
この日は所用が終わり、時間が空いたためにCX3に乗ってまいりました。世の中でクロスオーバータイプが流行しようとも、どうにもこの形が好きになれません。そもそも、私にアウトドアの趣味がないからなのかもしれませんね。車高を上げる必要もありませんし、走行性能を楽しみたければ地面に近いところに座る必要があります。セダンのしっかりした車高までが標準で、それ以上は「ジープ」という概念が残っているからかな?どこかで改める必要があるのかもしれませんが、身近の人も皆「好きではない」の合唱です。誰が流行していると言っているのでしょうね!?
クロスオーバーの歴史
そもそも、三菱ジープを民生用の一般用として制作した車が、三菱のパジェロでした。それまでもランドクルーザーやパトロールがありましたが、やはり山間部を中心とした特殊な用途向け車両でした。
パジェロ登場期は、スポーツブームが最盛期で、スキーがレジャーとして定着し始めた時期でした。他にもいすゞがビッグホーンを発売し、にわかにクロスカントリー4WDが増えました。
その後一旦沈静化しますが、1991年にパジェロがフルモデルチェンジ、加えてスポーツカーから脱落?した人がクロスカントリー4WDの車高を上げる「車高族」を組織?し、この種の車がおしゃれなアイテムとして認知され始めました。
1993年には三菱パジェロの軽自動車版パジェロミニ、その乗用車版パジェロジュニアが登場、1994年には、ボデーも性能も乗用車程度とした「RAV4」が登場しました。走行性能よりもファッションとしての「ヨンク」がもてはやされました。さらに1996年には、カムリをベースとした「ハリアー」が登場しました。ライオン着ぐるみ?のCMと、「ジジくささがない高級車」として、一躍人気になりました。あの当時、カムリよりもハリアーの方が多く見かけられたほどです。この時まで、ミニバンとまとめて「RV」と呼ばれておりましたが、ミニバンやヨンクでレクリエーションをするとも限らない、ということで、ミニバンとSUVというジャンルになりました。
また同じ頃、GMCタイフーンなどにヒントを求めたのか、SUVボデーにハイパワーターボエンジンを搭載した「スバルフォレスター」が登場しました。
ホンダはSUVに対応できるシャシーがなく、シビックをベースにサスペンションフレームを改造して車高を上げた「CRV」を登場させました。悪路走破性は…ですが、「都会派SUV」というジャンルを築きました。
その後RAV4は大型化してしまい、当初のヒットの要因を忘れたのか、というモデルチェンジを行いましたが、代わりに200万円SUVを標榜した、日産エクストレイルが2000年に登場します。国際的にもBMWがXシリーズを展開、SUVがひとつのジャンルになりました。
概ね確立されたジャンルのSUVですが、流行ったり廃れたりしながらも確実に支持されているジャンルになりました。自転車にマウンテンバイクを選ぶようなものですが、男性よりも女性向きのような気がします。
エンジン
デミオのディーゼルエンジンと同様の、1500ccの直噴コモンレールディーゼルエンジンで、可変ノズルターボチャージャーと水冷インタークーラーを採用しています。可変ノズルターボチャージャーは、排気ガスが出るところの断面積を翼断面の「ふた」で調整し、排気ガス量が少ない時にはふた免責を絞って排気ガスの勢いを増してタービンを速く回せるようにします。排気ガスの量が増えるにつれてふたの断面積を広げ、過給圧が上がり過ぎないようにしています。この方式は良いことずくめのように思われますが。可動部があるだけに故障の原因となること、排気ガスを出すためにエンジン出力が抑制されてしまうこと、最大過給はそれらの機構がないものと比較して不利なことがあります。とはいえ、エンジンの回転が低い領域からターボが働き始めるので、扱いやすいエンジン特性になります。
実際には、1750回転以下では過給圧が低く、それ以上で過給が本格化する印象です。ターボチャージャーは小型ですので、アクセルペダルを全開にしても2200ccエンジンと比較するとおとなしい印象です。説明ではターボチャージャーの存在を気にすることなくエンジンを使えることになるのですが、実際には1750回転未満でのパワー不足は感じますし、特にエンジンの回転が落ちてから再びアクセルペダルを踏んで加速しようとするときに、ややもどかしさを感じます。この領域でシフトダウンが起こると、ショックが結構大きく感じられたりと、シフトスケジュールとの協調が今一つです。これがMTであれば運転士が自分で調整できますゆえ、ATならではの悩みです。
それと、これはエンジン制御系等のバグなのかもしれませんが、アクセルペダルを全開にして加速をした時に、エンジンの回転数が3000回転までしか上がらず、あたかもトルクコンバーターAT車のようになってしまったことがあります。無過給時のダウンシフトのショックとともに、制御系等の強調制御がデミオほどうまくいっていない印象です。
それ以外のエンジンの仕上がりがデミオと同等です。エンジンが暖まれば騒音は少ないし、出力も必要にして十分な程度あるし、ディーゼルエンジンということを気にせずに使えます。デミオでは速く走るスポーティーを期待するために高回転の伸びが寂しかったところですが、速く走らせる気持ちはそれほどわかず、荷物を積んだり多少のラフロードを走行するこの車には、ぴったりな性格のエンジンであると思います。
なお、今回の試乗車にはエンジンの騒音を打ち消す「ナチュラルサウンドスムーサー」が付いているかどうか不明でしたが、十分に静かなエンジンであるように感じました。こういう部品は、全車に装着してはいかがでしょうか?また、デミオでは選べもしないというのは変です。
