山と渓谷の2月号、特集は「不安解消!単独行者のお悩みアドバイス」、アンケートの結果を基に記事にしたんですね。私もほとんどの場合が単独行だったけど、昨年の2020年の2月の特集を見たら「再確認!単独行者の登山術31」、単独行者って多いんだろうか。
アンケート「単独行者が抱える悩みとは」の中で
【山行準備の悩み・疑問】 で一番多いのは「登山口が複数ある場合、どのルートが自分に合っているかわからない」がトップ。
ネットや雑誌、もちろんすべてを見た訳ではないけれど、生活が落ち着いたり、リタイアしてから登山を始めた方が多いと見える。奥武蔵・奥多摩・丹沢等々の低山を歩き回り、徐々に難易度を上げてゆくのではなく、雑誌の特集を見て山行を決められようですね。
俗に言うハイキング、ナップザックを背負って奥武蔵や奥多摩を歩き回り始めたのは中学・高校生の頃から。電車賃はお小遣いで、メタでインスタントラーメン作ってお昼。石油やガソリンを使うストーブは憧れの的でした。
「登山ルートが選べない」と言うけれど、何回も登れば地図の等高線の密度から大雑把な時間や、その時間を基にしたコースが選べるはず。登山地図にも所要時間が記載されているのでコースを選ぶのに障碍は無いと思うんですけどね。難しいのは何かあった時のエスケープルート。
ハイキング程度ならエスケープルートは数多くあるのでいいけれど、それでも考慮する必要はありますよね。これは低い山でも標高のある山域でも同じ、だけど、歩き回った経験値が少ないと自分の体力を含めたエスケープルートの選出は難しいですよね。
そして
【装備の悩み・疑問】 の項でのトップが「装備に不備がないか心配で荷物が増えがちだ」。これも経験値だと思う、カット&トライの経験で自分の山行形態にあった自分なりの装備が出来てくると思う。色々な方々が雑誌上で自分のザック内の装備を開陳している記事があるけど、極端な例かもしれないけど、藪漕ぎのある沢登とピークや稜線を踏む山歩きとザックを含めた装備は変わってきますよね。
「山と渓谷社」の編集をなさっていた
若菜晃子さんの書かれた「街と山のあいだ」 の中で若菜さんが「寝袋はどんなが」と尋ねたら「山行の形態が判らなければ選べない」と答えが返ってきたと書かれていた。若菜さんのこの御本、若菜さんが編集者の頃の串田孫一氏とのやりとりがあったりして面白いですよ。
アンケート結果は上記他に【行動中の悩み・疑問】・【トラブルの経験】が掲載されていたけど。上記と同じく経験値である程度まで解決できるのかと思います。クラブに入れば解消すると思うけど、単独行を好みとしたい場合はとにかく歩くことなんじゃないですかね。三浦雄一郎氏が「スキーは三千回転ばないとうまくならない」と仰っていたけど、正にその通りだと思う。
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多分、歩き回る経験値が少ないのでコースを選ぶことが難しいんだろうし、装備も経験値が少ないので選択できないんですかね。自分の体力余裕は歩き回る事で経験値として得られるはずですし、その経験値で体力の余裕で何処まで歩けるかを自覚する事が出来ると思うんですけどね。
装備にしても同じ、雨の中や深夜に歩き回る事で、何が必要かが体に染みついてくる。例えばザックを選ぶ、目的によって違ってくると思うけど私は内側が暗色の物は使わない、白や明るい色であれば中身がはっきり判るので小物の行方不明が防げる。ザックの大きさも日帰り以外なら荷を全て出しで足をザックに突っ込める大きさを選んでいる、最悪の時の防寒。
これも例えばだけど寝袋、私が常用していた寝袋は羽毛の半シュラフ(今はもう無いと思ったけど復活しているんですね)と薄いシュラフカバー、半身用の発泡材のマット。これは日帰りでも持って行ける時はザックの中。縦走の時はこれに行動用としても使う羽毛服。
好きな所で止まって景色を眺める時間を作れるのが単独行のいいところ、グループで行ったらそんな事はできませんよね。
あんまり関係ないけれど爪切りはザックの中の必需品。そして。足の爪は山行の一週間前に切る、前の日に切って痛い思いをした思いがあるので鉄則でした。雑誌でも山行形態での装備について色々指南がある、しかしその先にあるのはその山行形態も個人云々で微妙に違うという事、だから装備も違ってくる。
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登山、多くの人が亡くなられている、合掌。谷川岳一ノ倉沢、2012年までの記録で死者805名、エベレスト山塊より多い。オーバーハングに宙吊りになり救助不可、なので自衛隊に出動を求め、射撃でザイルを切ってご遺体を収容という遭難もありましたよね。こんなに死亡率が高い一般論的に言う趣味ってあるんだろうかと思う、ある意味異常とも言える。
