
この日インターネットをしていると、4月初めから上映が始まる「宇宙戦艦ヤマト2199」の第一話が大阪でも先行上映することが分かり、見に行くことにしました。
この宇宙戦艦ヤマト2199は、4月から2話ずつ映画館で上映され、同時にDVDを発売、テレビ放送は来年以降になるとのことです。1974年放送時の「宇宙戦艦ヤマト(パートⅠ)」は、松本零士氏の構想によると艦内での反乱やガミラス帝国側の混乱、キャプテンハーロックの登場など、もっと色々な展開があり、39話まで続くとのことでした。しかし、視聴率不振から放送された26話に短縮されたそうです。
見ていると、中間点バラン星まではゆっくりとも言えるくらい話の展開が遅く、バラン星が陥落してからは七色星団での戦い、ガミラス本星での戦いと矢継ぎ早に展開、帰りは敵がいないとはいえ、ほとんど1話で帰ってくるという乱暴な展開でした。松本零士氏構想の展開はいかにも支離滅裂であり、そこまでは望まないもののバラン星以降はもうちょっとなんとかならないかな、と思います。
とにもかくにも、ヤマト2199は制作が進んでおり、制作者側から特に頼まれていないのに、最終チェックをしてきました。
ネタバレがありますので、楽しみにしている人はこれ以下を読まないでください。
結論から言うと、1974年版を忠実に再現しています。
映像について
言うまでもなく、CGで制作されています。地球防衛艦隊の戦艦は、沖田艦型の巡洋艦、ゆきかぜ型の駆逐艦とも、色彩、構造ともそのままです。ガミラス艦隊は、1974年版の冥王星海戦ではデストロイヤー型(いわゆる普通のガミラス艦)だけでしたが、ミサイル艦と巡洋艦、シュルツ艦まで出ていました。
戦闘シーンでは気になるところがありました。概ね海を行く艦船のごとく動いているのですが、一部のシーンでは沖田艦やゆきかぜ、ガミラス艦が、まるで航空機のごとく機敏に動くところがあります。宇宙戦艦には重力加速度は働かないため、重々しいとか軽々しいという違いは起こらないのですが、やはり大きなものはのっそりと、小さいものは俊敏に動くという、地球上のような動作加減にして欲しいです。
火星には古代と島がいて、イスカンダルから来たサーシャ(の死体)からメッセージカプセルを受け取ります。サーシャの衣装は1974年版のようなドレスではなく、近年のアニメのような、セクシーかつ体にぴったり、露出面積が広い衣装でした。ヤマトの世界観とはちょっと違うなあ。
沖田艦とともに古代と島は地球に帰ります。地球の地下都市は、1974年版とはちょっと違いました。1974年版は地上岩盤と地下岩盤の間に、柱のように立っていたビル群ではなく、ガンダムのジャブローのように地下空間に街があるようなものでした。ガラスチューブの中を浮上して走る列車や車はなくなり、線路を走る鉄道になっていました。街は薄汚れている感じでした。
ガミラス戦闘機がヤマトの偵察に来ますが、1974年版では後にも先にもここにしか出てこない高速戦闘機(?)でしたが、この作品では1974年版でも初期に使われた「ヘ」の字型戦闘機です。それを追うのは偵察艇ではなく、コスモゼロです。
古代と島の二人は1974年版ではオーバーヒートで、この作品ではシステムエラーで墜落します。そして大和と出会うのですが、地球の風景は良い雰囲気ですよ。大和も旧作の書き込みをさらに細かくした感じで、違和感がありません。
人物像は、沖田艦長と佐渡先生、土方指令はほぼそのままです。古代、島は旧作テレビ版を中間として、松本零士氏が描く像の対局にあります。森雪は、ほぼ松本零士色が排されており、別のキャラクターになっています。旧作では「永遠に」までがか弱い女性、パートⅠの初期はやや冷たく暗いキャラクターでしたが、この作品では可愛らしくも気が強い女性になっています。
音について
概ね旧作の音が使われていますが、爆発音は違う音も使われています。地球艦隊の主砲発射音は、全く異なる音になっています。旧作では「ボバーウォン」という感じの音だったのに対し、今作では「ピュルルル」とかいう音だったかな?変える理由はありませんよね。
地球艦隊がやられる時、ヤマトお得意の「やられた戦艦が別の戦艦にぶつかってともに爆発」というシーンに、旧作では「ドッチャンコ」とでも表現される音だったのが、異なる音がしていました。
ヤマトは2005年以前のドラえもんと同じ音源であるため、人が走る時は「スコスコスコ」とかいう靴の音だったのが、そんな音はしませんでした。
それ以外の、多くの爆発音やガミラス艦の移動音は、旧作のものが使われていましたので、「当初の復活篇」のような違和感はありませんでした。
