
この日になると定期洗車も終わったため、午前中は墓参り、午後は厄払いに行き、その後試乗巡りをしました。時間が時間だけに、行けるお店も限られてしまったのが残念です。
まずは、マツダの販売店へ行き、発売されたばかりのアテンザに試乗してみました。
マツダのディーゼルエンジン車の歴史
ディーゼルエンジン乗用車というとマツダは影が薄かったのですが、数あるメーカーの中では、力を入れている方です。1987年発売のカペラでは、排気ガスの疎密波を利用した「プレッシャーウエーブスーパーチャージャー」を発売したり、スズキからOEM供給を受けたエスクードに、自社のディーゼルエンジンを載せたり、と、メーカーの規模の割にと言っては失礼ですが、力が入っています。
そのマツダが、CX5でディーゼルエンジン車を発売、好評を博していることはニュース等で報道されているとおりですが、そのエンジンを搭載する第二弾がこのアテンザです。なお、ディーゼルエンジンの話題に隠れていますが、2500ccと2000ccのガソリン4気筒エンジンも、新たにスカイアクティブ化されています。
エンジン
先に登場した
CX5のディーゼルエンジンと、システムの構成は全く同じとされています。エンジン本体はDOHC4バルブで圧縮比は14:1、燃料供給装置はコモンレール方式を、排気ガス後処理装置には、酸化触媒とEGR、アフター噴射と連続再生DPFを採用、過給器は、大小ツインターボを採用しています。
実際に運転してみると、
CX5と同様に、過給圧が上がる前である1500回転域のアクセルレスポンスは鈍くなっています。しかし、若干出力の出方が良くなっているようで、アクセルに対する車速の上がり方はよくなっているように感じられます。少なくとも、ショックなく他の交通についていくための「もどかしさ」は、だいぶ感じられなくなっています。
また、
CX5のときに「過給領域に到達すると急激にエンジン出力が増し、アクセルコントロールがしにくい」と書きましたが、こちらも改善されています。出力の出方が穏やかになったのか、あるいはアクセル操作に対する燃料の出方が穏やかになったのか、後ろから蹴飛ばされたようにスピードが出る印象はありません。
あるいは、後述する車体、ないしはサスペンションの改善の効果や、ボデー形状、車高、ギヤ比の関係もあるかもしれません。反面、「広告で歌っているものすごいトルク」は感じづらくなっていますが、日常の扱いやすさを考えれば、この穏やかな特性の方がずっと使いやすいと思います。
これは
CX5のときにも書きましたが、42.8kg・mのトルクを発生する回転域は比較的狭く、ずっとこのトルクを出し続けるものではありません。アクセル全開時に感じるトルクは、フラットなトルクのエンジンと比較した場合、もう少し低い、35kg・m級のトルクのものと近い印象です。また、4000回転以上ではトルクが落ち込むため、伸びやかさはありません。低い回転での余裕を感じながら、シフトダウンをせずに高いギヤで走り続ける使い方に適しています。
音や振動は、
CX5よりは少なくなっていますが、まだ聞こえてきます。アイドリング時や定速走行時はガソリンエンジン並みに音が小さく、また遮音も行き届いています。音が高まるのは加速時で、この2000-3000回転域では、音と振動が床下から伝わってきます。音質は、高性能エアクリーナーを装着したガソリンエンジンの吸気音にも似た機関音で、けっこう勇ましい音です。なかなか「走る気」にさせる音で心地は良いのですが、振動には慣れませんでした。ペダルを踏む足のかかとに直に伝わり、体を揺する振動周波数です。長時間運転した場合、もしかするとこれが「
酔い」につながるかもしれませんで、メーカーの方には対策を希望します。エーモンの「遮音マット」では、除去できるかどうかわかりません。
i-ELOOPとアイドルストップについて
i-ELOOPとは、オルタネーターでは発電した14.7v電源を、25Vに昇圧した上でキャパシター(コンデンサー)へと充電するしくみです。これにより、初期のi-stopでは12Vバッテリーを二個、その後一個となったものが、性能はこれまで以上になった上でバッテリーは一個になっています。欧州でのハイブリッド車の分類の「マイクロハイブリッド」に近くなっています。オルタネーターは、当然12Vです。
i-stopは、これまで以上に作動までの時間と作動条件はゆるくなっているように感じます。未だにブレーキを強く踏み込まないとエンジンが止まらないのは、変えないのでしょうか?意識してブレーキペダルを踏み込まないと、エンジンは止まりません。
再始動時間は、CX5よりも早くなっているように感じます。CX5は始動まで0.4秒でしたが、この車は0.35秒で始動しているかのような印象です。
トランスミッション
こちらもスカイアクティブドライブATが採用されています。すなわち、発車時にしかトルクコンバーターを使わず、エンジン回転をダイレクトに伝達しつつ、変速も素早く行う方式の「トルクコンバーター、遊星歯車AT」です。
しかし、これまで乗った
アクセラや
