2007年12月25日
シャア 「これにも核ミサイルが一発だけ。 やるな、ブライト 」
シャアはサザビーを回頭させて、アクシズから来る艦砲射撃の火線上を後退した。
シャア 「ナナイ、早く来てくれよ」
それは、シャアの呻きに似ていた。
ナナイ 「クェスを殺したくなければ、大佐と合流するまで離れるんじゃない」
ギュネイ 「はっ」
ナナイ 「艦長」
ムサカ艦長「出させろ、アクシズの戦闘空域に入る」
ナナイ 「はっ」
ムサカからギュネイのヤクト・ドーガが発進した。
ギュネイ 「言われなくったって、クェスは大佐には渡すもんか」
ムサカの戦闘ブリッジでは、大型ディスプレーが、レーダーとレーザー測量、光学観測によって得たデータを総合的にグラフィック化して、アクシズや敵味方の艦隊の位置を表示させていた。
クルーA 「この熱源がアクシズ、左は核反応です。
敵艦隊はダミーを放出していて、数はわかりません」
ムサカ艦 「ダミーを焼き払えばいい」
アクシズに向かった砲撃の光を見ながら、クェスの乗るヤクト・ドーガが戦闘空域に浮かんでいた。
クェス 「あ…、あそこがアクシズ?大佐がいる」
クェスはディスプレーを拡大して、アクシズに焦点を当てた。そしてヤクト・ドーガを一気に加速させた。
メラン 「右に熱源、敵です」
ブライト 「ルナ2からの増援か?」
ムサカと四番艦の攻撃は、ラー・カイラムの艦隊がいると思われる空域に開始されたが、それは、かなり正確であった。ラー・カイラムの展開したダミーが、艦隊の横手からの攻撃に、次々に消失していった。
ブライト 「第二波、出てくれ。艦隊は直援部隊でもたせる」
アムロ 「頼む」
そんな危機的な状況の中、アムロはνガンダムの発進に入っていた。
アムロ 「 ガンダム、行きます 」
アムロは、バック・パックに放熱板に似たフィン・ファンネルを背負ったνガンダムを前傾させると、カタパルトの加速に乗って、ラー・カイラムから離脱していった。
Posted at 2007/12/25 08:31:15 | |
トラックバック(0) | 音楽/映画/テレビ
2007年12月24日
シャア 「第二波が来た。モビルスーツ部隊は機雷源の上に」
シャアは、第二波のミサイル群を機雷源の上からファンネルで狙った。
シャア 「ふん…」
そろそろアクシズに火が入る頃だ。
シャア 「 アクシズ、行け。
忌まわしい記憶とともに 」
ディスプレーに映し出された後方のアクシズを振り返って、シャアは思いを込めて呟いた。
シャア 「まだ来る」
シャアがサザビーのビームショットライフルで、ミサイルを狙撃したときだった。
シャア 「やった」
アクシズの核パルス・エンジンに火がついた。
メラン 「ああっ」
クルーA 「ああっ」
クルーB 「アクシズに火がつきました。地球に降下開始です」
ラー・カイラムのブリッジの、拡大ディスプレーにアクシズのノズルの閃光が見えた。それは、かなりの距離からの映像でありながら、アクシズの核パルス・エンジンの凄さをはっきりと示していた。
ブライト 「第五波ミサイル、発射」
クルーA 「てえぃ」
クルーB 「総員、第一戦闘配置」
クルーA 「ダミー放出」
ブライト 「同時に回避運動用意」
ラー・カイラムから放出されたダミーが膨らんで、岩や戦艦の形になって、適正な位置に配置された。
チェーン 「何かあった時はインターカムで連絡する」
ハサウェイ「はい」
自習室の前でチェーンからそう言われたハサウェイは、チェーンの腰についているものが気になって聞いた。
ハサウェイ「それ、なんですか?」
チェーン 「サイコフレーム。まだ、性能的に調べたい事があってね」
ハサウェイ「へぇ」
チェーンが身体を流しながら、ハサウェイに答えた。
兵士A 「ほれ」
ハサウェイ「あ」
兵士に促され、ハサウェイはしぶしぶ、自習室に入った。
Posted at 2007/12/24 10:51:06 | |
トラックバック(0) | 音楽/映画/テレビ
2007年12月23日
ビダン!
