
この日は、マツダのデミオをレンタカー店で借り、やや長距離の試乗をしてみました。神戸、六甲山、大阪市内、信貴山、大阪市内、神戸と、市内と山岳路を試しました。午前中はあいにくの雨模様、午後も気温があまり上がらず、無理な運転はしておりません。
本当はディーゼルエンジン6速AT車を借りる予定でしたが、私に引き渡される直前で店員の方が事故を起こしてしまいました。私は多少傷がついていても構わないのですが、早く修理をして貸出に備えなければならない事情もあるでしょうし、警察の実況見分もあるでしょうから、お店の提案に沿ってガソリンエンジン車を借りることにしました。
なお、この時点で既にガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車とも試乗済みであり、やや長距離試乗となります。このブログでは、短距離試乗との印象の違いを中心にまとめます。
エンジン
旧型よりは高回転まで伸びるようになったとはいえ、1300ccエンジンに重くなった車体ということで、出力不足が懸念されました。余裕ある走りまでは無理ですが、車体に対して若干パワー不足を感じる程度です。

エンジン出力不足を補う目的でエンジン回転数を上げた場合にも、エンジンの振動が少なく滑らかで、嫌な振動が感じられませんでした。後述するATを駆使し、スポーティーに走ることも可能です。エンジン出力がほどほどですので、危険な速度域には達しません。私程度の腕でも、車の性能を十二分に発揮出来ます。少し速度を上げたスポーツドライビングの場合でも、安全な速度域内で走れますので、非常に痛快な印象です。エンジンの性能を使い切る楽しみに溢れています。
短距離試乗では、「構造上、高回転になっても雑音になるだけで」と書きましたが、4000回転を超えた際のエンジン音は気持ちよく、4気筒らしいビートを感じます。スポーツドライビング領域の時だけエンジン音が増すので、市街地走行では静かに走れます。
アクセルペダル操作に対するレスポンスは、ノーマルモードにおいて良すぎず悪すぎず、ちょうど良い反応です。スポーツモードは単にアクセル操作に対して余分にスロットルバルブが開かれているだけで、不自然な印象です。なお、ノーマルモードでもアクセルペダル操作で十分な省燃費走行も可能です。本来は、モードスイッチでエコモードを選択したり、何もしない状態でエコモードにあるというのは、運転上の選択肢を狭めてしまっているように感じます。
山岳路では、マニュアルモード付きATを駆使し、低回転から高回転域までエンジン回転を十分に使いきり、楽しく走ることができます。本格的なスポーツ走行には1500ccエンジンを待ったほうが良いでしょうが、たいていの人でモータースポーツをしないのならばこれで十分です。
トランスミッション
スカイアクティブ6速ATを採用しています。このATは、登場当初ダイレクトなフィーリングが得られず、これまでの4速や5速ATに対して劣っているような印象でしたが、かなり改善されたように感じます。1速発進から2速にシフトアップされる時期がやや遅らされたのか、もたつきを感じにくくなりました。私としてはもう少し遅らせた方が、かつてのマツダ車のように活発に走ると感じます。
今回はマニュアルモードを駆使することも試しました。マニュアルモード採用以前の、ホールドモード付きATの頃にこれを駆使して山岳路を走ったことがありますが、これが痛快で楽しさに溢れていました。このスカイアクティブATは、その頃の素早い変速切り替えと同程度の素早い変速速度を感じました。
ギヤの数が2段多いだけに、変速後のエンジン回転数の低下も少なくなっています。一般道を普通に走る場合にはDレンジの方が自動任せで変速の煩わしさを感じることなく走行でき、山岳路では有効な出力域を保って走行することが可能です。
このATをマニュアルモードにして運転すると、まるで自分の運転がうまくなったような印象で走行することができます。当然、MTと比較しても素早い変速が可能、かつ、常時トルクコンバーターがロックアップされていることによる、ダイレクトな動力伝達がなされており、レバーを動かす楽しみさえ放棄できれば、ATの方が優位だと言えます。
レバーの操作感、ストロークとも適正で、レバーに低級振動が発生することもありません。しっとりとした、高級ささえ感じられる操作感覚です。
ステアリング
低速時に大きな舵角を与えると勝手に回ろうとするような印象はありますが、一般路走行ではそのような印象は皆無になり、スポーツドライビングではやや重めな印象となり、しっかりとした手応えになります。路面の状態は残念ながらあまり伝わってきませんが、中央付近の不感帯も適正であり、長時間運転でも疲れないステアリングでした。
