2008年03月04日
彼女の初めてのメール。それは、彼のもとに・・・
こんばんは。初めてのメールですね。
ゴルフ、楽しかったです。
でも、きちんと接待できたかどうか心配してました。
懇親会も…合格がいただけてうれしかったです。
今夜も雨ですね。
初めて電話した時も雨だったんですよ。
覚えてますか?
・・・初めてのメール、か・・・
覚えてるよ。
雨が好きだって言ったこともネ。
雨の匂いとか、雨の音とか、
なんとなく落ち着く。
独りでいる時はなおさらネ。
彼女からのメールは彼女の笑顔が見えるようだ。
良かった!
忘れられてたらどうしようって、
すごく心配してたんですよ。
あたしも、雨好きです。
また、メールします。
おやすみなさい。
職場での彼女はいつも明るかった。
打ち合わせの関係もあって、彼と彼女は仲間と一緒にいることも多くなった。
彼女は他の仲間ともよく話をしていた。彼女は雰囲気を持った女性だ。
冗談とも本気ともとれない誘いの話も彼女は真剣に答えている。本当に困っている。
からかわれやすいタイプ。素直で、冗談も間に受けて…部屋が華やいだ。
仕事は一生懸命だ。
・・・彼女、ちょっとつかれてるかな?・・・
Posted at 2008/03/04 07:47:54 | |
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軽井澤物語 (08/2/19~08/5/30) | 日記
2008年03月03日
「接待ゴルフ、ご苦労だったな」
「はい」
「お得意様も上機嫌だ。彼女もずいぶん頑張ったようじゃないか。
むこうもほめていたぞ」
接待ゴルフ当日、彼は楽しかった。彼女の笑顔は素敵だった。ゴルフを心から楽しんでいた。
・・・こんなに自分のスコアが気にならないゴルフも初めてだな・・・
接待ゴルフの翌日、上司に呼ばれた彼が部屋に戻ると彼女は心配そうな顔を彼に向けた。 そんな彼女に彼は笑顔で応える。
「接待ゴルフ。合格だ!」
「ホントですか!」
「ああ。ずいぶん気にいられたみたいだよ」
「…」
「どうした?」
「懇親会、ちょっと…」
彼が都合で出られなかった接待ゴルフの懇親会。彼女はひとりでつまらなかったのだろう。
「そうか…悪かったな、一緒に出られなくて」
「いえ」
「お詫びに今度時間とるよ」
「はい!」
彼女はうれしかった。ひとりで心細かった懇親会。彼はわかってくれた。
・・・でも、時間とる、って?・・・
いろいろ考えて、彼女は、がっかりしない程度に期待することにした。
Posted at 2008/03/03 07:55:02 | |
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軽井澤物語 (08/2/19~08/5/30) | 日記
2008年03月01日
彼女から彼に電話があったのは、それからしばらくした雨の降る夜だった。
「こんばんは。雨ですね」
「雨だね。少し寒くなった」
「雨、好きですか?」
「嫌いじゃないよ。割と好きな方かな…」
「…」
彼の声が止まる。
「なにか…あった?」
「…」
彼女の返事はない。
「メールしてもいいですか?」
「かまわないよ」
「ありがとうございます。またメールします。おやすみなさい」
「おやすみ」
どっちみち彼女はこれ以上、話はできそうもなかった。
泣き声は聞こえなかったが、彼には彼女の涙が落ちる音が聞こえたような気がした。
Posted at 2008/03/01 07:51:48 | |
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軽井澤物語 (08/2/19~08/5/30) | 日記
2008年02月29日
「携帯新しくしました。これ、携帯の番号です」
「ちょっと見せて。携帯」
彼は彼女が渡そうとした小さなメモとのかわりに彼女の携帯をうけとると、彼の携帯を取り出して、赤外線通信で彼の携帯の電話番号とアドレスを送信して登録した。
「これでいい。俺の番号とアドレス登録しといたから」
彼女には理解できなかった。アッという間の出来事だった。まるで魔法だ。もともと彼女は機械に強い方ではない。むしろ触らなくてもいいなら、その方がありがたかった。彼女には携帯への登録の仕方さえ、まだ理解できていなかった。彼にしてみればどのメーカーの携帯でも操作に関しては大差ない。彼女の携帯に彼の便号やアドレスを登録するくらい簡単なことだ。
・・・他人の携帯なのに…この人、なんでもできちゃうんだ・・・
彼女にとって彼の姿は、上司として完璧に見えた。
プロジェクトのメンバーも、彼に一目置いているのが分かる。中には彼より年配のメンバーもいるが、いつも相談に行くのは彼の方だった。
毎日のミーティングではあまり発言しない。メンバーの提案を静かに聞いている。
ミスには厳しいが、決して大きな声を出したりするようなことはない。
冷静沈着、不言実行という言葉が似合う仕事ぶりだ。
朝は彼女より早いし、帰りはいつも彼に見送られる。
彼女には彼が仕事のことしか考えてないような気がした。
・・・仕事に夢中?いっつも仕事のことばっかりなの?・・・
彼女は彼のことが気になってる自分に気がついた。
Posted at 2008/02/29 08:04:34 | |
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軽井澤物語 (08/2/19~08/5/30) | 日記
2008年02月28日
期待していない訳ではなかったが、期待して裏切られたことも、彼は何度か経験したことだった。
まして、どのくらい彼女に期待していいのか今は彼自身にもわからなかった。
「コンピューターできる?」
「あまり…」
「そう…、覚える気持ちある?」
「はい!」
・・・おっ、いい返事だ。期待できるかな・・・
「教えてくださいますか?」
「いいよ。」
歓迎会での彼女は紅一点。誰もが彼女を注目している。二次会も終わる。
「タクシー、ひろうよ」
「・・・」
・・・あたし、まだ帰りたくない・・・
彼女は誰かと一緒にいたかった。今、独りにはなりたくなかった。
・・・独りは、いや・・・
タクシーはすぐにつかまった。帰りの方向が一人だけ違う彼女を乗せて、タクシーは走り出す。彼女を見送り他の仲間と話をする彼に見られないように彼女は涙をぬぐった。
Posted at 2008/02/28 08:10:35 | |
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軽井澤物語 (08/2/19~08/5/30) | 日記