2007年11月09日
第50話「宇宙を駆ける」
エマ 「カミーユ、静かね」
カミーユ 「しゃべったら疲れますよ。落ち着いたらアーガマに戻ります。
しばらく辛抱してください」
エマ 「カミーユ、私の命を吸って」
カミーユ 「え?」
エマ 「私の命を吸って。そして勝つのよ」
カミーユ 「中尉」
エマ 「あたしは見たわ。Ζガンダムは人の意思を吸い込んで、
自分の力にできるのよ。だから…」
カミーユ 「そんなこと…」
エマ 「うっ…できるわ!そして、戦いを終わらせる。
それをあなたがやるのよ、カミーユ・ビダン!」
戦闘空域を漂っていた廃艦の中に重症のエマを連れ込み介抱するカミーユ。ヤザン戦で超常的な能力を見せたZを見ていたエマは、カミーユにZが「人の意思を吸収」して強くなれることを伝え、戦争終結を託して息を引き取る。しばらくエマの亡骸を見つめていたカミーユは、何かを思い立ったようにZで戦場へと戻っていく。
ブライト 「どうだ、サマーン?」
サマーン 「敵の配置、かなり乱れています。数の確認、急ぎます」
ブライト 「もう少し引き寄せれば、5隻や6隻の戦艦は沈められる」
サマーン 「コロニーレーザーを使うんですか?」
ブライト 「そうだ、グリプス2の部隊に暗号で打電しろ!急げ!何だ?」
シーサー 「コロニーレーザー砲に、モビルスーツ3機が向かっています」
ブライト 「カミーユをレーザー砲の守りに回らせろ!」
シーサー 「はっ!」
ブライトは、コロニー・レーザーでティターンズ艦隊を一網打尽にする作戦を発動するが、それをシロッコに察知されてしまう。ジ・Oでグリプス2に向かうシロッコ、続いてクワトロの百式と二人を追ってきたハマーンのキュベレイもレーザー内部に飛び込み、類い希なニュータイプ同士の三つ巴戦へと発展する。
シロッコ 「ティターンズの艦隊をやらせるわけにはいかん!
中心部は…あれか!?」
クワトロ 「えぇい、シロッコにレーザー砲を潰させるわけにはいかん!」
ハマーン 「シロッコめ、レーザー砲を潰そうとは…面白い」
クワトロ 「えぇい、これ以上破壊されると発射できなくなる。んぁ!」
ハマーン 「 死にに来たか、シャア! 」
クワトロ 「えぇい、ハマーン!」
ハマーン 「ちっ!」
クワトロ 「えぇい、あ!」
シロッコ 「ぬかったな、シャア!」
ハマーン 「こんなところで朽ち果てる己の身を呪うがいい!」
クワトロ 「そうかな?」
ハマーン 「もしも、私の元へ戻る意志があるのならば…」
クワトロ 「何を言う!」
シロッコ 「道を誤ったのだよ。
貴様のようなニュータイプのなり損ないは、
粛清される運命なのだ、わかるか!」
クワトロ 「 まだだ、まだ終わらんよ! 」
サエグサ 「このままでは狙い撃ちされます。後退します!」
ブライト 「ダメだ、アーガマは囮になって敵を引き付ける!」
サエグサ 「もちませんよ!」
ブライト 「もたせろ!トーレス、コロニーレーザー砲はまだか?」
トーレス 「ブレーカー部分の損傷がひどく、出力が十分ではないそうです」
ブライト 「急がせろ!サエグサ、いつでも離脱できるようにしておけ」
サエグサ 「了解!」
クワトロ 「ハマーン!」
ハマーン 「大した役者だったよ、シャア。
話し合いの余地がないとするならば、
ここがお前の死に場所になるな」
クワトロ 「いや、もう一人役者がいるな」
ハマーン 「ん?」
シロッコ 「ふっふっふ」
ハマーン 「そうだな、こんな芝居じみた事はシロッコの領分だったな?」
シロッコ 「私は歴史の立会人に過ぎんから、
そうも見えるか。が、シャアよりは冷静だ」
クワトロ 「私が冷静でないだと?」
シロッコ 「そうだよ、貴様はその手に世界を欲しがっている」
ハマーン 「シロッコの言う通りだろう、シャア?
