今回はお国はドイツ
また、ミリタリーな1台で行きます。
以前、ジュビームワーゲンは紹介しましたが、その元となったこちらはやっていなかったな~と。
【Kübelwagen】
「キューベルワーゲン」です。
1937年

総統閣下の命によりフェルディナント・ポルシェ博士が開発した国民車「kdf wagen」、これを元にした軍用車両を造ろうという事になりました。
その開発条件はこちら。
・オープントップであること。
・総重量950 kg、うち車輌自重550 kg、積載量(乗員3名と貨物)400 kg
・生産性が高いこと。
・大量生産が可能であること。
・軍用車輌だが、民間用にも簡単に転用できること。
つまりだ・・・
屋根?イラネー!、重くするな!、ある程度人と荷物を積めるようにしろ!、バカでも(ピ~~~)でも造れるように構造はシンプルにしろ!、大量に造れるようにしろ戦いは数だよ兄貴!。
一応・・・ほら、kdf wagen(つまり民生型、ビートルのご先祖)も造らんとさ、我が国民達は990ライヒスマルク(昔のドイツ通貨)をチマチマ給料から天引きで、スタンプ貯蓄帳で貯めてマイカー生活を夢見てるんだからさ、すぐに民生型にも戻せるようにしとけよ!。
ですよねぇ~!閣下は「余は全ドイツ国民に自家用車を持たせることを約束するっ!」なんて演説でブチ上げたんですからね、そちらもちゃんと達成しないと・・・

と、いうわけで開発開始
1938年陸軍兵器局の要請に応じてポルシェ博士らが開発を担当、二輪駆動(RR(リヤエンジンリヤドライブ)レイアウト)でオープントップ。プレス加工を多用したボディはシンプルな造りとなり大量生産がきく形として造られました、一部の部分補強には鉄パイプも使用しています。
要件に沿った最初のプロトタイプは、1939年の終わり頃に完成、角形車体の発展型試作品はTyp (タイプの独語表記)62(62型)と名付けられました。
そこから、実走を重ねて更なる改良を実施

「不整地走行形軽乗用自動車フォルクスワーゲン82式」、つまり「VW Typ 82」として完成しました。
ちなみに、キューベルワーゲンという呼称は本来この車だけの物ではなく、当時はバケットシート、折り畳み式の幌、初期は取り外し可能なサイドカーテン、後に鋼製ドアを持つこの手の軍用車は車種に関わらず全て「キューベルジッツァ」、「キューベルワーゲン」又は単に「キューベル」と呼ばれていました、現在キューベルと言えばこのtyp 82を差す言葉になっていますが。
スペック
空冷水平対向OHV4気筒、排気量985cc、最高出力23.5馬力です。
23馬力ほどですが、現在の軽自動車よりも遥かに軽量なボディのため、舗装された整地ならば80km程度の速度が出せたそうです。
足回りはリーフやコイルスプリングを使った複雑な形式ではなく、4本の板バネを束ねたトーションバー方式というとても簡潔で軽量な構造、また、ベース車の駆動軸のままだと最低地上高が低いので、ホイールリダクションギアつまり平歯車によって下駄を履かせて、最低地上高29cmいうクリアランスを確保しています、つまり通常型よりハイリフト化してあるということですね。

運転席、センターメーター方式で速度計のみのシンプルな物、当然トランスミッションMTのみで・・・フロアマットだと?そんなもん木製の簀(すのこ)でええやろがい!、鉄板剥き出しの無骨なレイアウトです、シート類もパイプに布張りの簡素な物。

雨天時は後方に畳まれている幌を前方に拡げて固定します、リヤウィンドウが通常型と同じくスプリットウィンドウになっていることに注目。

エンジンルーム、通常型と同じく排気量985ccのRRレイアウトですからエンジンは後方に配置、空冷エンジンであることが幸いして故障も少なく、シンプルな構造で現地整備も容易、冷却水を必要としないので砂漠でも極寒の大地でも重宝したそうです。後期型では排気量が1130ccへアップ、馬力も25馬力へ向上しています。
初期は北アフリカ戦線にも投入されており

砂漠での使用を考慮して、通常より幅広なバルーンタイヤを装着していました、以前紹介したジュビームワーゲンからの流用なんですが。

東部戦線、つまりロシア方面では雪解けの時期は車両は泥寧に悩まされたわけですが、四駆では無いけどRR駆動はトラクションに優れる特性があり、なかなかの不整地走破性を発揮、偵察や伝令などで多用していたサイドカーよりも走れると評判でした。仮にハマッても、車体の軽さのおかげで数人で押せば脱出できたそうです。底面はアメリカのジープのようにデフ類がなく、平らなので引っ掛かりにくいというのもありますが。

試験的に。後輪を履帯(りたい、日本での正式名、キャタピラーは本来会社の社名ですから)にした物も造られたようですが、最高速は当然落ちるし燃費も落ちますわな。
あと、台数は少ないですがジュビームの機構を流用した四輪駆動タイプも造られています。
1940年~1945年の敗戦までに約52000台が生産され、戦場の兵士達の軍馬として活躍しました。
戦後も一部は西ドイツ軍でそのまま使用されたり、不整地走行性能の高さや頑丈さを買われ山間部で使われたり、消防の指揮車になったりと活躍していました。
さて、中古市場、敗戦国の車両ですがかなりの台数が戦後も生き残ったそうで、以前当時物のキューベルが海外のオークションに出品されて、最終落札価格は650万円ほどだったそうです。
そう、歴史的遺産とも言える車ですが、案外高額ではないのです。
そして、このキューベルはレプリカも沢山存在していまして

戦後にキューベルを参考にして、ビートルをベースに造られたtyp 181クーリエワーゲン(アメリカあたりではシングとも呼ばれていました)、これを改造してキューベルの外装にして販売されていたのです。
そちらがだいたい新車価格が400万円ほどだったそうで、そちらの中古車がたまに出てくることも、レプリカの中古価格は300万円あたりからですね。だから買えなくは無い(元)軍用車両だったりします。
ただし、ヒーターぐらいしか快適装備はありませんよ。当然MTですし。

VWビートルのご先祖様であるkdf wagenをベースに構造を簡略化、ハイリフト化、軽量化を施し誕生、そのRR駆動によるトラクションの良さ、軽量な車体、そしてシンプルで頑丈な空冷水平対向エンジンにより極寒の大地から灼熱の砂漠でも活躍、まさに戦う場所を選ばない軍馬、それがキューベルワーゲンです。
所有するなら?、クーリエベースのレプリカで。バルーンタイヤを履かせて砂浜を走ってみたいです。
レプリカと本物両方、日本にも所有されている方々が多数居ます、まずは実物を見てみたいですね。
レプリカなら、空冷VWの部品は現在でも純正やリプロ品が数多く流通していますから、流用が効くので案外維持は楽だそうですよ、空冷VW用の後付けの電動式エアコンも装備出来るとか、アウトドアに良い車かも知れませんね、乗り味はハードのひとことですけど。
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好きな車 | クルマ
Posted at
2022/12/25 13:12:03