今日は時間の余裕があったので、近くにディーラーに行ってみました。大阪に来てから、初めての試乗です。
乗ったのは、もちろんアクセラのスカイアクティブです。しかし、慣れない道では運転に集中できないので、改めて埼玉でも乗ってみる予定です。
エンジン
新開発のPE-VPSエンジンです。ZOOM-ZOOMで登場したL型エンジンは、結局一代半でお役御免となりました。技術が進化する過程では短命エンジンが多いと思ったのですが、日産L型でも4気筒は10年、トヨタT型は15年、マツダL型は10年ですので、まずまずの期間ですね。
マツダL型は、改良に次ぐ改良の歴史でした。最初は固定バルブタイミングのワイヤースロットルという、90年代後半のエンジン仕様で登場しました。初代アテンザの途中で可変バルブタイミング化、アクセラの登場で筒内噴射・アイドルストップ機能追加、MPVなどではターボ化も行われました。スカイアクティブ化は、既存エンジンの改良ではなく、新開発にて行われるようです。
L型(LF-VDS)では、2500回転までのパワーがやや小さく、2500回転から急にパワーが出てくる特性でした。スポーティーカーとしてはなかなか良い特性でしたが、ミニバンにはちょっとちぐはぐな感じもしましたが、私にはそれが面白く感じられました。
このPE-VPSエンジンは、L型とは全く異なる特性を持っています。低回転からまずまずの力が発揮され、その後特にピークパワーの盛り上がりを感じることなく、高回転域までほどほどのパワーで吹け上がります。4000回転以下では静かでなめらかな回転をします。なめらかとはいっても、ややざらつくことが多かったマツダのエンジンとの比較ですので、
トヨタのZRや
日産のMR、
スバルのFBに比べるとちょっとざらつく感じがしなくもない、という程度です。
4000回転以上では、なかなかやる気にさせる4気筒らしいビートが効いた音が聞こえます。音は気持ち良いですが、ちょっとパワー感はないかなあ。先日も
フィットシャトルハイブリッドの回で書いたように、低回転よりも高回転の方がトルクが大きいエンジンは「期待を感じる」ために気持ち良くなり、「低回転より高回転の方がトルクが小さいか同じ」だと、「先細りを感じる」ために、気持ち良くない、という、勝手な思い込みがあります。
そんな理由もあってか、街中での使いやすさはまずまずながら、扱う楽しみが今一つとなっています。また、後述のトランスミッション制御のためなのか、スロットルバルブ制御のためなのか、爽快なアクセルレスポンスが得られません。この車も
スイフト同様、オートエコノミースロットル制御が組み込まれているようで、なめらかで低開度のアクセル操作をしていると、アクセルペダルを踏み増してもスロットルバルブを開かないような状態になります。その状態から抜けるには、スイッチのようにアクセルペダルを操作しないとなりません。
プレマシーが、あたかも「アクセルペダルとスロットルバルブがワイヤーで連結されているような一体感」があったのに対し、この車は電子制御スロットルらしさを強く感じさせます。燃費のためかもしれませんが、マツダが訴える「一体感制御」は、ダルな方向に振れすぎてきたのかもしれません。そのスロットル制御も手伝って、上には「低速から十分な力を発揮」ではなく、「低速からまずまずの力」と書いたのです。
圧縮比12:1という、いかにもトルクが大きそうなエンジンのスペックだけが先走りしていますが、これは「圧縮比」であって、「圧縮圧力」とは必ずしも関係ありません。ミラーサイクル方式ですので、圧縮中に混合気を戻しています。なので、正味の吸入空気量は少なくなりますので、熱効率はよくなり、吸気のポンピングサイクルは軽減され、機関としての効率は上がります。しかし、シリンダー内の空気量は減りますので、出力としては小さめになる、という理屈です。
ん~、もうちょっとスロットルレスポンスを良くして欲しいですね。アイドルストップは、L型エンジンの頃とは比較にならないくらい頻繁に行われます。エンジンの停止・始動時のショックはさらに少なくなりました。
エンジン音は、L型がやや「低回転でザラザラ、3000回転を超えるとブオー」としていたところ、「低回転で無音、4000回転以上でブオー」と、平時は静かに、飛ばして走った時に古典的なエンジンらしい音が楽しめるようになりました。
