
先月31日一杯で、13年勤めた会社を退職しました(有休消化があり、正確には5月8日付け)。お越しの皆様のご参考になるかも知れないので、この決断に至った経緯を、少し記すことにします。今回、かなりの長文になると思いますが、ご興味のある方はお読み下さい。逆に全くない方は、この時点で回避されて下さい。
ボクが勤めていた会社は、「ブラック」とまでは行かずとも「ダークグレー」。所謂「同族企業」で、一族に認められた少数の社員が管理職に登用される体制。ボクは13年前に下級管理職として転職入社しましたが、終始一貫「外様」の処遇でした。
そんな去年6月のある日。
ボクよりも一歳年上の当時の支店長が、突然の電話一本で「馘首」されるという事件がありました。彼は新卒入社以来、一貫して表舞台を歩き、再雇用が終わる65歳の誕生日まで残り1年半でした。何でも、経営者の逆鱗に触れた様子…。「譜代大名」ですら、あっさり「クビ」にする体質(明らかな労働基準法違反)に、ボクは「次はオレだ」との想いに心を支配され、精神的に不安定な時期がひと月ほど続きました。
「いつ」、「何を」理由に宣告されるかは全く未知数でしたが、ただ「座して死を待つ」のではいけない、まだまだこの先もボクの人生は続くのだから、と思い、自身の棚卸をしました。ボクは5回の転職で6社を渡りましたが、終始一貫「総務部」の管理職としてキャリアを積みました。この経験から、ある国家資格を取得することを決め、昨年10月から今年3月まで、毎週土曜日に学校に通うこととなりました。
当初の計画は、今年7月の受験、8月の合格発表で「桜が咲いた」ら直ちに転職活動を開始、64歳を迎える12月までにはネクスト・ステージを実現する、というものでした。これは12月から特別支給の年金が受給されるからでした。
閑話休題。
昨年6月に当時の支店長が会社を去り、ある販売課長が昇格、現支店長に就任しました。46歳での大抜擢でした。ところが63歳のボクを使いにくかったのか、ボクを飛ばして仕事を進めるようになりました。この処遇に「そろそろかな…」との想いが日増しに膨れて行きました。
7月に試験を控えていますが、加齢が原因と思われる記憶力の衰退を自覚、このままでは危ういとの意識も高まっていました。
いろいろと、自分が置かれている状況を分析しました。
(1)特別支給の年金が、今年12月分から支給される。月額10万と心元ない金額だが、来年12月からは満額の支給が始まる。この時点で年金は月額約17万となる。12ヶ月の間は、節約を心掛けて暮らし、不足分は貯蓄を取り崩しせば何とかなる。
(2)自己都合退職で支給される雇用保険(失業保険)は、ボクの場合150日間(およそ5カ月)。年金と失業保険の同時受給は出来ないが、このタイミング(5月8日)で退職すれば、雇用保険が切れる頃に特別支給の年金受給が始まる。
(3)生命保険の支払いが、この4月分の引き落としで終了する。退職すれば5月からは収入が激減するが、この負担がゼロになるのは大きい。また70歳から支払い開始の積み立て型は、解約すれば約120万が戻る。これは来年度に請求される高額の「住民税」支払いに充当できる。
(4)何よりも、今必要なのは「学習時間」の確保。記憶力が減退した63歳半が合格を目指すには、試験直前の3ヶ月間は貴重。不幸にして落ちた場合は、11月の試験に再チャレンジできる。
(5)この会社に居られるのは、最大でも残り1年半。減給はされても、一定の収入は確保できる。だが、今の処遇が続けば、精神衛生上、絶対に悪い。そんな状況に耐えて65歳を迎えても、新しいことにチャレンジする覇気が残っているとは考えにくい。この歳にもなれば、次を目指すなら、1歳でも1カ月でも早い方が絶対に有利。
職場でボクが置かれた状況と、上記(1)から(5)の状況を鑑みて、今回退職を決断した次第です。
それでも…。
約40年もサラリーマン生活、いや「社畜生活」を続けた結果、会社と机、椅子を失った激しい喪失感に襲われました。辞めたことに後悔は皆無でしたが、『この先、オレはどうなってしまうのだろう…』的な『恐怖感』と言ってもいいと思います。心の中に大きな穴が開き、背骨を抜かれてしまったような印象…。
そんなボクを、激しく叱咤してくれたのは、彼女でした。
「なによ、あんた!自分で考えて決めたことなのに、何でそんな腑抜けみたいになるの!持ち家でローンはないし、息子さんだって独立しているから、学費の心配もない!ご両親は既に亡くなっているから、これから経済的にも肉体的にも精神的にも、介護の苦労だって絶対に来ないのよ!40年も働いたんだから、もうすぐ年金だって入るのよ!やっと自由になり、自分の事だけを考えて動ける時が来たのに、その有様は何なのよ!」
「…」
彼女は泣き出してしまいました。
目前のボクが、あまりにも情けなかったから…。
もうひとつ。
前回ご紹介した「某喫茶店」のマスターご夫婦。
心情を吐露すると、明日へ向かって歩いてゆくための言葉を授けてくれました。初めて訪れた客に、『勇気』を授けてくれました。あの記事を書いた後、彼女も連れて行きました。彼女とご夫妻は、すっかり元気を取り戻したボクに『良かった!』を連発してくれました。
ある時、マスターが呟きました。
「…私も、あと5年は此処で頑張ってみようかと思っているんだ…」
はっ、と気づきました。
これからの人生は、ただ闇雲に働いた(働かされた)この40年間とは違う。また勤め人をするにしても、自分で事業や商いを始めるにせよ、何を何処まで頑張るかを決めるのは、自分自身。
『目から鱗』の心境でした。
現在、この国の会社の多くは60歳定年。
法律で65歳までの再雇用が義務づけられていますが、再雇用を経験した者として、あまりお勧めしたくはありません。遅くとも55歳くらいまでには60歳以降の人生設計をし、その実現に動き始めるのがベストだと思います。この点、ボクは気付くのが遅かったと自省しております。
Posted at 2024/04/26 13:55:44 | |
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定年・再雇用、その先の人生 | 日記