CX5と比較し、若干すべり量を増やしているような印象があり、特に変速はなめらかに行われるようになってきました。エンジンの部分で「アクセルレスポンスがなめらかになった」と書きましたが、あたかもトルクコンバーターが滑っているかのような印象になる時もあります。コモンレールディーゼルエンジンは、燃料の噴射量でいくらでも出力の制御が出来るため、変速制御やアクセルペダル操作量との連携が、よりうまくなっているとも考えられます。
ATにはマニュアルモードもあり、レバーを前に倒すとシフトダウン、後ろに倒すとシフトアップとなる、マツダ方式です。しかし、エンジンのDPF処理の関係上からか、1500回転以下にすることはできません。また、4000回転を超えるとエンジン出力が低下するために、楽しく使える領域は思いのほか狭くなっています。今のところMTはディーゼルエンジンにしか設定されていませんが、ガソリンエンジンの方がよりMTの楽しみを味わえるのではないか、と思います。
ブレーキ
ブレーキペダルの操作フィーリングは、これまでのマツダ車では「
プレマシー」が極大でした。それ以降、若干スポンジーな操作フィーリングとなっていましたが、この車ではややプレマシーへと回帰している印象を得ました。ペダル操作に対して、制動力が立ち上がらない領域が狭くなり、ペダルの操作量と踏み込み力、そして制動力の関係が比例している印象です。
急ブレーキこそ試していませんが、車重に対しての制動力は十分で、操作しやすいブレーキです。
ステアリング
ステアリング操作感も、「
プレマシー」が良く、
その後若干ダルになった、とブログで書いてきました。この車では、
プレマシーをさらにさかのぼり、
現行デミオが登場した時の操作感と
プレマシーの操作感の間にあるように感じられます。
試乗車のタイヤは19インチと、太くハイトが低いもので、タイヤ自体のグリップ力が高いものになっていますが、それ以上に俊敏な操作感だと言えます。微小な操舵角でも車体はすぐに向きを変えようとしますし、そこからさらに操舵した場合の反応の遅れもありません。
現行デミオ登場時は、「ステアリング操作に俊敏に反応しすぎ、特に長時間運転するとかえって疲れる」と書きましたが、この車は俊敏な一方で、適度なダルさも備えています。特に直進時にはステアリングの不感帯が適度なので、神経質な人でもリラックスして運転できるはずです。
また、大トルクを発揮するFWDは、加速時にステアリングが片方に取られる「トルクステア」現象を起こしがちですが、そのような動きは全くありません。安心して急加速ができます。
一方で、
他車種と比べると、手応えが薄いようにも感じられます。遊びも適当でレスポンスも良いのに、どこか遠くのものを操作しているかのような印象です。一般路でスポーツドライブをすると、この印象では少々不安です。
操縦性の点で言うと、後輪のタイヤがあまり仕事をしていない印象があり、「このボデーとエンジンで後輪駆動だったらなあ」と思わせる瞬間があります。
サスペンション
前輪にストラット、後輪にマルチリンクを採用する、ここ10年のマツダの基本的なサスペンション形式を採用しています。
ガソリンエンジン車はわかりませんが、このディーゼルエンジン車ではフロントの減衰力が強化されている模様で、突起乗り越え時に若干当たりの硬さを感じる場合があります。
CX5はもちろん、
アクセラや
プレマシーにも、その種の硬さは感じられませんでした。タイヤの効果もあるかもしれませんが、エンジンが重いことによるデメリットが、あまり感じられなくなっています。硬く感じられるのは「当たり」の部分だけで、その後はしなやかにストロークするので、突き上げる感じはありません。
後輪はそれほどの当たりの硬さは感じられず、路面からの上下方向の入力を、十分に吸収しています。
微振動においては
ビアンテよりも少なく、入念に調整されているサスペンションであると思います。
全体的に「不快でない程度に締め上げられた」サスペンションのように感じられ、スポーツセダンとしての性能も十分であると思います。このサスペンションなら、そのままの状態でジムカーナを走っても、コントロール性が悪くて困るような事はないと思います。
反面、ストロークを規制するような動きが強いため、荒れた路面などでは乗り心地が悪くなってしまうかもしれません。この感じは
マイナーチェンジ前のマークXに近く、
スカイラインや
フーガとは正反対の印象です。
CX5で感じた加速時のピッチングは、サスペンションの設定がやや硬めに設定されていることもあって、ほとんど感じなくなっています。
ボデー
ボデースタイルは、かなりひらべったく感じます。車高は1450mmもあるのですが、車幅が1840mmもあります。前から見るとかなり堂々とした印象ですが、後方から見ると、キャビンが弱く見えてしまいます。ホイールベースが2830mmと長く、後輪が付いている位置が相対的に後方で、若干間延びした印象でもあります。斜め後方からだと、特に強く感じるかもしれませんね。
幅は広いのですが、ステアリングがよく切れるため、東京の下町や1970年代に宅地開発された地域以外では、取り回しにもそれほど苦労しないと思います。郊外の一般道では、取り回しに苦労することは、全くありませんでした。
