
この日は、会社の人3人を連れて、CX5(ガソリンエンジン搭載車)で、ロング(?)ドライブに行ってきました。ロングとは言っても、周囲の反対によって距離は514kmに留まりました。
ドライブ自体は、大阪市内を出発-川西池田駅-福知山市-豊岡市-餘部鉄橋-天橋立-三田-川西池田-大阪市内と、大阪市内と川西池田区間、天橋立-三田区間のみ高速道路で、その他は一般道と山岳道路です。
CX5ディーゼルエンジン車も同時に借りようとしましたが、店側のミスで予約されておらず、1台で行きました。
エンジン
PE-VPSエンジンは低速トルクはあるものの、LF-PPSのように吹かす楽しみが減った」と書きましたが、そんなことはありませんでした。低速トルクは十分あり、1.5tの車両をごく普通に発車させます。エンジンは約155馬力で、馬力荷重は約10kg/psと、昔の価値観ならば「ようやく普通に走らせる」レベルです。しかし、4人乗車でも軽々と発車し、加速も十分です。もちろんパワーがあふれる走りというわけではありませんが、一般道路、高速道路とも、追い越し加速は普通にできます。
短距離試乗の場合と同様、最終減速比が低められているために、0km/hからの発車は軽快です。後述するトランスミッションの効果と相まって、発車時から高速時まで、アクセルペダルの操作に対して、エンジン、車両とも、レスポンスよく加速します。パワーは必要にして十分ですので、「速い加速」ではありません。右足によく反応する、という意味になります。加速の楽しみは、「右足とは連動しないものの、豪快で素早い加速」を望む評論家さんや車好きが多いように感じますが、この車は絶対的な加速はそれほどではないものの、意思によく反応する加速が可能です。
先日は、「エンジン音が静かになり、加速の楽しみが薄くなった」と書きましたが、2500回転を超えるとLF-VPS同様の「ドゥルルルルーン」と、4気筒らしいビートが効いたエンジン(排気?)音になります。おそらく、排気マニホールドが等長となった上、中回転域で有効な排気ガス吸出し効果が得られているためにこの音が発生するのではないか、と思われます。LF-VPSでは1500回転から2500回転域でトルクが急上昇し、「加速感が高まる」感じとなっていました。このPE-VPSでは、あらかじめトルクが高いために、「加速感の高まりによる期待感」は感じられませんが、発車から加速まで、2000ccエンジンとは思えない加速が可能です。2200-2300cc級のエンジンが搭載されているかのような印象です。
低回転域から十分なパワーが発揮されているため、特に大きなトルクを発揮する回転域というものは感じにくくなっています。高回転域までトルクが落ち込むことなく、軽快に回ります。その効果もあって、あたかもアクセルワイヤーがあるかのようなレスポンスが得られます。
気温のためか改良の為か、アイドルストップは頻繁に行われます。若干、意識をしてブレーキペダルを踏んでいないとアイドルストップしづらい感じではあります。始動は発車時間に対して十分余裕を持って行われます。これが、0.3秒級と0.4秒級の違いです。リダクションセルモーターの音が「キュ」とするやいなや、エンジンがかかります。これが、エンジン停止位置を正確に検出し、気筒内に燃料を直接噴射しつつ、その混合気に点火を行う効果の賜物でしょう。
多くの評論では、「ガソリンエンジン車はディーゼルターボエンジン車と比較してパワーが足りない」という論調で書かれていますが、パワーは十分あります。アクセルレスポンスはガソリンエンジンの方が良く、ダイレクトで運転しがいがあるドライブが可能です。
トランスミッション
おなじみの、「トルクコンバーターは発車時にほんの少し使い、発車するとすぐにロックする」方式のATです。この効果は如実で、発車以後のアクセル操作に対して車両はすぐに反応します。アクセルペダルを踏む足を固定できない人が運転をすれば、乗員は常にお辞儀とふんぞり返りをすることになります。一定速度走行時には、ギヤの唸り音(振動)すら聞こえてくる有様です。トルクコンバーターのロックも巧みで、MT車でクラッチペダルを踏む足を離すのと同じ程度の頃にはロックされます。シフトレバーの操作に喜びを感じない方には、「これならMTは不要」と言えるレベルです。レバーのマニュアル操作に対しても、変速は素早く行われます。MT派の私でも、「これからはこれで十分かもしれない」と思えるレベルでした。