ガソリンエンジン仕様はありませんが、1800から2000cc程度のガソリンエンジンと同等の能力があるディーゼルエンジンでちょうど良くなっておりますので、ガソリンエンジンなら1800ccは欲しいところです。
トランスミッション
既にお馴染みのスカイアクティブ6速ATです。登場時と比較して、発進時の鈍さはかなり姿を消しましたが、シフトショックも減らされてしまっているのもちょっと残念です。多少のシフトショックは、変速を知らせる手段であり、多少残した方が運転しやすいと思います。
前述の、エンジンの無過給域である1750回転未満の時に再加速を使用すると、アクセルペダルをゆっくり踏んだ時ほど大きなショックが感じられます。最近流行りの「変速時空吹かし制御」などを併用すると良いのではないでしょうか。
ブレーキ
プレマシーのマイナーチェンジ時に少しスポンジーな印象になったブレーキそのものであり、変化はないようです。自動車メーカー全体の中では良い方にあり、この車の美点です。制動力も車重に対して十分であり、制動力の調整もしやすいです。欲を言うなら、前期型プレマシーのような、固くて正確な調整が可能なものに戻して欲しいところです。
ステアリング
後述する乗り心地が硬めにされていることもあり、この種の車としては俊敏な舵の効き具合になっています。ほぼデミオと同様の、神経質さがない調律となっております。少し前のマツダ車とは異なり、ゆったりした印象です。ただし、微小操舵角でステアリングが勝手に回ろうとする性質もそのままであり、デミオとともに改善を望みます。
サスペンション
この種の車というと、ふんわりした乗り心地とカーブでのロール、その一方で悪路でも路面からタイヤが離れない、というものでした。しかし、この車はスポーツカーを狙っているようで、比較的固めのしっかりした印象です。フォレスターとは違って、ストロークしながら固くなっていく印象です。
旧ステップワゴンで感じた、ストロークしていくと急に硬くなる印象でもありません。スタビラーザーが太いのかもしれません。
乗り心地が硬く感じるのはうねりが強い路面であり、カーブ等ではこの恩恵に預かって、乗り物酔いが少なくなったり、運転士は操縦性の良さを感じることでしょう。
乗り心地の良さをとるか、カーブでの安定性をとるか、というところですが、地上高が高い車ゆえ、私はカーブでの安定性を取りたいと思います。バス同様、いくらふんわりしていても、酔ってしまったら車の楽しみが完全になくなるからです。
ボデー
内装は、これまで進化してきたマツダ車の内装がより良くなった印象です。最上級車では白いシートが用意されるそうですが、これは車の性格からも実用性からも、私はいらないように感じます。
視界は良好で、特に斜め後方の視界の改善がなされています。スタイルの上ではインパクトはなくなりますが、実用的です。
シートは、乗用車というよりはクロスカントリー車を思わせるシートで、あまり良く感じませんでした、シート自体は肉厚で張りがあって高級感があるのですが、シート座面の前部を上げることができないために、足の関節の曲がる部分が座面に着きません。他社のシートでは座面角度を変えられるものですが、この車は変えられませんでした!?一体どうしたことでしょう。衝突事故時のことを考えても、前部はもう少し高い方が良いと思います。
なお、モータースポーツをしない限りは着座位置や操縦性が悪く感じられることはありませんので、乗用車からの乗り換えでも不便を感じることはありません。そう、この車はデミオのワゴンに相当する位置づけでもあり、二代目デミオの再来でもあるのかもしれません。
しっかり感はかなりのもので、乗り心地の硬さにボデーが震えるかと思いきや、そんなことは一切ありません。カーブでも位相ズレのような感覚はなく、ハッチバックボデーなのにまるでセダンのような塊感が感じられます。
まとめ
私はどうしてもこの種のクロスオーバースタイルに興味が湧きません。なんでも地上高が高いことは雪国では重宝するそうですが、そうでないところでは不要です。おしゃれのための地上高の高さ、というものが理解できないので、私には不要です。同種のものに、ワゴンもあります。これは、荷物を積んで出かけ、荷物を降ろして車の外でする趣味がない私の勝手な意見なので、地上高の高さに惹かれる方はどうぞ!
確かに、デミオでは小さすぎるけれど、プレマシーは家族っぽさが感じられて嫌だ、という家族にはぴったりかもしれません。操縦性の点でも不満を感じることはなさそうですから、子供が大きくなって親の車に乗りたがらなくなる時期まで使えそうです。ただし、3列シートや大きな荷物室が欲しい方には勧められません。あくまでも、ステーションワゴンの亜流として選ばれる車です。ただ、ちょっと価格が高すぎるかな???いろいろな意見はあるでしょうが200万円を超えると、車にかける金額としては負担感が高まるものです。
そのなことから、価格の点で弱点を残した車ではありますが、今のマツダには低価格戦略はありませんし、価格がネックなら車高を諦めて、他社の5ドアハッチバックを選ぶ方法もあります。そんな、乗り手を選ぶ車であると思います。
参照して欲しい記事
日産
ジューク前期型
ジューク後期型
エクストレイル(ガソリンエンジン)
マツダ
デミオ
CX5(前期型、ガソリン2000cc)短距離
同、長距離
CX5(前期型、ディーゼル)短距離
同、長距離
スバル
フォレスター(ターボエンジン車、前期型)
XVハイブリッド
三菱
アウトランダー
デリカD5(ディーゼルエンジン、初期型)