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2010年12月08日 イイね!

テープデッキとセラミックス

テープデッキとセラミックス←2インチのデッキで使用したキャプスタンシャフト。
 白い部分でテープを駆動し、この材質はアルミナ。
 上の部品の赤い部分はルビー。(参考、後述)

「あかつき」残念でした、6年後に期待!!!!!

ご存知のように「あかつき」のスラスターにセラミック
使用されましたが、こんな所にもセラミックという事で、
今回はMTRに使用したセラミックについて。
前回と同じように、守秘義務に触れない範囲で。

PLANET-Cはスラスターにセラミックスを使用した事は良く知られていますが、
「あかつき」に使用されたセラミックスは窒化珪素、見えている色は材質そのままの色です。
又、自動車部品に使用される物のほとんどがこの材質。
加工方法や物性はあちこちのサイトで紹介されているので、そちらを御参照ください、

さて、キャプスタンシャフトにセラミックスを使用した目的は、
1)非磁性。
2)耐摩耗性。
の2点です。

通常、キャプスタンシャフトに使用する金属材料はSUS-440CやSUS-420J2、SK材等です。
困った事に、これらの金属は帯磁してしまうという特性を持っています。
帯磁自体はテープ上に磁気記録されたデータを変性させる事はありませんが、
問題は帯磁したシャフトが微弱な磁気を感ずる磁気ヘッドの近傍で回転している事です。

これは、着磁したシャフトが回転すると、その磁界がヘッドを横切り、その事により
その回転周波数のノイズが発生してしまうという事になります。
脱磁すればいいのですが、完全には脱磁できません。
ヘッド自体のシールド等でこの影響を回避はしていますが、間違って使用時にシャフトを
着磁させてしまう事故には対応できません。

ビスを緩めた時や、取り付ける時にドライバーの先端から落ちないように、先端を着磁した
ドライバーがありますが、あのドライバーの先端を当てられると簡単に着磁されてしまいます。

磨耗に関してですが、SK材等を使用する場合は防錆を兼ねて工業用クロームめっきを
テープ走行個所に施しますが、その耐久性には限界があります。
実用上はキャプスタン駆動部に掛かる負荷や磨耗因子をなるべく下げ、問題ないレベルには
設定してありますが、機器の耐用年数を越えた使用でははっきりとした損耗が見受けられます。

セラミックスは非磁性、耐摩耗性に関しては金属に比較して圧倒的に優位です。
特に磁性に関する優位性が一番で、業務用として使用する場合の不慮の事故回避に関して
の優位が期待できます。
「もし、マグネット等でシャフトを帯磁させてしまったら」という事を回避するには
セラミックスのような非磁性の材料でしか対応できません。

セラミックスの弱点は脆いという点にあります。ドライバーの先で叩かれた程度では
全く損傷しませんが、テストピースを鉄板に衝撃落下させると簡単に破壊します。
デッキの場合はこのような外力が加わる可能性は無い為、この弱点はマイナス要因には
なりません。

さて、シャフトのついでに、テープを駆動するにはピンチローラーという磁気テープを
挟み込んで駆動する部品が不可欠です。
ゴムのローラーですが、これが無いとテープを駆動できない為、重要な部分です。

技術書には「テープ幅の2倍の幅」が良いとか書いてある場合がありますが、その根拠は
理解できません。全く意味の無い話です。
必要なのは、テープをどのように駆動するかの考え方です。
テープをキャプスタンで駆動するか、テープをピンチローラーで駆動するかでローラー
の緒元は決定されます。決して始めから上記のような「2倍の幅」が唐突に出てきません。

詳細は長くなりますので、ローラーの件は別の機会に譲ります。
ピンチローラーはゴムですが、外周は研磨されています。実はこの研磨で表面が鱗状となる
場合があり、回転方向にならっている時はいいのですが、鱗の方向と逆に回転すると
鱗の先端がテープをたたき、それを原因とするフラッターが発生します。
ピンチローラーによっては、側面に回転方向を示す矢印のマークがありますが、これは上記の
問題を回避するために回転方向を指示している為、注意が必要です。
自動車用タイヤのの場合、回転方向を指し示す為に矢印がある物がありますが。
それと同じような目的です。


写真のシャフト、セラミック部分の左側にある小さい穴はセラミックを金属部分に接着する際の
空気抜き。
その隣の光っている部分にはボールベアリングが入る。
この個所で問題になるのはベアリングのクリープ。

上記の写真のシャフトに使用したベアリングの規格はABEC(アメリカの規格)なんだけど、
今日ネットでみたら驚いた。
スケートボードで使用しているボールベアリングはこの規格(大きさ、精度)を使っているんですね。
ABEC5だとかABEC9とか書いてあるが、ベアリングのここらの精度とスケートボードの
ベアリング取り付け部の構造考えたら、このあたりの精度比較は全く意味無いと
思うんだが。ご存知のようにベアリングの精度、ミクロンオーダーですよね。

