今回はイタリアから。
よく「バイク界のフェラーリ」と称されるあのメーカーからです。
【MV AGUSTA 750S】
「MV アグスタ 750S」です。
だいぶ前にガラケーのころにF4を紹介して以来だし、1000文字制限があったので(だから初期の記事は画像も1枚で短いんです)、今回はまずMVアグスタってどんな会社?からやります。

こちらがMVアグスタ社のマーク、社名のMVとは?「Meccanica Verghera」、イタリア語で「メカニカ・ヴェルゲーラ」と読みます。ヴェルゲーラとは最初に工場を設立した場所の地名、メカニカは力学とか工業という意味です。つまり「ヴェルゲーラ工業」といった感じの意味合い、フルネームだと「Meccanica Verghera Agusta」、「メカニカ・ヴェルゲーラ・アグスタ」となります。アグスタは創業者のジョバンニ・アグスタの名前からですよ。ちなみにアグスタ家は伯爵の爵位を持った名家です。
元々は航空機メーカーからのスタートでした、1907年にジョバンニ氏が設計した航空機が初飛行に成功、その後はあのカプローニ航空機に参加、カプローニ氏を知りたければジブリの「風立ちぬ」を見てください。1923年にジョバンニ・アグスタ航空機会社を設立、その一方で2サイクル単気筒100ccほどの小さなモペットも製作販売していました。第二次大戦でイタリアが敗戦、航空機生産は禁止されたので、以前は片手間だったバイクの生産に本腰を入れてMVアグスタを創業したのです。とまあ、大まかにはこんな感じの成り立ちであります。
そんなMVアグスタは1950年代には並列4気筒のバイクを製作、その後20年間ほとレースでは常勝という強豪となりました。ホンダがドリームCB750fourを販売したのが1969年、その遥か前からレースで並列4気筒エンジンのバイクを走らせていた会社なのです。

こちらは750Sの前に製作販売していたMVアグスタ600、4Cとかツーリズモと呼ばれていました。この時点でもうDOHCの並列4気筒というのがわかるかと。そう、空冷並列4気筒エンジンのパイオニアでもあったのです。
この600の後継となる、今回紹介するMVアグスタ750Sはこちら、1972年のデビューです。これ、実は1969年デビューのホンダのCB750fourに触発されて造られたんだとか。

どこかカフェレーサー的な雰囲気ですが、このバイクはつまりレーサーレプリカのハシリと言えるバイクなのです。元はレーシングバイクでそれを公道仕様にしたような感じなのです。
スペック
空冷並列4気筒DOHC8バルブ、排気量788cc、最高出力67馬力です。
車名は750ですが、排気量は750ccより大きいです。

空冷並列4気筒、DOHC8バルブのエンジン、DOHCであることを示すような独特のカムカバー、ホンダの750fourはSOHCでしたが、アグスタ750Sはツインカムエンジンを採用していました。なるべく排気経路が真っ直ぐになるように配置されたマフラー、エキマニの曲線美が独特の味わいです。

反対側、比較的に左右対称な造り、

エアクリーナーが存在せず、ファンネルだけがついたキャブレターは24Φのデロルト製です。わりと小径のキャブが採用されています(ちなみにホンダCB750fourは28Φです)。

フロントはワイヤー作動のドラム式ブレーキ、600ではワイヤー式のディスクブレーキを採用しましたがイマイチ効きが悪かったそうで、なのでドラム式になったんだとか、600のディスクの効きが悪かったのは油圧式じゃなかったのが原因、750Sのドラム式はグリメカ製のブレーキです。フロントフォークはΦ35mmの正立フォーク、チェリアーニ社の物を採用。フロントホイールはアルミ製の18インチです。

リヤ回り、ホイールはフロントと同じくアルミリムの18インチ、ツインショックのリヤサスペンションはセバック社の物、駆動方式は何故かシャフトドライブ式です。これは本来のレーサーはチェーン&スプロケットの一般的な物でしたが、この頃のMVアグスタは市販車両でプライベーターがレースに出るということに難色を示していたからだそうで、つまりプライベーターがレースにアグスタのバイクで出場して、負けたり転けたりするのがとても嫌だったからだとか、つまりレースの名門であるアグスタのバイクの名前を汚してくれるなということですね。だからこそ600はアップハンでツアラー系のポジションなのも同じ理由、あえてレースでは不利になる機構を選らんで採用していたのです。

