
この日は、カービュー主催の三菱 アウトランダー 全国縦断試乗会に当選したため、大阪の泉佐野市にある、泉大津フェニックスに行ってまいりました。
寒いの寒くないの!泉佐野市の北西のは、大阪湾をはさんで六甲山があります。その六甲山から吹き降ろす北西の風が大阪湾で水蒸気の供給を受けるのか、時に雨を伴う強風となっていました。
そのため、手足だけではなく、体までかじかみ、若干評価が厳しい箇所もありますので、読む方はお気を付けください。
三菱自動車とSUVの歴史
三菱重工の時代から、三菱はウイリス社のジープをノックダウン生産していました。このジープは、軍用だけでなく、山岳地域や雪国では、ランドクルーザーやジムニーとともに重宝されていました。
そのジープを、一般の人でも乗用車感覚で乗れるようにしたのが、初代パジェロでした。その「セダンとは一味異なる」感覚が、自動車以外のレジャーをする方にも受け入れられ、ほぼ同じ時期に発売された、いすゞの(ファスターロデオ)ビッグホーンとともに、当時としては流行しました。
ハイパワークーペや、フルタイム4WDのハイパワー車がもてはやされ、280馬力自主規制が始まって数年経った1991年、パジェロは二代目にモデルチェンジします。一般ユーザーも、「速く走るには、結局お金か。」と、気持ちが冷めつつあった時期であったため、パジェロは再びヒットします。あわせて、この種のRVの車高を上げた、「車高族」などという集団も、夜の渋谷にたむろしたそうです。
また、当時は都市圏の若者が金曜日の夜に車でスキー場に出発し、土曜日に滑って宿泊し、日曜日に帰宅するという遊びスタイルが流行り、車とスキーを題材にしてデートをする風習もあった模様です。そのため、ランドクルーザーは70シリーズに、現在のランドクルーザープラドの基になった、「プラド」グレードを追加、日産はもう少し前に、ロサンゼルスのスポーツピックアップをテーマにしたテラノ、スズキは、やや硬派寄りだったエスクードに、「ノマド」を追加しています。当時はこれらの車をして、「RV」「ヨンク」などと呼んでいました。
1994年頃からは、「レジャーをするには、何も車高が高くなくても良いよね。」となり、ステーションワゴンに一部がシフトします。パジェロのピークは、ここまででした。
そして、トヨタからは「RAV4」が発売されます。性能は、全く乗用車そのもの、格好だけがライトクロカンないしはRV(当時の分類法)でした。これが、今までの「RVは大きすぎる」としていた層、セダンは嫌だけど、クーペは流行遅れ」としている層に受け入れられました。ホンダは、当初いすゞからビッグホーンのOEM供給を受けて販売していましたが、後にシビックのシャシーを大改造した「SRV」を登場させています。ここで、パジェロが築いた乗用SUVの歴史は、より乗用車寄りになりました。
そして1996年、このRAV4のコンセプトを大型乗用車に当てはめた、「ハリアー」が登場します。日本まもちろん、アメリカでも非常によく売れました。この辺りで、「キャンプやバーベキュー、スキー、スノーボード、自転車、あるいはカメラまで」の、屋外の趣味を持っていなかったとしても、この種のSUVを買ってもおかしくない時代になりました。
そんな時代に三菱は完全に乗り遅れてしまい、「ウチはよそのメーカーとは違い、本格派のメーカーなんだ」とばかりに、パジェロを丸くしたり(1996年のビッグマイナーチェンジ、1999年のモデルチェンジ)、サイズだけは他社に対抗したパジェロイオなどを出したり、フルラインエボリューションシリーズを図ろうとしたのか、パジェロエボリューションを出すのみで、流行という点からは完全に置いていかれました。
そして、外国人社長が就任前の2001年、ようやく乗用車感覚の「エアトレック」を発売しました。エンジンは、ハイパワー4G63DOHCターボ、ローパワー4G63SOHCという、まるで今日の各車のラインナップ展開を予想したかのようなモデル展開でした。当時、他社にはハイパワーSUVが存在しなかったため、ランサーエボリューションのエンジン(型式はね)を積んだSUVということで、一時話題になりましたね。
