
この日は、マーチの試乗の後に、別の販売店でカローラアクシオの展示をしていましたので、乗ってみることにしました。カローラフィールダーハイブリッドも展示してありましたが、後方に別の車を止めてありましたので、別のスペースにあったカローラアクシオを選んだのでした。ガソリンエンジンの1.5Xモデルです。
カローラの歴史(抄)
カローラの歴史まで語りますと長くなりますので、ごく簡単に今日のアクシオに至った歴史を書きます。
カローラは、長い間トヨタのベーシックカーとして展開されていました。初代や二代目は、コロナでは高額すぎ、パブリカでは安っぽすぎる、という層に購入されていました。2000年頃のフィットのように、若々しい車として受け入れられていたのでした。初代ではSLやスプリンター、二代目はレビンやトレノ、三代目ではリフトバックなどの若者に訴えかけるモデルが追加され、常に若者のアイテムとして存在していました。
四代目はまさに成熟期で、クリーンなスタイルとレビン・トレノだけでなく、セダンにまで加わったGTをもって、カローラがあれば自動車メーカーがひとつできるほどでした。五代目は「ハチロク」ばかりが目立ちますが、クーペは後輪駆動のまま、ワゴン・バンは旧型を継続と、FWD化に翻弄されたモデルでした。少し前にファミリアがもてはやされ、カローラⅡを追加したり、FXを追加したりと、迷いが見られたモデルでした。
六代目は、全車がFWD化されました。旧型で感じられたFWDゆえの安定感に欠けるスタイルから、カリーナEDルックの、安定感あるデザインへと変更されました。好景気ゆえ、セダン系の需要がコロナを飛ばして、お金があればマークⅡ、なければカムリ・ビスタという風潮が出来上がり、カローラも特に後期型は完成度が高かったのですが、話題から外れがちになってきました。ここで別系統であったスプリンターカリブを合流、カローラワゴンとともに追加しました。
七代目は、セルシオの影響を受けて高品質に重点が置かれました。一方で、セダンはエアコンを標準装備にして定価が上昇したり、レビンのスーパーチャージャーに至っては230万円程度(?)と、高額になっていくカローラが伺えました。とはいえ、ターセルやコルサもありましたので、それらに場所を明け渡すあったのでしょう。
八代目は、七代目の反省と景気が後退していた時期だけに簡素化、軽量化が行われました。バンパーモールの未塗装化、内装の簡素化が行われました。前期型ではGTがモデルから落とされました。この簡素化は不評であり、1年後には未塗装モールを塗装する変更を、後期型では貧弱に見えたクオーターパネルの形状も変更し、ようやく面目を保ちました。この頃から「カローラはオヤジ臭い」と言われるようになりました。すでにレビン・トレノは若者のクーペからマニアックな人の車にイメージが変わってきてしまいました。
一方で、ワゴン人気から七代目のワゴンが延命し、ミニミニバンとしてのスパシオを追加、すでにセダンとクーペでは需要が賄えないことを露呈していました。
九代目は、「ニューセンチュリービークル」として過去を切り離すモデルチェンジが行われました。セダン、フィールダー、アレックス、ランクス、スパシオの構成となり、スプリンターは廃止されました。ここでプリウスの人気がじわじわと出てきて、カローラの市場を奪い始めました。1800ccエンジンも追加され、再び贅沢化が進みました。
十代目は、セダンに改めてアクシオのサブネームを追加、フィールダーとの二本立てとなりました。ランクス・アレックスを、オーリスとブレイドに分離、モデル構成のシンプル化と贅沢化で、カローラを再び盛り上げようとする機運が感じられました。しかし時代はハイブリッド化へと進んでおり、徐々にカローラの居場所がなくなってきていることが感じられました
十一代目は、失敗した小型セダンのベルタを吸収する形で、今度は事実上ヴィッツのセダンとして展開されました。フィールダーとの二本立てで、モデル途中からハイブリッドも追加されました。これまでプリウスに奪われていた市場をカローラで奪い返すというより、プリウスのスタイルが好きになれない人向けのハイブリッドとして再出発となりました。人気はあるそうですが、普通のガソリンエンジンもあり、5速MTもありと、間口が広い車であることはまだ健在です。
エンジン
マイナーチェンジで、2WDの1500cc、CVTモデルのエンジンが2NR-FKEという、アトキンソンサイクルを採用した新エンジンとなり、トヨタにとって大切なモデルであることがわかります。既に登場しているヴィッツの新1300ccエンジンと基本を同じとしています。旧型の1NZ-FEエンジンも初代プリウスで登場したアトキンソンサイクル1NZ-FXEエンジンをオットーサイクル化したエンジンであり、新技術が盛り込まれているのですが、18年で技術の優位性がなくなり、引退となりました。K型エンジンは21年、A型エンジンは18年ですから、まあまあのサイクルです、
