【日本の核戦略】
国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアが、白昼堂々、ウクライナを侵略し、核の恫喝(どうかつ)を行った。世界は震撼(しんかん)した。核兵器は、最終兵器であり、撃ち合えば数百万人が死ぬ。その恐怖と、あまりの愚かさが相互抑止を担保している。そこには、「核兵器国は責任ある理性的な国である」という前提がある。
ところが、ウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナに軍を進め、残虐行為を繰り返し、最悪の場合には核を使うと恫喝した。ロシアの核ドクトリンは特殊であり、小規模な戦術核を先制使用することを公言している。核兵器を早めに投入することで、ロシアの決意を示し、敵にエスカレーションを思いとどまらせるという戦術である。
問題は、プーチン氏にとっての核心的利益が、本来のロシア本土防衛ではなく、「ウクライナの属国化」という個人的野望に置き換わってしまっていることである。プーチン氏は、核を使ってでもNATO(北大西洋条約機構)軍の介入を阻止したい。ロシアとの核対決を恐れるNATOは介入しない。ウクライナ南東部は文字通り、市民を巻き込んだ地獄絵図の様相である。
中国は、ロシア同様、「世界秩序の現状打破」をもくろむ。習近平国家主席は今年、鄧小平の遺訓を破り「3期目」に突入する。おそらく、4期目も狙うであろう。10年後、老いた習氏が、プーチン氏のように歴史に残す偉業として、「台湾の武力併合」を考えるかもしれない。独裁者の心理は凡人の想像を超える。習氏が決断さえすれば、人民解放軍は直ちに怒濤(どとう)の進軍を始める。平和は簡単に壊れる。幸福な日常は失われる。
日本は、日米安保条約第6条によって、在日米軍が日本周辺の朝鮮、台湾、フィリピンを守ることを認めている。日本の外壁のような国々だからである。1990年代の朝鮮半島危機の際、小渕恵三首相は、自衛隊による対米軍後方支援を可能とした。台湾がきな臭くなった21世紀に入り、安倍晋三首相(当時)は集団的自衛権行使を可能とした。中規模とはいえ、総軍25万で最新鋭の装備を誇る日本国自衛隊の加勢である。日米同盟の抑止力は向上した。
しかし、もし台湾に侵攻した習氏が「自衛隊の参戦には核兵器をもって対抗する」「米軍に基地を使わせれば核で報復する」と、プーチン氏のような恫喝に出たら、日本の首相は何と答えるのか。核恫喝に怯まないと言える首相はいない。かといって、台湾侵略の最中に戦線を離脱すれば、日米同盟は即死する。戦後一貫して、日本の政治家は核の問題から逃げ回ってきた。今の日本政府に、その答えはない。
■兼原信克(かねはら・のぶかつ) 1959年、山口県生まれ。81年に東大法学部を卒業し、外務省入省。北米局日米安全保障条約課長、総合外交政策局総務課長、国際法局長などを歴任。第2次安倍晋三政権で、内閣官房副長官補(外政担当)、国家安全保障局次長を務める。19年退官。現在、同志社大学特別客員教授。15年、フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章受勲。著書・共著に『戦略外交原論』(日本経済新聞出版)、『安全保障戦略』(同)、『歴史の教訓―「失敗の本質」と国家戦略』(新潮新書)、『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』(同)など。
日本の周辺には世界でも最も厄介な国が集中している。自衛隊の幹部が、「日本をハワイの向こうまで引っ張っていけたらなあ」と言ったとか言わないとか。全くその気持ちはよく分かる。今の日本は75年前に太平洋の覇権を巡って血で血を洗う様な激戦を繰り広げた米国と一心同体のような密接な相互防衛関係を構築している。この関係は米国が日本を守ると言うだけでなく米国も日本なしに西太平洋の安定維持はおぼつかないまでになっている。日本が中露に対抗するには核武装、米国から弾道弾潜水艦を8隻くらいミサイル付きで導入するとか、が一番手っ取り早いだろうし、経費も安いだろうが、なかなか難しいだろう。防衛費をGDP2%台に増額すると言うのでハイテク兵器を増加して弾薬、燃料など継戦能力を強化するなど戦闘力を強化するのが現実的だろう。核兵器を使うなどと言ってもそうそう簡単に使えるものでもないだろう。ロシアはもうウクライナ侵攻で戦力を使い果たして当分立ち直れないだろう。危険なのは中国だが、防衛費に10兆円もかければ日本に対して直接侵攻はかけられないだろう。ただ台湾有事の際には必ず先島諸島を押さえに出てくるので台湾有事に日本が傍観者でいられる可能性はない。そうなったら米国と連携して米国の核の傘の下で戦う以外にはないだろう。もしもそこで腰が引けたら日本はあちこちに切り取られて国家の体をなさなくなるかもしれない。戦争は絶対にやってはいけない。しかし、やらなければならない時もある。そんな時に戦えなければ国家は国際的な信用を失って消滅する、・・(^。^)y-.。o○。
Posted at 2022/05/25 22:57:32 | |
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