エアトレックはそれなりに受け入れられたのですが、フルモデルチェンジの時になぜか名前を変えて「アウトランダー」を発売しました。これは三菱の伝統なのでしょうか?他社のサイズ展開のあるサイズとあるサイズの間に入るモデルとして、アウトランダーは比較的よく受け入れられました。他社は、「V6 3000cc級エンジンと直列4気筒2400cc級の大型モデル」「直列4気筒2000ccモデル」を展開する中、「下のモデルよりはやや大きいけれど、上のモデルよりは小さい。エンジンは直列4気筒2400cc」というモデルとして、他社の隙間を狙っていきました。もっとも、好景気が明らかになった2007年にV6 3000ccエンジンを追加し、不景気が明らかになった2009年に廃止してはいますがね。
そんなわけで、今ひとつメジャーになりきれない三菱アウトランダーは、一体どんな車なのか、を主眼に、試乗してきました。
エンジン
エンジンは、昨年末から三菱の一般用4気筒エンジンとして展開されている、SOHCエンジンで世界唯一連続可変バルブタイミング機構を搭載した、4J11(2000cc)、4J12(2400cc)エンジンを搭載しています。かつて固定バルブタイミングだった時代では、DOHCかSOHCかがエンジン性能を決定していました。同弁系の(慣性)重量や、バルブ挟み角が鈍角に近づくことによる、バルブサイズの拡大が、その理由です。
現在では可変バルブタイミング機構や、バルブリフト量まで連続的に可変できる技術が出てきたため、カムの本数は絶対的なものではなくなっています。
その理由から、SOHCのまま連続可変バルブタイミングを採用すると、シリンダーヘッドが軽く小さくなるため、車の運動性能が良くなります。しかしまあ、これだけ「プーリー内蔵のバルブタイミング調整機構」が普及すると、特殊な構造ゆえのコスト増大を招かないかなあ、と思ってしまうのです。
エンジンは、これまた面白いことに車外では、「カシャカシャ」という、「ロッカーアーム式SOHCエンジン」そのもののタペット音が聞こえます。床下の隙間から聞こえてきました。日産のCAエンジンやホンダのB型やF型のSOHCエンジンを思い出してしまいました。
車内に乗り込むと、遮音がよくなされており、エンジン音はほぼ伝わってきません。空吹かしをしても、前述のエンジンでは聞こえたカサカサした音も聞こえてきません。また、最近また増えてきた「直噴ガソリンエンジン」をはじめとしたエンジンの、「チリチリ、ザラザラ」とした、音と振動の中間のような振動も伝わってきません。
4G系エンジンのDOHCが登場した頃から、三菱のエンジンはモーターの「磁歪音」ような「ウニューン」といった音質のエンジン音でしたが、そのような音は全く聞こえませんでした。
エンジンは、
4B系エンジンとは全く異なり、非常にスムーズです。4Bエンジンでは、「これはディーゼルエンジンですか?」と言いたくなってしまうような振動がありましたが、この4Jエンジンは、トヨタのZRや日産のMRエンジンと、同等の音振性能の高さを感じます。
アクセルペダルはやや重めに設定されています。それゆえ、走行中のアクセル操作料が安定します。他社が電子制御ペダルにしたり、電子制御スロットルの動きで無駄なアクセル操作を無視しているのとは異なり、シンプルな対策と言えます。
反面、出力の出方はなぜかマツダのZOOM-ZOOM第二世代車ほどはリニアでななく、微速域での速度制御がしづらく感じます。具体的には、時速40km未満で走る場合の速度調整がしづらいです。
CVTやスロットルの制御も、他社の車のように無駄を極限まで減らそうというものではなく、アクセルペダルの操作量に対して、割と元気よく発進してしまいがちです。エンジンのポンピングロス軽減のためには
スロットルバルブを開き、変速を高めにしたほうが良いのですが、走っていてあまり気持ちよくありません。他社が後者のような制御を採用しつつある中、アウトランダーは珍しい存在になりつつあるのではないでしょうか。出力の出し方を、もう少しペダル操作に対してリニアに、あるいは控え気味しても良いと思います。
最高出力は、2400ccエンジンで169馬力、2000ccエンジンで150馬力と、必要にして十分です。スロットルバルブによる演出は、不要です。
