去る6月13日。
難聴の治療後、生憎の雨でしたが旧小田切家住宅を見学した他、市内の旧い建築物を堪能して来ました。
須坂市には歴史的建造物が非常に多く、とても一日で全てを見ることは出来ません。旧小田切家住宅のように今は博物館的な機能に特化した処もありますが、多くは住宅や商店として今も使用されています。
そんな須坂の建築物にあって、非常に珍しいものをご紹介します。
須坂市のほぼ中心部、八十二銀行須坂支店の東隣に佇むこちらは、居酒屋「枠屋」さん。最大の特徴は「うだつ」。左右の妻壁が、大きく前後と上に向かって張り出しています。防火が目的で、主に関西方面で連接して家屋が並んだ街並みで見られたそうです。ボクはおそらく、初めて見ました。
特にこのように、主屋の棟より高いものを「本うだつ」と呼ぶそうで、大変貴重なものだとか。ちなみに「生活や地位が向上しない」、「状態が今ひとつよくない」ことを「うだつが上がらない」と言います。これはうだつを造って上げるには、大変にお金が必要だったことが語源との説があります。
左には、何か動物らしきオブジェが見えます。猫でしょうか。こんな「遊び心」、粋です。
左の妻壁の2階に窓はなく、のっぺりとした印象です。
枠屋さんの屋号を記した木製看板です。
毛筆体の文字を浮かせ彫りした、見事な手仕事です。上に富士山を思わせる山が描かれていますが、ここ北信の地から姿を見ることは出来ません。別の山なのかも知れません。
この建物、正式な呼称は「旧丸山家住宅」。15代も続く旧家で、「つづき屋」の屋号をもつ建具屋さん。須坂で製糸業が盛んだった頃、生糸を巻く糸枠を製造しており、「枠屋」と呼ばれるようになったそうです。
懐かしいコーラの販売機とベンチが!
東京では、どちらもすっかり淘汰されてしまいましたが、こうして旧家の前で現役で稼働しています。何だか嬉しくなりました。
横の黒板です。
営業日が記されています。
中を拝見したくなりましたが、居酒屋さんのため午前は無人。見たければ泊りがけで訪れる必要があります。
「須坂市歴史的建築物」のプレートがありました。
懐かしい!
すっかり姿を見なくなりましたが、昔は早朝に、牛乳瓶を自転車の荷台に積み、配達人の方が家庭に届けてくれたものでした。こちの箱は、届いた牛乳を入れて貰う木箱。「長野牛乳」なのがイイ!
ちなみに、我が家は青地に白文字で「名糖牛乳」デシタ!
屋根は出桁造りのようです。
瓦も重厚な趣。
それでいて、2階の窓がお洒落な意匠です。
右45度からです。
こうして見ると「うだつ造り」の構造が見て取れます。
おそらく、関東地方では殆ど見ることは出来ないと思います。
明治初期の建築を見て、とても新鮮な気持ちになりました。
こういう旧く由緒ある建築をお好きな方は、一度須坂市を訪れてみて下さい。きっとご満足されると思いますが、嵌ってしまうかも…。
枠屋(旧丸山家住宅(つづき屋))
長野県須坂市須坂新町614-2
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旧き良き建築 | 旅行/地域
Posted at
2020/06/28 16:16:54