2025年の最初はヤマハさんで、本格的な市販トレール(つまりオフロード車だね)バイクはコレから始まったと言っても過言ではないバイクです。
【YAMAHA DT-1】です。
1967年の東京モーターショーに展示されて、1968年3月にデビューしたのが

ヤマハトレール250DT1ことDT-1です。本来ヤマハトレール云々の名前は日本国内向けの正式名、DT-1のみは海外向けの名前なんだそうです。
スペックはこちら
空冷2サイクル単気筒、排気量246cc、最高出力18.5馬力です。
当時、日本では未舗装路も普通にあった時代、そういうところも日本ではそれこそホンダのカブで走ったり、他にあってもスクランブラー的なバイクしかありませんでした。

こんな感じ、これはアメリカでヤマハが販売したトレールマスター100というバイクでアメリカ向けに輸出していました。オフ車というよりかは当時のオンロードモデルをベースにアップマフラーにしたいわゆるスクランブラーですね。こういうモデルは輸出向けでありましたが、オンロードベースで車体が重たいとか、排気量が足りなくてパワーが足りないなどの不満点も多かったのです。そんな時にアメリカから「もっとオフロードを気軽かつおもいっきり走れる市販バイクを造ってほしい」という要望が来たのです。当時アメリカで上の画像のようなバイクのトレール系のレースが人気だったからなんですが。しかし、上記のとおり日本は未舗装路もオンロードバイクで普通に走っていたので、ヤマハ的にはそんなん言われても何がなんやら?状態、とりあえずアメリカ側に要望や外観などを数値化してくれと逆に依頼

そんな時、丁度ヤマハは公道レースは制したから今度はオフロードのレースで勝つぞと、画像のYX26というオフロードレーサーを開発していたのです。

YX26はその後国内のオフロードレースで快進撃、画像のライダーに見覚えが・・・これは忠さんじゃねーか!

目玉のマークでお馴染みのアフターパーツメーカーである「SP忠男」の社長、鈴木忠男さんですよ(今もご健在です)。バイク用マフラーブランドとしても有名です。実は忠さんは若い頃ヤマハ所属のオフロードレーサーだったんです。海外でも活躍していました。
さておき、アメリカから来た細かい回答は「エンジンは排気量250cc、モトクロスだけでなくトライアル的要素も兼ね備えること。公道でも獣道でもガンガン走れるバイク」とのこと。そこでヤマハは
(1)車重は100kg以下にすること。
(2)狭い山道を走行するため、車幅はできるだけスリムにすること。
(3)最高出力よりエンジントルクを可能な限り大きくすること。
この3つを目標に開発したんですが・・・あれ?ちょっと待て、これってあのオフロードレーサーをベースにしたら行けるんじゃね?となったわけです。なのでそれをベースに保安部品をつけたりスタイルやデザインを見直したりしたのがDT-1(表記はこれで行きます)となります。ちなみにDTという名前は、Dが当時のヤマハ内で250ccクラスを表す記号で、Tはそのままトレールから来ています。その後のヤマハの2サイクルオフロード(トレール)市販車に受け継がれていきました。

後のDT230ランツァまでですね。

違いますっ!w

まずはエンジン、2サイクル空冷246cc単気筒ピストンバルブ式、18.5馬力を発生し2.32kgのトルクを5000回転で発生させます。2サイクルなのでエンジンオイルを必要としますが、なんと分離給油式を採用しております。ガソリン給油の度にエンジンオイルをタンクへ(混合給油)は必要なしです。古い2サイクルエンジンのオフロードだから混合かなと思っていましたがw。

シンプルなキャブレター、しかしそのおかげで分解整備は楽とのこと、ジェット変更などのセッティング変更も容易です。つまりイジりやすいとか。

フロントは3.25幅の19インチタイヤで勿論ブロックパターン、ブレーキはシングルカムのシンプルなドラム式、正立式フロントフォークのインナーチューブはφ34㎜、175㎜のストロークは当時のバイクの中では最大のストローク量でした。

リアホイールは18インチで4.00幅の18インチタイヤ、ブレーキはフロントと同じくドラム式でフロントと同じ大きさ、ツインショックを直立近くまで立てて装着してストローク量は90㎜とこれも当時のバイクとしては最大のストローク量です。スプロケットも1丁刻みで用意されていたとか。

灯火類、古いバイクなのでシンプルですね。今に比べると明るく・・・は無いかな。

スピードとタコ分離式のメーターまわり、いかにも昔のバイクらしいこれまたシンプルな物、結構大きく数値が書かれていますがノーマルではここまでの性能は・・・しかし、ヤマハはちゃんとある物を用意していました、後程。

フレームは鋼管のクレードルタイプ、シートは前後に長い2ケツも想定した物、肉厚でお尻に優しそうですね。タンクの造形は拘ったそうで丸みを帯びた美しい形で容量は9.5リッター、ヒートガード付きの排気側が絞られたアップのチャンバー、流石はデザインのヤマハこの頃からだったんですね。乾燥重量は124kgで目標の100kg切りはできなかったそうですが、当時としてはかなりの軽量かと。

