この日は東海地方に仕事でお邪魔し、帰りに駅まで送っていただきました。その時の車が新型のワゴンRで、短時間ではありますが助手席からその性能を確かめることができました。エネチャージ機能を搭載した、2WDのFXグレードです。
ワゴンRの歴史
初代は「道具感」が高いモデルで、「清貧の時代」と言われていたポストバブル初期の時代に合い、大ヒットしました。慌てたダイハツは「ムーヴ」を発売、自動車評論家から「ダイハツは恥も外聞もない」と酷評されたものです。モデル末期にK6Aエンジン搭載車を追加しました。
二代目は初代を熟成させ、乗用車としての品質が大幅に向上し、スズキの中心車種となりました。
RRも追加し、「軽自動車のグランツーリスモ」、「甘口でない軽自動車」の元祖となりました。
三代目は、その少し前に大流行した「シボレー アストロ」の雰囲気を取り入れ、若干くどい印象でした。こんな自由が許されるのも、大ヒット車ゆえの権利なのかな、と思ったものです。モデル末期に「スティングレイ」を追加、bBの軽自動車版、ないしは「やんちゃな女子」に人気があった「ライフ ダンク」の対抗馬として、アストロ顔が苦手な人を取り戻すことに成功しました。
四代目は三代目の正常進化で、品質感の向上にとどまりました。RRが廃止され、スティングレイが後継となりました。
五代目は、ダイハツのエコアイドルに危機を感じ、モデルチェンジが1年前倒しになったと聞きますが、「練らなくて大丈夫なのかな?」と感じていました。
エンジン
MRワゴンで初めて搭載されたR06Aエンジンが、ようやくワゴンRにも搭載されました。前任のK6Aが1990年代半ばに搭載され、これまでもピストンや燃焼室形状に改良が続けられましたが、最新の理論に基づいて設計されたエンジンです。
今回の乗車は、あくまでも助手席からの印象ですが、やや騒音が大きように感じられました。特に発進加速時に、「コンコンコン」という、まるでメタルベアリングが摩滅したような音が聞こえます。この音はかなり大きく、本当にメタルが摩滅した以上の音の大きさです。もしかすると点火時期をギリギリまで進めていることゆえの燃焼音かもしれませんが、音は一般の人ほど気になるものです。
加速の様子は、発進時こそ上記の音が目立ちますが、副変速機付きCVTの効果もあって、音は発進時のみのとどまります。発進は軽快で、もたつく印象やエンジンに負担がかかって唸るような印象はありません。また、回転を上げて出力を稼いでいる印象もありません。
CVTに助けられている印象ですが、K6Aと比べて大幅に優れているような印象ではありませんでした。燃費は不明です。
エネチャージとアイドルストップについて
減速時に発電機でより強く発電させ、その電気をリチウムイオンバッテリーに充電するしくみです。エネチャージでない車でも、12Vバッテリーに充電していましたが、容量がいっぱいである場合は、それ以上充電ができませんでした。この機能により充電量を増やし、車の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収できる分量を増やしています。また、リチウムイオンバッテリーは普通の12Vバッテリーと比較して、蓄えられるエネルギー量が大きい割に重量が軽いもあまり増えないことが特徴です。
なお、アイドルストップは減速中に行われ、再始動は0.35秒級の速さで始動します
トランスミッション
すでに完成の域にある副変速機付きCVTです。変速域が広いトランスミッションなので、発進時は低い変速比で素早い発進が可能で、定速走行時には高めの変速比で静かな運転が可能です。出力が低い軽自動車では効果が絶大で、軽快な走行と静かな定速走行を実現しています。私がアクセルを踏んだわけではないので、あくまでもエンジン音と速度の観察からの結果ですが、変速幅が広い効果は確実に現れています。
ブレーキ、ステアリング
助手席からは、全くわかりませんでした。
サスペンション
乗り心地はフラットで、
しなやかな印象のダイハツ車や、重厚さすら感じるホンダ車とは全く異なります。スズキの車の乗り心地は、前輪がやや突っ張る印象です。また、車輪が突起に乗り上げると、「ゴトゴト」と、振動の入力部を発生源として、車内全体の空気を震わせる「ドラミング」が起こります。また、サスペンションの取り付け剛性が低い印象です。ショックアブソーバー、サスペンションアッパーマウント、サスペンションサブフレームなどの部品の剛性が気になります。
旧型ワゴンRや
ルークスと比較し、モコや新型ワゴンRの方が悪化している印象です。サスペンション部品のコストダウンの結果なのでしょうか。
ボデー
サスペンションのことと関わりますが、ボデーのフロントピラーより前の剛性が低いように感じられます。たわむような印象ではないのですが、音や振動の感じから、頼りないような印象です。
視界は良好で、開放感に溢れています。斜め後方の視界も良く、巻き込み確認の際に苦労することもないでしょう。
まとめ
ワゴンRは、新登場から19(?)年、すっかりアルトに代わってスズキの顔となりました。車に関心がない人が足として軽自動車が必要になり、スズキの車を買うとなると、多くの人はアルトではなくワゴンRを選ぶのでしょう。
初代がやや特殊な車種であったのに対し、すっかり普通の車になったワゴンRですが、どうもそこに難しさと販売不調の要因があるように感じます。ライバルのダイハツ車や、作りや見栄えがワンランク上に仕上がっている「ホンダNシリーズ」と比べると、どうにもつまらない印象が拭えません。軽自動車No1のおごりと、ダイハツしかライバルにしてこなかったことの「ツケ」ではないでしょうか。
かつて大阪オートメッセで、本田技研工業の人が「フィットのような道具感あふれる車が、かえって車好きを産んでしまっているのではないか、社内では悩みの声が出ています。」と言っていましたが、それはワゴンRなのではないかなあ、と思い出してしまうのでした。
足として買う車としては十分であり、値段と仕上がりを考えると非常に良い出来ではありますが、どこか「つまらないなあ」と考えさせられてしまいます。なお、スティングレイやターボエンジンモデルでは評価が変わってくるかもしれません。この車を考えている方は、必ずムーヴやN-BOXなどに乗って検討をしてください。
参考記事
日産 ルークス(スズキ パレット)
日産 モコ(スズキ MRワゴン)
ダイハツ ムーヴ(マイナーチェンジ前)
ダイハツ ミライース
スズキ パレット、ダイハツ タント
ホンダ N-BOX
ホンダ N-ONE
スズキ ワゴンR(旧型、試乗)
スズキ ワゴンR(旧型、乗車)
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試乗 | クルマ
Posted at
2013/02/23 20:15:50