ワコーズやマザーズで再び磨く必要がありますが、これらは量の割に値段が張りますから、仕上げに限定して使えば経済的に思います。
 ちなみにボクは、ジョイフル本田瑞穂店で購入しました。



 という訳で、左のリアです。
 多少、良くなりましたが、まだ「みっともない」状態です。
 先は長い…。
Posted at 2019/09/23 12:25:51 | コメント(0) | トラックバック(0) | ロードスター | クルマ
2019年09月09日 イイね!

北斎館(長野県上高井郡小布施町)

北斎館(長野県上高井郡小布施町) 今朝未明、関東地方を台風が駆け抜けました。
 ボクが住む埼玉県西南部は午前4時頃が、雨と風のピークでした。現在はどんよりとしてはいるものの、風はおさまりました。これから暑くなるようです。

 今日は月曜日ですが、ボクは代休です。

 先週の土曜日、月に一度の難聴治療のため、長野県須坂市を訪れました。
 この4月まで1年間は、毎週土曜日に通っていました。治療費の他、交通費(高速料金・ガソリン代)の負担が大きく、毎回、往路は未明に家を出て高速で向かい、午前8時に終了すると、節約目的で下道を5,6時間かけて帰宅しました。そのため、折角須坂を訪れても観光らしき事が全く出来ませんでした。
 この日は復路も高速を使うことに決め、念願だった須坂市の北に位置する小布施町を訪れました。最大の目的は、浮世絵師、葛飾北斎の作品を収蔵した「北斎館」の訪問です。



 玄関を潜ったところです。
 北斎の斎の字の右横に「画狂人」とありますが、これは75歳の時に名乗った画号で、所謂「芸名」のようなもの。ちなみに「北斎」も画号で、本名は川村鉄蔵、幼名は時太郎だったそうです。
 ちなみに北斎は、この画号の変更と引っ越しが頻繁で、画号変更は約30回、転居は生涯に93回だったそうです。

 江戸の著名な浮世絵師・北斎の美術館が、何故信州の小布施に存在するのでしょうか…。

 小布施出身で、酒造を生業とした豪商で、陽明学にも通じた高井鴻山なる人物が、江戸に遊学の際、北斎と知り合ったことが契機とされています。北斎が83歳の天保13年、鴻山は小布施に北斎を呼び寄せ、碧漪軒(へきいけん)というアトリエを提供、生活を庇護したのだそうです。既に芸術家として晩年を迎えていた北斎ですが、以後も85、86、89歳の時に小布施を訪れています。
 80歳を過ぎてから、北斎は肉筆画を手掛けるに至ります。
 版画たる浮世絵は大量に流布が可能ですが、肉筆画は地上に唯一のもの。
 
 つまり、小布施には、天才絵師の「オンリー・ワン」が沢山存在するのです。
 そして「画狂人」を名乗った時代は、まさしく小布施で活動した頃です。



 自画像です。
 玄関にも肖像がありましたが、こちらは「好々爺」的な味わいです。

 北斎は天才にありがちな奇行が多く、また激情家でもあったそうです。頻繁な転居は、生活の全て、時間の全てを制作に注いだ結果、掃除ということを一切しなかったため、家が現代に言う「ゴミ屋敷」と化してしまったからとされています。この自画像からは、そんな一面は見えません。



 廊下です。
 幽玄な趣です。



 「北斎から学ぶ! 植物・動物の描き方」という企画展を開催中でした。



 「きんぎょ」。
 頭が下の腹側からのアングルです。



 脚注がありませんが「はな」。
 コスモスっぽいかな…。



 これにもありませんが、明らかに「たこ」。
 実にリアルな描写です。



 「たらのこ」に「あんこう」。
 深海魚のあんこうを、ここまでリアルに描ける腕はさすがです。
 何しろ、釣り上げると目は飛び出てしまいますし、体はヌルヌル、デロンデロンの状態。まともに観察する人は、そう滅多にはいないと思います。



 「かえる」。
 水かきがあるので、アマガエルでしょうか。
 その部分は、多少デフォルメされた印象です。





 これらは全て「北斎漫画」と名付けられた、スケッチ集かに収蔵されています。これは、その現品です。
 北斎漫画は、動植物、人間、風俗、妖怪に至る迄、膨大なスケッチが収められています。中には座頭や瞽女といった、当時の視覚障害者の表情ばかりを集めた章があります。現代では差別と一刀両断されること間違いなしですが、リアリズムの極致を追求した結果だと思います。



 壁面に、その拡大版が展示されていました。



 これは「富嶽三十六景」の中でも、とりわけ有名な「神奈川沖浪裏」です。
 その名の通り、漁舟を翻弄する相模湾の荒波の裏側を描いた作品。「北斎漫画」に描かれたリアリズムの精神が、この風景画にも如何なく発揮されています。
 この作品が、どのようにして刷られたのか、その技法の解説がされたコーナーがありました。ちょっと複雑ですが、ご紹介します。



