2022年最初の好きな車、行きます。今回は国産、今ではトラック専門になっているいすゞから。
♪走れ走れ~いすゞのトラック~ではありませんよ。
【ISUZU BELLETT GTR】
「いすゞ ベレット GTR」です。
ベレットは生産販売期間がかなり長い(1963~1973と約10年ほど)車ですので、まずはGTRに至るまでの歴史を。

こちらはいすゞベレル、当時としてはやや大柄なセダンで、当時のトヨタクラウンや日産(プリンス)セドリックやグロリアと同じクラスの車(エンジンは1500ccと2000cc)でした。しかし、販売面ではクラウンやセドグロの後塵を拝している状態、つまり不人気車だったのです。
その下のクラスを担うべく。

1963年にベレットは誕生しました。画像は2型になる丸目4灯タイプ

最初期は角目(いや、異形丸目かな)2灯のヘッドライトです。
ベレットという名前は上記のベレルの小型版という意味合いでつけられています。
排気量は1500ccと追加された1300ccのOHVエンジン、2ドアと4ドアのセダンとして販売されていました、ベレットといえば2ドアクーペのイメージが強いですが、販売の主力はこちらのセダンで後にディーゼルエンジンも設定され、商用バンやタクシー仕様車もありました。
古めかしさも感じる外観ですが、足回りはフロント側がダブルウィッシュボーン、リヤはダイアゴナルスイングアクスルと当時としては先進的な四輪独立懸架方式を採用しており、和製アルファロメオと称されるほどの足の良さを持っている車でした。
ただ、リヤのダイアゴナルスイングアクスルの足回りは、ジャッキアップ現象(つまり浮きやすい)を起こしやすく最悪横転するという弱点があったので、タイプBと呼ばれるリヤリーフリジット(つまりトラックみたいな板バネですね)に変更されています。
後に1600ccOHVが1968年に追加、翌年1600ccはSOHCになりこのエンジンがベレットGTRのエンジンの基礎となります。最終的には1800ccも追加されました、生産期間が長かったので魅力化のためにあの手この手を尽くしていたのです。

こちらが最後期あたりの4ドアセダン、どこかイタリア車的な造形でセダンも好きですよ。
さて、ここからはいわゆるベレGことGTのお話。
1964年に

2ドアセダンをベースにリヤ回りを整形、エンジンは新規にOHVの1600ccを製作、SUツインキャブを装着、足回りはセダンと共通でフロントをディスクブレーキ化、実は国産車初採用だったりします。
当時は角張ったスタイルが多かった国産車の中で、丸みを帯びた流麗なスタイルのクーペとして販売されました。日本車で初めてグランツーリスモの略であるGTの名を使用した車でもあります。
1500ccも当初ありましたが、翌年1965年には廃止されています。
このリヤ回りのスタイルは、最終的にはセダンにも採用されていますね。
1967年にエンジン内部に手を入れて若干の馬力アップ、1969年にはエンジンをSOHC化、同年末には1800ccへ排気量アップなどなど1973年の生産終了までに改良が続けられています。
OHVはトルク感に溢れていて、SOHCでは上まで回るエンジンになり、1トンを切っている車重と和製アルファロメオと呼ばれた足回りと合わせて、走りの方もかなり良い車だったそうです。

1967年から受注生産制でしたがファストバックもあったとか。
さて、いよいよ本命のGTRへ行きます。

やはりこのオレンジ色に黒ボンネットがRのイメージカラーかと。黒ボンネットは艶消しで光の反射を防ぐ意味がありますが、通常のカラーのボンネットも選択できたそうです。この手法はどちらかと言えば当時のラリーカーに多かったのですが。
1969年にデビュー、それまでOHVのGTでレースに参加していたのですが、トヨタの1600GTやスカイラインなどがDOHC化してレースに参戦すると、OHVエンジンで相手をするのは最早厳しい状態となり、同じいすゞの117クーペのDOHCエンジンを搭載する形で追加されました。
スペック
水冷直列4気筒DOHC8バルブ、排気量1584cc、最高出力120馬力です。

