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2007年12月08日 イイね!

CCA編 #23「 スウィート・ウォーター 」


 スウィート・ウォーターはすべてが昔のものの再生品か、急造のもので満ちていた。二十世紀的にいえば、プレハブ的というのが近い表現だろう。それでも港口からシリンダー内壁の山の部分には、自然らしさがあった。三輛の車両で編成されたリニアカーがその山の斜面を降下して、街の区画に滑り込んでいった。

男A  「総帥が乗っているって?」
男B  「前の方さ」

 車両はかなり混んでいた

老婆  「お願いします」
男C  「ほら」
男D  「総帥にだよ」

 そんな言葉にのって、小さな花束が、車両の客たちの手から手に移動していった。

男E  「総帥に」

 その花束が行くところに、シャアがクェスとギュネイを伴って立っていた。周囲の客たちが席を譲ることはない。シャアの習慣であるからだ。

クェス 「大佐に?」
男E  「向こうから、総帥にと」
シャア 「ありがとう」

 乗客たちは、車両の中央を開いて、シャアに花束を贈った中年の婦人をシャアに見えるようにした。

老婆  「ジーク・ジオン」

 その婦人は、右手をあげて毅然としたコールを送ってくれた。それに和して乗客たちも声をあげた。

乗客達 「ジーク・ジオン、ジーク・ジオン、ジーク・ジオン」

 シャアはスウィート・ウォーターに進駐すると同時に、リニアカーに乗る習慣を作った。多少見え透いていたが、このシャアの行動は、スウィート・ウォーターの難民に圧倒的に支持され、ネオ・ジオンの艦隊を短期間に、受け入れさせる素地になったのである。アコーディオンの伴奏で乗客たちが歌っている。

乗客達 「星の光に 思いをかけて 熱い銀河を
       胸に抱けば 夢はいつしか この手に届く 
            Char's believing ours pray pray
                 Char's believing ours pray pray」

 この単純で詩にもなっていないような歌が、このところ急速に流行して、今やネオ・ジオンの国歌的位置を占めようとしていた。リニアカーはスウィート・ウォーター唯一の高級住宅区の丘陵にさしかかり高架上の駅でシャアたちを降ろした。シャアは乗客たちに、微笑みと敬礼を返して、リニアカーの発車を見送った。

クェス 「ふふっ、大佐は格好だけじゃないんですね」

 走るリムジンの窓から所々に灯りを見せる住宅を眺めていたクェスがシャアに向き直って言った。

シャア 「おかしいか?」

 隣に座るシャアだ。

クェス 「いいえ。それで、地球を潰すんですか?」
シャア 「潰しはしない。地球にはちょっと休んでもらうのさ」
クェス 「ああ、そういうことですか」

 クェスは、シャアのその表現をとても優しいと感じた。

シャア 「訓練で頭痛は出なかったのか?」
クェス 「ええ、勿論」

 リムジンは、丸いガラス球の門灯を持った住宅の前で停車した。玄関までのストロークも長く、奥には闇しか見えない。

 シャアは車から降りると、助手席のギュネイに声をかけた。

シャア 「ギュネイ、明日からの作戦を頼むぞ」
ギュネイ「はっ」

 クェスはウィンドウを下げ、シャアを見上げた。

シャア 「大丈夫か?明日からの作戦は遊びじゃあない」
クェス 「勿論、あっ」

 シャアが、窓から出ているクェスの手の甲にキスをした。

クェス 「大佐」

 
シャア 「今夜はよく休め。ゆけ」

 シャアは車を見送ってから、玄関へ続く暗い道を歩んだ。


Posted at 2007/12/08 07:54:23 | コメント(0) | トラックバック(0) | 音楽/映画/テレビ

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