2009年01月21日
「何?逃げるだって?」
島の言葉を信じられず、古代は聞き返した。
「そうだ。こんな未知の空間で、波動エンジンも使えない状態で敵と交戦するなんて、まったく無鉄砲だ」
「島、お前、敵に後ろを見せるつもりなのか?」
「艦長!戦わせて下さい!あんな奴に尻尾を巻いて逃げたとなったら逆につけ込まれます。攻撃は最大の防御とも言うじゃありませんか」
島から逃げるように言われ、古代は沖田を振り返って自分の気持ちを伝えた。
「・・・逃げよう」
「ええ?!」
沖田の言葉は意外だった。
「島の言う通りだ。逃げ切れる間は徹底的に逃げまくるんだ」
沖田の言葉に、島は操縦桿を握りしめた。
「補助エンジン、パワーアップ」
「補助エンジン、パワーアップ」
島の声に徳川の声がかぶって来た。ヤマトはガミラス艦から離れようとエンジンをパワーアップさせた。
ガミラス艦は砲撃を始めた。距離があるせいかヤマトにはあたらないが逃げ切れる保証はない。
「艦長、敵はたった一隻ですし・・・」
「古代、命令だ!」
古代の訴えにも沖田の言葉は動かなかった。
「先発隊より入電!ヤマトは応戦せず、逃走し始めました」
ヤマトの動きはゲールにも報告された。
「なに?悟られたのか。利口なネズミめ」
すぐには追撃はできない。ヤマトにとっては逃げの一手が最善の手であるはずだ。
「全艦、四次元空洞に急行せよ!ヤマトを撃つのだ」
「ゲール。ヤマトは思ったより賢い。なぜ一隻の宇宙駆逐艦に驚き、逃げるんだ・・・」
ヤマトの状況がわからない。ゲールはヤマトの手強さを感じとっていた。
「くそ~、このままほっといたらヤマトはメチャクチャになってしまうぞ。南部!主砲の発射準備だ!」
逃げ切れるものではない。いくつかの攻撃がヤマトを襲っていた。
「ああ!ヤマト後方より、敵艦対接近中」
援軍が来たのか?
「敵艦は、約3千と思われます」
Posted at 2009/01/21 07:52:28 | |
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2009年01月20日
「何?おい島、そのマゼラニックストリームってのは、いったい何だい?」
「そうだなぁ、まぁ簡単に言って、水素の気流とでも言うのかな」
心配そうな古代に島が説明を始めた。
「昔は太陽系付近にあったマゼラン雲が、銀河系を遥かに通り越して水素ガスの尾を引きながら現在の位置まで行った。その幅は数億キロ、全長は16万4千光年もある。だいたいそのくらいのことまではわかっているんだが・・・」
太田が島の説明を受けて、言葉を続けた。
「資料によりますと水素ガスの総量は太陽の10倍、水素の噴流は毎秒200キロのスピードでマゼランから銀河系に向っています」
「しかしこれは異常だ。たんにマゼラニックストリームに落ち込んだだけじゃない」
二人の説明を聞いていた沖田が口を開いた。
「それはいったいどういうことなんですか、艦長」
「異次元断層へはまり込んでしまったんだ。あれを見ろ」
「おっ」
「おおっ」
ビデオパネルには戦闘機をはじめ、多くの宇宙船の残骸が浮かんでいるのが見えた。
「脱出できなかった船だ・・・」
中には戦闘の傷跡を残し、尾翼が打ち砕かれていたり、主翼がもぎ取られている物まであった。
「おい、俺たちもあんなようになるのかなぁ・・・」
「冗談じゃない!なんとかならないのか、おい」
「未確認飛行物体発見!」
島と古代が心配そうに顔を見合わせた時、太田が叫んだ。
「あっ!敵艦です!」
そのころガミラスのドメルのもとにもヤマト発見の報告がなされていた。
「何?ヤマトを発見した?」
「ハ!」
「地球の宇宙船に四次元の空洞の高校能力があったとは・・・」
「我がガミラス宇宙艦隊でさえ四次元空洞の作戦に備えて、こうして演習をして備えているのだ」
「先発の宇宙基地艦へ司令しろ。ヤマトを挑発して、引きつけておくのだ」
ヤマトはガミラス艦と対峙していた。いつ戦闘が始まってもおかしくないような状況だ。
「ブラックタイガー、発進準備!主砲発射準備!」
「戦闘隊長、この状態では波動エネルギーは一切使えないですよ!」
南部が古代に言った。
「えぇ・・・通常動力を使って手動でやるんだ、手動で!」
「古代、待て!」
「なんだ、島」
「逃げよう。それしかない」
戦うことしか頭になかった古代に、島の言葉が突き刺さった!
