
第二次大戦中のイタリア軍の弱さは定説となっていますが、その最も有名なエピソードは「イタリア軍はパスタがなくなると落ち込んで戦線後方に篭ってしまう」というものがあります。
その様子がもう少し詳しく分かったので以下に・・・
北アフリカの砂漠の戦線で、イタリア軍部隊に悟られずに優位な位置を占めたイギリス軍部隊が奇襲攻撃を開始したのは正午の直前だった。英軍が一斉射を加えるとあっという間に伊軍は白旗を揚げ、一人の将校が英軍側にやって来た。
伊軍と英軍の将校が互いに敬礼した後、まず伊軍将校が言った。
伊「我々は直ちに1時間の休戦を提案する。」
優位な状況の英軍将校は慇懃無礼に応える。
英「休戦ですと? 降伏ではなくて?」
周囲の英軍の配置を見渡した伊軍将校は自軍の不利を悟り、率直に前言を撤回し改めて言う。
伊「よろしい。おっしゃるとおり、我が隊は降伏しよう。」
「ただし・・・」と伊軍将校はチラリと腕時計を見て続ける。
伊「ただし・・・降伏は1時間後だ。」
時間を気にする様子に不審を感じた英軍将校はさらに強く出ることにした。
英「ダメだ。交渉が出来る状況だとお思いか?即座に降伏したまえ。
それとも・・・1時間待てばそちらに援軍でも来るのですかな?」
伊軍将校はもう一度時計を見て苛立ちの色を見せながら承諾する。
伊「わかった、とりあえず今すぐ武器を放棄しよう。
それを指示しに一旦私は自軍に戻ることにする。」
急いで陣地に戻ろうとする伊軍将校の様子に、さらに不信感をつのらせた英軍将校は単刀直入に聞くことにした。
英「いったい、何をそんなに急いでいるのです?」
伊軍将校はさらに焦りを隠せず、思わず早口で言った。
伊「・・・貴軍は、卑怯にも我が軍の昼食時間を狙ったのですぞ!
ちょうどパスタを茹ではじめた所だったのです・・・もうすぐ・・・正確には
2分30秒後に
パスタがアルデンテで茹で上がるので、一旦私は戻る。
交渉はその後だ!」
噂には聞いていたがイタリア軍のあまりの軟弱さにあきれて英軍将校はつい本音を漏らす。
英「なんと!イタリア軍は、戦闘よりもパスタの茹で上がりを心配するのですか?
全く軍人としてあるまじき・・・」
と言いかけて、伊軍将校を見ると顔面がみるみる赤く激昂していくではないか。
伊「なんと、失礼な!私は軍人である前に誇りあるイタリア人だ!
イタリア人の誇りを侮辱するおつもりか!」
言ってることはおかしいが、あまりの剣幕に、たとえ優位だといっても無駄な戦闘は避けるべきだ、と思った英軍将校は交渉を続けることを優先することにした。
英「まあ落ち着いて。分かりました。戻ってパスタを食べて結構。
ただし30分後には、我が軍の捕虜収容所に向け出発して頂きますよ。」
伊「・・・配慮には感謝するが、たった30分でランチを済ませろとおっしゃるのか?
パスタとワインを楽しみゆっくり時間をかけるのがイタリア人の流儀。
1時間は必要だ。」
英「・・・しかし。今は戦争中ですぞ?
我が精鋭を誇る英国軍は、食事なんぞ、二の次三の次。
戦闘の合間に短時間で喰えればいいと思っているものでね。」
今度は英軍将校が腕時計を見て、何やら考え込む番。
英「いや、
やっぱりダメだ。今12時で収容所まで2時間半はかかる。
30分以内に出発しないと間に合わん。」
今度は逆に伊軍将校が聞き返す。
伊「間に合わない?とは?」
英「だから、すぐにでも出発しないと、
我が英国軍の
3時のお茶が遅れてしまう!
それだけは
絶対にダメだ!」
と、つい我を忘れて英軍将校は叫んだ。
**************以上、もちろんフィクションです。
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Posted at
2010/02/02 00:54:23