アイドルストップ機能AS&Gは、車両が完全に停止してからエンジンを止め、ブレーキペダルから足を離して約0.35-0.40秒程度で始動に至る模様です。特別な工夫はなく、普通のポート噴射のエンジンですが、ほぼi-stop並みの始動の素早さです。アイドルストップも、割と頻繁に機能する方です。
トランスミッションと駆動制御系
6速マニュアルモード付きCVTです。トルクコンバーターにより、エンジンの動力を伝達、発車後、速やかにロックアップをしています。前述のとおり、アクセルペダルの操作に対して、リニアかそれ以上に出力を出そうとしているエンジンゆえ、CVTもそれに合わせた変速制御をしています。
かつての日産のCVTに近い変速制御で、加速をしようとしているときは、その時の変速比を保ち、やや変速比を上げながら無段階に変速を行っている印象です。アクセルペダルをスイッチのように操作するのではなく、「目標速度を実現する踏み込み量」にしておけば、速度もエンジン回転も比例するかのように上がっていく印象を「演出」しています。
最近では、2020年燃費規制を取り入れた、「なるべく高い変速比を保とうとする」制御も取り入れられつつある中、気持ちよく乗れるCVTに仕上がっています。
注文をつけたいのが、シフト制御系です。シフトレバーは、P-R-N-D-Lのゲート式です。マニュアルモード時は、ステアリング脇の、コラムに固定された+と-スイッチで操作します。これは最近流行の、「マニュアルモードにしたいときにはDレンジのままスイッチを操作し、しばらくすると勝手にDレンジになる」パターンを実現するためだと思います。
しかしこの方式は、ステアリングホイールが中立位置以外にある場合は、極端に使いづらくなるのです。「コーナーリング中に変速をするのか?」という人もいるでしょうが、ステアリングホイールを少しでも動かしていると極端に操作性が落ちるのは、私は好みません。他社のように、シフトレバーにもマニュアル+-切り替え機構を設けたほうが良いと思います。
駆動系統は、最近の横置きエンジンの主流である「電子制御による油圧作動クラッチの、降臨トルク配分型4WD」です。メーカーの人は「スタンバイ式ではない」とは言っていました。まあ、直進状態でも「弱4WD」となっているからでしょう。しかし、この種の方式はフルタイムと名乗ってはならないように思います。
私は、「常時前後輪にトルクが伝達され、センターデフを介して前後輪の回転を自在にしていて、特定輪が滑った場合に再配分をするものが本当のフルタイム4WD」であると考えています。車輪の空転に対応して、主たる駆動輪から副(?)駆動輪にトルクを伝達したり配分を増やしたりするものは、あくまでもスタンバイ4WDに分類して欲しいものです。滑りやすい路面での安定度が違います。
上記のことを今回強く感じたのは、「カーブでステアリングを切っている最中にアクセルを踏んだ時に、トルクステアを感じた」からです。トルクステアを感じるということは、すなわち、ほぼFWDとして走行しているからに他ならないです。
これが滑りやすい路面であれば、一瞬前輪が滑り、アンダーステアを感じてからようやく後輪が押し始めることでしょう。これでは、姿勢は乱れがちになります。現代の車なら、横滑り防止装置が介入し、その姿勢変化も感じられないのでしょうが、構造的に後手後手にまわる可能性をはらんでいるシステムなので、本当のフルタイム4WDよりも、機能の上では落ちる機構、として評価したいがためです。
ステアリング
電動パワーステアリングを採用しています。他社の電動パワーステアリングでは、磁気の抵抗とも思える、ねっとりとした嫌な抵抗を感じながら操作したり、「これはゲーム機のステアリングコントローラーか?」とも感じる、微妙なクリック感がわかるものもあるのですが、この車のステアリングは、油圧パワーステアリングにも近い印象のものでした。
操作感覚は油圧パワーステアリングに近いのですが、路面の状態や、ステアリング切れ角に関する情報は、あまり伝わってきません。