ブライトがハサウェイの頬をはたいた勢いは、なまじのものではない。ハサウェイの身体が大きく流れて、チェーンが、その身体を受けとめてやった。
ブライト 「お前まで戦場に出てきたら、母さんとチェーミンはどうなるんだ」
アムロ 「男の子はこのくらいの方がいい」
ブライト 「ちゃかすな」
アムロの牽制をブライトは受け流そうとしたので、アムロはハサウェイに向かって聞いた。
アムロ 「クェスに会いたいのか?ハサウェイ」
ハサウェイ「クェスを取り戻すんです」
ハサウェイの激烈な言葉に、アムロたちは何も言えなかった。
アムロ 「ハサウェイ」
ブライト 「すぐに出るぞ」
アムロ 「ああ」
ブライトはブリッジに向かうために部屋を出ていった。代わりに一人の女性クルーが、ハサウェイのためのノーマルスーツを持ってきて、それをチェーンが受取った。
アムロ 「クェスの感じすぎる才能がシャアに利用されているんだ。無理だよ」
アムロはあくまでも冷静に言いきかせようとした。
ハサウェイ「利用だなんて、そんな」
アムロ 「あの子の才能は強化されて、今はシャアの道具に成り下がっている」
ハサウェイ「そんな」
アムロ 「人の死に乗った世直ししかできないのがシャアだ。
そんな男に利用されるクェスも、
死んだ者の力に引かれて悲惨な結末に」
ハサウェイ「クェスは死にません、その前に取り戻します。
その為にモビルスーツの操縦だって習ったんです」
アムロ 「そんなことじゃあ、ハサウェイだって死人に引っ張られるぞ」
アムロは後をチェーンにまかせて、部屋を出た。もう出撃命令は出ている頃だ。
トゥース 「ミサイル第四波に続いて、モビルスーツ部隊第一波発進」
アストナージ「ケーラ、とっておきのサラダ、作っとくからな」
リ・ガズィのコックピットのケーラに向かってアストナージが声をかける。
ケーラ 「愛しているよ」
ケーラはヘルメットをかぶりながら、言った。
ケーラ 「リ・ガズィ、行きます」
アストナージ「なんて言った?」
ラー・カイラム以下の艦艇のカタパルト・デッキからは、リ・ガズィ以下のモビルスーツが射出された。続くジェガンは、艦艇の前に浮遊するベースジャバーに取りついて、先行するリ・ガズィを追った。
Posted at 2007/12/23 21:13:13 | |
トラックバック(0) | 音楽/映画/テレビ
2007年12月22日
クルーA 「移動熱源接近」
ライル 「迎撃戦用意。戦闘ブリッジ開け。アクシズの大佐に連絡」
アクシズの核パルス・ノズルとエンジン・コントロール・ブースでは、まだ整備作業をするジオン軍の技師が動き回っている。
シャア 「そうか、来たか」
シャアはインカムで確認すると、傍らで作業をする技師に声をかけた。
シャア 「核パルスの調整が済んだら点火しろ」
技師A 「あと10分だけもたしてください」
シャア 「了解だ」
シャアはその技師に笑うと、サザビーに流れていった。
シャア 「 意外に遅かったな 」
それがシャアの感慨だった。
シャア 「モビルスーツ部隊はアクシズの北舷より攻撃。味方にやられるな」
サザビーのコックピットでシャアはパイロットである自分を意識した。ともかく、ロンド・ベル部隊は特別なのだという意識に血が騒いだ。その認識は、ナナイには分かってもらえまいと思う。
シャア 「あれか?」
急速に接近するミサイルの光の筋に、シャアはサザビーのファンネルを斉射した。
シャア 「 当たれっ! 」
シャアは特別なミサイルを感じ、意識を集中させた。と、ミサイルの束の中で爆発が起こった。その中の、特に大きな火球が、シャアを慄然とさせた。
シャア 「 ミサイルの中に核があった?
