石川県小松市にある、日本自動車博物館。
そこで見た一台です。
ジャガー XJ-S
Eタイプだと、ちょっとリアルタイムの世代ではなく・・・
このXJ-Sが、ジャストミートでした。
特に印象的なのは、1986年インターテックのグループA。
ブリティッシュ レーシング グリーンが、カッコよかったですねぇ。
日本自動車博物館のジャガー。
グループA車両と比較すると、ヘッドライトの形状が異なります。
多分、馴染みがあるのは、グループAの異形2灯ですよね。
日本自動車博物館の方を、詳しく見てみましょう。
フェンダーミラーになっているので、これは日本の正規仕様です。
では、なぜ丸目4灯なのでしょう?
実はこれ、アメリカ仕様がベースなのです。
ジャガーは自国イギリスが右ハンドルなので、そのまま輸入すればいいのでは? って思いますよね。
でも、それだと当時の排ガス規制をクリア出来なかったのです。
あの頃、世界でもっとも規制の厳しかった場所。
それは、アメリカと日本でした。
なので、排ガス対策装置の関係で、日本にはアメリカ仕様が輸入されていたのです。
それでは、なぜアメリカ仕様だと丸目なのでしょうか?
それは、アメリカの法規で規定されていたからなのです。
1984年まで、アメリカで使えたヘッドライトは・・・
丸目と角目、それに、それぞれの2灯用と4灯用。
合計4種類しかありませんでした。
LEDやHIDは、当然まだないのですが・・・
当時、日本でも使われていた異形のハロゲンライトも、NGだったのです。
この規格で定められた4種類のヘッドライトは、バルブとレンズが一体になった「シールドビーム」と呼ばれるものでした。
これらライトの詳細は、アメリカの規格、SAE (Society of Automotive Engineers アメリカ自動車技術者協会)に規定されていたので、「SAEライト」とも呼ばれていましたね。
では、なぜライトの種類を4種類に限定したのか?
それは、例えば広大なアメリカの台地で、夜、ライトが故障したとします。
4種類の規格だけに統一していれば、どんなに小さな町の修理工場であっても入手しやすいだろう。
そんな思惑からだった様です。
アメリカに輸出されるクルマも、当然規制の対象。
結果、ジャガー XJ-Sは、丸目4灯になったのでした。
このSAEライト、デザインにも影響を及ぼします。
なんといっても、このサイズのライトが収まるフロントデザインにしなければなりませんので。
またこのライトは、地面と垂直にしないと本来の性能が発揮出来ません。
他にもアメリカには、ヘッドライトの最低高さが規定されています。
その2つをクリアするべく誕生したのが、リトラクタブル式ですね。
さて、この様なアメリカ仕様、他にもあります。
例えば、これとか。
メルセデス ベンツ 560SL (R107)
これもオリジナルは、異形2灯です。
ですが丸目4灯でも、ジャガーより違和感を感じませんね。
これはこれで、アリなのではないでしょうか。
この様なアメリカヘッドライト規制。
日本車とて例外ではありません。
例えばこのクルマも、日本とアメリカでライトが異なります。
カローラ レビン (AE86)
みんな大好き、ハチロクレビンです。
日本はご覧の通り、異形2灯ですね。
これがアメリカに行くと、こうなります。
カローラ GT-S
名前こそ「カローラ」ですが、見た目は、ほぼ「スプリンター トレノ」です。
これもレビンの異形2灯が認可されないので、SAE 角目2灯に変更。
でもそのままでは、SAEヘッドライトが収まらない。
そこで、リトラクタブル式にしたのでしょう。
同様の例が、S13 シルビアと180SXのエンジン違い、240SXがありますね。
他にも、先程のジャガー同様、異形ライトと同じ場所にSAE規格ライトを入れた例もあります。
シビック (3代目)
通称 ワンダーシビックですね。
私の初ホンダ車は、このクルマでした。
日本では異形2灯だったのですが、アメリカではこうなります。
SAE 角目2灯です。
でも実はこの仕様、さほど珍しくはありません。
国内の1300cc、実はこのアメリカ仕様の同じでした。
最後に、このクルマもそうなのです。
スバル360
発売当初は、左側の「デメキン」と呼ばれる仕様でした。
ですがデメキンのままでは、アメリカ法規非適合です。
そこで法規に合致させたのが、右側のモデルになります。
ヘッドライトをSAE丸目2灯に変更し、高さ規制に合わせて位置を上げました。
そのおかげで目が大きくなり、可愛らしくなりましたね。
それよりも、スバル360をアメリカに輸出していたのにも、驚きです。
よく乗れていましたねぇ。
日本の場合、SAEライトのアメリカ仕様は、兄弟車、別グレード等で展開していたケースが多かったです。
どうせならば、ハンドル位置等の法規に関する部分以外は、まんまアメリカ仕様があったら、結構カッコよかったのではないでしょうか。