トランスミッション
今回のアクセラの技術的トピックスは、エンジンよりもトランスミッションにあります。スカイアクティブドライブは、低速域からトルクコンバーターを積極的にロックアップし、トルクコンバーターによるトルク増大作用を捨てて、エンジンの回転をダイレクトに車軸に伝えるようにしたことです。ロックアップ技術は昔からあり、Y30セドリックなどには「全段ロックアップ」などというものもありました。しかし多くの車は、「オーバードライブかその一つ下の段で走行中、一定速度になるとロックアップ」か、「完全ロックアップの前段階から少しロック(ハーフロックアップ)する」ものでした。これにより、トルクコンバーターでの回転ロスを減らし、燃費の向上を狙っています。
アクセラ登場以前も、トヨタの
縦置き6~8速AT、
日産の7速ATには採用されています。この効果は絶大で、素早いシフトチェンジとエンジンの回転上昇と速度上昇が比例した、気持ち良い運転が実現されていました。マツダ自身も、1990年代初めから他社に先駆けてハーフロックアップを採用し、技術的にも非常に熟成されていました。そのため、マイナーチェンジ前のアクセラでも、非常にダイレクトなドライブフィーリングを持っていました。
この6速ATは、そのロックアップ用クラッチを多板化し、素早く滑らかで、低速から可能なロックアップを実現しています。1速ではこのロックアップをせずにトルクコンバーターによるトルク増大を行い、2速以上でこの機能が働くとのことです。
しかし、みるからにダイレクトなドライブフィーリングが得られそうなトランスミッションながら、前述のスロットル制御の関係か、変速スケジュールの設定か、トルクコンバーターの使い方からなのか、これまた爽快なドライブフィーリングが得られません。
誤解を避けるために初めに書いておくと、定速走行時にアクセルペダルを踏み増すと、滑りなく回転が上がろうとするので、ダイレクトに連結されているのは確かです。
普通の道で発車しようとすると、もちろん1速で発車します。変速比3.556、最終減速比4.056と、乗用車のMT並みのローギヤードな比率なのに、力強く発車しません。ブルーバードシルフィは、気を付けてアクセル操作をしないと急発進しますし、コロナも乗員の頭が後ろに傾くのですが、この車はびっくりするほどスムーズかつぎりぎりの力で発車します。トルクコンバーターの容量が少ないのか、前述のスロットル制御によるものなのかは短い試乗ではわかりませんでしたが、なんとなく頼りない感じがします。この頼りなさがダイレクトであってもダイレクト感を失わせる結果となり、低速での力が足りなく感じると書いた
プレマシーよりも、さらにパワー感が感じられなくなる有様です。
しかも6速あるからなのか、
DSGほどではないもののさっさとアップシフトしようとします。2速に変速するのは1500回転だったかな?しかもロックアップ制御が始まりますので、車輪の回転力はさらに落ちます。そのアップシフトしたがる状態は、DSGや
トヨタのCVTを思い出させました。「おいおい、そんなに勝手に早く変速しないでくれ!」と、車に言いたくなるほどです。
走行中の変速も、どんどんアップシフトしてしまうようで、60km/hでのエンジン回転数は1100回転!これでは空いた道では燃費がよさそうです。しかし、そこからアクセルペダルを踏み増しても、踏み増し量によってはダウンシフトは行われません。ロックアップも効いたままです。運転手はタコメーターかシフトインジケーターでしか現在の段を知ることができないので、加速の予想ができません。MTであれば、現在何段に入っているかわかるので、アクセル操作量と加速の関係は、運転手が予想できます。
また、トルコンATであれば素早くロックアップが解除され、トルク増大作用が効いた力強い加速が得られます。この車では、どうにも運転者の感覚と車のスロットル・変速制御が合わない感じがしました。もう少し頻繁に変速してもよいのではないでしょうか?トルクコンバーターによる滑りがなくなったことが、こんなところに違和感として現れるとは思ってもいませんでした。もっと頻繁にダウンシフトをしてもよいのではないでしょうか?
