
こんばんは😃🌃
おじゃぶです。
本稿はクルマのアノ部品の加工について、工学的に考えてみました。効果はフィーリングあってのものですので、感覚的な表現も用いています。
早速本題です。
みんカラでは昔から散見されるエキマニ加工についてです。段差を削る、鋳肌を整える、ポートを拡大する。そして施工後には、排気抵抗が減った、抜けが良くなった、トルクが出た、レスポンスが良くなった! などなど。
もちろん、実際に変化するケースはあると思います。ただ個人的には、この手の話を単純に排気抵抗を減らせば性能が上がる、で片付けてしまうのは、少々乱暴だと思っています。
特にターボ車です。NAとターボでは、エキマニに求められる仕事が少し違います。今回、VABの車検での付帯作業として、純正エキマニを加工してもらいました。しかも、削る、付ける、確認する、外す、また削る。 最終的にエキマニ脱着、まさかの4回! 😁
せっかくなので、なぜエキマニを削るのか?を少し理屈から整理してみます。
■そもそも、何を削っているのか。
今回の目的は、闇雲なポート拡大ではありません。純正鋳造部品には、鋳肌や形状変化、接合部の段差などが存在します。流体力学的に問題になるのは、単に表面がザラザラしていることだけではなく、流路断面が急激に変化したり、流れが壁面から剥離したりすることです。流れが急拡大部や不連続な形状を通過すると、剥離や再循環領域が発生し、そこで全圧が失われます。
局所損失を単純化すれば、
ΔP=ζ・ρV²/2
ζ:局所損失係数
ρ:流体密度
V:流速
です。
つまり重要なのは、穴を大きくすることではなく、不要な損失を作っている形状を整えること、にあります。 ここは似ているようで、かなり違います。
今回も、可能な限り大径化するのではなく、段差や局所的な絞り、流れを乱す形状を修正して、流路を連続的につなぐという考え方です。
■排気抵抗は小さいほどいい! は半分正解、半分危険。
ここでありがちな話が、背圧があるから低速トルクが出るというもの。少なくとも背圧そのものがエンジンにとってありがたいという理解は適切ではありません。排気行程ではピストンが排気ガスを押し出しているので、排気側圧力が高ければ、その分だけ排気仕事が増えます。いわゆるポンピングロスです。
ただし、だからといって、じゃあ全部太くして抵抗ゼロに近づければいい! ともなりません。ここがエキマニの面白いところです。
なぜか。内燃機関の排気は定常流ではありません。排気バルブが開くたびに高温・高圧ガスが吹き出す、強烈な非定常・脈動流です。したがって、管径、長さ、集合方法、容積などを変えれば、平均的な圧力損失だけではなく、排気速度、圧力波、シリンダ間干渉まで変わります。
つまり、抵抗を減らす ≠ とにかく太くする。ここは今回、一番書いておきたいところです。
■NAなら、何を狙っているのか
NAの場合、エキマニの重要な仕事のひとつが掃気です。排気ガスには速度があり、さらに圧力波が管内を伝播しています。バルブオーバーラップ付近で適切な負圧波を利用できれば、燃焼室から残留ガスを引き出し、次の吸気を助けることができます。
そのためNAでは、管径・管長・集合位置・集合方式そのものがエンジン特性を作ります。太くし過ぎればガス速度を失い、狙っていた回転域の掃気特性を崩す可能性もある。逆に細過ぎれば、高回転・大流量域で圧力損失が増える。
つまり、NAのエキマニは、抜ければ抜けるほど偉い部品ではないということです。どの回転域で、どの圧力波を、どう利用するのか。ここまで含めて設計する部品だと思います。
■では、ターボのVABでは何が違うのか。
ここからが今回の本題です。VABの場合、燃焼室 → 排気ポート → エキマニ → タービンという順番になっています。つまりエキマニのすぐ下流には、排気ガスから仕事を取り出すタービンがあります。
タービンを回すエネルギーを単純化すると、排気の圧力・温度・流量に加えて、その時間変動=排気パルスも重要になります。ここがNAとの大きな違いです。タービン前で、排気をただ捨てているのではなく、まだ仕事をしてもらわないと困るのです。
したがってVABのようなターボ車のエキマニ加工で考えたいのは、排気エネルギーを無駄な損失に変換せず、できるだけ有効な状態でタービン入口まで運ぶこと、です。
