2020年04月15日
サーキットにおける「送りハンドル」について……
最近SNS等を見てて気になったことがあるので少々長くなりますが、良かったら聞いてください。
FK8で早々にクラッチを減らして交換された方が、プロドライバーが教えていたクラッチ操作をしていたのに、という投稿がツイッターにありました。プロが言う正しい?クラッチ操作は2速発進、半クラ多用で変速ショックを出さないって事らしいです。もちろん、これがクラッチを早期に減らした原因です。
でも、このプロのやり方、正しいとも間違ってるともどちらでも言えるんですよね。問題なのはこのプロが、どんなレベルのドライビングテクニックを持った人を対象にしてこう言ったのかという事です。
このクラッチ減らした人みたいに、MT初心者に対してこのアドバイスは百害あって一利なし。逆にもう何年もMT乗り続けてる人なら、運転がスムーズになる秘訣になる。
実はこれと同じことがツイッターなどで時折揉める『送りハンドルはすべきかどうか』にもつながる事なのです。こちらも送りハンドルを支持する人の多くが『プロが勧めている』と言ってるから正しいとしてます。
しかし、こちらもクラッチの件と同じでアドバイスの対象が分かっていない方が多いようです。
僕がガン(黒沢元治)さんのドライビングスクールに通ってた頃の話です。
ある人が『サーキットでは送りハンドルは正しいんですよね』と質問したのです。それに対してガンさんは『そもそもサーキットで送りハンドルが必要になるほどステアリング回すかい?』と尋ね返してきたのです。
つまり、サーキットで送りハンドルが必要なほどステアリングを切っているのは、俗言う『手アンダー』というフロント荷重が不十分でステアリングの切り過ぎになってるとガンさんは僕達に説明してくれたのです。
実際、パイロンスラロームをやってみると分かるのですが、アクセルワークがきちんと出来て荷重移動がスムーズかつ的確に出来ていればステアリングは一度も持ち替える事無くできます。しかし、これがきちんと出来てないと、ステアリングを持ち替えてステアリングを切らないとパイロンを通過できないと感じてしまい、実際に車も向きを素直に変えてくれません。
このパイロンスラロームがステアリングを持ち替える事無くスムーズに出来る様になってからサーキットに出ると、かなりのショートコースですらステアリングを持ったまま持ち替える事無く周回出来る事がわかります。純正足のままでも、それまで自分が思ってよりずっと小さな舵角で車は鋭く曲がってくれるのです。
つまり何が言いたいのかというと……普通にサーキットを攻める場合『送りハンドルはそもそもする必要のないテクニック』なのです。
ではプロが薦めるのは何故か?それは『ステアリングを持ち替えねばならぬほど事態に遭遇した場合は送りハンドルをするのが正しい』と言う事なのです。それはどういう場合かといえば、すなわちフロントあるいはリアのグリップが失われた『緊急事態』です。この時にいち早くそして正しく的確に対処する為には『送りハンドル操作』が非常に有用で的確な操作が出来るという事なのです。
少なくとも市販車を使ってグリップ走行でサーキットを走行する場合には、送りハンドルはする必要のないテクニックなのです。
緊急時やドリフト走行でないのに、ステアリングを持ち替える程ステアリングを切る必要(送りハンドルをする必要)がある様な走り方は、そのどこかに自己流の誤った癖があるという事です。そしてこの癖に気づかぬ限りサーキットにおけるタイムアップはどこかで壁にぶつかり止まってしまいます。多くの人がこのことに気づかず、『この車はアンダーが強いから』とか車のせいにして改造に走りがちです。またいけないのが、ショップも商売ですから、ドライバーのドライビングテクニックが原因でも車の特性と言って足回り交換を薦める事が多々あります。
しかし、プロと言われる人が市販車をほぼ純正状態のまま(リミッターカット程度)サーキットで走らせた時のLAP TIMEは、実際に同じサーキットで走った人なら分かると思うのですがとてつもなく速いのです。ドライビングテクニックさえあれば今の市販車はとてつもなく速く走らせることが出来るんです。それでも自身の癖に気づかぬ人は『あれはメーカーチューンだから別物』などと言って自身のドライビングを反省する事がない。
こういう事が分からず、プロが言うからと送りハンドルを普通にする癖をつけると、少なくともサーキットでは自分のドライビングの悪い癖に気づかなくなってしまいます。何を隠そう、僕自身がガンさんに直されるまではそうでしたから、僕は間違いないと思っています。
もし、本当にサーキットで速くなりたければ、最初は絶対に送りハンドルをしない事。少なくとも自分がアタックしてるサーキットで『速い』と言われるレベルになるまでは送りハンドルを我慢してみてください。最初は色々戸惑ったりすると思いますが、結果的に上達が早くなりますよ。
注:これはあくまでサーキットでのドライビングテクニックの話です。車は趣味の世界ですので決して改造等を否定するものではありません。車を弄る事は、趣味としてはとても楽しい事だと思ってます。
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Posted at
2020/04/15 00:48:00
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