少しモチベーションが上がり、チトあやふやだったカムの摩耗についてオベンキョ(笑)。
調べたいことは、カムの摩耗ってアイドリングの時が一番シビアと言われていますがその理論構築であります。(ちょっと大袈裟 笑)
カムの加速度はランプ部(バルブがリフトし始めるところ)が大きいのだが、何でノーズが先に減るのか?なんてことがよく理解できていなかったのですよ。
で、小難しい事になっちゃうと思うので、結論を先に言っちゃいますと・・・・
アイドリングの時がカム(特にノーズ部)にとって一番シビアで摩耗する危険があるのですよ。ランプ部は油の回りも悪くなく、広い面積で荷重を受けるので摩耗は少ない。
(なので、買物の時、室内を冷やしておこうとエンジンを掛けておくなんてダメですねえ。)
では、カムの特性図から
図はカムのリフト(黒)開閉の速度(赤)加速度(青)を示しとります。
摩耗という切り口で考えますと、摺動するカムフェースとタペット/カムフォロアーの面圧と滑り速さの関係(PVってところか?)になると言え、この特性図で加速度が面圧の力に関係してくると言えます。
つまり、図で加速度が高い部分の摩耗が大きなるはずで、青線のツノの様に立ち上がった部分(カムがバルブを開き始めるランプ(pre cam)部)とノーズ(cam tip)になると考えます。
ノーズ部はカムが最大リフトした図中央で、加速度がマイナスになっとりますので、大きな加速度で動いたバルブにスプリングの反力でブレーキがかかりながら最大リフトまで開いていくという作動状態になるのだと考えます。
(話飛びますが、基本スプリング反力以上にカムの作り出す荷重(バルブを開く力)は大きくならない様に設計しとるワケですねえ。)
という事で、荷重が大きくなる部分→摩耗しやすい部分はランプとノーズという事が理解できたかなあと言うところです。
しかし、ノーズ部分が一番摩耗すると言われるのは何故か?ここがよく分りませんでした。(ランプの発生荷重が大きいし・・・)
そこで電脳図書館を徘徊すると、いい参考レポートが見つかりましたよ。
ドイツUniversity of Bayreuthの
Understanding Friction in Cam–Tappet Contactsというレポートです。これからわかったことは以下という感じです。(アバウトですけど)
この図は、カムフェース3部位の油膜厚さを回転数で見たものです。
500rpmではランプ(pre cam)とノーズ(cam tip)部が油膜が薄くなっとります。
これが回転数が上がるにつれて油膜が形成されてきて2000rpmではノーズ部分に薄い部分が残るだけという様な状態になるようです。
下半分の図は接触部の圧力を示していて、高回転ほどノーズの圧力が減っていることがわかります。
この図は、左が回転数による摺動面に入り込む油の速さ(かな?)のグラフ。右が回転数によるカムフェースコンタクト部分の発生荷重です。
左のグラフからはノーズ部(0°)ではオイルは回転が上がるにつれ摺動面に入り込まない状態になり、ランプ部は逆に入り込む速度が回転につれ速くなるということを示しているのだろうという感じ。
右のグラフからは、カムに加わる荷重はランプとノーズでランプが大きく、それぞれ回転数が大きくなると荷重が増える事になると言えます。
そんなこんなで、ここからは私の理解になるのですが・・・
・ランプ部の発生荷重は高いが荷重を受ける面積が広く面圧はノーズと比べ低い。
また潤滑も良好なので、摩耗はノーズ部分の方がシビアになる。
・ノーズ部分の摩耗は(油膜が形成しにくい)エンジン回転数が低い程多くなる。
というところです。
これらは、全てのエンジンに当てはまることで、ハイリフトカムやバルブスプリング強化なチューンドエンジンは、さらに厳しくなると言えるでしょう。
(なので、俺のエンジンはハイカムでもアイドルは低くできる。なんてやらん方が良いと思います。)
で、話飛んで、ノーズ部の摩耗対策ですが、有機モリブデンやZDDP等の極圧剤が添加されたオイルが良いのだと思います。
また、コスワースのBD系やEAエンジンは、アイドルは2000rpm以上を推奨しとる様ですし、アメリカのカムメーカーも同じ様に言っとりますのでご参考まで。
その他ご参考
トヨタ中研のレポート(こちらの方が年度が早い。さすがです)
https://www.tytlabs.com/japanese/review/rev361pdf/361_039ohmori.pdf
Posted at 2022/07/14 18:01:27 | |
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