ならばザビ家再興に手を貸せばいい。
その上で世界の事を共に考えよう」
シロッコ 「うっ!」
ハマーン 「この小うるさい見物人を倒してな」
クワトロ 「ハマーン、私はただ、
世界を誤った方向にもってゆきたくないだけだ」
ハマーン 「では聞くが、ザビ家を倒しティターンズを排除した世界で、
お前は一体何をしようというのだ」
クワトロ 「私が手を下さなくとも、
ニュータイプへの覚醒で人類は変わる。
その時を待つ」
ハマーン 「私に同調してくれなければ排除するだけだ。
その上でザビ家を再興させる。
それがわかりやすく、人に道を示すことになる」
クワトロ 「また同じ過ちを繰り返すと気付かんのか!」
シロッコ 「世界の都合というものを洞察できない男は、排除すべきだ!」
カミーユ 「それは違う!」
クワトロ 「カミーユ!」
ハマーン 「うっ!」
カミーユ 「本当に排除しなければならないのは、
地球の重力に魂を引かれた人間達だろう?
けど、そのために大勢の人間が死ぬなんて、間違ってる!」
ハマーン 「愚劣な事を言う!」
シロッコ 「生の感情を出すようでは俗人を動かす事はできても、
我々には通じんな!」
カミーユ 「人の心を大事にしない世界を作って、何になるんだ!」
シロッコ 「天才の足を引っ張ることしかできなかった俗人共に何ができた!
常に世の中を動かしてきたのは、一握りの天才だ!」
カミーユ 「違う!」
クワトロ 「カミーユ、退け!」
カミーユ 「嫌だ!」
シロッコ 「ちっぽけな感傷は世界を破滅に導くだけだ、少年!」
クワトロ 「カミーユ!」
カミーユ 「うっ…」
ハマーン 「お前達は…」
シロッコ 「うっ!」
ファ 「カミーユ、早く外へ!」
クワトロ 「行くんだ、カミーユ!」
ハマーン 「うっ!」
クワトロ 「コロニーの外へ出るぞ!」
ファ 「はいっ!」
戦闘の中でお互いの立場が相容れないことを確認したクワトロ、ハマーン、シロッコ。クワトロはジ・Oとキュベレイの連続攻撃に苦戦を強いられるが、カミーユとファが現れ窮地を脱する。
トーレス 「グリプス2、エネルギー臨界!」
サエグサ 「今撃たないとターゲットが逃げます!」
トーレス 「艦長!」
ブライト 「わかっている。レーザー砲の中にはカミーユ達がいるんだよ。
みんなが逃げ出すまで、それまでは待つんだ!」
シロッコ 「一度火を入れたコロニーレーザーは、爆発もするんだぞ!」
カミーユ 「うっ!」
ハマーン 「それ以上偶然は続かんよ、カミーユ」
カミーユ 「大尉!」
クワトロ 「一緒にここを脱出する、カミーユ!」
カミーユ 「あなたはまだやることがあるでしょう!