アトキンソンサイクルに対するオットーサイクルとは次のようなものです。本エンジンは、1気筒当たり425ccであり、吸気バルブを開いて425ccの混合気を吸引しています。吸気バルブを閉じて混合気を圧縮、上死点でスパークプラグに火花放電を飛ばして着火、混合気を燃焼させて425cc分ピストンを動かして動力としています。なお、「燃焼効率」とは、上死点後10度までの期間にノッキングを起こさずに混合気を燃焼させられる効率です。
吸引する混合気を減らすために出力は低下しますが、最高燃焼温度が低下するために窒素酸化物が減少、シリンダーに逃げる熱が減るために冷却損失が減少、排気温度も低下するために熱損失も減少、インテークマニホールドの気圧も大気圧に近づくために、ポンピングロスも低下します。
いざ加速しようとする際には出力が低下するのですが、素早く動かせる電動可変バルブタイミングを駆動、バルブタイミングをオットーサイクルに戻す動作をしています。
エンジン自体は、NZエンジンよりも少々静かという程度で気づかない人は気づかないかもしれません。一旦走り出すと出力はまずまず、無駄に力が余っていないという印象です。燃費のためには、車両を巡航させるために必要最小限度のエンジン出力にすることであり、オットーサイクルではリーンバーンをすることがせいぜいでした。このエンジンではサイクルを変化させ、効率を上げています。
そして加速をする段になると、バルブタイミングがオットー化されるようで、素早く出力が出てきます。このレスポンスが素早いために、NZエンジンのような巡航時の出力不足感、加速時のレスポンスの鈍さが完全に解消されており、なかなか痛快です。節約家にも走りたい人にもどちらにでも対応できるエンジン特性です。エコモードスイッチはなく、常時エコモードのはずですが、全く力不足を感じません。これからは電動デュアルVVTとアトキンソンサイクルが普通エンジンの主流になりそうな予感を感じさせます。
CVT
旧型アクシオが登場した際のCVTは、本当にひどいものでした。巡航走行になるとあれよあれよという間に高段位に変速してしまい、エンジンの力不足を常に感じさせました。再加速をしようとするとCVTが低段位になるまで待たなければならず、「まどろっこしい」という言葉はこの車にあるのだ、と感じたものです。
このモデルになってかなり熟成が進みました。高段位への変速もそれほど速く行われるわけではなく、ちょうどトルコン式4速ATがオーバードライブに変速される程度の時間を要するため、気持ちの上で余裕が生まれます。
再加速でも、エンジンの出力に余裕があること、変速レスポンスも改善されていることから、ほぼトルコン4速AT程度の反応ではありますが、余裕があり、かつ、ダイレクトな加速が味わえます。トヨタのCVTは熟成の領域に達してきています。あとは、耐久性でしょうか。トヨタ車でもCVTの耐久性には難が有り、10万km超で走れなくなることがあります。
ステアリング
電動パワーステアリングの効き具合は過剰で、少しでもステアリングホイールを動かすと勝手に回ろうとします。路面の状況はあまり伝えず、適度に不感帯があります。平凡な出来ですが、長時間運転をしても疲れない設定です。中立時にもそこそこの重さが感じられ、直進走行でも疲れないことが想像できます。
ハンドリングそのものは、ちょっとした曲がり角でも踏ん張り感が砕ける、全くの低速仕様の出来です。かつて「操舵時に不安感を残すことで、運転士に危険を知らせる」などと言った評論家さんがいましたが、その古い価値観そのもののステアリング操舵感です。現代の車は、操舵時にでも不安感を感じさせない設計をするものですが、この点は20年前の車のままで、ほとんど進化を感じません。直進や街乗りでは疲れないものの、山岳路では、全く楽しくないステアリングであることが想像できます。
サスペンション
乗り心地重視です。旧型初期で感じられたサスペンションの動き出しの鈍さは姿を消し、すぐ動き出すようになりました。曲がり角でも大きなロールを感じることから、減衰力は程々で、うねり路面では煽られることが想像できます。しっかり感はダンパーで演出しているようで、山岳路などの、曲がり続ける時間が長いようなカーブでは、ロールの大きさに悩まされるように想像できます。
ブレーキ
遊びも適当で、ペダルの踏みごたえと制動力が比較的比例して変化する方式です。この辺りの操作系の印象が変わらないことがカローラの美点です。主たるユーザーを、男性においていることが功を奏しているのかもしれません。
ボデー
後期型になり、キーングリルを採用しました。派手な顔つきとなり、主たるユーザー層が付いてこられるかどうか、心配です。室内からの視界も良好で、快適かつ安全な運転が可能なようになっています。スタイル上では面白みはありませんが、視界が良いということは、運転が楽になりますよ!
