以前、価格を安価にするための技術の集大成

スズ菌のチョイノリを紹介しましたが。
これよりも更に簡略化され、これもうバイクじゃないだろレベルの車両を今回はご紹介、1台だけだとかなり短くなりそうなので、今回は2台行きます。分類的にはモペットですね、メーカーはどちらもホンダさん。
【HONDA NOVIO】
【HONDA PEOPLE】
「ホンダ ノビオ」と「ホンダ ピープル」です。
まずはホンダ ノビオから。
1973年デビュー

フロント回りはカブみたいですが、足こぎペダルがついています。コンセプトが「自転車に乗れれば運転できる」ですから。ノビオという名前はスペイン語の婚約者から来ているそうです。
スペック
空冷2サイクル単気筒、排気量49cc、最高出力1.8馬力です。

こちらがノビオの空冷2サイクルエンジン、わりと普通な位置にあります、駆動も普通なチェーン駆動です。トランスミッション(変速)はありません。
ところでこれ、どうやってエンジンを始動&停止させるの?、以下ホンダ公式より。
始動は、自転車のペダルを踏む要領で簡単、あとは右手のアクセル操作だけですから、初めての方でも手軽に扱えます。
・始動―軽々と行なえるペダル始動
・始動後―ギヤチェンジもなく、速度調整は右手のスロットルグリップのみ
・エンジン停止―デコンプレバーを押すだけで確実にエンジンをストップ
とのこと。つまりペダルを漕いだらエンジン始動で

これがハンドルについてるデコンプレバー、これを押すとエンジン停止なんだそうです。

ブレーキは前後ドラム式で一応バイクっぽい、効きはそれなりだとか、前後サスペンションは基本的にカブに近い物が装着されています。

ヘッドライトの上にスピードメーター、一応60kmまで刻んでありますが・・・多分そこまでのスピードは出ないかと。燃料タンクは、シートの前にあるカバーされてる所がそうです。
当時の販売価格は55000円でした。

翌年1974年の後期モデル
フロントバスケットを標準装備化、エンジン周辺のペダル回転部分をフルカバー化、自転車走行切り替えボタンをワンタッチで出来るキー溝を新設、チョーク操作をボタンからハンドル横レバーへ変更、マフラーにプロテクターを装着、シートならびにプーリーフルカバーに花柄プリントを採用、スタンド操作用グリップパイプを装着などなど、エンジン等に変更はありません。
その走りは・・・遅いの一言w、30km出るか出ないかだそうです。まあ、あくまで本来の意味での「原動機付自転車」ですから。
1975年まで生産されて

ノビオからペダルを取っ払ったようなこちらのロードパルに変わりました。これは純粋にスクーターです(一応)。
では、次にホンダ ピープルを。
ノビオから約10年後の1984年デビュー、さて、その姿は・・・

すごく・・・ママチャリですw
スペック
空冷2サイクル単気筒、排気量24cc、最高出力0.7馬力です。
まあ、なんとも心許ないスペックではありますが。実質ママチャリだしw。

ちなみにカタログや取説での車名表記は、何故か平仮名で「ぴ~ぷる」になります。人間に優しい?、それはどうかな?w。
この80年代初頭~中盤と言えば

ヤマハはRZ50

カワサ菌からはAR50

スズ菌からはRG50Γ

当事者であるホンダ自身もMBX50と7.2馬力級のゼロハンスポーツが花盛りの時代に・・・

コレを出したホンダの度胸!w、やっぱりホンダは優等生なんかじゃないと思うな。

ブレーキは前後小型のドラム式、エンジン始動はノビオと同じくペダルを漕ぐ事で始動します。停止もスイッチ(デコンプ)が装着されています。

2サイクル単気筒エンジン、24ccと排気量が小さくて馬力も1馬力も出ていません。それをモロに自転車のフレームに装着しています。ただし、エンジン単体は非常に軽量で、単体の重量はわずか4kgしかありません。片手で軽々と持てるレベルです。ピープルの文字が見える部分がガソリンタンク、容量は1リットルですが、このエンジン燃費が脅威のリッター80~90km!、一度給油したら前にいつ給油したのかを忘れるレベルだとか。勿論普通にペダルを漕いで走ることも可能です。尚、車輪への動力伝達は後輪をエンジンで直接回す方式(エンジン側の動力伝達ローラーを後輪に圧着させる)、チェーンはあくまでペダルで漕ぐためのもの。

反対側、ここを見るとエンジンっぽいですね。エンジン単体の力でも走れますが普通の自転車よりもかなり遅いとのこと。そんなのどーすんのよとなりそうですが、このピープルは基本的には自転車です、そう、ペダルを漕ぐ前提なんです。ノビオとの最大の違いはこれです。簡単にいえば「原動機付パワーアシスト自転車」ということ。馬力が低い理由もこれ、あくまでエンジンは漕ぐ力をアシストするために存在します。ヤマハが後に作った電動アシスト自転車(Pasですね)をエンジンの力でやるということ。といっても、エンジンは非常に非力なのでその力だけでは坂道は登れない・・・だからお前が♪そ~のペダルを漕いで行け~!ですw。
エンジンが人間をアシストといったな!

