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2024年05月13日

勝ち負け以上に大切な物があるレース

勝ち負け以上に大切な物があるレース 『”運が悪かった”って無線で言ってたけど、私は自分が運が良いと思って生きているから人から断定的にそう言われるのは心外なんです!』っていつかのフェラーリチャレンジでコーチを担当したドライバーから予選後に𠮟責を受けた事がありました。

予選の一番タイムが出るタイミングでクラス違いの車両に引っ掛かってしまってベストタイムを更新できずに予選を終えたその方に掛けた、慰めの言葉としての無線での『最後のアタックは不運でした』というものに対しての反応でした。

自分にはそういう考えが無かった半面、ジェントルマンDrも必死に予選に臨んで、良い時も悪い時もある中で、そうやって何気なく掛けられた言葉がタイミングとして悪い方向に受け取らられる事もあると自責の念を感じた出来事でした。

車から降りてそのジェントルマンDrはそう私に告げて、一旦サーキットから離れ、1時間くらいしたらケロっとした表情で帰ってきて、『ごめんなさい!さっきは予選後でエキサイトしていて言い過ぎました!』って仰っていて、私も『そんなつもりではなかったけど、そういうお気持ちでレースに臨まれている事を再認識して今後とも誠心誠意対応させて頂きます』と握手をして、再び二人三脚のコーチングを進めさせて頂きました。

なんで、そんな話をしたか?というと走行会でもそうであるように、レースにも色々なシリーズがあって、目指すスタイルやコンセプトが個々に合って、エントリーするチーム、ドライバーが目指すべき”価値の共有”というのは非常に重要だと思うんです。

Ferrari Challengeは昔も今も盛り上がりを見せているワンメークレースの1つです、私も2012年頃から様々なGentleman Driverのコーチングをしてきました。

その中でも『ですけ』選手は私のMacau GPでの走りを見て、いつか俺もMacau GPで走れる様になりたいという希望を持って私の所に直談判をしに来てくれてコーチングを長年させて頂いています。
(ワンスマとしての事業が恒常化する前の話です)

本業が忙しく、毎年フル参戦ではありませんが常に全体のトップ10以内、クラスの中でも常に表彰台獲得圏内で良い走りをされて、その明るいキャラで皆さんからも愛されている存在ですし、限られた練習時間を有効に活用した日頃のトレーニング、Asia Pacificシリーズの時代は一緒に中国上海、ちょっと内陸の杭州のサーキットも、マレーシアセパンやシンガポールF-1サポートもあったし、アブダビやニュージーランドにもコーチとして同行させてもらいました。

そんなですけ選手、今回のFSW戦も専属帯同コーチをさせて頂いたのですが1回目のレースは途中で危険なクラッシュが先頭集団で発生しSC出動の後に赤旗でレースが中断となるアクシデントが発生し、赤旗提示後自らの判断でクラッシュ車両の脇に停めてドライバーの救護活動に加わるという動きがありました。

思い起こせば2013年の鈴鹿でも同様に大きなクラッシュがあって仲間でもあるとあるGentleman Driverの救出救護にですけ選手はレースのチェッカーが降られていた後とは言え、自車をコース脇に停めて駆けつけ、漏れ伝わった話によるとサーキットが用意していた医療チームに加わり、本職の経験値を活かして蘇生活動を現場でされた事で一命を取り留めたという話が語り草に今でもなっていて、今回もリプレイ映像を見るに、その時をフラッシュバックさせるに十分な大きなインパクトと横転したままドライバーがなかなか降りてこない状況となっていました。

私もちょっと『やばいな、、』と思ってました。

コースの中央で横転したままの車両からレスキューがドライバーを救出するには一旦提示したSC運用では走行する他の車両も横転車両の遠くを走行するのも難しい状況だし、即座にSCから赤旗に運用が変わったのだと推測します。

赤旗提示後、レスキューチームよりも現場に先に到達していたですけ選手は何の迷いもなくコース脇にマシンを停め降車、当該ドライバーの救出に急行、その後はレスキューチームも加わり、結果的には大きな事象にならずに赤旗後レースは再開となりました。

助けてもらったドライバーは残念ながら日曜日のレースは出場敵わず、でも日曜朝ですけ選手がサーキット入りされるのを待っていたように、直接お礼を伝えられている場面に私も遭遇し、胸を熱くした時間がありました。

ですけ選手は一通りの現場での作業を終えるとピットに自車に戻って帰還、私は赤旗中断中にレース再開の際にですけ選手が本来の位置からスタート出来るか?レース主催者やAFコルサの首脳に状況を伝え、もし赤旗後のリスタートがあるならピットロードからの再スタートでSC運用になる際に元のポジションに戻してスタート出来る様に段取りを進めていました。

これはこれでWECやLe Mans 24hでもFerrariの本国モータースポーツ陣営と顔見知りだったからこその私が出来る、立場的に当然の段取りではありますが、ですけ選手は『医務室に運ばれた選手が心配なので私はこれで今日のレースは辞退し医務室に行ってきます』とヘルメットを脱いで、ダッシュでピットロードを医務室に走って行かれました。

