さて、今回は外車でイタリィから。
世の中には「幻の○○」なんて物が色々とありますが、今回のバイクもかなり魔墓呂死(まぼろし・・・わかる人はニヤリとw)なバイクです。しかもこのバイクを開発販売したことでその製造メーカーにトドメを刺した・・・つまり倒産の引き金になったといういわく付きなバイクでもあります。そのとてもチャレンジャーなメーカーってどこ?、それはイタリアの名門ビモータさんです。
【bimota 500V due】
「ビモータ 500V デュエ」です。
正直魔墓呂死(しつこいな)過ぎてわからない方がほとんどかと。
これまで何度かビモータという会社については解説していますが、久しぶりなのでまたざっくりと。

ビモータのマーク、基本的にビモータという会社は「バイクのフレーム屋さん」です。その昔空調用配管の製作会社として創業者はヴァレリオ・ビアンキ(Valerio (BI)anchi)、ジュゼッペ・モッリ(Giuseppe (MO)rri)、マッシモ・タンブリーニ(Massimo (TA)mburini)という3人の青年が会社を設立、名前はそれぞれの名前から2文字ずつ拝借して「bimota」となりました。この3人の中でタンブリーニ氏はバイク好きでレースにも参戦、転倒時フレームの修復を配管製作の機材でやったり、会社設立前の職がピアジオ(ベスパ造ってる会社)に勤めていたりでそこで色々と覚えて自社でハンドメイドによるフレーム製作を開始、様々なバイクのエンジンを搭載して販売するようになりました。かつてはレースにも参戦しています。
一例として

走る前衛芸術ビモータ マントラ、エンジンはドゥカティ製(紹介済)。

ビモータ SB6、エンジンはスズ菌のGSX-R1100のものを搭載、ビモータで歴代でもっとも売れたバイクだとか(1500台ほど)。

tesi(テージ)1d、フロントがハブステアの先進的なバイク、これもエンジンはドゥカティ製です(紹介済)。
他にBMWやヤマハやカワサ菌やホンダのエンジンを積んだのもあります、名前はBBとかYBとかKBとかHBとかになるんですけどね。
そんなビモータさんには長年の夢がありました。「エンジンも自社開発製作した完全に自社製のバイクを造りたい」という夢です。
そして1997年に

ビモータ 500V dueが生まれました。
スペック
水冷2サイクル90度V型2気筒、排気量498cc、最高出力110馬力です。
1997年あたりは日本国内でも2サイクルエンジンが風前の灯な頃、そんな時代に自社生産の2サイクルV型500ccエンジンを開発、それだけ環境性能にも自信があったのです。英国のある研究機関が、排気ガス規制で将来性の見込みがないと言われていた2サイクルエンジンを燃焼室への直噴技術でクリーン化する研究を進めていて、ビモータは提携を結ぶことで念願の自社製エンジンを実現する一歩を踏み出しました。

エンジン図解、見た目はごく普通な2サイクルV型2気筒エンジンですが、まず燃料供給をキャブレターのかわりに、当時としてはまだ珍しい電子制御によるフューエルインジェクションを採用、そしてその燃料を直接シリンダーにぶっかける直噴式なのです。2サイクルエンジンで環境がらみで一番問題になるのは弁機構を持たない特性上未燃焼のガスが出やすいことです。

なので最初は空気を圧縮、排気ポートがピストンが上死点へ到達して閉口した時点で燃料を直接ピストンに吹くように制御すれば、未燃焼ガスの流出を最小限に防げるだろうというのがイギリスの研究チームの考え、そしでピストンに直接ガソリンをぶっかけることで打ち水のような冷却効果も期待できるとメリットは色々です。未燃焼ガスが減れば環境にも優しいだろうし言うこと無し・・・あくまで理論上はね・・・後程。

フロントタイヤサイズは120/70ZR17でブレーキはダブルディスク、フロントフォークは正立タイプ、リヤタイヤサイズは180/55ZR17でリヤブレーキはディスク、リヤサスはいわゆるモノサスを装備、フレームはアルミのバックボーン式・・・細かいデータが探しても無いんですわ。まあ、この時代のレーサー系のオーソドックスな造りだと思っていただければ(苦しい言い訳w)。車重は乾燥で164kgと500ccと考えればかなりの軽量。