ホントこれなw。
むしろ「エンジンを人間がアシストする」といったほうが正解かもw。最高時速は18kmとされています。

ハンドル回り、何か付いてますが自転車以外の何物でもないですね、スピードメーターすらありません。アクセルは草刈り機のような右上のレバーがそうですよ。サスペンション?自転車ですよ?(そんなもんは無い!w)。
つまり、ピープルとはノビオより更に自転車に近い乗り物なのです。生産期間は2年ほどで1987年にはカタログ落ちした模様、はい、販売面では大爆死ですw。
さて、この手のモペット、造り続けたのは国内では実質ホンダのみ、実はこの2台の前にも1960年代にリトルホンダという車両を造っています、そちらはいずれまた別に紹介します。
何故、ホンダはこれほどモペットの生産販売に固執したのか?、それは日本の道交法の改正で、この手のペダル付き原動機付自転車が免許不要になるという機運が過去に数回あったからでして。ホンダ自身も何度も国へ陳情したんだそうです。しかし、その結果はなしのつぶて・・・(ほぼ門前払い)。
ピープルを販売しようとした頃にも、その機運があってホンダは

お願いしますとまた国へ陳情したんだそうですが。

ダメでしたw。それどころかヘルメット着用の強制&二段階右折の強制で規制のほうが倍プッシュに・・・。
これで日本のモペットはトドメを刺された形となったわけです。それにこの頃バイクブームで安い新古スクーターも沢山あったからというのもありますが・・・免許があればみんなそっちを買うわなと。
そもそもホンダの始まりは。

戦後間もなく旧日本軍の通信機用の2サイクル単気筒50ccエンジンを入手、それを元に1946年に自転車に取り付けるエンジンを造ったのが始まり。画像はホンダA型のプロトタイプ。ガソリンタンクが「湯湯婆」だ・・・これ、読めますか?。
正解はゆたぽんじゃなくて「ゆたんぽ」です。

「湯婆婆」(ゆばーば)と読んだ人、先生怒らないから手を挙げて!w、いや、なんかブチキレていますがw。
さておき、つまりホンダは元々こういう車両から始まった会社なので、モペットに対するノウハウの蓄積があったわけですね。免許不要で乗れれば学生さんからお年寄りまで、バイクが苦手な人でも楽に乗れるし良いでしょコレ!と売りたかったわけです。ことごとく国に邪魔されたわけですが。
さて、中古市場
まずは野比ノビオ(違っ!)
まー、普通のバイク屋さんの中古車としては出てきませんね、そもそも古いし。市場は某オクとか地元のなんとやらがメイン、相場は5~30万ぐらいですね。ほとんど要レストアのボロボロですけど。ちなみに部品はありません。部品も中古を探す状態です。
そして一般ピーポー(違っ!)
こちらは稀にバイク屋さんにあることが、中には燃料すら入れたことがない新車状態の物も、それで約10万円、後は某オク&地元茶(ティー)がメイン。程度はサビだらけがメインですけどね。野比ノビオよりかは買いやすいかと。

バイクが苦手な人、女性、お年寄りのための手軽な乗り物として、戦後間もなくのパタパタ(ホンダAはこう呼ばれていました)よもう一度と開発、国にも免許無しで乗れるようにして!と何度も陳情しましたが「エンジン付いてんじゃん、だからダメ~」とダメ出し。しかも更に規制が上乗せになり日本での市場は完全に潰えたわけですが、後の電動アシスト付き自転車にその思想が受け継がれる元となった車両、それがホンダ ノビオとホンダ ピープルです。
所有するなら?、使い勝手ならノビオですかね。しかし、ピープルも面白そうだな。ちなみにピープルのエンジンは非常にシンプルなので・・・ボアアップは簡単だそうで。この車両で60km以上出したらかなり怖そうですけどね。小型登録で峠のダウンヒルを攻めるピープル、やってみたいかもw。ノビオとウサカメして遊んでみるとか。
まあ、保存のために、ノーマルで乗るのが一番なんでしょうけどね。
余談
ちなみに海外でのモペットってどうなの?

こちらはあのプジョーのモペット、古いモデルでエンジン付き。欧州では免許不要で(細かい条件は国によって違うそうですが)乗れる所が多く、様々なメーカーがあり一大市場となっています。昨今は電動アシスト自転車とか、充電式でモーター走行の物が増えているそうですが。元々、モペットが広く認知され使われているわけですね。日本でも最近は電動のモペット系の車両が増えていますが、まだまだ法律が追い付いていない感じですね。
余談その2
近年、ピープルを復活させて乗りはじめた人のお話、一応原付ですからガソリンを給油しなければなりません。ですのでピープルでセルフのガソリンスタンドへ、いざ給油しようすると監視の従業員様が部屋から飛び出して来て「すみませんが携行缶への給油は出来ませんよ」と注意されたそうですw。つまり自転車で乗り付けて来て、手持ちの携行缶に給油しようとしていると勘違いされたんだとかww。まあ、わからないでもないですけど。
そして、原付もヘルメット着用が強制された1986年頃、ヘルメットを着用してピープルに乗っていると、周囲から「コイツなんで自転車なのにヘルメットをかぶっているの?」といった目でジロジロ見られたなんてお話もw。
まあ、現在は自転車もヘルメット着用が義務になりましたが。今、ピープルに乗れば目立つことは間違いなしでしょうね(野比ノビオはロードパル懐かしい~とやたらいわれるとかw)。