上で後程と書いたことについて、この図面がGYTキットの一覧、GYTとはGeneral Yamaha Tuningの略で、つまりレース参戦用のパワーアップパーツを純正で発売していたのです。燃焼室形状とプラグの位置を変更したアルミ製のシリンダーヘッドと放熱に優れたアルミのシリンダーブロック、スペシャルなキャブレター、専用のピストンやピストンリングと専用のチャンバーやスプロケットがセットになっていてそれを普通に販売していたんです。

GYTキットのアルミシリンダーとピストン、他にキャブレターやシリンダーヘッドやスプロケットもあります。

こちらがキットのチャンバー、かなり先が絞られた形状です。これらを組み込んでセッティングすれば30馬力ぐらいにパワーアップするとか。

こちらがそれらを組み込んだDT-1のオフロードレーサーです。フロントホイールは21インチに変更、レーサーですから当然灯火類はありません、でも実は市販のDT-1も最初期はウインカー類はオプション扱いだったんだとか。つまり市販のDT-1をイジってオフロードレーサーを造れるようにしていたんですね、素晴らしいな。

内外のオフロードレースにもDT-1ベースのレーサーで参戦、国内ではデビュートゥウィンを飾りました、忠さんさすがです。良く見てみるとヘルメットの前側に手書きで二つの目玉が書いてありますが、これは当時から忠さんのトレードマークだったんだそうで、それを自分の会社のマークにしたんだそうです。
その後、エンジンをピストンバルブ式からピストンリードバルブ式に変更したDT-1Fにマイナーチェンジ、1970年にはヤマハ2サイクルオフロード車の代名詞的な名前であるDT250に変更になりました。なのでDT-1としては1970年までとなります。初期のDT250も大きな違いはありませんけどね。
さて、中古市場
綺麗にレストアされているヤツは100万円オーバーで上は140万円あたり、もう50年以上前のクラシックバイクの域ですからさすがに高額での取引となっています。欲しがる人も多いそうです。レストアベースなら2~30万円あたり、ただしオクなどによる個人取引で程度は酷すぎるのもある感じ・・・結局レストアしたら気がついたら100万円ぐらい行ったなんてこともあるそうです。構造はシンプルなのでレストアはしやすいほうですが、何分古いバイクなので部品が無い、部品取り車も用意したほうが良いそうです。

市販車としては日本初の本格的トレール(オフロード)バイクとしてアメリカからの要望で誕生、発売すると日本だけじゃなくアメリカでも販売は好調で、当時のヤマハの生産ラインの半分を割り当てたほど。ノーマルでは最高速はそれほどでもですが、太いトルクで未舗装路でも粘り強い走りを見せ、また純正販売のレーシングキットを組めば手軽にオフロードレーサーとしても使える仕様に変更できる手軽さ、それらがウケて特にアメリカでかなりのヒット作となった1台、それがヤマハトレール250DT1(DT-1)です。

男のクルマって・・・昔のジムニーにもそんなキャッチフレーズがあったような?w
所有するなら?これは完全なノーマルで乗るべきかと、もう年式的にもクラシックバイクですし。レストアをメインで、スピードは緩めで林道や街中をトコトコ走る感じが良いかなと。

このオフロードレーサーを参考にして、サイドにゼッケン、フロントフェンダーをアップタイプにするのも良さげですね。

まあ、やはり磨きあげてそのまま乗るのが良いかな。服装に気を使って乗って街中を走ってもお洒落かなと。こういうクラシックオフローダーも最近は人気ですから。
実はこのDT-1、昔居た部署の上司で車もバイクも旧車好きな方が居て、その人が所有していました。車はトヨタのTE27レビンやマツダのNAのロドスタやスズキのカプチーノなど他にも色々、バイクはホンダドリームCB750フォアのK1やカワサキのZ2、小さいのはホンダのイーハトーブやエルシノアやヤマハのYA-1などこれまた色々所有している方でしてね。これら全てクルマもバイクもほとんど自分でレストアしたとか。内心どれか1台くれ!(特にCB750フォア!)と思っていましたw、その当時でもDT-1はお洒落だなと、今なら本当街乗りや林道をトコトコ走りたいです。
余談

トレール走行が学べる、「ゆかいなトレール教室」・・・ヤマハはDT-1を発売した後に国内でこういうイベントを開催していたんだそうです。
で、皆さん口を開けて何を叫んでいるのかなコレw。

DT-1の発売と同時に、オフロード ビギナーの方を中心に効果がわかりやすい土の上で、ブレーキのかけ方や体重移動のコツ、車体の挙動変化など、オフロードバイクの正しい扱い方や楽しさを体験してもらう機会を提供したんだとか、ちなみにこういう安全教育みたいなのは今でも継続しているんだそうです、オンオフ問わずでね。まあ、他社も色々とやっていますがこういうのには参加したことが無いなぁ。オヤジだけど改めて参加してみようかな。