オープニングテーマは、ささきいさお氏歌う、「さらば~地球よ~」の、昔からのオープニングテーマになるとのことです。しかし、旧作の時点でも3つのテイクがありました。一つ目は「最初の「ヤーマートー」までがゆっくりとした、御詠歌ともいうようなもの、二つ目が「うちゅうーせんかんー、やーまーとー」と、抑揚が少ない版で、Ⅰと2に使われました。(新たに、と永遠に、は、オープニングテーマなし)3つ目は、Ⅲで使われた、「
うちゅうー
せんかんー、ヤァーマァートォー」と、力が入った歌い方をしているものです。ニューテイクになる模様ですが、あまり力を入れすぎて変な感じにしないでくださいね。
エンディングテーマは、結城アイラなる方が歌う曲です。知らない方でしたので、エンドロールで名前がわかるまで、「持田香織?浜崎あゆみ?それにしては声量が足りないかな?」という感じの歌でした。いずれにせよ、14年くらい前の邦楽大全盛期の雰囲気たっぷりの、良い感じの曲です。
展開について
第一話の名シーン(?)は、ありましたよ。
通信員「ガミラス艦より入電、「地球艦隊に告ぐ、直ちに降伏せよ。」、返信はどうしますか?」
沖田「馬鹿め、だ」
通信員「は?」
沖田「馬鹿め!だ!」
通信員「馬鹿め」
です。
戦闘シーンは、幾分長かったかな?なんと、「ヤマトよ永遠に」で艦長に就任する山南艦長が、沖田艦の艦長になっていました。沖田は、というと、艦隊の司令長官になっています。艦と戦隊の司令長官の兼任は、よく考えると大変で仕方がありませんよね。そうそう、徳川機関長と藪が沖田艦の機関室にいました。
地球艦隊は沖田艦とゆきかぜを残して全滅、沖田艦は撤退しますが、1974年版ではゆきかぜは古代守の熱い気持ちによって撤退せずに戦います。
古代は、「沖田さん、男だったら戦って戦って戦い抜いて、そして死んでいくものなんじゃないですか?」と言い残し、ガミラス艦と戦い続けました。が、今作では沖田艦を逃がすためにおとりとなって戦い続けるのでした。しかも敵軍に突っ込んでいくとき、軍歌(?)を歌いながら皆で明るく突っ込んでいきます。その明るさが却って悲壮感を醸し出しています。どちらも良いけど、旧作の熱い古代の方が好きだなあ。
地球に戻った沖田を佐渡先生が治療するのは同じですが、そこに行った古代とのやりとりが異なります。1974年版では沖田は兄を見捨てた心の冷たい人、となじりますが、今作ではあっさり納得してしまいます。え?それで良いの??
敵の戦闘機を追うために、古代と島は出撃しますが、そこで加藤三郎と出会います。1974年版では、第三話の艦橋で、確か緒方賢一氏だか相原の声優だかが臨時に担当、そしていきなり古代と島に挨拶するという、あり合わせ感たっぷりのシーンでしたが、これはどう考えても今作の方が自然ですよね。
余談ですが、昔のアニメは各制作プロダクションに依頼して制作していたためか、連絡不行き届きでいろいろなミスが見られました。1974年版では、古代が「相原、読め!」と言うと、なぜか太田が相原の声優の人で通信文を読むという、理解不能なシーンがありました。
ガミラス本星では、「気圧変圧器で起こした嵐」が、次の話ではすっかり止んでいたりします。
全く個人的な意見としては、こういうテイストでマジンガーシリーズをリメイクしてくれないかなあ?と思ってしまいました。いや、この作品に兜甲児や剣鉄也、司馬宙を入れてくれても良いよ!私としては、永井豪系のアツいキャラクターが好きなので、1974年版の初期と今作ヤマトではちょっとキャラクター不足だと思いますので、やっぱり熱いキャラクターが欲しいです。
そう、それと「太平洋戦争」の記憶が軽んじられているような気がします。1974年版第二話にあった回想シーンはあるのでしょうか?1974年は、まだまだ兵隊だったや遺族が健在でしたが、今はその子供たちですら亡くなる年代になってきたので、どうにも戦争の記憶が薄められているような気がします。
戦争の記憶を映像にするとは、こういうことです。
これ、刑事ものの「Gメン'75」の1シーンです。
余談はこのくらいにします。
結論から言うと、かなり見られる作品です。旧作の良さを十二分に生かしていて、製作者が旧作に十分な敬意を払っていることが読み取れます。まさか平田や山南艦長まで出してくれるとは!キャラクターの「萌え」化を、可能な限り少なくしてくれたのも、私にとって見やすい要因だと思います。
だからこそ、戦艦の動きと一部異なる効果音が気になります。今からでも間に合うので、是非改善してください!
ファンの人はもちろん、ガンダムシリーズを見ていた人やロボットアニメを見ていた人、「機動戦士ガンダムZ」や「ダーティーペア」「トップをねらえ」でアニメを卒業した方々にも十分勧められます。是非見てみてください!