フェラーリチャレンジは、コーチングの最新の手法や技術&機材が見れる場所として私は素晴らしい機会だと思っています、今は技術の進歩でそのセンサーを働かせてないと気づかない色々なものがあって、レース経験が少ない割にはハイスペックな車両でレースをするという特異な環境ともいえるフェラーリチャレンジには、ドライバーフレンドリーな環境が沢山揃っています。

そんな中、ほぼプロと変わらない(プロドライバーだって中に入ったら本気でやらないと負けてしまうほど)の最上級クラスのピレリクラス、GTカーに乗ったらそれこそGWCAの様な世界基準のジェントルマンレーサーが集うレースでもプロに混じって十分戦えるレベルのPirreli Amクラス(ですけ選手はこのクラス)、次に基本走行は既に出来ていてレースという環境で切磋琢磨してジェントルマンDrの入口に立ちここからどっぷり逆戻りできない道(笑)に向かおうとしているShell AMクラス、フェラーリチャレンジからレース経験を始め、ここから腕を磨いて行こうとされているShellクラスと大きく分けると4つにカテゴライズされいて、プロクラスやShellクラスは良い方は乱暴だけどもうプロとしての扱いでも問題ないから手が掛からない、もしくは基本的な事から忠実に、、、いい意味でコーチやメンテ側のほうがイニシアチブを取って進めないと進まない、そういったそれはそれで大変だけど楽な部分もあるけど、真ん中のPirreli AMとShell AMは特に『コーチとドライバーの関係』は非常に重要だと感じる事が多いです。

キーワードはやはり『価値の共有』です。

特にここ1-2年は全体のレベルが高騰している、コロナ明けで参戦ドライバーが増えた事、その個々の皆さんがしっかりレースWeek以外でも効果的な走行トレーニングを蓄積されているからこその状況、FSWで40-41秒ってもうGT3のコントロールタイヤのタイムなので41-42秒で全体Top3の時代は過ぎていて、42-43秒で今はPirreli Amクラスの上位って感じ、Shell AMクラスだって昨年までは44秒入れておけば表彰台確実だったけど、今は43秒が欲しくなるし、Shellクラスだってトップは45秒を切ってくる、、、全体として1秒、特に中盤以降の追い込みが激しくなっていると感じます。

ディラーは自分のディーラーから沢山のドライバーを出したい、出場したドライバーに結果を出してほしいという気持ちが働くのは当然、担当するプライベートメンテガレージはフェラーリチャレンジの定められたルールの中でレースWeekは特に動きが制限される中でも顧客であるオーナードライバーが有利に働くように動いてあげたいと思う、コーチだってそうで『自分が担当するドライバーの結果や走り = コーチとしての自分の評価』と見られているのは分かっているので結果を出してほしいし、その為に全力でコーチングをする訳です。

でも、コーチを含めドライバーを取り巻く廻りのエゴを押し付けてはいけない、というのもこういったワンメークのジェントルマンレーサーを大切にしているレースでは凄く重要な事。

もしこれがABSSA MOTORSPORTのレース活動だったとしたら、ですけ選手が赤旗再開後のレースを辞退し医務室に行った事(もしかしたらそれ以前にコース脇に停めてドライバー救出に向かった事に対しても)、レスキューが現場で待機しているような状況で救出に向かうのは自身の危険でもあるし、本業が医療だからと言って何があった時に責任問題になる可能性になる行為をするべきではなくその場所のプロに任せるべきだ、という考え方も当然あるし、赤旗再開するならレースの結果の為にチェッカーを受けるまで走るべきだと諭すべき立場になるのが当然なんです。

でも、今回は私の感覚で今回置かれた状況はその環境ではなく、ですけ選手の医師としての判断、レースをする上での優先順位や美学、自分の結果も当然望んでいるけど、その前提として一緒にレースを戦う仲間の安全があってのこそだから、まずは助ける事なんだという状況判断を尊重するしか道はなかったとその瞬間も、今でも思っています。

そしてそれはですけ選手のコーチを担当している身として誇るべき行為だとも思っています。

コーチとしてエゴは全くそのに介在しない、そんな高貴な行動をあの難しい環境下でですけ選手はされたと思っています。

だって、このレースに出る為に掛けたリスク、調整、コスト、助けようとしたことで起きるリスクなど考え出してしまったら、例え本業が医師だったとしても同じことが自分にも出来ただろうか?って状況です。

これはプロDrが中心のチーム、ドライバー、そしてコーチの力関係がある他のレースとフェラーリチャレンジだけに限らず、こういったレースの根本的に違う部分だと認識しておく必要があるし、様々な想定外な事が数多く発生するレースではそういったとっさの想定外の状況下で常に自分は自分の置かれた立場でベターな選択と立ち振る舞いをしないといけないとも感じます。

社会的に色々と大成功をされている方々が趣味から始めてこうしてモータースポーツの世界で競技を楽しまれていると、その方々への正しい臨み方として『ド昭和なスタイルが良い部分と現代の令和スタイルの融合』が非常に重要で、特に4クラスある中で真ん中の2クラスは個々の選手のバックボーン、目指すべきもの、キャラクターなどによってコーチとしての立ち振る舞いの難しさがあり、それがコーチとしての性能を高めてくれる環境だといつも思っています。