雑誌等で多く紹介されている穂高連峰、毎年のように遭難者が発生している。救助隊や小屋の方々は何がなんでも懸命に救助に駆け付ける、遭難に対して決して非難はしない、ただただ懸命に身を削って救助されている。死にに行くために山に登るんじゃないですよね、無謀と非難される場合もあるけれど、その人は最善をと思って行動していたと思いたい。
常に雑誌にコース紹介として取り上げられる穂高連峰、コースは足を踏み外せば絶命の場所の連続。でも雑誌の綺麗な写真、行きたくなりますよね。でもね、登山二回目が穂高とは少々勘弁してほしいと思いますよ。彼女ら、無事に下山できたのかな。
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登山は多分一番死亡率が高いスポーツかもしれない、普通のモータースポーツより多いかもしれない。モータースポーツが厳格な規則で安全が守られているが登山は個人の采配だけ。長く登山はしてきたけれど、何故って言う部分が未だに朦朧としている。滝壺に落ちたり、カメラが身代わりになった事もあるんですけどね。
ヒマラヤの8,000m峰のアンナプルナを初登頂したモーリス・エルゾーグ氏、その代償として手と足の指を全て失った。ベースキャンプを後にしたが凍傷が悪化し、麻酔もないまま一本一本指を切られる痛みに耐えながらの帰路だったんですよね。
マン島TTレース、Wikiによると110年で240名の死者。谷川岳(ほとんどが一ノ倉沢で遭難)では81年間で805名。マン島も一ノ倉沢も人間が向かっている方向は同じなんだろうか、色々な場面で個人の限界を試す時があるけど、それが人間?。マン島、単純な勝ち負けだけじゃないですよね。
Isle Of Man TT Races | In Your Eyes | Robin Schulz | Motivational video
Legendary Isle Of Man TT Races | Fire In Your Eyes by Robin Schulz | Just EPIC Sports
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A tribute to Tourist Trophy
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Isle of Man Tribute
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映画『CLOSER TO THE EDGE マン島TTライダー』予告編
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レースで事故死したポール・ドブスの妻、ブリジット・ドブス、「死を愛することはできない。でも、死を知らずに人生を愛することはできない」。死にたくて山を登るんじゃないと思う、やはり相互に独特な世界なんですかね。
山野井泰史、ヒマラヤのギャチュン・カン北壁を登頂、下山時に吹雪と雪崩、両手の薬指と小指、右足の指を全て凍傷で失う。妻は山野井妙子、グランドジョラス北壁ウォーカー稜を女性として冬季初登攀。山野井妙子、マカルーの無酸素登頂に成功、しかし下山時に嵐でビバーク、重度の凍傷にかかり、手の指の第二関節から先を10本失う、そして足の指8本切断。そして泰史と登ったギャチュン・カン北壁、泰史と一緒に吹雪と雪崩、妙子はさらに深く指を切断。
1/2 山野井泰史氏
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【世界最難ハンドクラック】山野井泰史氏2019シーズンのベストトライ
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山野井妙子さん@三宅島
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ポール・ドブスの妻のブリジット・ドブス、「死を愛することはできない。でも、死を知らずに人生を愛することはできない」。この言葉の前に「来週私は生きてないかもしれないという気持ちが潜在意識にあると、人生を愛せるようになる。」と言っている。
このブリジット・ドブスの言葉、凍傷で手足の指を失った山野井泰史氏、上の情熱大陸で好きな岩を登りながら「それは百倍落ち着く、家の中でボーとしている時よりは百倍は大げさだけど何倍も落ち着くよ。今日は特に天気いいし、風も結構気持ちいいし、何倍も落ち着く。う~ん、もちろんこっちの方が幸せだし。」という山野井氏の言葉に通じるのかなと思う。
「われらのものならぬ世界」 なんですかね。昔、パリダカの放送をよくしていた。ある年、ライダーが低い切株に片足を激突、そして解放骨折。そのステージを走り切った、どんな世界なんだろうと思った。