Aピラーの根元が前進して室内が広くなったとありますが、なんとなく車の前の方に座らせられている印象で、少々落ち着かない気分にもなります。再考を要する点です。
ボデー剛性はまあまあであり、若干ゆるさを感じます。マツダの車などはソリッドな感じがし、カローラとは素人でもわかる違いがあります。デミオには上質さを感じ、カローラアクシオはちょっと安っぽい、そう気づかれてしまうことでしょう。
内装は簡素そのもの、ベーシックカーの域を出ていません。Gグレードを選択すればもう少し上質な印象となります。しかし、椅子だけがベージュのグレードがありますが、ちょっと中途半端な印象です。
まとめ
車としての仕上がりはよくなっていまるが、キーングリルを採用して少々ボデーバランスが崩れた印象です。前期型を熟成させて成功するモデルは限られていまして、後期型になってビッグチェンジしたモデルはたいていバランスを崩すものです。
年配者向け車としては成功しており、価格も適当ですが、その年配者はあと何年車に乗れるのか、あるいは、維持費を考えて軽自動車に移行してしまうのではないか、そんな心配をしております。すなわち、ユーザーはいないかもしれない、ということです。
エンジンの可能性の高さと価格、CVT変速性能の熟成はトヨタらしい真面目さを感じますが、操縦性は古臭い印象です。お年寄りはゆっくりしか走らないから、ハンドリングやコーナーでの安定性はほどほどで良い、という意見には賛成できません。
この種の車は、お年寄りのオーナーの他、法人ユーザーも少なくありません。その法人ユーザーの意見をまとめると、このようになるのでしょう。ヴィッツやフィットもそうでしたが、法人ユーザーの声を取り入れ始めると車がおかしくなります。
カローラ系列は、法人ユーザーをプロボックスに明け渡し、さらに自由になる必要があります。(あ、ユーザーが極端に少なくなるかな??)
車の性能としては、特にエンジンの性能が高く感じられます。日産のHR15DEデュアルインジェクターエンジンの性能もなかなかですが、少しトヨタが進化した印象です。マツダのエンジンと比較すると、レスポンスの上で勝ります。電動VVTの性能故と考えられますし、再加速などではスカイアクティブ6速ATよりもダイレクトさを感じられるようになっています。
ホンダのL15Bは活発なエンジンで、2NR-FKEと比較するとメーカーの性格の違いがよくわかります。トヨタのエンジンは活発さこそやや劣るものの、燃費の上では比較しないとわかりません。
いろいろライバルと比較して勝る点はありますし、貴重なセダンなので今後の発展を期待します。また、CVT嫌いな方にも試していただきたい仕上がりになっています。
参照して欲しい記事
トヨタ
オーリス(RS MT 前期型)
ヴィッツ(1.3アイドルストップ前期型)
プリウス(初期型)
アクア
日産
シルフィ
ノート(DIG-S)
ノート(nismo s)
マーチ(nismo s)
ホンダ
フィット(ハイブリッド)
フィット(1.3)
グレイス(ハイブリッド)
マツダ
デミオ
アクセラ(20S)
アクセラ(ハイブリッド)
スバル
XVハイブリッド
輸入車
VW
ゴルフ(1.4TSI)
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