今回、上記トルクステアで気づいたことがあります。油圧パワーステアリングであれな、ラックギヤの油圧がかかるシリンダー室が、一種のショックアブソーバーとして機能し、路面などからのキックバックを防ぎます。ところが電動パワーステアリングはただのラックギヤであるため、ダンパー機構がありません。すなわち、トルクステアのようなタイヤからステアリングに伝わる力を、そのままステアリングホイールに伝えてしまうのではないか、ということです。
従って、操作感の調整は良くできているステアリングなのですが、路面の状態は伝わらず、トルクステアがあるという不思議な感覚でした。なお、今回の試乗路の路面の状態が良すぎたため、突起乗り越え時のキックバックなどはわかりません。
サスペンション
しなやかでしたたか、全体的に取り付け剛性が高いサスペンションであると感じました。スバルのアイサイトのCMを見ると、停車直後に前輪を中心としてみると、車体が後方に動いていることがわかります。これはタイヤが路面を乗り越えるとき、一旦後退してから乗り越えて前後方向のショックを緩和する、「コンプライアンス」機能の効果です。
ややショックアブソーバーが勝った乗り心地です。微妙な路面のうねりしか体感できませんでしたが、おそらくサスペンションがストロークするときには突っ張らず、軽くいなす感じの乗り越えることでしょう。コンプライアンスが少なめなのにこの乗り心地を実現しているということは、スプリング、ダンパーともかなり設定が良いと想像できます。
余談ですが、企業コンプライアンスが求められるようになった時期、この言葉を聞いて「規制にがんじがらめになるよりも、緩い行動をして企業活動を活発化させる。」ことだと思ってしまいました。。。
さて、そのコンプライアンス機構がかなり効いているスバル車なので、アイサイト機構が作動して停車し、停車後にかなりの勢いで乗員はシートバックに引き戻されます。ノーズダイブも大きいので、停車前後で乗員は前後にゆすられるのです。緊急動作ゆえ、それで気づかせている、という考え方もありますが、サスペンションは、かなり前後に動いている、と言えます。
この車は、非常ブレーキ作動時でもその揺れがありません。サスペンションストロークが長いであろう車体なのに、ノーズダイブが少なめになっています。コンプライアンスも少なめになっており、停車後の戻りもほとんど感じられません。
コーナーリング時にも、前輪側の沈み込みは少なくなっています。若干突っ張る印象はあります。ホイールが18インチということもあって腰砕けにならず、コーナー途中のロール角の深まり具合が安定して以降に、車が外に出ていってしまいそうな動きは見せません。
今回の路面は、鏡のように綺麗な路面ゆえ、乗り心地の正しい評価はできません。減速時やコーナー脱出後の様子、パイロンスラローム時の車体の動きから推して、ダンパーとスタビライザーはやや強めに聞いていると考えられます。サスペンションスプリングはそれほど固くないと推察されます。「曲がり角」や「緩いカーブ」では評価が高くても、
山道のような、ステアリングホイールを180度近くまで回すような路面では、評価が著しく落ちることも考えられます。これは想像なので、実際に山道などを走らないと確かめられません。
ブレーキ
余談ですが、鉄道の世界ですと「自動ブレーキ」というのは、自動車の世界と全く違う意味として使われています。制御空気圧が抜けると、元空気ダメからの空気圧がブレーキシリンダーに作用し、最大ブレーキとなるのが、鉄道における自動ブレーキです。
自動車における自動ブレーキは、障害物に衝突しそうになる時に自動で掛かるブレーキのことですが、空気の圧力を利用していることは鉄道と変わりません。
多くの車には、ブレーキ踏み込み力を軽減する目的で、「真空式マスターバック」というものがついています。エンジンの吸気管などの真空に近い空気圧を一室に導入し、大気圧との圧力差を利用して、人がブレーキペダルを踏む力を介助、より大きな力をブレーキマスターシリンダーに作用するようにしています。
スバルも三菱も、この機構を利用しています。恥ずかしながら詳しく調べていません。確かマスターバックが三部屋になっていて、平常時は二つが真空、一つが大気圧となっていて、自動ブレーキ時には一つの部屋に、電磁弁を介して大気圧を導入、大気圧と真空の気圧差が力となってマスターシリンダーのピストンを押し、あたかも人がブレーキを目一杯踏むが如く、ブレーキが効くものだったと思います。