アクセラの開発責任者である猿橋健一郎氏が、「アクセラは峠で走らせると非常に生き生きと走る」とおっしゃっていたのですが、その気持ちがよくわかりました。スカイアクティブATの良さは、山岳路で生きてきます。CX5用は街中でトルコンATと同等、山岳路で勝り、アクセラ用は街中ではトルコンATにやや劣っても、山岳路ではCX5同様、トルコンATに勝ることでしょう。
一方、マニュアルシフト操作については、やはり同じ注文をつけざるを得ません。エンジンの最低回転数は1300回転程度に留めているようですが、レバー操作によってシフトアップが行われ、車がこの操作を拒否した場合でも、ウンともスンとも言いません。車側の都合で拒否した場合には、何らかの警告音を出したほうが良いと思います。
また、私以外の運転士は、マニュアル操作によるシフトダウン時に、レバーを後ろ側に倒してしまうことが度々ありました。これは慣れですよね。
ステアリング
ステアリング操作に対し、車は過敏でもなければダルでもなく、ちょうど良い反応を示します。パワーステアリング系について言えば、若干重さを感じることがありました。据え切り時と、大舵角時です。据え切り時は「重いな」と感じるだけで悪いことはありません。しかし大舵角時に重くなってしまうと、切り増しが必要となった時に操作が遅れてしまったり、山岳路ドライブでは疲れてしまったりします。それだけではなく、切ったステアリングを戻すときにも不自然な重さが演出されており、セルフアライニングトルク(ステアリングを戻すときに、車輪自身が直進しようとする力のこと。)が弱められてしまっています。そのため、切る操作の時にはシャープな操作感が得られるのですが、戻す操作の時には「粘っこさ」を感じてしまいます。
路面の情報もあまり伝わってこず、コーナーリング能力はあると思われるものの、自信を持って曲がり続けられないような印象を持ってしまいました。なんとなく、パワーステアリングの設定が良くないように感じました。どうも最近、「フリクションがあるかのような操作感の電動パワーステアリング」が増えているような気がします。
サスペンション
短距離試乗ではわからなかったことが分かりました。
車が突起に乗った時に、当たりはそれほど固く感じないものの、ストローク中に急に固くなるかのような印象です。そのため、特にフロントについては突き上げる感じがあります。今回の車は17インチホイール仕様でしたので、当たりが柔らかいのはタイヤの効果もあるかもしれません。
ストローク中に固さを感じるということは、スタビライザーが固めであるのか、サスペンション自身が早い時期にバンプストップラバーに当てる設計になっているかのどちらかです。コーナーリング時にも、ロールスピードが遅いので初期は自信を持ってコーナーに入れるのですが、コーナーリング最中は「つま先立ち」であるかのような印象です。すなわち、サスペンションがストローク中に急に固くなり、以後はタイヤがよじれているような印象です。
もっとも、地上高が高いクロスオーバータイプであり、タイヤも厚い65%扁平ということもあるでしょう。この「つま先立ち」ないしは「突っ張り」感が強く、この種の車としては安定はしているものの、一般的な乗用車ボデーの車と比べると、「コーナーリングが楽しい」とまではいきません。この点からも、19インチ仕様の方が、サスペンションとの相性は良いのではないか、と推察されました。サスペンションは、もう少ししなやかさというか、当たり始めからストローク中まで、リニアにストロークするサスペンションとして欲しいです。
ブレーキ
ペダルが若干スポンジーな印象は変わりません。しかし、特に不安なく操作できました。もう少ししっかりした操作感にしたほうが良いとは思います。これは、短距離試乗の時と、印象は変わりません。
駆動系統
今回の車は、4WD車でした。アクセルペダルやステアリング操作、前後輪の回転速度から自動的に後輪へと回転を配分する、いわゆるスタンバイ式4WDです。この制御は電子制御で行われており、舗装路を走行している時には、ほぼ前二輪駆動となっています。