車内の作りはCX5以降急速に改善され、ピアノ調ブラック塗装とメッキがバランスよく配置され、価格に負けない仕上がりとなっています。
前述のとおりキャビンの天地方向が低く感じられる印象は車内でも同じで、幅方向は広いのにあまり広くは感じません。後席では特に天井がなだらかに下がってきているため、座高によっては頭上空間が狭く感じられることでしょう。この車はかつてのセンティア同様、「4ドアクーペ」として扱われるべき車だと思います。
視界はなかなか良く、「
左折時に斜め後方が見えずにストレスを感じること」はありません。「
顎上げスタイル」になったり、「
右斜め上に圧迫感を感じたり」することもなく、広々感は感じられないものの、不快ではない、という絶妙な(?)仕上がりになっています。
ボデー剛性は非常に高く、ミシリとも言いません。特にフロント周りの剛性が高いようで、19インチタイヤを履きこなしていると言えます。今までの19インチホイール車では、目地段差などでダッシュボードを震わせるような新動があったのに対し、この車は硬さを伝えるものの、振動がありません。
加速時のピッチングの件は、重量配分にもあると思います。相対的に前輪より前のオーバーハング重量があり、後輪のオーバーハング重量が小さいCX5よりも、こちらの方がより前後の差が少ないと思います。また、前後方向のフレームを一種の「バネ」と考えた場合、前後に重いものが乗っている形のこのアテンザの方がよりよく、バネとしてのたわみ特性もよいため、「眼球がゆすられる振動」がしないものと考えられます。
後輪からの入力も、十分に運転士の尻に伝えるほどの正確さがあります。サスペンションを硬めていた
スカイラインのtype pでは、若干の微振動を伴っていましたが、この車にはそれがありませんでした。
アテンザは、国産車の中でも急激にボデーサイズが膨張した車です。初代は5ナンバーサイズ+アルファ程度の感覚で乗れる車でしたが、アクセラの登場などもあって2代目で急拡大、アクセラとの関係がちょうど良いと思っていたら、また拡大、と、とどまることを知りません。取り回しには苦労しなかったとは言え、そろそろ制限をして欲しいなあ、と感じる全幅です。もちろん、左右席の間隔は広いですから、それなりの利点はあります。
トランクスペースは、FWDなのに上下方向は寂しい限りですが、奥行はけっこうあります。4人のゴルフバッグは、、、多分詰めるのではないでしょうか??
まとめ
ボデーの天地方向の不足による息苦しさはありますが、車としての仕上がりはかなり高くなっています。4人とゴルフ道具を積んで、、という使い方の場合、関東であれば半径100km圏が限界でしょう。特に後席の狭さ感は、
問題点としては、マツダにこの大きさの車を買いに来る人がいるかどうか、というところですね。アテンザはレガシイほどではないものの、ミドルセダンとしての地位は確率していると思います。しかし、ここまで大きなセダンとなった場合、少々クラスが異なるので、顧客層も変わってくると考えられます。そんな中で、果たして輸入車やマークX、スカイラインに行かずにマツダに来てくれるかどうか、よそ者ながら、心配になってしまいます。
反面、快楽方向の性能を目指してしまいがちなラージクラスのセダンですが、この車のスポーツ度はかなり高いと考えられます。また、同クラスにMT車はないため、FWDではありますが、「スカイラインやマークXやレガシィやレクサスISにMTが。。」と思っていた人は、試してみる価値はあると言えます。
私も、もし可能であればジムカーナでこの車を走らせてみたい、と思ったほどのシャシー性能です。スポーティーセダンやワゴンに関心がある方は、ぜひとも試乗してみる価値は十分にありますよ!
その一方で、安楽な乗用車を求めているような人には、あるいは向かないかもしれません。
しかし、欲を言えば、このエンジン性能、車体の大きさになると後輪駆動にして欲しいものです。非常に微妙なのですが、加速したときの印象が、後輪駆動の方が自然でなめらかなのです。
おまけ
CMでは「セダンがつまらないと誰が言った」と言っていますが、ラインナップはかなり弱気というか、市場を十分検討した内容になっています。おそらく、4WDがないこと、ディーゼルエンジンにしかMTがないこと、などは、不満として感じている人は少なくないと思います。
参照して欲しい記事
マツダ関連
デミオ(前期型)
デミオ(スカイアクティブ)
プレマシー
アクセラ(前期、第一回)
アクセラ(前期、第二回)
アクセラ(スカイアクティブ、第一回)
アクセラ(スカイアクティブ、第二回)
ビアンテ
CX5(ガソリン、短距離)
CX5(ガソリン、長距離)
CX5(ディーゼル、短距離)
CX5(ディーゼル、長距離)
ミデアム以上のセダン系
フーガハイブリッド
スカイライン
ティアナ
シルフィ
クラウン(アスリート、旧型)
クラウン(アスリート、旧々型)
クラウン(ロイヤル、旧型)
クラウンマジェスタ
マークX(現行前期型)
SAI
アリオン
アコード(旧型)
アコード(現行、ワゴン)
レガシィ(前期型、第一回)
レガシィ(前期型、アイサイト)