この戦争で、戦争で死んでいった人達は、
世界が救われると思ったから死んでいったんです。
僕もあなたを信じますから! 」
クワトロ 「君のような若者が命を落として、
それで世界が救えると思っているのか!」
カミーユ 「大尉!」
クワトロ 「 新しい時代を創るのは老人ではない! 」
ブライト 「出てきたのか…?よし、コロニーレーザー発射だ!」
サエグサ 「了解!」
ようやくコロニー・レーザーが動き始め、クワトロ達の脱出後、放たれたレーザーの咆哮は多数のティターンズ艦隊を焼き尽くすことに成功する。
シロッコ 「うっ、こ、これではエゥーゴに勝てん!」
ハマーン 「ちっ!まずいな…」
戦況からザビ家再興に今しばらく時間がかかることを悟ったハマーンは、戦力温存のため主力艦隊の撤退を決め、自身はクワトロと対峙する。
クワトロ 「ん?エネルギー切れ?」
ハマーン 「迂闊だな」
クワトロ 「えぇい!」
ハマーン 「甘いな、シャア」
クワトロ 「何ぃ!」
ハマーン 「これで終わりにするか、続けるか、シャア!」
クワトロ 「そんな決定権がお前にあるのか!はっ!」
ハマーン 「シャア、私と来てくれれば…。うっ…」
キュベレイを戦艦の残骸に叩き付けたものの、満身創痍の百式は遂にキュベレイのファンネル攻撃で四肢を破壊される。絶体絶命のクワトロは頭部のバルカン砲で廃艦を爆発させ、そのまま行方不明となる。
カミーユ 「お前だ!いつもいつも、脇から見ているだけで、人を弄んで!」
シロッコ 「勝てると思うな、小僧!」
カミーユ 「許せないんだ、オレの命に代えても、
身体に代えても、こいつだけは!」
シロッコ 「こいつ…何だ?」
カミーユ 「わかるはずだ、こういう奴は生かしておいちゃいけないって!
わかるはずだ、みんな!みんなにはわかるはずだ!う?」
エマ (あせり過ぎよ、だからいけないの)
カミーユ 「オレの身体を、みんなに貸すぞ!」
エマ (それでいい、カミーユ!)
カツ (現実の世界では、生き死ににこだわるから、
ひとつの事にこだわるんだ)
サラ (だめよ!)
カミーユ 「まだそんなことを言う!」
レコア (サラ、お退き!)
ロザミア (そう、子供にはわからないんだから!)
フォウ (今はカミーユに任せるの!)
サラ (嫌です、パプティマス様は!)
カミーユ 「今日という時には、いてはならない男だ!
わかってくれ、サラ!」
サラ (だめです!パプティマス様は、私の!)
カツ (何でそう、頭だけで考えて。
そんなんじゃ、疲れるばかりじゃないか、サラ)
サラ (だって、そうしないと、あたし…)
カツ (カミーユが見ているものを、見てご覧よ。
あの中にいる人だって、すぐこうして溶け合えるんだ)
サラ (ほんと?)
カツ (ああ)
パワーで勝るシロッコのジ・Oとジュピトリス周辺空域で死闘繰り広げていたカミーユは、次々と現れたエマ、カツ、レコア、ロザミア、フォウ達の幻影から助力を得る。唯一、サラの幻影のみがシロッコを庇おうとするが、カツの幻影に説得され、シロッコを自分達の元へ導く覚悟を決め身を引く。
シロッコ 「ゼ、Ζが…。どうしたんだ?
私の知らない武器が内蔵されているのか?」
カミーユ 「わかるまい、戦争を遊びにしているシロッコには。
この、オレの身体を通して出る力が!」
シロッコ 「身体を通して出る力…
そんなものが、モビルスーツを倒せるものか!」
フォウ (カミーユはその力を表現してくれるマシーンに乗っている)
ロザミア (Ζガンダムにね)
シロッコ 「女の声?」
カミーユ 「まだ、抵抗するのなら!うぉぉぉぉぉ!」
シロッコ 「ジ・O、動け!ジ・O、なぜ動かん!うっ!うぉ!うぉぉ!」
カミーユ 「ここからいなくなれ!」
シロッコ 「私だけが、死ぬ訳がない。
貴様の心も一緒に連れて行く、カミーユ・ビダン…」
カミーユ 「シロッコ…。やったのか?う、あ、光が…広がっていく…」
「戦争を遊びにしている」とシロッコに怒りを爆発させるカミーユ。人々の意思を吸収し、またも超常的なパワーを発揮するZ。ジ・Oは突然制御不能になり、ウェブライダー形態に変形したZの突撃を受け爆発。シロッコの肉体は野望と共に消滅する。しかし、その断末魔はカミーユの精神を崩壊させ、ファの呼び掛けは彼に届かない…。
ファ 「カミーユ?カミーユ、生きてるんでしょ?
カミーユ、返事をして!カミーユ!」
漆黒の宇宙がそこにあった。
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2007/11/09 08:15:26
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