また、スロットル制御と連動しているのか、シフトショックが全くありません。CVTのマニュアルモードにも近いです。シフトショックがないのも不思議な感じで、ダイレクト感を感じさせない理由の一つとなっています。
爽快感とダイレクトなドライブフィーリングについて言えば、旧型の5速ATの方がよかったと思います。
シフトスケジュールとシフトショックの吟味、ロックアップの設定、エンジンのスロットル制御との協調について、さらなる吟味を望みます。
ステアリング
プレマシーのステアリングは、日本車とは思えないような重みがあるものでしたが、やや反省したのか、軽くなっています。zoom-zoom第一期のように、センター付近の反応が過剰な感じは完全になくなりましたが、重みもなくなったので、相対的に他のメーカーと変わらない印象になりました。いや、
プレマシーにあったダイレクト感も薄れたかもしれません。
サスペンション
試乗車は、17インチタイヤを履いたグレードでした。ちょっと硬い感じがしましたが、まあ、我慢が出来る範囲でした。
プリウスのように、17インチタイヤにシャシーが負ける感じはせず、サスペンションはしなやかにショックを吸収しています。動き始めの渋さも皆無で、荒れた路面や舗装が傷んでマンホールが飛び出た感じのところに乗り上げても、シャシーやボデーがぶるぶると震えることは皆無でした。モノコックなのでフレームこそありませんが、ボデー底面のところでショックを吸収し、屋根に力が伝わっていないかのような感じです。
が、17インチタイヤはちょっとタイヤが固すぎです。15インチや16インチタイヤの方がバランスが良いはずです。
ブレーキ
これはマイナーチェンジで大幅に改善されました。
マイナーチェンジ前は、スポンジーなペダルフィーリングで、ブレーキ力をペダル踏力ではなくペダルストローク量で調整しなければならないブレーキでしたので、ブレーキ力の調整がしづらかったです。
プレマシーでは、固くてかちっとした固いブレーキでしたので、まさにペダルを踏む力でブレーキ力を調整する必要がありました。
この車では、
プレマシーのしっかり感ほぼそのままに、軽めのブレーキにチューニングされています。
プレマシーのしっかり感も捨てがたいですが、このブレーキもよいと感じられました。
ボデー
前述のとおり、17インチタイヤをまあ履きこなすボデーですので、大満足です。斜め後方の視界は、まあ、決して良くありません。メーカーもそれを認識してか、片側二車線以上の道で、車線変更をしようとするときに斜め後方から車が接近している場合、ドアミラーに光が点いて危険を知らせるオプションがあります。でもまあ、ボデーの視界をよくすることが基本だと思います。
内装は改善され、ダッシュボードの大半がソフト塗装(?)がなされています。全部そうすればよいのに、一部は固いプラスチック板ということがありますが。。。
メーター照明は、とうとう赤をやめました。赤は、暗い道を走るときにメーターと外の景色のコントラストが少なく、目が疲れないというのがメーカーの言い分だそうですが、赤は人間を興奮させる色なので、自動車用としてはよくないと思います。改善ですね!
まとめ
マツダの車は、マイナーチェンジに力を入れるようになりましたね。旧型もよい車でしたが、マイナーチェンジでさらに良くしようという姿勢が読み取れます。しかし、本当によくなったかどうかは、ここまで読んでいただいた方には察しがつきますよね。
メカニズムとしては、既存の技術を磨き、さらに良くしようという意気込みが伝わってくるのですが、走りこみ不足とも思える、運転時の違和感があります。また、現行
プレマシーから始まったとされる、「
zoom-zoom第一期の反省、一体感ドライブへ」と、過剰なレスポンスを抑えるチューニングが進められていますが、どうにも
プレマシーが総合的な運転の爽快感のピークで、
マイナーチェンジされたデミオはほぼそのライン上、このアクセラでは、ちょっとダルな感じが出過ぎたか?と思えます。どうもこの振れ幅が大きいので、マツダ社内に「ドライブフィーリングについて、明確な論が確立されていないのかな?」とも思ってしまいます。
かつて、R32は理詰めで、R33は営業サイドの意見を取り入れてダメ(?)にした日産ですが、その二の舞にならないか、ちょっと心配になってしまいました。
このアクセラ、たしかに
VWゴルフ対抗としては良い性能を持っていると思うのですが、爽快感の点では
プレマシーよりも退化しているなあ。プレマシーやデミオの出来と、「スカイ」シリーズに大きな期待を持って乗ったためか、ちょっと期待はずれでした。
しかし、総合的に見て出来はよい車ですよ。でも、エンジンがスムーズで活発で軽快によく走る
オーリスの気持ち良さが頭から離れません。また、私のコロナはもちろん、家のブルーバードシルフィですら、ある種のダイレクト感はこのアクセラより勝る気がするという、ダイレクトなドライブと、ダイレクトに感じるドライブフィーリングの違いを感じさせた試乗でした。
*慣れない道での試乗でしたので、埼玉へ帰る予定の11月初めにあらためて試乗します。
追記:
埼玉でも試乗を行いました。ご覧ください。