今の時代、黙っていても高い精度のベアリングができてしまう。測定するかしないかの
差という場合すらある。保障するかしないかの差とも言える。
30年ほど前のベアリング工場は女工さんがいっぱい並んでボールを手作業で組んでいたが、
今は全自動、インナーレースとアウターレースの径を自動測定し、ホッパーに径でランク分け
されたボールが自動的に組み込まれる。

※※
当初はアルミナではなく「あかつき」と同じ窒化珪素を使いたかったんですが、コストの点で
不可でした。試作と実装試験まではしたんですが「コスト」は大きな要因でした。

※※※
写真にあるルビーの部品はスクレイパー。
テープ上のゴミや磨耗粉をヘッドの前で取り除く役目のもの。
デジタルオープンで使用。原価は6桁の金額。
詳細は別の機会に書きます。
Posted at 2010/12/08 20:45:56 | コメント(1) | トラックバック(0) | オープンリール・MTR | 日記
2010年09月10日 イイね!

テープスピード

テープスピード現職の頃
←こんなもんを設計していた。
業務用のテープデッキ。MTRと言うやつ。
写真のリールは10inだけど1214inまで掛かる。
テープ巾は2in。
23年前に設計したモデルだけど、いまだに各国のスタジオで
現役として使用されている。
より古い他社の製品も同じように現役で使用されている。
アナログはしぶとい。

で、一寸毛色の変わった事をという事で。
・守秘義務があるんで、ふれない範囲で。
・不定期的気が向いたとき連載。
・うんと暇な時にどうぞ。
・又、後日訂正個所が発生した場合、その個所を明示します。
そう、記憶がおぼろげなので、、、

第一回目は「テープスピード」

テープデッキのテープスピードを測定する場合、通常はテストテープ
という基準周波数が記録されたテープを再生し、周波数カウンタで
その周波数を測定し、偏差を測定する。

通常はこれでいいのだが、実はやっかいな事がある。
テープは伸びる、使用する材料も温度特性を持っている。
デッキによってテープにかけるテンションが異なるので、テープの
伸び方も異なってくる。さらに、テンションサーボの有無で、テープの
巻き始めと巻き終わりのテープテンションに差異が出てくる。
テンションサーボをかけていない場合、巻き始めでは弱く、巻き終わりでは
強いテンションがテープにかかる。
テンションサーボを掛けていても、生っちょろいサーボだと暴れる。
ということは、測定に際してもそうだが、そのテストテープがどのような条件で
作成されたかも問題となってくる訳である。
・・・商用のテストテープは作成時、そのような条件を考慮して作成しているので
・・・ほとんど問題は無い。

では疑義のある場合、正確に測定したい場合どのようにしてテープスピードを求めるのか。
まず、測定したいデッキで基準信号をテープに記録する。
次にそのテープを四三酸化鉄粉で現像し、記録したデッキと同じテンション
をテープに掛けた状態で、顕微鏡で現像された信号を単位距離でカウントする。
そして結果として正確なテープスピードが算出される。
・・・テープテンションはテンテロメーターもしくはテンションアナライザーで測定するが、
・・・記録ヘッド直近にプローブを入れられないので、直近で入れられる個所で測定し、
・・・記録ヘッド部でのテープテンションは計算で求める事もある。

同じテストテープでワウ・フラッターも測定する。
これも上述とは異なるが、同じような問題点がある。
ややもすると、テストテープを作成したデッキのワウ・フラッターを測定
してしまう事となる。
これを回避する方法として異時録再法という方法があるが、
まず自機で基準信号を録音し、それを用いてワウ・フラッターを測定するが、
例えば自機に6Hzのワウがある場合、記録時と再生時の位相が打ち消す状態であれば
その成分はゼロとなり、逆に位相が合った場合は倍になってしまう。
これが全周波数成分で起こる訳だ。

スタジオのエンジニアは保守の為に、特性のチェックを行う。この時、市販の
テストテープが使われるが、とある外国のテストテープは疑義があるが、
使用するなと言う事も出来ず、困った事があった。

テープスピードの件には関係ないが、テープ自体も問題点を抱えている。
メーカーは電磁変換特性に関してはカタログや実使用で問題となるので、十分検討
してマイナーチェンジを行っている。
しかし、機械的特性(特に摩擦係数)に関しては注意を払っていないので困った事が
起きる。サーボを掛けている場合、テープの摩擦係数もサーボループの中の一つの
定数として繰り込まれる。で、この定数がある日突然変わってしまう訳。
サーボ屋さんの苦労が始まる。
Posted at 2010/09/10 22:54:23 | コメント(0) | トラックバック(0) | オープンリール・MTR | 日記

プロフィール

「ポッポ牛乳のソフトクリームと野辺山宇宙電波観測所へ。 http://cvw.jp/b/757405/47006940/
何シテル?   06/06 10:41
メカ屋です。 (でも車いじりは全くの不得意。ちっちゃいの専門)
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