そもそもですが、コーチ居ると速くなる訳でない、です。

ただ、コーチがいると上手く安全にコスパ高く戦える可能性が高められる、レースは練習の様に走るのが難しい環境なので、それは自分でレースに出た事があれば痛いほどわかるハズ(笑)、だからこそ専属コーチとしてレースWeekだけでなく恒常的に帯同したコーチングがより実を結ぶとも言えます。

私はフェラーリチャレンジに留まらず、色々なレースに参戦するジェントルマンDrを見てきて、一緒にレースに出たり(その最たるモノがWECやLe Mans 24h、GWCAシリーズ等です)、ワンスマの事業を通じてもサーキットを走れる様になりたい、レースに出れる様になりたいという数多くの方々を日々見ていて、個々のニーズに合わせた『勝利の方程式』というのは大体パターン化されていると思っています。

メーカーのお仕事を個人でもワンスマの事業体でもさせて頂くことはありますが、特定のメーカー、特定のシリーズに染まってない、どこのオフィシャルでもないのが私個人もワンスマも逆に強み、あくまでも個々のジェントルマンDr軸でのノウハウを生かしたサポートな部分も強みだと思っています。

今回のFSWラウンドだって、そこにワンスマラウンジがある強みはあったと思います。

フェラーリチャレンジが用意したSpecialなスペースに加えてそういった個々のドライバーの為のプライベートスペースを用意できていたのは、それこそMAEZAWA Racingとワンスマだけ(ですけ選手のみならずShell AMクラスとして初参戦で今年GWCAにもABSSAから出場される豊田選手、そして今回初の公式戦デビューとしてAudiA-1Cupに出場された片山美央選手もそれは一緒でした)、きっとワンスマが関与しているドライバーは一体あそこの部屋の中でどんな事をしているのか?気になっている方々は多かったと思います(笑)

フェラーリチャレンジの車両はGT3と同等のタイムで走るけど、パワーとグリップと空力のバランスが違うので三角形の面積は一緒でも正方形のGT3とは違ってパワーが特化した二等辺三角形、だからプロの出すタイムから4秒以内(FSWで言うと45秒の壁)になってくると独特の難しさがあるのも特徴です、コーチもその車の特性をどれだけ理解しているか?も重要、だからコーチ陣の面々を見ているとGTレースでいま現役でバリバリにレースをしているドライバー(難しいクルマでもお手本となる走りが出来る)も多いし、経験豊富でコーチングに精通しているドライバー(ジェントルマンDrが難しい車両でサーキットを走るという事を理解した上でコーチが出来る)が沢山居ます。

コーチングとしてはまだまだ新米だけどここ1-2年で急成長中、今回もA-1Cupに出場の片山選手のコーチも兼務で特に金土は分刻みのスケジュールだった井上インストラクターも、この環境下を目標に日々切磋琢磨されている豊田選手、片山選手などを通じて成長させて貰っているし、井上インストラクターとそれらジェントルマンDrの皆様のコンビネーションもどんどんAdupt度合いが進化して強くなっている、と感じていました。

こういった経験が、ワンスマの日頃の各種プログラムにも反映され、ABSSA MOTORSPORTの強みとなって、回りまわって参加者の皆さんに享受頂けるものになるでしょう。

レースってどうしても完走した、順位、速さに目が行くもの、スポーツだから結果を追い求めるのは当然ですし、より高みに向かってコーチ側もプレイヤー側もぶつかり合いながら切磋琢磨する、そこには顧客とサービス提供側という垣根がなくなる瞬間が多くあって、私たちもラウンジの中のモニターでチャンネルを変えながら、無線が聞こえやすいように室内外を行ったり来たり、タイムが出ればガッツポーズ!遅い車に引っ掛かりそうになれば『後ろ見て、後ろ見て!』って絶叫、セクターベストが出ているLapに引っ掛かるとテーブルを拳で叩いて悔しがる!頭を抱えて絶望する!、帰ってきたドライバーと握手、抱擁、Bodyアクション大き目で伝える etc、エキサイトしていて毎日ホテルに帰ると広場トレーニングを1日やった時や何台も同乗走行をやった時と一緒かそれ以上の疲労を感じる位(笑)

私は特に今年はレースドライバーは休業モードなので、こういう事していると本当に自分が走るのが一番楽!競争したい!って思っちゃうんですよね(爆)

でも、そういった後から付いてくる結果や順位も大切だけどフェラーリチャレンジはそれとは全く異質で別チャンネルの意義がちゃんとあるんだ!という事を再認識させてくれた週末でした。

これからも安全で意義があって沢山の良質なジェントルマンレーサーが生まれ、育つ環境の1つであってほしいと願ってやみませんし、私もその時その時変わりゆく正解を常に自分のスタイルという係数を上手く掛けて進化し続けないといけないと思う、疲労困憊のレースWeek明けの月曜日でした。
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Posted at 2024/05/13 18:42:09

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