やるな、ロンド・ベル 」
それは、地球連邦政府に裏切られたという感覚と同時に、アムロもブライトも、よくも核を持ち出して、自分にぶつけたという感嘆があった。
シャア 「…第二波、すぐに来る」
シャアは、その巨大な火球の広がりを退避しながら、苦戦しそうだという予感を、振り払おうとしていた。
Posted at 2007/12/22 11:08:22 | |
トラックバック(0) | 音楽/映画/テレビ
2007年12月21日
ブライト 「ダミーミサイル、発射用意」
そのラー・カイラムのコールは、ハサウェイのひそんでいるブロックにも聞こえた。ハサウェイは、メッドから這い出して、上の区画に行こうと決心した。
「ノーマルスーツが要る」ハサウェイはハロを抱きかかえて、明るい方向に移動を始めた。
クルーA 「ミサイル発射用意」
ラー・カイラムのモビルスーツ・デッキでは、アクシズの戦闘空域にモビルスーツ隊を送り込む用意が始まっていた。
クルーB 「以後の管制は、戦闘ブリッジに移行」
クルーC 「ミノフスキー粒子、戦闘濃度散布」
ラー・カイラムのミノフスキー粒子散布の機器が開いて、音もなくミノフスキー粒子の散布が開始された。
クルーA 「総員、有視界戦闘用意、監視機器開け」
ブライト 「第一波ミサイル、発射」
ラー・カイラムの舷側から数発のミサイルが出る。その中には核ミサイルも、紛れ込ませてある。そして、それに倣って三隻の僚艦からもミサイルが発射された。牽制攻撃である。そのミサイルの閃光が消えて行く先には、アクシズのシルエットは確認できない。
クルーA 「各員、発進用意。各員、発進用意」
ケーラ 「各部隊、員数いいな?」
ハサウェイは上のデッキに縦に繋がるリフト・グリップに掴まっていたが、ケーラのするどい声に、ハサウェイはモビルスーツ・デッキの方を、チラッと見た。
ハサウェイ「あてっ」
赤いパイロット・スーツを着たパイロットの精悍さに、ハサウェイはビックリしたが、その時、リフト・グリップは終点になっていた。ハサウェイはデッキの底に頭をぶつけ、その反動でハロがモビルスーツ・デッキの中央に流れ出した。
ケーラ 「ん?」
パイロット「なんだ?」
アムロ 「ケーラのリ・ガズィに続け」
指示を出しながらモビルスーツ・デッキを流れるアムロにハロがぶつかった。
アムロ 「ハロ」
アムロはリフトのワイヤーを、ケーラの方に発射した。
ケーラ 「ノーマルスーツも着ないで、窒息死したいのか?」
ワイヤーに引かれるようにアムロがハロを抱いて、ケーラに近付くとケーラの陰にハロの持ち主がいた。
ケーラ 「アムロ」
アムロ 「ハサウェイ」
ハサウェイ「ア、アムロ」
アムロ 「これは僕の方で処理する。ケーラは第一波の先鋒だ、行ってくれ」
ケーラ 「はい」
アムロはハロをハサウェイに渡すと、ハサウェイを案内するようにブリッジ向かった。ハサウェイは黙ってアムロに従うしかなかった。
トゥース 「ハッチ解放5分前、ノーマルスーツ、確認」
ブリッジではブライトが忙しく指示を出している。この時のブライトには、わが息子が同じ艦に乗っているということなど、思いもよらないことだった。
ブライト 「第二波、行け」
クルーA 「第二波、発射」
クルーB 「よし」
アクシズが近付いてきていた。
Posted at 2007/12/21 07:55:41 | |
トラックバック(0) | 音楽/映画/テレビ