構造上、人間が操作する系統には改造が不要なのと、かつての油圧マスターバックのように油圧を蓄えておくアキュムレーターがいらないなど、耐久性に優れている上、運転士に違和感を感じさせないシステムなのですが、ブレーキペダルの操作感がスポンジーです。踏んでも踏み応えが得にくく、ゲームセンターのゲーム筐体のように、減速度(ゲーム機には減速度はないが、、、。)と踏み込みストロークとの相談で、ブレーキペダル踏み込み量を決めなければなりません。微妙なブレーキ力調整がしづらく、アクセルペダルの件も含めて、速度調整がしづらくなっています。
自動ブレーキの感知方法は、ミリ波レーダーを使って金属を感知しているそうです。アイサイトはカメラ画像を解析し、障害物を形で認識しています。あくまでもカメラで得られた画像をもとにしているので、カメラの焦点に影響が出るようなものは装着できません。具体的には、ガラス撥水剤、サスペンション系統の部品などです。反面、画像が主体なので、電柱、塀、生垣、フェンス、バイク、人間、画像の判断次第で、いくらでも応用が効きます。
ミリ波レーダーは、2000年頃の「自動追尾車間距離制御システム」の頃によく使われました。レーダー波を使っている関係上、硬いもの、面積の広いものには反応しますが、そうでない障害物には反応しづらい、という点が出てきます。デモ走行でも、障害物に反応しなかったことがありました。
おそらく、画像解析は何社かの特許なので使いたくなかった、ということがあるのかもしれません。このシステムは、ほかのオプションとセットで10万円を切っていると聞きます。ないよりはずっと良いシステムなのですが、液晶テレビの登場でブラウン管技術が不要になったことと同様、ミリ波レーダーの技術は、もう遅れているのかもしれない、と思ってしまうのでした。
自動ブレーキで停車後は、約二秒でブレーキ力が解放されます。これはスバルでも聞いたのですが、後続車両の衝突から脱出するための機能でもあるとのことです。
なお、鉄道でも非常ブレーキ後はしばらく停車します。これは、「ブレーキをかけるための元でもある、元空気ダメへの空気充填」を行うためのものです。ブレーキがかからない状態で発車したら危険ですよね。。。
なお、自動ブレーキの他に「前車追従自動ブレーキ、自動アクセルオートスピードクルーズコントロール」機構もついています。時速10kmでも使えます。加速は電子制御スロットルの動作で、減速は自動ブレーキの機能を使っています。自動ブレーキによる減速は違和感がありませんが、停車はABSが効いているかのような、しかも、停車直前にブレーキ力を緩めない停車なので、気分はよくありません。これは、運転士に注意を促すために、わざと気分が悪い停車にしているのでしょうね。
ボデー
最近の車では、ラジエターコアサポートがボデー骨格部品になっているのですね!コロナもブルーバードシルフィも、ラジエターコアサポートは単なる鉄板なのですが、ZVW30プリウスも、CX5も、この車も、閉断面の構造部材となっていました。ライトバッフル部を介して、フードレッジへと連結され、エンジンルームを環状に囲んでいます。これなら、ストラットタワーバーは不要ですね。もちろん、あれば「なお可」です。
車室部も含めたボデー剛性は高く、後輪の状態も良く伝わってきます。ただ、路面の状態が良かったため、真のボデー剛性は不明です。
装備品には、珍しく「電動テールゲート」が残っています。2000年代はじめの車にはよく採用されていましたが、最近はミニバンに残っている程度です。
軽さはほどほどなのか、CX5で感じた一種のフロントヘビーな印象はありません。後方が持ち上がる印象はなく、2名乗車でも加速時でも、ピッチングは起こりません。ただ、3列シートを実現するために全長が長く、「細長い車を運転している」印象が感じられます。印象はエクストレイルにも近く、CX5とは正反対です。
車内は、上部はオフホワイト、下部は黒です。一時大流行した「プジョー流のセンターコンソールが手前に出た内装」は全く姿を消し、最近のアウディ流の「ややコックピット風」となっています。