Posted at 2009/01/20 08:08:32 | |
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2009年01月19日
「おっ!」
「おい、どうしたんだ?!」
ヤマトが大きく揺れている。古代は戦闘機のコックピットから転がり落ちた。
「うわっ!」
「何がおこったんだ?!」
「調べてくる!加藤、まかしたぞ」
「おう!」
古代は立ち上がり加藤に後を託すと第一艦橋に向って走り出した。
「徳川機関長、波動エンジンの出力が落ちとるぞ。至急報告してくれ」
沖田はモニターを見ながら機関室に無線回路を開いた。
「もっか補正していますが、ダメじゃ」
「機関長、波動エンジン、ストップしました」
薮の声に徳川が返す。
「補助エンジンに切り替えろ」
「はい」
様子がおかしい。今までにこんなことは経験がない。
「おい、どうしたんだ島!」
「そいつがすぐわかりゃ、こっちは苦労しねぇよ」
第一艦橋に走り込んで来た古代の質問に島は不安そうに答えた。
「ん?何だい、あの気流は?」
「は!今、分析しております」
ヤマトの外には大きなうねりが見える。エンジンの不調もその影響なのだろうか。
「機関室!何してる。補助エンジン全開!」
「そりゃ、わかっとるんじゃ。薮、パワーチェックをやりなおせ」
徳川はレバーを操作しながら、薮を振り返った。
「はい。三度もチェックしてるんですが、パワーアップしなくて・・・」
大きな衝撃はなくなっていたが、ヤマトにはまだ振動が残っていた。
「分析終わりました、航海長!この気流の成分は水素です」
「何?水素だって?」
水素の流れがヤマトを取り巻いている。
「くそ~、やっと落ち着いたか」
ヤマトの振動は収まってきたが、エンジンの不調は改善しない。
「外の様子がおかしいぞ」
「ビデオパネル、スイッチオン!」
「おおっ?」
「まさか、こんなところにマゼラニックストリームがあるとはなぁ・・・」
ヤマトはマゼラニックストリームの中にいた。
Posted at 2009/01/19 07:45:34 | |
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2009年01月18日
ヤマトの目指すバラン星には、ガミラス銀河方面基地があった。
サイレンが鳴り渡り、隊員たちが集まり始めていた。
ゲール司令官をはじめ、銀河方面基地の全隊員が、新しい艦隊の到着を待っていたのだ。
司令艦が到着すると、タラップを一人の男が颯爽と降りて来た。
「ドメル、ドメル、ドメル・・・」
ここは地球と大マゼラン雲をむすぶ中間点にあるバラン星。
今そこへ、ガミラスの誇る将軍ドメルが、銀河方面基地の司令官として艦隊を引き連れ赴任して来た。
「ドメルだ」
ゲールの前に歩み出たドメルが、ゲール司令官に向かい合って名のった。ゲールも手を挙げて答える。
「ゲール、デスラー総統からの伝達をする。
1月5日をもって、マゼラン星雲方面司令長官ドメルを、銀河方面司令長官に任命する。
なお先任のゲールは副司令官として、ドメルの指揮下に入る」
「な、なんだと!?」
「ゲール!命令だ!」
「ん、ん・・・」
デスラー総統の命令では致し方ない。苦りきったゲールはドメルの言葉に従うしかなかった。
「こいつだ!これも!これもだ!」
ドメルは司令官室の中の、置物を壊した。続いて飾ってあった絵を引き裂き、カーテンも破った。
「趣味の悪さはガミラス前線基地随一だな、ヘドが出そうだ!」
ゲールは黙って見ているしかなかった。内心はどうあれ、目の前のドメルは自分に代わって司令官になったのだ。
「ゲール、全て家具を新しくしろ。ゲール!」
「はぁ・・・」
「15時から第6区四次元演習場において大演習を行う。全員へ司令せよ」
