
富士山で起きた滑落事故、ヘリで収容する時に要救助者がスリングから外れ、救助隊員は必死に支えた、しかし疲労の極限に耐えられず要救助者は3m下の斜面に落下してしまった。続けたいと強い意志を示した隊員に対し、救助隊の隊長は隊員の疲労、気温、風速から断念を指示した。
この遭難事故、何故とあちこちの情報を見た、何とも釈然としない。遺族側が控訴しなければこれで決着だろうけど・・・以前も書いたけどもう一度纏めてみた。返って長くなったけど。
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12月7日の静岡新聞『
ヘリ救助者落下、遺族敗訴 富士山で静岡市の対処巡り 京都地裁』との記事が掲載された。富士山で起きた滑落事故、要救助者をホイスト中に器具から外れ落下、再捜索を行ったが強風・夕刻・レスキューの疲労で断念、翌日県警ヘリで救助されたものの亡くなられた。
ご遺族は適切な救助活動ではなかったと9170万円の損害賠償で提訴、京都地裁はこの訴えを退けた。訴えの争点として遺族側は股下シートを使わなかった点を争点にしたが、救助隊員の証言等で訴えを退けた。
静岡県はこの件で、標高の高い地点の救助活動は行わないと表明しましたよね。救助活動を行った標高は3,500m、ヘリの限界を超えていた。
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翌12月8日の静岡新聞の記事『
静岡市の救助「過失なし」 ヘリ作業中落下、器具選択は適切』、「山岳レスキューの関係者からは「妥当な判決」と安堵(あんど)する声が出た。」と伝えた。
そして争点の一つ股下シートについても『「装着することがより適切」としつつも「日没が近く、突風が吹く富士山頂近くの救助だった。(不使用は)合理的な裁量の範囲内』と結論した。」と伝えた。
そして静岡市の田辺信宏市長「判決を受けて「懸命な救助活動が適切であったことが認められた」とコメントした。」と伝える。正にレスキューは自身の限界まであの「標高3,500m・風速14m・気温氷点下14℃」の中で活動していた、市長の言うとおりだと思う。
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この滑落事故2013年12月に発生したけど、その時の報道を見てどうしてヒマラヤ経験者がこの場所でアンザイレン、と思った。そして昨年静岡県側が「救助活動のミス」だと訴えられ、静岡県側も「今後3,200m以上の山岳救助活動は行わない」とした報道がありましたよね。
そして何でこの事故がと思って
京都府勤労者山岳連盟(「憲法九条を守って戦争しない日本を継続させ、登山文化を守るため」・・・登山文化と九条、何の関連が?)を覗き、又ほかの情報もネットから漁ってみた。報道には書かれていない複雑な要因があるようでした。
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時系列に遭難状況を抜き出してみました。
1)登行中、メンバーの一人(初心者との事、以下A)のアイゼンが斜面の氷に食い込まず、リーダーが危険を感じた。
2)リーダーはそのAの疲労も加味し、登行を断念、下山を選択。
3)下山に当たり、Aの安全確保の為、固い氷の箇所はピッケルでカット(ステップカット)し、下山していた。
4)下から登ってきた登山者(以下B)がステップカットによって発生しBの方向に落ちてくる氷片があるので抗議。
5)下山中のリーダーは謝罪しステップカットを中止。
6)Aの安全確保の為のステップカットを出来なくなったので、Aの安全確保の為にアンザイレン(互いをザイルで繋ぐ)を開始。アンザイレン、過去多くの悲劇を生んだ。
7)不慣れなAが氷の斜面で転倒し、ザイルで繋がれた全員が氷の斜面を落下。
8)それを目撃したBは救助活動開始、遭難者の一人をブリザードバッグで保護。この遭難者(要救助者)がヘリでの救助活動中に落下。(このブリザードバックでの保護がヘリからの落下の遠因)
9)静岡市消防航空隊のヘリがこの方を救助する際、スリングから要救助者が外れ落下、隊員は救助活動を続けようとしたが、隊員の疲労・気象条件で隊長判断で当日の救助断念。
これが報道で詳しく書かれていない時系列の遭難状況だと思います。何故気になっているかと言うと、今回の事故が釈然としなかったのです。普通の遭難とは違い、回避できたチャンスが潰されたという思いがあったからです。
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まずBの抗議でステップカットを何故中止してしまったのか、確かに氷片が斜面を落ちる時に他の登山者に当たる危険性はある、リーダーは十分承知の上でやむなく行ったのだと思う、しかしそれは落石と同等な危険性、だから抗議に対処したのだと思う。