視界は「まあまあ」です。斜め後方にはかなり太いクオーターピラーが有り、「Jライン」とはなっていませんが、その太さゆえに斜め後方、それに後方の視界も狭くしてしまっています。ウエストラインも高めで、全体的に開放感はありません。また、絶対的な幅はあるのに、室内の横方向の広さ感は今ひとつです。隣の人と、手が当たりそうになります。シートも心なしか狭めです。ドアやドアライニングが厚いわけでもありません。
他車との差別のため、3列シートを採用しています。とはいえ、あくまでもエマージェンシーシートであり、5人乗りが基本だと思います。ただ、三列目への乗り込みも考慮されなければ使えないため、二列目シートは前後可動式です。シートを前の方にした時に、シート横端部とドアライニングの間に隙間が出来てしまい、広々感が削がれてしまうのが残念です。
スタイルについては、フロントバンパー脇の90度のプレス(加工はしていないが)ラインと、不思議な模様のフロントグリルが気になります。いや、どうも気になって落ち着きません。線がすっきりしていないからでしょうね。かつて、初代セフィーロが発売された時に、徳大寺有恒氏は、「ディテールがごちゃごちゃしている」と評価しましたが、その時の言葉が頭に浮かびます。機能的に有効なものであれば納得するのですが、なんともこなれていないデザインであると感じてしまいます。
現在のところ、いわゆるカスタムグレードである「ローデスト仕様」はありませんが、おそらく市場の反応を見ながらローデスト仕様を設定し、そこで得られた結果でマイナーチェンジをしてくるのではないか、と思います。ちょっと、このデザインは未消化であると感じます。
まとめ
セダンが廃れ、軽ミニバンとミニミニバン(
フリードや
ポルテなど)が主流となった今、かつての「ハードトップボデー」に相当するのが、この種の乗用SUVなのでしょう。各社とも力が入れつつある分野です。
トヨタは、まもなくフルモデルチェンジされるというRAV4と、日産はエクストレイルにデュアリスが、ホンダはCRVがアメリカで売れれば良いや、と申し訳程度に日本に残しマツダがCX5で大躍進、スバルはフォレスターを、そして三菱がここで仕切り直し、としてアウトランダーをフルモデルチェンジして来ました。
この中でのアウトランダーの位置は、エクストレイルやRAV4とほぼ同じ分野にいます。ほかは、もう少し乗用車寄りとなっています。いわば、背が高いハッチバックとみなせます。3列シートとRV的なボデー形状となっていますが、現実的にはほぼ同じ分野です。
少し前の三菱車は、「これがRVなんだ」とばかりに、かなり無骨な仕上がりとなっていました。この車は、より乗用車として洗練された仕上がりとなり、毎日使って体に馴染むであろうと思います。
この車は、せいぜいSOHC連続可変バルブタイミングが珍しいだけで、そのほかは普通のものです。CX5ディーゼルのような目新しさはありませんが、オーソドックスによくまとめています。
そのオーソドックスな車であるが為なのか、フロントグリルとフロントバンパーの処理が気になります。このように、ディテールで車が目立てたことはほとんどありません。
非常によく仕上がった車ではあり、他のSUVと比較、試乗する価値は十分にあります。CX5ガソリンとは互角、ディーゼルには操縦性と振動性能で優っています。エクストレイルには操縦性で勝り、RAV4にはエンジンで優っています。フォレスターはまだ乗っていませんが、旧型後期はかなり良い印象がありましたので、強敵になるでしょう。
この車は、乗り心地と操縦性のバランスという点から試乗してみてください。トルクステアは、まあ気になりますが、他の部分の仕上がりはかなりのものです。ディテールが気にならなければ、おすすめの車です!
参照していただきたいSUV関連試乗記事
トヨタ ヴァンガード
トヨタ ランドクルーザープラド
日産 エクストレイル(ディーゼルMT)
日産 エクストレイル(ディーゼルAT)
日産 デュアリス
スバル 旧型フォレスター
マツダ CX5(ガソリン、短距離)
マツダ CX5(ガソリン、長距離)
マツダ CX5(ディーゼル、短距離)
マツダ CX5(ディーゼル、長距離)