さようなら、おもちゃのトオヤマ。
地元に、幼い頃に随分お世話になったおもちゃ屋さんがある。いや、今となっては「あった」と言わなければならない。
「おもちゃのトオヤマ」である。
幼少時代を過ごした身にとって、地元のおもちゃ屋さんというのは少なからず思い出があるだろうし、だいこんにとっては懐かしい場所でもある。
幼稚園の頃は親に手を引かれて連れて行ってもらったり、小学生くらいになったらミニ四駆を買うようになり(店の表に出されていたミニ四駆コースは毎週大混雑だった!))、高学年になるとNゲージを買うようになり・・・やっぱり子供の頃にここで過ごした時間は、フツーのスーパーマーケット等で過ごしたそれとは違う、特別な時間だったと思う。
それは、おもちゃの存在が店と子供であるお客さんの距離を縮めたのかもしれない。それと同時に「買い物をする」という行為を覚える場所でもあり、それが印象強く残っているからのような気もする。
その思い出深いおもちゃ屋さんが、突然閉店することになった。
今は電車通勤のため、家から駅まで歩いている。駅前商店街にあるこのおもちゃ屋さんの前の道は、ほぼ毎日通っていた。
クリスマスまであと数日という、年末だった。
店のシャッターの前に、ここのご主人が亡くなったという知らせが、葬儀店の看板によって掲示された。
思い出深いおもちゃ屋さんと言うくらいだから、当然すぐにその店のご主人の顔が思い出せる。あれほど元気だったご主人が、何で・・・。
年の瀬に起こった、ショックな出来事だった。
しかし考えてみれば、だいこんが生まれて今年で30歳になろうとしているわけだ。おもちゃ屋さんのご主人も、奥さんも、いつまでも若いわけではないだろう。寄る年波には・・・という括りで片付けたくはないが、自然の節理だ。受け入れざるを得ない。
年が明けてから数日後、「閉店セール」の告知が店の入口に貼り出された。奥さんが書いたのだろうか、それは吹き出しポップ等で見覚えのある筆跡だった。
それと同時に店の軒下には「ご自由にお持ち下さい」と書かれた箱が設けられ、ご主人の遺物であろう小説が数十冊並べられていた。
1月29日。とうとう閉店セール最終日となった。
忙しいことを言い訳にしてか、何となく店の奥さんの顔を見ようという気になれなかったためか、今更行っても恥ずかしいと考えたためか、自分でもはっきりとした理由はないが、結局最後まで足を運ぶことができなかった。
おもちゃ屋さんを卒業して大人になっただいこんが、今こうして元気に働いている。
半年あまりであったが、その姿を毎日店の前で見せることができたのは、「おもちゃのトオヤマ」へのせめてもの恩返しであると思いたい。
Posted at 2010/01/30 01:18:57 | |
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