メーターは機械式のタコとスピードの二眼メーターをアルミでカバー、ハンドルはトップブリッジ下に装着するクリップオンタイプのセパレートハンドル、かなりレーシーなハンドル回りです。

独特なフューエルタンクの形、その丸い形からディスコボランテ(イタリア語で空飛ぶ円盤、つまりUFO)と呼ばれていました。

シートはシングル風のデザイン、基本1人乗りなポジションです。この辺もレーサーレプリカであることの現れかと。だけどレースには出てくれるななんですけどね。
排気量は750cc以上ありますが、わりと小径のキャブがついていたりで、最高出力は67馬力と控えめ。動力性能的にはCB750fourと大差ない感じだとか。ただしお値段は1969年当時CB750の新車価格が385000円、その3倍ぐらいのお値段だったそうです。現代の感覚だと400万円台ぐらいだったのかなと。日本でも村山モーターズにより少数が輸入販売されたとか。
尚、この750Sは仕様地向けに姿を変えていたそうでして。

こちらは北米向けの750S アメリカ、タンクが四角くなり抉れていて、シートカウルがついています。

サイドカバーにもアメリカの文字が入ります。

1974年に少数が造られた・・・らしい?750SSというモデル。ロケットカウル付きでさらにレプリカ感がマシマシですが、コレについては詳しくはわからず、後付けのカウルの可能性もあります。カウルをつける改造は結構行われたそうなので。
生産は1974年までと短期間、総生産台数も諸説アリで400台ぐらいではと言われております。かなり希少なバイクであることは間違いないかと。アグスタのバイクはあまり大量生産はしませんから、この時代はハンドメイドに拘っていたので。
さて、中古市場・・・おいくら万円なんでしょうか?w、稀に市場に出ますが応談(ASK)ですし、日本でも所有している方はいるそうですが台数は1桁台だとか。上記のとおり生産台数は少ないそうなので4桁万円(1000万単位)にはなりそうですね。

イタリアの名門バイクメーカー、創業は第二次大戦後と比較的新しいメーカーですが、並列4気筒エンジンを早くから採用してレースでは常勝チーム、市販車はあえてレースでは不利になるパーツを装着してプライベーターのレース参加を阻害したりとプライドも高く、まさにバイク界のフェラーリと呼ばれるのもこのレース至上の考えから。そんなアグスタがホンダCB750fourに触発されて造った真のレーサーレプリカ、それがMVアグスタ 750Sです。
所有・・・・㍉w
出来るなら一切イジらないですね、とにかく整備がメインになりそう。細部まで磨き上げてコンディションを保つのが目的になりそう。ミュージアム入りでもおかしくは無いバイク、動体保存を目的にするべきかと。実物をまずは見てみたいバイクのうちのひとつです。
余談
バイクメーカーとしてのMVアグスタは1971年に世襲の2代目の社長が死去、その弟が経営していましたが1977年にバイク製造から撤退、解散しています。以降は航空機に注力したアグスタ社として活動

アグスタのA109、主にヘリコプターを生産する会社になりました。日本でも一部の県警が採用したそうです。イタリアの軍用観測ヘリとしても活躍しています。

同社のマングスタ攻撃ヘリコプター、アグスタは現在もイタリアの軍事航空産業会社でもあります。旅客機も試作したようですが、販売には至らなかった模様。
そして1997年、当時のイタリアのカジバグループがバイクメーカーとしてのMVアグスタを再興したんですが、2004年から大まかな流れですがカジバからプロトン→イタリアのGEVI(なんと1ユーロで売却)→ハーレーダビットソン→元のカジバグループでの創業者と流転して、ここ近年はオーストリアのKTMグループの傘下となっていました。しかし、昨年末ぐらいにご存じのとおりKTMが経営破綻、ちなみにKTMって1991年にも一度倒産しています・・・懲りろよw、そして傘下のMVアグスタの去就が不安視されていましたが、イタリアのピエラ・モビリティグループに入ることが決まり、現在は問題は解決した状態です。
2000年代の新生アグスタでも750Sは販売されていまして。

こちらがMVアグスタ 750S ブルターレです。ブルターレとはイタリア語で「獰猛」という意味、2005年に販売、要はF4のネイキッドバージョンですね。この時代のアグスタは80万円台で中古がありますよ、ただし、日本の渋滞ペースで走るとクーラント吹いただの、ラジエーターキャップが飛んだだの、樹脂部品が溶けただののお話も多数ですけどね。なので一部ではブチコワーレなんて称号もw、新車時は高額でしたが繊細な子なんです。
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2025/02/21 15:58:48