これがGTRのツインカムエンジン、エンジンも美しい。キャブレターはGTのSUツインに変わりソレックスが装着されています。
1969年にGTXという名前でSOHCエンジンのレース車両を作成、それをベースにしてGTRは誕生しています。ただ、このDOHCエンジンは本来117クーペ(紹介済)のために造られたエンジンであり、また、製作コストがかなり高額でベレットにはSOHCでいいんじゃない?、レースでもそれなりに結果を出したし、という社内意見もあったそうで、搭載決定までにかなり揉めたそうです。
このDOHCヘッドは職人さんによるハンドメイドに近かったとか、だから生産コスト高騰を招き、また、117と共通だったこともありエンジン供給の問題を抱えていたそうです。
いすゞって、117の初期のボディ(ほぼハンドメイドでした)もそうですが、生産効率に泣かされていたことが多い会社だったというイメージがありますね、妙な所でこだわってしまうというか・・・。だからこそいすゞの旧車は美しい車が多かったのでしょうけど。

後ろから、この丸みを帯びた後ろ姿もやっぱり美しい、リヤタイヤの上部がタイヤアーチの上端の内側に入るスタイル、これでこそベレットです。

運転席、センターに三連メーターとレーシーな雰囲気、ギアはMT5速です。
画像のハンドルはナルディが装着されていますが、ノーマルもナルディ風のウッドでした。
当時の販売価格は110万円ほど、当時大卒初任給が4万円あたりだったそうなので、今の感覚だとだいたい600万円ぐらいに相当するそうです。そもそもベレGでも95万円(現在なら500万円相当)でしたからベレット自体が小型高級車だったわけですが。
ちなみに車幅は現在の軽自動車と大差はありません、今見るとかなりコンパクトな車ですよ。
さて、当然レースへ参戦となるわけですが。

参戦してからはトヨタの1600GTを制して優勝と好成績を残しました。コーナリング性能が良く、車重もノーマルでも970kgと軽く、上まで気持ちよく回るDOHCエンジンで同じ1600ccクラスでは上位を狙える車でした。

一部ではラリーにも参戦していたそうです。やはり黒ボンネットはラリーでこそ良く似合います。フェアレディZや510ブルのラリーカーも黒ボンネットでしたし。
上記した通り1973年に生産停止、後継のベレット ジェミニ(つまり初代いすゞジェミニ)にバトンを渡しました。ベレットの販売自体は1974年あたりまで続けていたみたいですが。
さて、中古市場
ベレットのセダンだと下はレストアベースの170万円あたりから、上は300万円あたり、GTだと最低250万円あたりからで上は400万円オーバー、中には応談(ASK)の車両もちらほらと。
そしてGTRは、そのほとんどが応談(ASK)、500万円いや、600万円以上はするのではないかなと、何せ当時でも高額な車でしたから総生産台数は1500台ほどだそうですし、かなり希少車なのです。
整備などはベレットを専門にしている業者さんも居ますし、大事に乗っている方も比較的に多い車でオーナーズクラブもあるそうですから、横の繋がりを構築できればまだ良いほうかもしれません。
いすゞ車は比較的に長く乗っている方が多いと思われます。

最初は大衆的な小型車として企画されて、日本初のGTを冠した車として名をはせて、レースの世界でも活躍し価格的にも小さな高級車でした。そしてDOHCエンジンを搭載して更に走りにも磨きをかけ、長く愛された和製アルファロメオとも言える車、それがいすゞベレットGTRかと。
所有は大変そうですが・・・なにせ国内ではいすゞは乗用車を扱っていませんし。
それでも乗るならやはりGTRですね、ソレックスは装着されていますから再セッティング、そしてタコ足とデュアルマフラーのソレタコデュアル、旧車の三種の神器で。外観はフロントバンパーを外して車高は下品にならない程度に軽く下げたいところ、後はコブラシートなんてのも良さげ、ホイールは私ならワタナベ8スポークかな。
あえて、上記のラリー仕様に近づけるなんてのもアリかと、フォグランプ類は黒ネコが目印のマーシャルで。
さて、いすゞは乗用車から離れてかなり長い年月が過ぎていますが。

実はSUVやピックアップトラックは、現在でも海外では生産販売していたりします。
ピックアップトラックがいすゞD-MAX、SUVはいすゞmu-Xと申します。
価格は500万円近くと高級志向で、D-MAXはATとMTの設定で、エンジンはディーゼルの設定もあり、どちらもEURO5規制に対応出来ているのでその気になれば日本でも販売可能だそうです。
いすゞさーん、今は日本国内もSUVやハイラックスみたいなピックアップも販売されていますし、人気も高いですから最初は数量限定で販売してみては?、まあ、乗用車のディーラー網が無いから厳しいでしょうけど。
今、販売をすればかなり売れそうですけどね。高級路線で行くのもアリかと。