抗議したB、富士山に精通していると自ら言う、それならば一目でそのパーティーの力量が判るはず、だから何故ステップカットをしているのかを疑問に思うはず、と思う。何故という事をBが理解しようとすればステップカットを続け、安全に降りられたのではと思う。彼らは闇雲にステップカットしていた訳では無く、Aのアイゼンが利かない場所だけカットしていたようだ。
リーダーは苦渋の選択だったと思う、ステップカットが出来ない状態でAの安全確保をどうするか、リーダーは結果危険を承知でアンザイレンを選択するしかなかった。その事が遭難を招いてしまったんですよね。
そしてヘリに収容しようとした時に救助用のスリングから要救助者が脱落し、必死につかむ救助隊員の手をすり抜けて落下、隊長判断で当日の活動中止。現場にいた方のブログに「消防ヘリのミス、落としてしまった」と消防の救助活動を非難していました。
何故要救助者が救助用のスリングから外れたか、とある方は「消防はあのシーンを撮っていたはずだ、何故出さない」と仰っていたけどそんなもの出せないでしょ。スリングから外れたのは股下にスリングを通せなかったから。
救助隊が来る前に救助活動を行っていた方々、要救助者に良かれと思ってブリザードバッグに入れた、寝袋状の袋です。救助隊員、ナイフなど持ち合わせませんし、あの状況下では使う事が出来ません。やむなく上半身だけのスリング。良かれと思ってブリザードバッグに入れた事が救助活動を阻害してしまった、それで映像を出せと?いかげんにしてくれ、救助隊員の心を思うとそのような意見には怒りを覚える。
2020/1/26追記。
以前書いた「
冬富士での山岳救助活動訴えられる、9,170万円払えと。」の中でB氏が氏のブログでこのパーティーの事を記述していたけど、そこから少々引用。
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我々の半分くらいのゆっくりした登りで凍りついた場所では立ち止まっていた。
どうみても氷の山は慣れていないのが見ていて分かりました。
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B氏のこのブログの記述を読むと、B氏はヒマラヤ経験者がいるのを見て取れなかったようだ。何故に立ち止まった、これも理由を見て取れなかったようですよね。
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一番初めに氷片を非難した方、富士山に精通しているとおっしゃっている、他の山と違うと。それなら何故氷片を落とす行為をしているのか考えが回らなかったんだろう。所作を見ればどの程度登山に精通しているかは見て取れるもの。見れなかったですか?この状況で一番危険なアンザイレンを何故選ばなくてはならなかったのかが残念。
↓要救助者がブリザードバックに入っていたらこのような救助活動は出来ない。富士山に精通されていると言われる方、ご存じなかったのかな?
奥穂高岳のコブ尾根での登山者救助 【長野県警提供】
緊迫!県警ヘリ「はやて」による山岳遭難者救助
県警ヘリ「はやて」による山岳遭難者救助映像
上記の方、FIの方が富士山で遭難した時に彼を非難し、さらに遭難者のザックを発見したとブログで公開した方。炎上して閉じたと思ったけど・・・
何ともやりきれない思い・・・
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↓遭難救助、このようなブログがある。
とても
素敵で綺麗な映像作品を作られている方、作品を撮りながら穂高小屋のスタッフもされている。新聞紙上を騒がした2012年5月の遭難事故、稜線の気温はマイナス3℃、風速20メートル以上、この中で6名の救助活動を行った。氏のブログ「
ぼちぼちいこか」から。
夜間救助 夜間救助2
午後11時、最後の要救助者を収容、しかし御一人の方が命を落とされた。ブログにこう書いてある『その方を背負ってきた若い救助隊員は悔しさでぼろぼろと泣いていたが、僕はむしろ、あの状況下で6名すべてを山荘へ収容できたことが奇跡的だとも感じた。』。
そしてこう続けた。
『我々は漫画「岳」の三歩クンのようなスーパーマンでは決してない。
「できることはできるけど、できないことはできない」が信条の生身の人間だ。
でも僕たちにはそんないたらない自分をフォローしてくれる頼もしい仲間が大勢いる。
だから、三歩クンの口癖である“あの言葉”を、
今回は(自分を含めた)仲間たちへこそ捧げたい。
みんな、「よくがんばった!」』
と。
穂高をゆく ーハチプロダクション短編集ー 第2集
星々の記憶 予告編
岳 -ガク-(プレビュー)
登山道を保守点検・整備し、救助隊と一緒に救助活動をしてくれているのは山小屋のスタッフ。
感謝!
↓だから私達は山の自然に触れられる。