 上左は作品紹介するキャプション、上右は摺り手順の解説です。
 下の右は1版目『最初の藍線の輪郭の一色』。
 下の左は、その版木。当然ですが左右が逆です。



 上左は2版目『漁舟を平面的に黄色で摺る』。
 上右は重ねた結果です(以下、同じ)。
 下左は3版目『空に薄い紅を平面的に摺る』。



 上左は4版目『水平線から上方へ薄墨のぼかしがかけられる』
 下左は5版目『4版目と同じ板で更に濃いぼかしがかけられる』



 上左は6版目、下左は7版目『更に同じ板で富士の周辺だけ特に濃くぼかす』



 上左は8版目『波の部分を最初は派手な藍を薄く平面的に摺る』
 下左は9版目『次に地味な藍を摺って並の水色に濃淡をつける』



 上左は10版目『平面的に黄色で摺った漁舟にねずみ色の影をつける』
 下左は11版目『波の影に更に濃い藍をかけ、並の色を複雑にする』

 …何と、完成までに11回もの重ね摺りを要しています。
 印刷機など存在しない江戸時代に、浮世絵はこれだけの手間と時間を掛けて生み出されことを改めて知り、大いに感動しました。
 そして、北斎を筆頭とする浮世絵は大量に摺られ、江戸の人々に娯楽をもたらしました。
 一方、当時貴重な輸出品だった陶磁器の緩衝剤として使用されました。これがオランダに届くと、ヨーロッパの人々は陶磁器には見向きもせず、それらを包んでいた浮世絵に驚異の眼差しを向けたそうです。
 最も有名なのはゴッホ。
 赤貧の彼は浮世絵に魅せられ、絵が売れると嬉嬉として画商から購入したそうです。浮世絵に描かれた遥か東洋の小国に思いを馳せ、遂には「北斎に会う」ことを夢見るに至ったとか。実際、彼の描いた作品の背景には、有名な浮世絵が何点も描かれています。





 先ほども触れましたが、北斎の小布施での制作活動の中心は「肉筆画」。これらは一点限りの存在で、こちらでしか眺めることは出来ません。
 
 『椿と鮭の切り身』。
 シュールな表現もさることながら、この二者を組み合わせて描こうとする発想は、天才にしか出来ない芸当です。





 『鴨』。
 動きが伝わって来ます。水面の変化も見事に捉えています。





 『巌上の大鷲』。
 晩年の北斎の肉筆画では、最も著名な作品です。
 力強さとダイナミズムに満ち溢れ、空の王者たる存在を描いています。これ程の作品を80を過ぎて完成させているのですから驚異的です。



 さて、最後の展示室です。
 主役は2台の祭り屋台です。





 小布施に伝わる江戸時代の祭屋台のひとつ、東町祭屋台です。
 北斎はこの屋台に2枚の天井絵を描きました。
 『龍図』と『鳳凰図』です。




 
 リアリズムにこだわり続けた北斎。
 そんな巨匠が想像上の生き物を描いています。
 まるで、本当に存在するような気がして来ます。





 奥にはもう一台、屋台が。
 上町祭り屋台です。
 こちらにも2枚の天井絵が
 『男浪』と『女浪』です。




 
 『神奈川沖浪裏』に通じる大波の表現です。
 砕け散り飛沫に転じる寸前を描いたもの。
 自然現象を切り取り2枚の組作品にすることは、表現者として大変な辛苦を味わうことだったと思います。全く違うもの同士では組作品としての意味がなくなります。かと言い『似てて非なるもの』の組み合わせは、見る者からすると違和感がつきまといます。タイトルを『男浪』と『女浪』としたのは、まさしくそれを意識したように思います。『女浪』の描く円形のカーブに女性らしい美しさを感じるのは、ボクだけでしょうか?(笑)

 いやー、初めての訪問でしたが、素晴らしい作品がぎっしり詰まっていました。特に最後の屋台には圧倒されて頭が真っ白になってしまい、売店で『北斎漫画』の本を買うつもりだったのに、すっかり忘れてしまいました。

 再訪問は必至です。

北斎館

381-0201
長野県上高井郡小布施町大字小布施485
026-247-5206

9:00-17:00





 
Posted at 2019/09/09 14:07:25 | コメント(0) | トラックバック(0) | 美術館 | 日記

プロフィール

「お知らせ http://cvw.jp/b/2970161/46422054/
何シテル?   09/28 15:34
 妻はアルコール依存と摂食障害を患い、主治医の勧めで調停離婚しました。その1年後、彼女は突然世を去りました。一年に2回の母親との別れを経験した一人息子と、ドライ...
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