ちなみにトロフェオ(イタリア語でトロフィーの意味)と名付けられたレース仕様もありこちらは馬力が135馬力となります。

その走りはとにかく軽快、軽い車重と2サイクルエンジンで110馬力のパワー、短いホイールベースで旋回性も極上、まさに当時の500ccWGPレーサーを公道で走らせているような感覚だったとか。上記のとおりレース仕様も製作していたのでいずれはWGP500ccクラスへの出場を目論んでいた模様。販売当時の価格は210万円ほどだったそうです、性能の内容を考えたら意外とお買得かも?。ただし3000rpm以下はスッカスカだそうですが。まあ、「マトモに走れれば」・・・なんですけどw。
これなら売れるだろうとビモータとしての期待も高かったのですが、いざ走らせるとエンジンからの不調が多い、特に自社で開発したインジェクターや制御系(つまりロムだね)がイマイチ・・・いやマトモに制御出来ていない、理論上は上手く行くはずだったけど燃料の噴射時期の調整がかなり難しかったそうです。しかしいつまでも開発ばかりしていては肝心の販売収入が入らない、開発費はかかるばかりで資金繰りも厳しい。ではビモータはどうしたのか?、不調がありながらも見切り発車を敢行しやがりましたw。つまりエンジン(というかインジェクションとその制御)が不調のまま販売しやがったのです。当然、販売後にはクレームの嵐、低速走行がギクシャクするだの、アクセルをパーシャルの状態にしても安定した状態で走行することもできないだの、つまりマトモに走らないときたもんだと。おかげで初年度に生産した185台は全てリコールかまたは返金をする事態となりましたとさ。つまり欠陥品だったのです・・・そりゃそうだw。

その後燃料供給をインジェクションからキャブレター化にするなどの改善?が施されたエボルツィオーネとなりました。いや、エボルツィオーネ(英語でエボリューションつまり進化の意味)を販売って・・・ちょっと待てぃ!、進化ってインジェクションからキャブレター式に「退化」してますやん!、これのどこがエボルツィオーネ(進化)なんだよ!w。これで普通に走るようにはなったそうですが。
この一件でビモータは1998年に経営が悪化、その後一度経営陣をすげかえて短期間の再開はしたものの、結局上手く行かずに2000年に倒産となりました。はい、文字通りただでさえ資金繰りが厳しくて瀕死だったビモータの後頭部に、金属バットのフルスイングでトドメを刺してしまったのです・・・。ちなみに日本でもあの「赤男爵」(最近外資に買われてしまいましたね)が代理店として販売したそうですが。日本で販売したときには赤男爵でインジェクションは取り外してキャブレターに交換したそうですよw、何人の人が購入したのやら。いつ頃まで生産していたのかもわからず、多分1999年あたりまでかなと、総生産台数は340台ほどとのこと、本当にデータが少ないんですよ。

ですからねw。
さて、中古・・・あるわけが無いw。
少なくとも日本国内の市場にはまず出て来ないそうです。1台過去に販売されたのを見つけましたが価格はわからず、海外からの取り寄せで走行距離がわずか29kmのほぼ新車でしたが。個人で海外から輸入して所有している方は居るんですけどね。日本にある台数は二桁ぐらいじゃないかな。

消え行く運命だった2サイクルエンジン、そこで環境に配慮した新しいエンジンを8年もの歳月をかけて開発、長年の悲願だったオールビモータを達成したバイクでしたが、燃料の電子制御が難しくてなかなか不調が治らない、インジェクション自体も問題が山積み、資金繰りが厳しくてとりあえず走れるようになったから~と販売したら案の定クレームとリコールの嵐、資金繰りという病の床に伏していたビモータに倒産というトドメをプレゼントしたバイク、それがビモータ500V dueです。
所有は・・・無理でしょうねw。
するならキャブレター車を探しますわ、ただし現在そのキャブレターは部品も無いそうですが。幻だけに改造は一切してはダメなんでしょうけどやるならホイールの軽量化でサイズは変えずにアルミ鍛造とかカーボン製のホイールに交換、あとはワンオフでチャンバーのサイレンサーを製作してもらって装着かな・・・カーボンホイールだけで100万円近くになりますけどねw。
まさに幻のバイク、一度見てみたいものです。
余談
その後ビモータは2002年に経営陣が変わって復活しました。近年もバイクを販売しています。

こちらが2020年発表のbimota tesi H2(ビモータ テージH2)、H2の名前からわかるようにエンジンはカワサ菌のNinja H2のスーチャー付きエンジン

外装を剥がした状態、フロントがテレスコピック式ではなくスイングアームのハブステアを採用、名前にテージとあるように過去のテージシリーズが復活したのです。240馬力ほどに出力も上げられていて、その販売価格は866万8000円・・・高いなw。

そして今年2024年に発表されたbimota TERA(ビモータ・テラ)、これもハブステア方式のフロントでエンジンは上記と同じNinja H2のもの、そのスタイルからわかるように「世界最速のアドベンチャー系バイク」なんだとか・・・最早アホすぎるだろ!w。
とまあこのようにちゃんと復活を果たしています。さすがにエンジンの自社製作は諦めたようですが・・・500Vがトラウマになったのかもw。
そして、今年発表があったんですが、ビモータは近年エンジン供給で蜜月なカワサ菌と提携して来年2025年から共同でレーサーを造り出場するとのこと、カワサ菌がエンジンを供給してビモータが車体を造るF1みたいな体制になるとか、なので現状のKRT(カワサ菌のワークス)は今年限りで活動を停止するそうです。エンジンはZX-10系の4気筒になる模様、チーム名も来年からは「Bimota by Kawasaki Racing Team」(ビモータ バイ カワサキ レーシング チーム、略称はBbKRT)になるとか、さて、どんなレーサーになるのか?、まさかelf以来途絶えてるハブステアのレーサーが来るのやら?。
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2024/11/01 16:57:59