しかし、完全には前二輪駆動ではないようで、コーナーリングの立ち上がりでアクセルペダルを踏んだときに、前二輪駆動式のようにステアリングを切った方向に引っ張られたり、あるいはコーナーの外側に出ようとする印象が薄く、特にコーナーリング時には後輪にも若干回転力が配分されているのではないか、と思います。他社のモデルのように4WDロックスイッチは用意していませんが、これは技術者の自信の表れなのか、それともコストダウンなのか、、、私はあったほうが良いと思います。
ボデー
スカイアクティブシャシー、ボデーの効果は如実です。ストラットタワーバーなどの付加物がないにもかかわらず、路面の突起に乗り上げた時にもボデーはミシリともいいませんし、ブルブルと不快な振動も残りません。エンジンのところでも述べたように、発車が軽快なのもボデーの軽量化の賜物ではないかと思います。
その効果のためか、ボデーが軽くなって重量配分も前寄りになってしまっているかのような印象を抱きます。コーナーリング操作時に、最近の前横置きエンジン車では感じられなくなった、前の重さを感じるようになってしまいました。4-2-1排気マニホールドを搭載するために、エンジンを後ろに置くことができないこともあるかもしれません。4人乗車でも前が重く感じてしまうのです。
荷物室は車体形状よりも広く感じます。天地方向はリヤゲートウインドーの形状もあってフォレスターやエクストレイルほどではないかもしれませんが、多くの趣味道具を詰めることでしょう。
ボデーの形状は、写真で見る以上に大きく、ハリアーのサイズでもあるかもしれません。かつて産経新聞が武蔵野市役所庁舎の大きさを批判するCMを流したように、「こんなに大きな必要があるでしょうか?」と思ってしまいました。
まとめ
私は、「趣味の道具を車に積んで移動し、移動先で遊んだり仕事をしたりして、また車で帰る」や「雪道や泥濘地に行く」ことがないので、そもそもステーションワゴンやハッチバック、クロスオーバーやSUVには関心が薄くなってしまいます。そのため、この種のクロスオーバーにはどうしても評価が厳しくなってしまいます。走りを重視するならセダンやハッチバックが良いし、荷物を積むなら乗用車タイプのステーションワゴンが良いと思ってしまうのです。この車は地上高が高く、そのためにコーナーリング性能は明らかに乗用タイプボデーに劣っています。そんなこともあり、「この車は他社のクロスオーバーに比べてよかったとしても、そもそも車としては中途半端なものになってしまっているのではないか」という印象になってしまったのです。スカイアクティブの一部しかなかったとしても、アクセラの方がドライブフィーリングは優れていることでしょう。かといって、RAV4やエクストレイルを望んでいる人が、車に爽快なドライブフィーリングを求めているかというと、少々疑問です。
この傾向は、海外のクロスオーバーが高出力エンジンを搭載してサーキットで云々、という状態になってからなのか、フォレスターがターボエンジンを乗せたからなのかは不明ですが、どうも車の進化形態がおかしな方向に向いてしまっているようにも感じます。
この車はこの車でよかったとしても、クロスオーバー車は車としては中途半端なような気分になってしまいました。この車は単体では良かったとしても、走りはアクセラの方が上でしょう。ボデーが気に入った方や、ほかの趣味の都合で荷物を積んで雪道や泥濘地に行く必要がある方は良いと思いますが、雑誌記事などにあるように「走りのイメージ」で選ぼうとされている方は、アクセラの方が満足できるかもしれません。それから、相変わらずCX5のガソリン車もオススメです。タイヤは、コーナーリング時の「タイヤのよれ」を避けるため、19インチ仕様の方がバランスが良いかもしれません。
うーん、クロスオーバー車は、その存在はファッションイメージと走行性能のバランスが難しそうです。他社のモデルにも乗ってみて、運転技術と走行性能、乗り心地性能のバランスを探る必要があります。車高が高い車である必要がない方や憧れない方は、乗用車タイプを選んだほうが良いと思います。
参照して欲しい記事
CX5ガソリン
CX5ディーゼル
アクセラ(埼玉)
アクセラ(大阪)
アクセラ(前期型2回目)
アクセラ(前期型1回目)
エクストレイル(ディーゼルAT)
エクストレイル(ディーゼルMT)
フォレスター
ランドクルーザープラド
ヴァンガード
デュアリス
ドライブの写真