「は、はい」
その頃ヤマトでは乗組員が日課となっている戦闘機等の整備にあたっていた。
「おい、みんな!隅の隅まで丁寧に整備しとけよ」
古代の声に加藤が素早く反応する。
「冗談じゃないぜ!これ以上手入ればかりしていたら、過保護で使い物にならなくなっちまうぜ。ヒゲの隊長様」
古代の鼻の下には汚れがついてヒゲのように見えていた。
「それにしても、外宇宙に出てから何日になるのかなぁ」
「周りに変化がないんで、さっぱり見当がつかなくなっちまったぜ」
「ん、あ、あ~。星の数もすっかり減ったしなぁ」
古代がタオルで顔を拭いて会話に加わった。
「なんだか不気味だぜ。広すぎて・・・」
「おい、みんな。観念しちまえよ。これから何がおこるか、まったく予測がつかねぇや」
「な、なんだか、ゾッとするなぁ」
「バ~カ。今頃心配しても手遅れだよ。ハハハハ・・・」
格納庫に笑いが生まれた時、異変が起こった。
Posted at 2009/01/18 08:57:35 | |
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2009年01月17日
時に西暦2199年。
地球は宇宙の謎の星ガミラスから遊星爆弾の攻撃を受け、その放射能汚染によって人類絶滅まで1年と迫っていた。地球で最初の高速を突破した宇宙戦艦ヤマトは放射能除去装置獲得のため、イスカンダルへと出発した。
イスカンダルは地球から14万8千光年の彼方、大マゼラン雲の中にある。現在の目標は中間地点バラン星。
ヤマト第二艦橋では、森雪がカウンターワゴンを運んで来ていた。
「航海長、いかが?みなさんもどうぞ、コーヒーが入りましたわ」
「ありがとう」
「やれやれ」
島がワゴンに置かれたコーヒーカップに手を伸ばす。
「いつまでたってもうまくならないなぁ、えっ?生活班長様」
「ん、もう・・・」
椅子から立ち上がった島が、雪を振り返って大袈裟に手を広げた。
「うまい!」
突然の声に雪は振り向いた。自然に笑顔になる。
「実にうまいコーヒーだ!
いやぁ、こういうコーヒーを飲めないヤツは飲まなきゃ良い!
こんなコーヒーを入れてくれるような人をお嫁さんにしたいよぉ」
「そうだ、そうだぞ」
「思い切って、結婚申込んじゃおうかなぁ」
雪は踊るように足を進めて、太田を見た。
「太田さん、もう一杯入れましょうか?」
「い、いや、も、もう結構」
太田は申し訳なさそうに振り返り、手を左右に振った。
「ハハ、太田よぉ、お前も無理して飲んでたんじゃないのか?」
「へへ、わかってたか?」
「さあ皆さん!無駄なおしゃべりはやめて、仕事仕事!
人のことより、ヤマトが変な方向に飛んでいかないようにしっかり航海計画を立ててね!」
雪の声に島が答えるように言った。
「ちぇっ!余計な心配すんなよ。林!バラン星との誤差は?」
「はい。プラス3度です」
「よし、航路修正だ」
「よしきた」
太田が椅子を立って駆け出していった。
「ねぇ島君。イスカンダルとの中間点て言われるバラン星へは、あと何日ぐらいで行けるのかしら?」
「そうだなぁ、現在このままの航路で行くと・・・、あと40日で通過できるだろう」
島はモニターで確認しながら、雪に答えた。
「そう。それでも地球司令本部の宇宙局で作った日程より23日間の遅れね・・・」
「ま、なんとかロスタイムをなくしてスピードアップするよ」
モニターには23という数字も表示されていた。
「そんなことより森君、美味しいコーヒーでも入れられるようにしてよ」
島は雪の入れてくれたコーヒーがよほど気に入らなかったらしい。
「また!」
Posted at 2009/01/17 12:17:16 | |
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