サスペンション
やや柔らかめである印象に変わりはありませんが、ロール角が深いもののよく路面をグリップするサスペンションでした。完全に深くロールした段階からでもやや舵が効くことから、対地キャンバー角の変化が適当なのだと思います。若干、車のフロント部分が重いような動きをしますが、FWD車としては適正なレベルにあります。
路面の突起を乗り越える際にもよくストロークし、不快な振動は伝わりません。もちろん、高級車のふんわりとした乗り心地とは異なりますが、小型車らしい、軽快なものです。よくダンパーが効いている乗り心地ですが、うねり路面では若干うねりに煽られて揺れが止まりにくく感じました。しかし、一般的な仕様では全く問題を感じないでしょう。
ロール角が深いことからそのままのサスペンションではサーキット走行は辛いでしょうが、今回走行した「六甲山」「信貴山ドライブウェイ」などでは、十分な性能を示しました。乗り心地と走行性能が高くバランスされているため、アフターパーツに変えてしまうと絶妙なバランスが失われてしまいそうです。もっとも適正に感じるのは「ロールスピード」で、ロールの深まりがゆっくり発生します。そのため、ロール角はまずまず発生しているのに、怖さを感じません。
サスペンションは、固めるだけが脳ではないことを改めて感じました。
ブレーキ
効き具合としては普通で、踏み込んだ際の不感帯はやや大きくなってきたようにも感じます。もう少ししっかりとした踏み応えに戻ると良いでしょう。現行プレマシー登場時の印象が最良でした。マツダの他車と比較して、バキュームサーボが効きすぎである印象ですが、他社の同級車と比較するとしっかりした踏み応えが得られています。
ボデー
剛性は高く、塊感が強く感じられました。路面の大きな突起を乗り越えた際にも、車体の変位や振動は少なく感じます。このしっかり感は、同級の車の平均を大きく上回っています。
車体全部はもちろん、ハッチバックボデーの弱点である車体後部の剛性も高いようで、後輪が突起を乗り越えた際のドラミング(ボデーが振動し、荷室内の空気を振動させて響くもの)は感じませんでした。後ろを振り返らなければハッチバックボデーであることを忘れてしまいそうなほどです。
視界は、斜め後方はもう少し努力して欲しいところですが、左折次等に神経がすり減る程のものでもありません。ダッシュボードの高さも普通で、「あご上げ運転」にはなりません。
内装材は、レンタカーの下級グレードということもあってか、ビジネスライクなものでした。オーナードライバーとしては、上級グレードを選んだほうが良いかもしれませんが、気にならない程度です。
そんな中、数少ない良くない点を発見してしまいました。フロントガラスの下端から上方、約1cmの領域に、ガラスにひずみがある領域を感じました。
この領域は横方向に帯状に存在しています。カーブなどでちょうど道路と道路外の区分がこの領域に差し掛かる事があり、コーナーリング感覚を誤りそうになります。至急、改善を望みます。
まとめ
やはり、非常に良く出来た小型車です。ワゴンボデーさえ望まなければ、この大きさの車の中では最善です。6速ATとちょうど良い出力のエンジンを使い切り、そこそこ速く走らせることは非常に痛快、かつ、運転の楽しさを味わえます。やや出力が低いエンジンにしっかりしたボデー、柔らかいもののしっかりしたサスペンションがその秘訣なのではないか、と思います。
この車は、運転の楽しさをまだ感じていない人が乗ると、きっとその楽しみがわかる車です。初心者はもちろん、ベテランにもオススメしたい車です。
参照して欲しい記事
マツダ
デミオ(初代1500cc4速AT)
デミオ(旧型前期1300cc4速AT)
デミオ(スカイアクティブエンジン搭載車)
デミオ(現行モデル、ディーゼルエンジン・ガソリンエンジン同時試乗)
トヨタ
パッソ(+HANA、初期型)
アクア(初期型)
ヴィッツ(1300cc前期型)
ラクティス(1300cc前期型)
ラクティス(1500cc前期型)
カローラ(アクシオ1500cc 2NR-FKEアトキンソンエンジン搭載車)
日産
マーチ(初期型)
ノート(スーパーチャージャーエンジン搭載車)
マーチ(ニスモ仕様1500cc)
ノート(ニスモ仕様1600cc)
ホンダ
フィット(ガソリン1300ccエンジン)
フィット(ハイブリッド短距離)
フィット(ハイブリッド長距離)
グレイス(ハイブリッド)
スズキ
スイフト(標準型、初期型)
スイフト(標準型、現行モデル)
VW
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試乗 | クルマ
Posted at
2015/08/14 22:26:06