■鏡面にしました! が本質ではない。
ここも誤解されやすいところです。内面をピカピカにすれば流体抵抗が劇的に減る、というほど単純ではありません。ましてや、高レイノルズ数(流速)の乱流です。今回重視したいのは表面粗さを極限までゼロにすることではなく、段差、突起、急激な断面変化など、流れを大きく剥離させる幾何学的不連続を減らすことです。
写真を見ると、鏡面加工というより、ポート周辺の形状をなだらかにつないでいるのが分かります。個人的にはこちらの方が理屈として重要だと思っています。
※過度な仕上げ研磨は要求していません。
■削り過ぎれば、当然いいわけでもない。
そして一番危険なのが、削れば削るほど高性能という考え方です。断言します、違います。
例えば断面積Aに対して、質量流量は概念的には、
ṁ=ρAV
です。
同じ密度・質量流量なら、Aを大きくすればVは低下します。さらにエキマニ容積まで増やせば、排気パルスの状態も変わります。つまり今回したいのは、流路を拡大することではなく、流れを邪魔している部分を取ることです。
拡大と整流は分けて考えるべきです。
■実際どうなったか。
ここからは計測値ではなく、あくまでドライバーとして、また試走した工場長と店長の体感です。まず感じたのが、シフトアップしたときのつながりの良さです。これが面白く、アクセルを抜く→クラッチを切る→シフトする→クラッチをつないで再びアクセルを入れる。当然、この間に排気流量もタービンの状態も刻々と変化しています。
施工前より、その一連の変化が妙に滑らかに感じられます。音で表現するなら(アクセルいれた時)、「ブォン、ブォン」だったものが、「ファーン、ファーン」という感じです(笑)
排気音そのものが大きくなったわけではありません。むしろ、変速前後の排気音と加速のつながりが連続的になったという表現が近いです。これは少なくとも、今回狙った、タービン前までの流れを整えるという方向性とは矛盾しません。
ただし、ここは大事なので強調しておきます。体感した=理論が証明された、ではありません。本当に効果を定量評価するなら、加工前後で条件を揃えて、タービン入口圧力、排気温度、ブースト立ち上がり、吸入空気量、トルク、燃料消費率などを比較する必要があります。そこまで測っていない以上、○馬力上がった! とか、タービン効率が○%改善した! などとは当然言えません。ここはオカルトチューニングとの境界線として、きっちり分けておきたいところです。
■燃費は良くなるのか。
理論上、局所的な圧力損失が減り、排気側のポンピング仕事が低減すれば、燃費改善方向に働く可能性はあります。
ただし、今回程度の加工で燃費が何km/Lも伸びるとは考えていません。燃費には気温、交通状況、タイヤ、アクセル操作、暖機、ECU制御など多数の要因があります。満タン法で0.数km/L変わった程度では、この加工の効果とは到底断定できません(特にVABのようなシビアな車)。むしろ期待しているのは燃費ではなく、過渡応答と、排気エネルギーをタービンまで届ける過程の損失低減です。
■エキマニ脱着4回、作業4日間(笑)
そんな理屈を頭では考えつつ、今回実際に作業していただいた内容は非常に泥臭いものでした。削って、確認して、取り付けて。また外して、また削る。最終的にエキマニ脱着4回したそうです(笑)
思う存分整備してください! とは言いましたが、本当に思う存分やっていただきました。嬉しいことです。ニヤニヤしながら楽しそうにやってましたよ! と、店長。
チューニングというと、社外部品へ交換することに目が行きがちです。しかし今回の作業は、純正部品の設計思想を大きく変えず、製造・接続上残っている局所的な損失要因を減らすという、地味な加工です。だからこそ、個人的には好きです。
最後に今回の話を一言でまとめるなら、
排気抵抗を減らしたのではなく、排気エネルギーを無駄に散逸させる形状を減らした。
VABのようなターボ車なら、こちらの表現の方が本質に近いと思います。そして施工後。シフトを上げて、再びアクセルを入れる。
ファーーン……ファーーン……。おお😁
散々理屈を並べてきましたが、最後にニヤニヤするのは、結局人間の方です。
大変面白い車検になりました!